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PC 八重 イートン
場所 クーロンへ向かう道・クーロン東南
NPC なし
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にんじん爆弾のかけらは、見事ウサギの口を直撃した。
ゴクっ
思わずウサギは喉を鳴らし、それを飲み込む。とたんに、ウサギの顔が苦痛に歪んだ。
「ガルルルルルゥッ!!!!」
身体を掻き毟り、真っ赤な目をかっと見開き、断末魔のような唸り声を発しながら、ウサギはにんじんを吐き出そうともがく。
しかし、もう遅い。にんじんは、すぐにその威力を発揮し始めた。ウサギの身体は、徐々に縮んでいく・・・。小さく、可愛らしく・・・。
「キュウ・・・キュウ・・・」
何かの生き物の鳴き声でイートンは目覚めた。木の幹に打ち付けた頭がずきずき痛む。目覚めたばかりで、ぼんやりとしているイートンの視界に赤い瞳の生き物が写った。
「ん・・・」
「・・・キュウ?」
「かわいいいいいっ!!」
思わず、がばっとイートンは起き上がると、その生き物の身体を抱き上げた。ふわふわで真っ白な毛。くりくりした大きな瞳。
「可愛いなぁ・・・」
うっとりと、イートンはその生き物を見つめた。その可愛さで、頭の痛みなどもはや星の彼方である。それは、小さなウサギだった。おどおどした瞳を向けて、イートンを見つめている。
「キュウ・・・」
「ああっ、可愛いっ!!」
小動物を愛する彼は、このウサギの可愛らしさのとりこになってしまった。
(なんて可愛いんだ・・・。そうですよね、ウサギっていうのはこういう可愛いのをいうんですよ、あんな悪魔ウサギなど問題外、問題外・・・)
「ん!?」
イートンは思わずまじまじとそのウサギを見つめた。
(あれ・・・、このウサギ、そういえばあの悪魔ウサギに、ちょっと似てるような・・・)
白い毛、赤い瞳。大きさこそこのウサギは小さいけれど、もう少し身体が大きくて、ムキムキならあのウサギに似ていなくもないような・・・。そんな考えがイートンの心をよぎった。
「まさか・・・」
イートンはウサギを見つめた。
「まさか・・・ですよね・・・?」
「キュウっ」
「ああ、可愛いっ!!」
しかし、その考えは見事にイートンの頭からふっとんだ。
「そうですよねー、いくら同じウサギでも、あの悪魔ウサギとこのウサちゃんが一緒の生き物なわけがないですよねー、ね、そうですよね、ウサちゃん?」
ね、といってイートンはウサギの顔を覗き込む。ウサギも、それに答えるようにキュウキュウと鳴く。というか、イートンの手から逃れようともがいているようだが、ウサギにメロメロのイートンは気づかない。
ふいに、辺りがうっすら明るくなったような予感がして、イートンは東の空を見た。
「あ・・・」
予感は的中した。東の空の端がうっすらと明るくなり始めている。イートンはそれを半ば放心状態で見つめた。
「もうすぐ・・・夜明けですね・・・。結構、長く気を失っていたんですね・・・、私は・・・」
あの、ウサギとの死闘が脳裏をよぎる。肉体的も精神的にも、戦いの疲れがどっと押し寄せてくるのをイートンは感じていた。
「これで・・・八重さんも元に戻りますね・・・」
はっとイートンは思い出した。
(そういえば、ウサギは?八重さんは!?)
そう思ったその時、
「あっ!」
イートンの隙をついてウサギが手から逃げ出した。ウサギはだっとかけていくと、目の前の茂みをくぐり、どんどんかけていく。
「あ!待って、ウサちゃん!」
思わずイートンはウサギを追いかけた。ウサギはどんどんかけていくと、八重の荷物が入っている小型のトランクの前で立ち止まった。
「あ、あれ、八重さんの・・・」
イートンの言葉が終わらないうちに、
にょにょにょにょにょ・・・・
ウサギの身体がどんどん大きくなり、白い皮膚に色がつき、髪の毛が生え、人間の姿を成してくる。そして、出来上がったその姿は・・・。
「やっ・・・やややっ・・・・八重さんっ!!!」
「・・・よう」
八重は半ば諦めたような瞳をイートンに向けた。
「可愛いウサちゃんがこんなオヤジでがっかりだろう?」
「あ・・・あ・・・」
とりあえず、イートンが発することが出来たのはこの言葉だけであった。
「八重さん・・・服!服っ!!」
「ああ・・・そうだったな・・・」
変身が解けた八重は、・・・もちろん全裸である。しかし当人は全裸ということにいっこうに無頓着な風で、のろのろと服を着替えはじめた。
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