------------------------------------------------------
PC 八重 イートン
場所 クーロンへ向かう道・クーロン東南
NPC 旅人
----------------------------------------
『彼の意識は満月の中に沈んだ 彼は鋭い爪を私に走らせた
その目は赤く熟れている 大きな影に覆われ私は見つめる
月の下に飢えし者 ルナシーを』
イートンの手記より
ザシュッ!
空気を切る音と共に朱の飛沫が上がった。
イートンはその力に耐え切れず後方に飛ばされた。
「う・…」
押さえる左腕からは早まる鼓動と共にドクドクと血が流れていく。血と恐怖が充満し、目の前にいる生き物を余計に興奮させていた。
(これが・・兎?)
混乱した頭を必死で回転させる。不明瞭だった八重の言動が少しずつ見えてきた。
(どうしてこれが兎なんだ!!)
しかし、次にイートンを支配したのは激しい憤りだった。
(確かに耳は長いし、目は赤い。しかしこんな筋肉ムキムキの可愛くない物を『ウサギ』に分類するなんて!!私は絶対認めないッ)
もしかしたら「ウ・サギー」とか「ウサッギー」という別の生き物ではないだろうか?美人と小動物を愛するイートンはかなり考えを脱線させていた。
(第一・・・アレは)
胸のリボンで止血をすると、イートンはそろりと立ち上がる。その視線は真っ直ぐにアレの口の中へと注がれていた。まるで暗い檻のような口。未発達の二本の門歯に対し、大きな牙の脇からは涎が絶えず流れている。
二度目の攻撃をよけてイートンは叫んだ。
「肉食じゃないかッ!!」
クルッ。
「・・・?」
イートンの叫びと共に兎は方向を変えた。あれほど自分に向けていた食欲をまるで異臭によって削がされたようなような顔をした。それがやけに人間臭くてイートンを嫌な気分にさせたが。
「あ。ニンジン」
彼の後ろには先ほど投げ捨てた袋からニンジンがこぼれ出ている。八重がニンジンを口に放り込めと言ったのは覚えている。しかし、それ以上にこの兎はニンジンに嫌悪感を抱いているようだ。
(ルナシーはニンジンが苦手なのか?)
八重がルナシーなのは、あんなシーンを目の前で見たのだ、疑うまでも無かった。しかし、既に伝説上の生き物と化した彼等の生態、名前すら、知る者は少ない。
「ぎゃあああ!!」
直ぐそばで聞こえた絶叫にイートンは思考を中断させた。兎が別の『獲物』を見つけたのだ。思い切りニンジンを投げつけた。まるで後ろにも目があるように兎がよける。
「大丈夫ですか!?」
「アァ・・ああ・・・」
腕を持っていかれた男は瞑り唸った。しかしイートンには回復魔法をかけてやることも出来ない。むしろそれだけで済んだ事が幸運だろう。旅人には常に死の危険が付き纏う。イートンの場合それが直ぐ傍にいた旅の連れであったのだが。
(このまま、夜が明ければよいのに・・・)
しかしまだ夜は始まったばかりだ。それにこのままでは兎は彼等に興味を失い、何処かへ行ってしまう。兎の食料になる村はこの辺りに十分散在しているのだから。」
(伝説では・・・古書ではどうなっている?)
一夜で村を全滅させる怪物、ルナシー。それを倒すのは英雄であり、救うのは無垢な乙女であった。狼男と同一視される彼等だがその種は多様であったと言う。
イートンは英雄でもなければ、乙女でもなかった。
このニンジンの山の傍にいれば兎は襲ってこないだろう。しかし、
(これをどうやって兎に放り込めって言うんですか!八重さん!?)
睨み合いは続き、兎が再びその場を離れた。その時イートンは覚悟を決めた。
「走って!!」
「ひぃ!」
意識を取り戻していた男の背中に幾つかニンジンを背負わせ、森を指した。
「・・・グルゥ」
兎がそれを追おうと後ろ足に力を込める。跳躍する直前にイートンが短刀を投げた。それは鍛えられた筋肉に見事に跳ね返される。
「お前の相手は僕だ」
ニンジンの山から離れたイートンに兎が歓喜の唸りと共に飛び上がる。動かない彼は兎の格好の的だった。彼を殺す為、否喰らう為に向けられた牙が裂けたような口からしっかりと見て取れた。そしてイートンは言葉を紡ぐ
「“火を灯せ”」
ニンジンの袋に入れた火乱石が火薬に火をつけた。
ドゥン!
小規模の爆発と共にニンジンが粉々に飛び散った。爆風と共にイートンは意識を失った・・・・。
PC 八重 イートン
場所 クーロンへ向かう道・クーロン東南
NPC 旅人
----------------------------------------
『彼の意識は満月の中に沈んだ 彼は鋭い爪を私に走らせた
その目は赤く熟れている 大きな影に覆われ私は見つめる
月の下に飢えし者 ルナシーを』
イートンの手記より
ザシュッ!
空気を切る音と共に朱の飛沫が上がった。
イートンはその力に耐え切れず後方に飛ばされた。
「う・…」
押さえる左腕からは早まる鼓動と共にドクドクと血が流れていく。血と恐怖が充満し、目の前にいる生き物を余計に興奮させていた。
(これが・・兎?)
混乱した頭を必死で回転させる。不明瞭だった八重の言動が少しずつ見えてきた。
(どうしてこれが兎なんだ!!)
しかし、次にイートンを支配したのは激しい憤りだった。
(確かに耳は長いし、目は赤い。しかしこんな筋肉ムキムキの可愛くない物を『ウサギ』に分類するなんて!!私は絶対認めないッ)
もしかしたら「ウ・サギー」とか「ウサッギー」という別の生き物ではないだろうか?美人と小動物を愛するイートンはかなり考えを脱線させていた。
(第一・・・アレは)
胸のリボンで止血をすると、イートンはそろりと立ち上がる。その視線は真っ直ぐにアレの口の中へと注がれていた。まるで暗い檻のような口。未発達の二本の門歯に対し、大きな牙の脇からは涎が絶えず流れている。
二度目の攻撃をよけてイートンは叫んだ。
「肉食じゃないかッ!!」
クルッ。
「・・・?」
イートンの叫びと共に兎は方向を変えた。あれほど自分に向けていた食欲をまるで異臭によって削がされたようなような顔をした。それがやけに人間臭くてイートンを嫌な気分にさせたが。
「あ。ニンジン」
彼の後ろには先ほど投げ捨てた袋からニンジンがこぼれ出ている。八重がニンジンを口に放り込めと言ったのは覚えている。しかし、それ以上にこの兎はニンジンに嫌悪感を抱いているようだ。
(ルナシーはニンジンが苦手なのか?)
八重がルナシーなのは、あんなシーンを目の前で見たのだ、疑うまでも無かった。しかし、既に伝説上の生き物と化した彼等の生態、名前すら、知る者は少ない。
「ぎゃあああ!!」
直ぐそばで聞こえた絶叫にイートンは思考を中断させた。兎が別の『獲物』を見つけたのだ。思い切りニンジンを投げつけた。まるで後ろにも目があるように兎がよける。
「大丈夫ですか!?」
「アァ・・ああ・・・」
腕を持っていかれた男は瞑り唸った。しかしイートンには回復魔法をかけてやることも出来ない。むしろそれだけで済んだ事が幸運だろう。旅人には常に死の危険が付き纏う。イートンの場合それが直ぐ傍にいた旅の連れであったのだが。
(このまま、夜が明ければよいのに・・・)
しかしまだ夜は始まったばかりだ。それにこのままでは兎は彼等に興味を失い、何処かへ行ってしまう。兎の食料になる村はこの辺りに十分散在しているのだから。」
(伝説では・・・古書ではどうなっている?)
一夜で村を全滅させる怪物、ルナシー。それを倒すのは英雄であり、救うのは無垢な乙女であった。狼男と同一視される彼等だがその種は多様であったと言う。
イートンは英雄でもなければ、乙女でもなかった。
このニンジンの山の傍にいれば兎は襲ってこないだろう。しかし、
(これをどうやって兎に放り込めって言うんですか!八重さん!?)
睨み合いは続き、兎が再びその場を離れた。その時イートンは覚悟を決めた。
「走って!!」
「ひぃ!」
意識を取り戻していた男の背中に幾つかニンジンを背負わせ、森を指した。
「・・・グルゥ」
兎がそれを追おうと後ろ足に力を込める。跳躍する直前にイートンが短刀を投げた。それは鍛えられた筋肉に見事に跳ね返される。
「お前の相手は僕だ」
ニンジンの山から離れたイートンに兎が歓喜の唸りと共に飛び上がる。動かない彼は兎の格好の的だった。彼を殺す為、否喰らう為に向けられた牙が裂けたような口からしっかりと見て取れた。そしてイートンは言葉を紡ぐ
「“火を灯せ”」
ニンジンの袋に入れた火乱石が火薬に火をつけた。
ドゥン!
小規模の爆発と共にニンジンが粉々に飛び散った。爆風と共にイートンは意識を失った・・・・。
PR
トラックバック
トラックバックURL: