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PC 八重 イートン ニーツ
場所 ヴェルン湖
NPC 市長(ジェイソン)・ナスビ・ベル=リアン・ユサと部下達
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「大丈夫でしょうか。八重さん」
儀式の準備もすっかり整い、あとはニーツの指示を待つのみになったところで、イートンが呟いた。
「まあ、大丈夫だろう」
「そんな安易な…」
「信じるしかあるまい?まあ、いざとなったら、俺が何とかするさ」
「ニーツ君一人で?」
「…今夜は満月だ。何とでもなるだろう」
ニーツはそう呟き、夜空を見上げる。紅く色付く真円の月。
そう、満月に影響されるのは何も融合生物だけではない。ニーツ達魔族自身もまた、その影響を大きく受けている。
いつもより強い力をその身の内に感じながら、ニーツは視線をイートンへ移した。
「それより、お前もそろそろ詠唱を始めた方が良いぞ」
「ええ?もうですか!?」
「遅すぎて困ることはあっても、早すぎて困ることはないだろう?」
「そ、そうですけど…」
と、カンニングペーパー片手にイートン。
「忘れたら、隣で教えて下さいね」
「ああ。…っと言いたいところだが…」
ふとニーツは、何かを見つめるように、瞳を細めた。しばしの沈黙のあと、おもむろに、口を開く。
「イートン、此処はお前一人がやれ」
「ええええ!?何ですか?いきなり!!」
あまりのことに、イートンは思わず絶叫した。
「野暮用が出来た」
「野暮用って…」
脱力するイートンには全く構わず、ニーツは遠くを見つめる。
「クリエッドではヤバイな…
イートン、いいか?失敗するなよ。タイミングを見誤るな。お前に全てが掛かっているんだからな」
「え?え?」
「早く終われば戻ってくる。じゃあ」
言いたいことだけ言い置いて、ニーツの姿はかき消えた。後に残されたのは、呆然とするイートン。
「ちょっと待って下さいよ。僕一人でどうしろと…」
こんな事なら、意地でもおじさんに頼んでおけば良かったと、イートンは思わずにはいられなかった。
未だ戦闘の痕が色濃く残るヴェルン湖湖畔。
そこでニーツは、”野暮用”に向かって、言い捨てた。
「何だ。どんな客かと思えば…お前か」
「随分とご挨拶だね。こっちは…待ちくたびれたよ!!」
いきなり襲い来る炎の弾を、避けもせず、ニーツは腕ではじく。火傷一つ負っていないその腕を戻し、ニーツは相手をひたと見据えた。
「…死んだと思っていたがな」
「死ねるものか!シュワルツェネ兄の敵を討つまでは!!兄は…兄は…僕を庇って…」
金の瞳に恨みと憎しみを宿し、野暮用こと、ベル=リアンはニーツを睨み付けた。
「自業自得だろう」
「うるさい!シュワルツェネ兄は、一度も間違ってなんかいない!」
噛み付くように、ベル=リアンは否定する。
「兄は悪くない。間違っているのはお前の方だ!この、色違いのはみだし者!」
勢いに任せて言い放たれた言葉に、ニーツの目の色が変わった。
風もなく木々はざわめき、小さな生き物達は、息をひそめる。
一瞬にして、世界がその存在を変えていた。ニーツの魔力が支配する世界へと。
「ほう…」
ニーツの唇が、笑みを形作る。しかし、その目は笑っていない。
「懐かしい呼ばれ方だな…」
「シュワルツェネ兄が教えてくれたんだ!魔族としても、生き物としても、お前の存在はおかしいんだって」
流石に魔族の端くれだけあり、ベル=リアンもひるむことはない。暫し睨み合う二人。先に口を開いたのは、ニーツだった。
「ふふ…確かに、そうかもしれないな。けれど…」
ニーツが翳した手のひらに、信じられないほどの魔力が凝縮していく。
「俺を怒らせた事、後悔するんだな」
「く…おい!出てこい!!」
ニーツの迫力に押されながらもベル=リアンは声を上げた。それに従うようにあちこちから飛び出してきたのは…
「人間を引っぱり出してきたか…確か、ユサとか言ったな?」
不愉快そうに、ニーツは言う。ベル=リアンはユサ達を引き連れ、誇らしげに笑った。
「シュワルツェネ兄が遺してくれたんだ!」
だが、ニーツはそんなベル=リアンに嘲笑で答えた。
「それで勝ったつもりか?愚かしいな」
「どうかな?人間相手に手が出せるの?」
「あまり、甘く見ないで貰いたいな」
一瞬の沈黙。
動いたのは、二人同時だった。
"狂犬"と"ウサギ"が睨み合っているのを、じっと見守っている影があった。
影は、ゆっくりと夜空に皓々と輝く月を見上げる。
射し照らす光は、ゆっくりとその影にまとわりつき、変化していく。
小さな、丸っこい影から、人影へ。
「やれやれ…」
漏れ出る声は、紛れもなく、青年のもの。
「あの魔族も、大概人使いが荒い。いや、ウサギ使いか?」
黙っていれば可愛いのに、と、すっかり変化を終えた影は独りごちた。
一つに束ねた長い髪が、風に翻る。
すらりと伸ばされた指の先に、仄かに光が灯った。
「古より定められし契約よ、我がマスター、ドクター・レンの名に於いて遂行されん。
其は束縛を望むもの。我と彼とを繋げ。――鎖縛」
青年の指先の光が弾け、見えない鎖が、暴れウサギへと絡みつく。
今にも狂犬に飛びかかろうとしていた<ウサギ>の動きが止まる。くるりと向きを変え、反対方向へ駆け出した。
『あ、おい!待て!!』
それをすかさず追いかける狂犬。二匹のそんな動きを確認して、彼は紅い瞳を細めた。
「さて、行くか」
そう呟き、自身もその二匹を追うために、走り出した
PC 八重 イートン ニーツ
場所 ヴェルン湖
NPC 市長(ジェイソン)・ナスビ・ベル=リアン・ユサと部下達
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「大丈夫でしょうか。八重さん」
儀式の準備もすっかり整い、あとはニーツの指示を待つのみになったところで、イートンが呟いた。
「まあ、大丈夫だろう」
「そんな安易な…」
「信じるしかあるまい?まあ、いざとなったら、俺が何とかするさ」
「ニーツ君一人で?」
「…今夜は満月だ。何とでもなるだろう」
ニーツはそう呟き、夜空を見上げる。紅く色付く真円の月。
そう、満月に影響されるのは何も融合生物だけではない。ニーツ達魔族自身もまた、その影響を大きく受けている。
いつもより強い力をその身の内に感じながら、ニーツは視線をイートンへ移した。
「それより、お前もそろそろ詠唱を始めた方が良いぞ」
「ええ?もうですか!?」
「遅すぎて困ることはあっても、早すぎて困ることはないだろう?」
「そ、そうですけど…」
と、カンニングペーパー片手にイートン。
「忘れたら、隣で教えて下さいね」
「ああ。…っと言いたいところだが…」
ふとニーツは、何かを見つめるように、瞳を細めた。しばしの沈黙のあと、おもむろに、口を開く。
「イートン、此処はお前一人がやれ」
「ええええ!?何ですか?いきなり!!」
あまりのことに、イートンは思わず絶叫した。
「野暮用が出来た」
「野暮用って…」
脱力するイートンには全く構わず、ニーツは遠くを見つめる。
「クリエッドではヤバイな…
イートン、いいか?失敗するなよ。タイミングを見誤るな。お前に全てが掛かっているんだからな」
「え?え?」
「早く終われば戻ってくる。じゃあ」
言いたいことだけ言い置いて、ニーツの姿はかき消えた。後に残されたのは、呆然とするイートン。
「ちょっと待って下さいよ。僕一人でどうしろと…」
こんな事なら、意地でもおじさんに頼んでおけば良かったと、イートンは思わずにはいられなかった。
未だ戦闘の痕が色濃く残るヴェルン湖湖畔。
そこでニーツは、”野暮用”に向かって、言い捨てた。
「何だ。どんな客かと思えば…お前か」
「随分とご挨拶だね。こっちは…待ちくたびれたよ!!」
いきなり襲い来る炎の弾を、避けもせず、ニーツは腕ではじく。火傷一つ負っていないその腕を戻し、ニーツは相手をひたと見据えた。
「…死んだと思っていたがな」
「死ねるものか!シュワルツェネ兄の敵を討つまでは!!兄は…兄は…僕を庇って…」
金の瞳に恨みと憎しみを宿し、野暮用こと、ベル=リアンはニーツを睨み付けた。
「自業自得だろう」
「うるさい!シュワルツェネ兄は、一度も間違ってなんかいない!」
噛み付くように、ベル=リアンは否定する。
「兄は悪くない。間違っているのはお前の方だ!この、色違いのはみだし者!」
勢いに任せて言い放たれた言葉に、ニーツの目の色が変わった。
風もなく木々はざわめき、小さな生き物達は、息をひそめる。
一瞬にして、世界がその存在を変えていた。ニーツの魔力が支配する世界へと。
「ほう…」
ニーツの唇が、笑みを形作る。しかし、その目は笑っていない。
「懐かしい呼ばれ方だな…」
「シュワルツェネ兄が教えてくれたんだ!魔族としても、生き物としても、お前の存在はおかしいんだって」
流石に魔族の端くれだけあり、ベル=リアンもひるむことはない。暫し睨み合う二人。先に口を開いたのは、ニーツだった。
「ふふ…確かに、そうかもしれないな。けれど…」
ニーツが翳した手のひらに、信じられないほどの魔力が凝縮していく。
「俺を怒らせた事、後悔するんだな」
「く…おい!出てこい!!」
ニーツの迫力に押されながらもベル=リアンは声を上げた。それに従うようにあちこちから飛び出してきたのは…
「人間を引っぱり出してきたか…確か、ユサとか言ったな?」
不愉快そうに、ニーツは言う。ベル=リアンはユサ達を引き連れ、誇らしげに笑った。
「シュワルツェネ兄が遺してくれたんだ!」
だが、ニーツはそんなベル=リアンに嘲笑で答えた。
「それで勝ったつもりか?愚かしいな」
「どうかな?人間相手に手が出せるの?」
「あまり、甘く見ないで貰いたいな」
一瞬の沈黙。
動いたのは、二人同時だった。
"狂犬"と"ウサギ"が睨み合っているのを、じっと見守っている影があった。
影は、ゆっくりと夜空に皓々と輝く月を見上げる。
射し照らす光は、ゆっくりとその影にまとわりつき、変化していく。
小さな、丸っこい影から、人影へ。
「やれやれ…」
漏れ出る声は、紛れもなく、青年のもの。
「あの魔族も、大概人使いが荒い。いや、ウサギ使いか?」
黙っていれば可愛いのに、と、すっかり変化を終えた影は独りごちた。
一つに束ねた長い髪が、風に翻る。
すらりと伸ばされた指の先に、仄かに光が灯った。
「古より定められし契約よ、我がマスター、ドクター・レンの名に於いて遂行されん。
其は束縛を望むもの。我と彼とを繋げ。――鎖縛」
青年の指先の光が弾け、見えない鎖が、暴れウサギへと絡みつく。
今にも狂犬に飛びかかろうとしていた<ウサギ>の動きが止まる。くるりと向きを変え、反対方向へ駆け出した。
『あ、おい!待て!!』
それをすかさず追いかける狂犬。二匹のそんな動きを確認して、彼は紅い瞳を細めた。
「さて、行くか」
そう呟き、自身もその二匹を追うために、走り出した
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