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PC 八重・イートン・ニーツ
場所 ヴェルン市長亭
NPC クリエッド・ワトスン市長(ハドソン・ジェームス)・ナスビ
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「今回の作戦を説明する」
そう言ってニーツはテーブルの上に大きな紙を広げた。テーブルを囲んで八重、イートン、クリエッド、そしてイートンの膝からテーブルに乗り移ったナスビがその紙を覗き込む。
「これ、ヴェルン湖周辺の地図ですよね」
ニーツが広げたヴェルン湖周辺の地図には、赤いペンでしるしがつけてあり、しるしの横にはそれぞれ、ポイントA、ポイントBという言葉が書かれている。
「見てわかると思うが、今回の作戦はこのヴェルン湖で行う。ここに空き地があるだろう」
そう言ってニーツは指でポイントAを指した。
「俺とイートンは市長より先に行ってここで待機し、召喚ゲートを張る。クリエッドはこのポイントA付近に邪魔者が入ってこないように見張っていてくれ。誰一人として入れるな」
「分かりました」
「そして、八重」
ニーツの言葉に、八重は顔を上げた。
「お前の役目は市長をヴェルン湖のポイントBに誘い出し、魔族化した市長をある程度弱らせ、挑発し、ポイントAにおびき寄せることだ。まあ、あまり期待はしてないが、頑張れ」
「ひどい言い草だな」
「当たり前だ。変身したらお前は自我もなく暴れまわるんだろう。それに、そのお前をコントロールするのがあれじゃ、な…」
ニーツに冷たい視線で見られ、ナスビは憤慨して言った。
『オマエ、我輩の新の実力が信じられないとでも言うのかッ!』
「しょうがないですよ、ナスビちゃん」
イートンが苦笑して言う。
「いつもそんなコロコロしてるんですから。本当は強いって言われたって、にわかには信じられませんよ。ねぇ、ニーツ君?」
「まあ、一種の危険な賭けかもな」
『イートン!ニーツ!!』
ナスビはふんっと鼻を鳴らすとえらそうに言う。
『まあいい。貴様らがそんな軽口を叩いていられるのも今のうちだ。<ヴェルンの涙>を持つ我輩の新の力を見た暁には、貴様らなんぞもう足元にも及ばないほどのビューティフルかつ、最強の我輩の姿をその目で拝ませてやるからなッ!』
「ああ、分かったから、お前は八重と市長のすぐ側に潜んでおけ。いいな?」
それでも、『いーや、貴様らは我輩の実力を分かってないッ!!』とばたばた暴れるナスビと、それをとりおさえるイートン、冷たく見つめるニーツの喧騒をよそに、八重は窓の外を見つめていた。青白い、病人のような月がこっちを見ている。
(俺は、いつまで<ルナシー>でいなくてはならないんだろうな…)
八重はため息をついた。
「…‥エンジ…」
「ああ、夢のようだわ」
ヴェルン湖が、夕方の光に紅く染まるころ、<勝負モード>の化粧をしたハドソンは、八重とともにヴェルン湖畔を歩いていた。
「こうして八重様と夕方のヴェルン湖畔を散歩できるだなんて…。なんてロマンチックなんだろう…。ねぇ、そう思わないこと?八重様?」
一人勘違いをしているハドソンに、八重はいつになく優しく笑いかけた。
「ふふっ」
「あら、今日はご機嫌がよろしいのね?」
ハドソンが顔を輝かせる。
「いつもなら、すぐ私の前からいなくなってしまわれるのに。ねぇ、もしかして、私の求愛に応えてくれる気になったのかしら?」
「求愛、ね…」
ヴェルン湖に夕日がゆっくりと沈むのを見つめていた八重は、不意に言った。
「ミセス・ハドソン、<おにごっこ>は好きかね?」
「お、おにごっこ?」
困惑した表情を浮かべるハドソンに、八重は言う。
「君がおにで、私が逃げる。それで、もし君が私を捕まえられたら」
夕日は、もう一本の赤い筋になりかけていた。八重は言う。
「君の言う、求愛とやらに応えてやろう」
「そ、それは本当かい?八重様!」
ハドソンが興奮のあまりばふーっと鼻息を噴き出す。夕日は、最後の光を残し、西の空へ消えた。
夕日が消えたとたん、ハドソンの肌がどす黒い色に黒ずんできた。顔と手に、もしゃもしゃと黒い体毛が生え、瞳の色が血のような紅い色に染まっていく。
『くんくん、匂うぞ匂うぞ。オマエも<モンスター>だろ?』
今やヒトの原型を失いつつある<ジェームス>はにたぁっと笑った。
『オレはなぁ、一度でいいからオマエみたいなタフなヤツと戦ってみたかったんだよぉ』
「それは光栄だね」
八重が苦笑を返す。
『おにごっことかいったよなぁ?いいぜぇ、やってやるぜぇ』
ジェームスはぺろりと舌なめずりをした。
『捕まえて、オマエの肉を喰ってみてぇ』
「さて、そうカンタンに捕まえられるかな?」
そういう八重の体からも徐々に白い体毛が生えてきた。目が鬼灯色に染まる。
「そのまえに俺がオマエを喰らってしまうかもしれないな」
バリバリっと服が裂け、耳が伸び、体が巨大化する。一瞬後には八重の体は巨大なモンスター<ウサギ>と化していた。
「グルルルルゥっ…」
<ウサギ>が恐ろしい唸り声を上げてジェームスを見下ろす。
『くははっ、やっぱ、そうこなくっちゃなぁ』
ジェームスがにたぁっと笑う。
『こいよ、ウサ公。勝負しようぜぇ』
PC 八重・イートン・ニーツ
場所 ヴェルン市長亭
NPC クリエッド・ワトスン市長(ハドソン・ジェームス)・ナスビ
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「今回の作戦を説明する」
そう言ってニーツはテーブルの上に大きな紙を広げた。テーブルを囲んで八重、イートン、クリエッド、そしてイートンの膝からテーブルに乗り移ったナスビがその紙を覗き込む。
「これ、ヴェルン湖周辺の地図ですよね」
ニーツが広げたヴェルン湖周辺の地図には、赤いペンでしるしがつけてあり、しるしの横にはそれぞれ、ポイントA、ポイントBという言葉が書かれている。
「見てわかると思うが、今回の作戦はこのヴェルン湖で行う。ここに空き地があるだろう」
そう言ってニーツは指でポイントAを指した。
「俺とイートンは市長より先に行ってここで待機し、召喚ゲートを張る。クリエッドはこのポイントA付近に邪魔者が入ってこないように見張っていてくれ。誰一人として入れるな」
「分かりました」
「そして、八重」
ニーツの言葉に、八重は顔を上げた。
「お前の役目は市長をヴェルン湖のポイントBに誘い出し、魔族化した市長をある程度弱らせ、挑発し、ポイントAにおびき寄せることだ。まあ、あまり期待はしてないが、頑張れ」
「ひどい言い草だな」
「当たり前だ。変身したらお前は自我もなく暴れまわるんだろう。それに、そのお前をコントロールするのがあれじゃ、な…」
ニーツに冷たい視線で見られ、ナスビは憤慨して言った。
『オマエ、我輩の新の実力が信じられないとでも言うのかッ!』
「しょうがないですよ、ナスビちゃん」
イートンが苦笑して言う。
「いつもそんなコロコロしてるんですから。本当は強いって言われたって、にわかには信じられませんよ。ねぇ、ニーツ君?」
「まあ、一種の危険な賭けかもな」
『イートン!ニーツ!!』
ナスビはふんっと鼻を鳴らすとえらそうに言う。
『まあいい。貴様らがそんな軽口を叩いていられるのも今のうちだ。<ヴェルンの涙>を持つ我輩の新の力を見た暁には、貴様らなんぞもう足元にも及ばないほどのビューティフルかつ、最強の我輩の姿をその目で拝ませてやるからなッ!』
「ああ、分かったから、お前は八重と市長のすぐ側に潜んでおけ。いいな?」
それでも、『いーや、貴様らは我輩の実力を分かってないッ!!』とばたばた暴れるナスビと、それをとりおさえるイートン、冷たく見つめるニーツの喧騒をよそに、八重は窓の外を見つめていた。青白い、病人のような月がこっちを見ている。
(俺は、いつまで<ルナシー>でいなくてはならないんだろうな…)
八重はため息をついた。
「…‥エンジ…」
「ああ、夢のようだわ」
ヴェルン湖が、夕方の光に紅く染まるころ、<勝負モード>の化粧をしたハドソンは、八重とともにヴェルン湖畔を歩いていた。
「こうして八重様と夕方のヴェルン湖畔を散歩できるだなんて…。なんてロマンチックなんだろう…。ねぇ、そう思わないこと?八重様?」
一人勘違いをしているハドソンに、八重はいつになく優しく笑いかけた。
「ふふっ」
「あら、今日はご機嫌がよろしいのね?」
ハドソンが顔を輝かせる。
「いつもなら、すぐ私の前からいなくなってしまわれるのに。ねぇ、もしかして、私の求愛に応えてくれる気になったのかしら?」
「求愛、ね…」
ヴェルン湖に夕日がゆっくりと沈むのを見つめていた八重は、不意に言った。
「ミセス・ハドソン、<おにごっこ>は好きかね?」
「お、おにごっこ?」
困惑した表情を浮かべるハドソンに、八重は言う。
「君がおにで、私が逃げる。それで、もし君が私を捕まえられたら」
夕日は、もう一本の赤い筋になりかけていた。八重は言う。
「君の言う、求愛とやらに応えてやろう」
「そ、それは本当かい?八重様!」
ハドソンが興奮のあまりばふーっと鼻息を噴き出す。夕日は、最後の光を残し、西の空へ消えた。
夕日が消えたとたん、ハドソンの肌がどす黒い色に黒ずんできた。顔と手に、もしゃもしゃと黒い体毛が生え、瞳の色が血のような紅い色に染まっていく。
『くんくん、匂うぞ匂うぞ。オマエも<モンスター>だろ?』
今やヒトの原型を失いつつある<ジェームス>はにたぁっと笑った。
『オレはなぁ、一度でいいからオマエみたいなタフなヤツと戦ってみたかったんだよぉ』
「それは光栄だね」
八重が苦笑を返す。
『おにごっことかいったよなぁ?いいぜぇ、やってやるぜぇ』
ジェームスはぺろりと舌なめずりをした。
『捕まえて、オマエの肉を喰ってみてぇ』
「さて、そうカンタンに捕まえられるかな?」
そういう八重の体からも徐々に白い体毛が生えてきた。目が鬼灯色に染まる。
「そのまえに俺がオマエを喰らってしまうかもしれないな」
バリバリっと服が裂け、耳が伸び、体が巨大化する。一瞬後には八重の体は巨大なモンスター<ウサギ>と化していた。
「グルルルルゥっ…」
<ウサギ>が恐ろしい唸り声を上げてジェームスを見下ろす。
『くははっ、やっぱ、そうこなくっちゃなぁ』
ジェームスがにたぁっと笑う。
『こいよ、ウサ公。勝負しようぜぇ』
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