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PC 八重 イートン ニーツ
場所 メイルーン 市長邸
NPC ナスビ・クリエッド・市長ワトスン(クリスティ・ハドソン夫人)
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「この本には、魔族は召喚した者の生気を奪いきったら勝手に帰っていくと書いてあるが…」
「それじゃあ、市長が死んでしまいます!」
「もちろん、それは困る。混ざった血を別けることは出来ないが、あれだけの魂が絡まっているんだ。市長の体には魔族の魂も宿っている」
ページ捲っていたニーツの手が止まる。そこには人間が魔族を召喚させる方法が書いてある。複雑な魔法陣に入手困難なアイテム。こんな面倒な事をしなければ、人は魔族を呼ぶ事が出来ないらしい。
「それを分離させ。帰す」
「帰す?・・・つまり、市長の複数の魂をくっつけている、原因が、魔族の魂だということですか?ジェームスは魔族だと?」
首をかしげたイートンだが、自分で結論を見つける。ニーツは「断定はできない」と短く答えた。
「恐らく、満つる月が魔力の解放の力を持つのと逆に、<ヴェルンの涙>には魔力を抑える力があるのだろう。儀式は、<ヴェルンの涙>を外した状態で、もっとも魔族の魂が活性化される夜に行う。俺が、市長に混ざり合った魂の結合を解く。そして魔界への通り道…ゲートを開き、魔界へ魔族の魂を還すのは・・・」
「イートン、お前がやれ」
「ええぇ!?」
突然の指名にイートンが素っ頓狂な声をあげる。
「なんで僕が!?」
「魂を帰すには、召喚の儀式と逆の順序を踏まなくてはならない。俺たち魔族がこちら側に来るのと、人間が呼び寄せるのは、全然違う。魔法がまるきり使えないわけではないのだろう?」
「でも・・・伯父さんの方が使えるんですよ、ああ見えて」
「イートン」
ニーツはいつになく真面目な顔でイートンを見上げた。
「俺が頼んでいるのはお前だ。分かるな?」
「・・・ニーツ君。・・・分かりました」
思わず心を打たれ、承諾したイートンだが、次に口に乗せた言葉は冷静だった。
「でも、本当は伯父さんに借りを作るのが嫌なんですよね」
「・・・・」
ニーツの返事は無い。
「すまないな、本当ならば私がやるべき事だろうに」
「謝るのは早いぞ、八重。」
二人の様子をナスビを弄びながら黙って見ていた八重が口を開いた。
そんな彼にニーツは皮肉な笑みを浮かべさらに追い討ちをかける。
「なんせ、儀式を行うのは満月の晩なんだからな」
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突然、書斎に現れたイートン達に、市長は何の反応も示さなかった。
どうやって牢屋から抜け出したのか、これから何をするつもりなのか。
ただ、黙って彼らの話に耳を傾けた。
「本当に、私を元に戻せるというのかね」
「僕らを信頼して頂くしかありません」
イートンの真摯な表情を見つめて、市長、ワトソンは直ぐに視線を逸らした。
エドガーが主導権を握ろうと、暴れ出したからだ。
「いいだろう。必要なものは全てこちらで手配しよう。
クリエッド、力になってやれ」
「承知しました」
いつの間にか扉の前で控えていた執事が慇懃に頭を下げた。
肘をかけていた椅子から立ち上がると、市長は何かを思い出したように、
「あぁ」
と声を漏らした。
「「!??」」
それからの市長の行動は、八重とニーツにとって全く不可解なものだった。
ただ、イートンがさっと顔色を変え、クリエッドの白い眉が僅かに跳ねた。
「『奥様』。ご客人が驚いておられます」
「何をいってるんだい!クリエッド。だからこそ、奇麗にしなくちゃいけないのさ」
大きな鏡台の扉を開けた市長は引出しからゴチャゴチャと化粧品を広げ出すと、白
粉を塗り始めた。
((ハドソン夫人!??))
イートンの伯父の言葉を思い出し、二人は納得した。
もちろん、その目の前の光景には、依然納得いかなかったが。
「特に、いい男がいるときにはね」
そう言って、こちらを振り向くと、市長は八重に向かってウインクした。硬直する八重の隣でニーツが笑いを堪えている。
「そこの素敵なお方。紅はどんな色がお好きだい?」
もしやシャツに跡でも残そうというのか。恐ろしい想像に八重は顔を真っ青にして首を振った。
「答えてやらないのか?『そこの素敵なお方』?」
「ニーツ!」
ツボにはまったらしい彼は涙を浮かべて笑っている。
ニーツを叱り付けて、八重は辺りを見回した。いつもならここで彼が助け舟を出してくれるはずなのに。
「・・・イートンは何処に行ったんだ?」
「ナスビもいないな」
「イートンだって!?ふん!そりゃあいなくてせいせいするね」
夫人が鼻息荒く答える。
「アタシはあのボウヤの母親が大キライでね、あの子がこの町を出るとき行ってやったのさ『二度とアタシの前に顔を見せるな』ってね。」
勝手に口紅の色を選ぶ事にした夫人は、茶色がかった赤い紅を塗りたくると、ツッバ、ッパッと音をたてて唇の上の紅を広げ、再び八重に熱い視線を注ぐ。
「どうやら、忘れちゃあいなかったようだね」
八重も夫人の顔など二度と見たくなかった。
PC 八重 イートン ニーツ
場所 メイルーン 市長邸
NPC ナスビ・クリエッド・市長ワトスン(クリスティ・ハドソン夫人)
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「この本には、魔族は召喚した者の生気を奪いきったら勝手に帰っていくと書いてあるが…」
「それじゃあ、市長が死んでしまいます!」
「もちろん、それは困る。混ざった血を別けることは出来ないが、あれだけの魂が絡まっているんだ。市長の体には魔族の魂も宿っている」
ページ捲っていたニーツの手が止まる。そこには人間が魔族を召喚させる方法が書いてある。複雑な魔法陣に入手困難なアイテム。こんな面倒な事をしなければ、人は魔族を呼ぶ事が出来ないらしい。
「それを分離させ。帰す」
「帰す?・・・つまり、市長の複数の魂をくっつけている、原因が、魔族の魂だということですか?ジェームスは魔族だと?」
首をかしげたイートンだが、自分で結論を見つける。ニーツは「断定はできない」と短く答えた。
「恐らく、満つる月が魔力の解放の力を持つのと逆に、<ヴェルンの涙>には魔力を抑える力があるのだろう。儀式は、<ヴェルンの涙>を外した状態で、もっとも魔族の魂が活性化される夜に行う。俺が、市長に混ざり合った魂の結合を解く。そして魔界への通り道…ゲートを開き、魔界へ魔族の魂を還すのは・・・」
「イートン、お前がやれ」
「ええぇ!?」
突然の指名にイートンが素っ頓狂な声をあげる。
「なんで僕が!?」
「魂を帰すには、召喚の儀式と逆の順序を踏まなくてはならない。俺たち魔族がこちら側に来るのと、人間が呼び寄せるのは、全然違う。魔法がまるきり使えないわけではないのだろう?」
「でも・・・伯父さんの方が使えるんですよ、ああ見えて」
「イートン」
ニーツはいつになく真面目な顔でイートンを見上げた。
「俺が頼んでいるのはお前だ。分かるな?」
「・・・ニーツ君。・・・分かりました」
思わず心を打たれ、承諾したイートンだが、次に口に乗せた言葉は冷静だった。
「でも、本当は伯父さんに借りを作るのが嫌なんですよね」
「・・・・」
ニーツの返事は無い。
「すまないな、本当ならば私がやるべき事だろうに」
「謝るのは早いぞ、八重。」
二人の様子をナスビを弄びながら黙って見ていた八重が口を開いた。
そんな彼にニーツは皮肉な笑みを浮かべさらに追い討ちをかける。
「なんせ、儀式を行うのは満月の晩なんだからな」
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突然、書斎に現れたイートン達に、市長は何の反応も示さなかった。
どうやって牢屋から抜け出したのか、これから何をするつもりなのか。
ただ、黙って彼らの話に耳を傾けた。
「本当に、私を元に戻せるというのかね」
「僕らを信頼して頂くしかありません」
イートンの真摯な表情を見つめて、市長、ワトソンは直ぐに視線を逸らした。
エドガーが主導権を握ろうと、暴れ出したからだ。
「いいだろう。必要なものは全てこちらで手配しよう。
クリエッド、力になってやれ」
「承知しました」
いつの間にか扉の前で控えていた執事が慇懃に頭を下げた。
肘をかけていた椅子から立ち上がると、市長は何かを思い出したように、
「あぁ」
と声を漏らした。
「「!??」」
それからの市長の行動は、八重とニーツにとって全く不可解なものだった。
ただ、イートンがさっと顔色を変え、クリエッドの白い眉が僅かに跳ねた。
「『奥様』。ご客人が驚いておられます」
「何をいってるんだい!クリエッド。だからこそ、奇麗にしなくちゃいけないのさ」
大きな鏡台の扉を開けた市長は引出しからゴチャゴチャと化粧品を広げ出すと、白
粉を塗り始めた。
((ハドソン夫人!??))
イートンの伯父の言葉を思い出し、二人は納得した。
もちろん、その目の前の光景には、依然納得いかなかったが。
「特に、いい男がいるときにはね」
そう言って、こちらを振り向くと、市長は八重に向かってウインクした。硬直する八重の隣でニーツが笑いを堪えている。
「そこの素敵なお方。紅はどんな色がお好きだい?」
もしやシャツに跡でも残そうというのか。恐ろしい想像に八重は顔を真っ青にして首を振った。
「答えてやらないのか?『そこの素敵なお方』?」
「ニーツ!」
ツボにはまったらしい彼は涙を浮かべて笑っている。
ニーツを叱り付けて、八重は辺りを見回した。いつもならここで彼が助け舟を出してくれるはずなのに。
「・・・イートンは何処に行ったんだ?」
「ナスビもいないな」
「イートンだって!?ふん!そりゃあいなくてせいせいするね」
夫人が鼻息荒く答える。
「アタシはあのボウヤの母親が大キライでね、あの子がこの町を出るとき行ってやったのさ『二度とアタシの前に顔を見せるな』ってね。」
勝手に口紅の色を選ぶ事にした夫人は、茶色がかった赤い紅を塗りたくると、ツッバ、ッパッと音をたてて唇の上の紅を広げ、再び八重に熱い視線を注ぐ。
「どうやら、忘れちゃあいなかったようだね」
八重も夫人の顔など二度と見たくなかった。
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