忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/03/11 08:01 |
43.ヴェルンの愉快な(?)仲間達/ニーツ(架月)
--------------------------------------------------------
PC  八重 イートン ニーツ
場所  メイルーン 市長邸
NPC ナスビ・クーロン
---------------------------------------------------
「…マスター、ですか」
『左様。ドクター<レン>は、我がマスターであり、ヴェルンを発展せしめた偉大なる人物である。お前ごときに、軽々しく呼ばれる道理はフギャ…!』
「で、そのドクター<レン>なんだが…」
 胸を大きく張って―いるつもりなのだろう―言うナスビを再び踏みつけながら、ニーツが淡々と言葉を続ける。
「コイツがまた…」
『コイツとは何だ!コイツとは!お前などとは格が違う…!』
「はいはい、ナスビちゃん。相手にしてもらえなくて寂しいんですね。…貴方も、満月の夜には凶暴化するのですか?」
 イタチゴッコになりかけた二人の会話を、慌ててイートンが遮る。そのイートンの言葉に、八重は思わず、頭の中で想像してしまった。
―満月の夜、辺りの人間を喰らいながら、暴れ回る二羽の兎の怪物…
(できれば、勘弁して貰いたいな…)
 思わず自分でそう突っ込んでしまうほど悲しい想像を、八重は無理矢理追い払った。それにかぶるように、ナスビが答える。
『否。我輩はそのような事はせぬ。我輩は、我輩の元の姿に戻るのみよ。無論、力もな。
 暴走せぬ、魔族との融合。それこそ、我がマスターの最終目的。我輩は強力すぎてこのような器に封印されることとなったが…
 魔族よ、マスターの偉大さが、解ったか!』
「やはり愚か者だな。そいつは」
 得意満面の口調で言い切ったナスビの言葉を、しかしニーツは冷淡に切り捨てた。
『な…何…!?』
「そもそも、魔族を召還して、自分の力にしようと言う考え方が好かないな。弱い人間が、強さを求めてなんになる?魔族の力を手に入れて、ヴェルンはどうなった?何をした?
 戦争。侵略。そして、最終的には、自ら滅んでいるじゃないか。他力本願な考え方をして、残ったのはお前と、八重や市長のような『化け物』のみではないか」
「化け物は無いんじゃないのか?ニーツ」
「否定出来るのか?」
 呆れて言葉を挟んだ八重だったが、ニーツに即答され、肩を竦めて黙り込んだ。
「まあ、そう言う事じゃな。不相応な力を求めるもんじゃない、と言うことだ。おおと、其処な木兎。こやつに手を出そうと考えない事じゃ。倍返しでは済まされんぞ?」
 クーロンの言葉に、ニーツに対して臨戦態勢に入っていたナスビは、グッと力の開放を押しとどめた。
「コイツはワシの孫娘みたいなものでな。性格はよおく解っておる。あまり怒らせると、この街が吹き飛ぶぞ」
「孫…”娘”?」
「言葉のあやだ。気にするな。クーロン、あまりふざけたこと言っていると、本当にこの街を吹き飛ばすぞ?」
「ああぁぁ!!それは止めて下さいぃぃぃ!!!」
 ニーツとクーロンのお茶目な言い合いに、涙目でイートンが声を上げる。
 だが、クーロンはしれっと言い放った。
「ワシは別に構わんがな」
「僕は困りますぅぅぅ…!!」
「まあ、冗談はこれくらいにして…」
「冗談なんですかぁぁ!!??」
「当たり前だろう。さて、話がずれた。本題に戻すぞ」
 あくまで冷静にそう切り返すニーツに、イートンは思わず脱力した。
(うぅぅ…魔族って、解らない…)
 思い悩むイートンを余所に、話はどんどんと進んでいく。
「先程もちらりと言ったとは思うが、市長は、ドクター<レン>の失敗作である可能性が高い」
「…そうはいっても、ニーツ。そのドクター<レン>は、千年も前の人物なのだろう?」
「ああ、そうだ。だが、八重。もしその召還術で融合した魔族が、その融合させられた人間の”血”に欠片を自らの”血”を残していたとしたら?」
「……」
「市長の血脈の中には、確実に魔族の血脈も宿っている。魔族は融合したまま、代々伝えられてきた。
 最も、それが具現するのは、何代…いや、何百代に一人なんだろうけどな。例え親がまともな人間であろうとも、その血の中には、確実に狂気が潜んでいるんだ」
 ニーツの説明に、八重は小さく息をついた。
 ずっと探し続けていた答えが、ようやく姿を見せ始めたのだ。
「市長の中では、いくつもの魂が溶け合っているんだろう」
「…私も、そうなんだろうか…」
「多分な。ティターニアが言っていた、千年前のお前…それは多分、お前の先祖か…」
「でも、彼女は間違いなく八重さん本人だといっていましたよ?」
 精霊の森。
 ついこの前のことなのに、遠い昔の記憶を探るように、イートンは王妃ティターニアの言葉を口にする。
 だがニーツは、軽く肩を竦めただけだった。
「融合した魔族によっては、千年程生きることも可能かもしれないからな。ひょっとしたら、ティターニアの言った通り、八重自身だったのかもしれない。まあ、それは八重が記憶を取り戻さない限り、解らないことだ。だが市長は、この街で生まれ、この街で育った。過去を知っているものがいる。そうだろう?イートン」
「はい…」
「だったら、そう考えるのが普通だろうな…」
 そこで、ニーツは小さく息を吐いて、言葉を切った。
 数瞬の沈黙。
 それを破るように、イートンが口を開く。
「それで…」
「ああ。それで、市長の中の魔族、その融合を解く方法なんだが…」
 イートンの問いかけを含んだ言葉に、ニーツは、本を捲った。
PR

2007/02/17 23:34 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<42.召喚術とドクター「レン」(後編)/八重(果南) | HOME | 44.通りゃんせ/イートン(千鳥)>>
忍者ブログ[PR]