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PC イートン ニーツ 八重
場所 メイルーン市長邸地下牢
NPC (ナスビ) クーロン
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それは分厚い、古い本だった。表紙にはなにやら複雑そうな魔方陣の図が描かれている。
ニーツは、黙ってその本のページを繰った。
「うわあ…」
中を覗いたイートンは、思わず声を上げた。中は、小さい文字でびっしりと説明が書き込まれている。時々図も描いてあるが、それは魔方陣の図や、なかには、魔族が人を食らう図など、恐ろしい図も描かれてあった。
「召喚魔法は、直接魔族と対峙して交渉する儀式だからな。最悪の場合、呼び出した魔族に喰われる危険をも伴っている」
「そうなんですか…?」
「しかし、世の中には変な人間がいてな、その行為を<悪用>したヤツがいる」
「<悪用>って…、どういうことです?」
「…あった、このページだ」
ほの暗い図書館で、人間が魔族をどのように使うのか、ふと気になって、気まぐれに開いた本、<召喚術体系>。その中で、ふと、自分の興味を引いたページが、こんな場所、こんなところで役に立つとは、ニーツは思いもしなかった。ニーツは、声に出して読み始める。
「魔族を召喚した際と、魔族との交渉に失敗した際、召喚した人間には以下のようなことが起こりうる危険性がある。一つ、その魔族に喰われる。二つ、魔界に引きずり込まれる。三つ、その魔族の全部、あるいは一部が召喚した人間の体に融合する。…ここは基本だな。ここじゃなく、このもっと下、…ここだ」
ニーツの言葉に、イートンと八重の体に緊張が走る。
「魔族が人間に融合した場合。その人間は、魔族と融合した分だけ、魔の力に支配される。主な特徴として、凶暴化、異形の姿に変身することなどがある。殊に、満月の夜は魔の力が増幅するため、どんなに軽症のものでも、そのものの凶暴化や、異形化は避けられない定めとなろう」
「これは…っ、<ルナシー>の症状と同じじゃないか!」
八重が、そう言って、いきおいよく身を乗り出した。
「凶暴化…、異形化…、<ルナシー>とは、<魔族と融合した人間>のことをいうのか!?そうなのか!ニーツ!」
「落ち着け、八重とやら」
そう言って八重をたしなめたのは、他でもない、クーロンだった。
「お前は、早合点しすぎる傾向があるようだな。情報を知りたいなら、もっと慎重に構えたらどうだ」
「…っ」
…十年だぞ、十年何も掴めなかったんだ。
その言葉が喉まで出掛かった。が、そんなことを他人にぶつけた所で何になるというのだろう。何にせよ、クーロンに戒められたことは的を得ている。
「…先があるんだろう?ニーツ、続けてくれ」
はぁ…、と息をつくと八重は肩を落とし、床に座った。ニーツは、そんな八重にじぃっとした視線を向けた後、無言で先を読み始めた。
「…普通、これは厄災であり、一種の病としてみなされる。だが、中には、魔族と融合することにより、その人間が強力な魔力をもち、強靭な体になるというところに着眼し、積極的に魔族と人間との融合を研究した、極めて稀な人物もいる」
「極めて稀な人物…?」
不思議そうに、そう呟いたイートンは、突然はっとした。
「もしかして…、もしかして、そういうことなんですか…!ニーツ君…?」
「イートン、何がだ?」
焦る八重と、身を乗り出すイートンをニーツは目で静止すると、読み始めた。「その人物は、独自の研究の結果、魔族と人間を融合することで、新たな生物を作り出すことに成功した。その人物の名は、ドクター<レン>…」
「ドクター<レン>…?」
「そうだろう?ナスビ?」
ニーツは、そう言ってナスビをじろっと睨んだ。
「そいつがお前の生みの親の名だな?」
『…軽々しく、その名を口にするな』
ナスビはニーツを横目で睨みつけた。
『我がマスター、ドクター<レン>を侮辱するものは許さんぞ』
PC イートン ニーツ 八重
場所 メイルーン市長邸地下牢
NPC (ナスビ) クーロン
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それは分厚い、古い本だった。表紙にはなにやら複雑そうな魔方陣の図が描かれている。
ニーツは、黙ってその本のページを繰った。
「うわあ…」
中を覗いたイートンは、思わず声を上げた。中は、小さい文字でびっしりと説明が書き込まれている。時々図も描いてあるが、それは魔方陣の図や、なかには、魔族が人を食らう図など、恐ろしい図も描かれてあった。
「召喚魔法は、直接魔族と対峙して交渉する儀式だからな。最悪の場合、呼び出した魔族に喰われる危険をも伴っている」
「そうなんですか…?」
「しかし、世の中には変な人間がいてな、その行為を<悪用>したヤツがいる」
「<悪用>って…、どういうことです?」
「…あった、このページだ」
ほの暗い図書館で、人間が魔族をどのように使うのか、ふと気になって、気まぐれに開いた本、<召喚術体系>。その中で、ふと、自分の興味を引いたページが、こんな場所、こんなところで役に立つとは、ニーツは思いもしなかった。ニーツは、声に出して読み始める。
「魔族を召喚した際と、魔族との交渉に失敗した際、召喚した人間には以下のようなことが起こりうる危険性がある。一つ、その魔族に喰われる。二つ、魔界に引きずり込まれる。三つ、その魔族の全部、あるいは一部が召喚した人間の体に融合する。…ここは基本だな。ここじゃなく、このもっと下、…ここだ」
ニーツの言葉に、イートンと八重の体に緊張が走る。
「魔族が人間に融合した場合。その人間は、魔族と融合した分だけ、魔の力に支配される。主な特徴として、凶暴化、異形の姿に変身することなどがある。殊に、満月の夜は魔の力が増幅するため、どんなに軽症のものでも、そのものの凶暴化や、異形化は避けられない定めとなろう」
「これは…っ、<ルナシー>の症状と同じじゃないか!」
八重が、そう言って、いきおいよく身を乗り出した。
「凶暴化…、異形化…、<ルナシー>とは、<魔族と融合した人間>のことをいうのか!?そうなのか!ニーツ!」
「落ち着け、八重とやら」
そう言って八重をたしなめたのは、他でもない、クーロンだった。
「お前は、早合点しすぎる傾向があるようだな。情報を知りたいなら、もっと慎重に構えたらどうだ」
「…っ」
…十年だぞ、十年何も掴めなかったんだ。
その言葉が喉まで出掛かった。が、そんなことを他人にぶつけた所で何になるというのだろう。何にせよ、クーロンに戒められたことは的を得ている。
「…先があるんだろう?ニーツ、続けてくれ」
はぁ…、と息をつくと八重は肩を落とし、床に座った。ニーツは、そんな八重にじぃっとした視線を向けた後、無言で先を読み始めた。
「…普通、これは厄災であり、一種の病としてみなされる。だが、中には、魔族と融合することにより、その人間が強力な魔力をもち、強靭な体になるというところに着眼し、積極的に魔族と人間との融合を研究した、極めて稀な人物もいる」
「極めて稀な人物…?」
不思議そうに、そう呟いたイートンは、突然はっとした。
「もしかして…、もしかして、そういうことなんですか…!ニーツ君…?」
「イートン、何がだ?」
焦る八重と、身を乗り出すイートンをニーツは目で静止すると、読み始めた。「その人物は、独自の研究の結果、魔族と人間を融合することで、新たな生物を作り出すことに成功した。その人物の名は、ドクター<レン>…」
「ドクター<レン>…?」
「そうだろう?ナスビ?」
ニーツは、そう言ってナスビをじろっと睨んだ。
「そいつがお前の生みの親の名だな?」
『…軽々しく、その名を口にするな』
ナスビはニーツを横目で睨みつけた。
『我がマスター、ドクター<レン>を侮辱するものは許さんぞ』
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