--------------------------------------------------------
PC イートン ニーツ 八重
場所 メイルーン市長邸地下牢
NPC (ナスビ) クーロン
---------------------------------------------------
「お前はいつもいつもいつも本の扱いが荒すぎるんじゃー!!」
床にたたきつけた本から飛び出してくるなり、クーロンは怒鳴り声を張り上げた。
それを見たイートンは腰を抜かし、…その前に、耳を塞ぎ…、驚いて、体長十センチほどのそのホログラフィを見つめた。
鎖のついた丸い眼鏡の奥の瞳は、鋭くきらりと光っている。そしてその黒髪から飛び出している耳は、ニーツのそれと同じようにぴんと尖っていた。
「もしかして…、魔族、ですか?」
「ああ、お前はこいつを見るのは初めてだったな」
ニーツがふんと鼻を鳴らしそうな顔で言う。
「こいつは、魔界図書館の司書の一人だ。通称クーロン」
「魔界図書館…」
イートンはごくりと唾を飲み込んだ。ニーツの話から、ある程度察しはついていたが、本物の魔界図書館司書に会うのは初めてだ。その前に、ついこの間まで、イートンは魔界に図書館が存在するということも知らなかった。
(そういえば、この姿にも、どことなく威厳が感じられるような…)
「ニーツ!!」
しかし、その思いはクーロンががみがみどなる声であっさりとかき消された。
「お前はどうしてそう、本の扱いが荒いんじゃ!!今日こそ、今日こそ、反省作文を書いてもらうぞ!!」
「あいかわらず煩いジジイだな。こうやるのがお前を呼ぶ一番手っ取り早い方法なんだよ」
「そんなことをしないで<召喚術>!召喚魔法を使え!!お前なら簡単に出来るじゃろうに!!」
「何言ってる。ここには召喚術をするだけの道具がないだろう。第一、そんなことをしたら、ホログラフィじゃなくお前本人が出てきて厄介だ」
「きいーっ!!」
ホログラフィのクーロンは地団太を踏む。
「全く!このワシが本体なら!お前など、正座三時間の作文十枚じゃ!!」
「ふん、複製の本のためにそんなことをする義理はないな」
「あのう…、ニーツ君」
イートンがおずおずと質問する。
「その…、<召喚術>って、一体何です?」
「何だ、知らないのか、イートン?」
ニーツが意外そうな顔をして言う。
「お前は結構人間の中では博識なほうだと思ってはいたが」
「すいません…、僕、魔術関係の知識はさっぱりで…、古代史なんかは得意なんですけどね」
「私も知らないな」
クーロンが現れて以来、黙っていた八重も口を開いた。
「私も、魔力を持たないせいか、どうも魔術関係にはうとくてね。その、<召喚術>とはどういうものなんだ?」
「まあ、カンタンに言えば、この世界に魔族を呼び出す術が<召喚術>だ」
ニーツが言う。
「俺がこれから借りようと思っているのはその<召喚術>についての本だ。クーロン、たしか、<召喚術体系>という本が図書館にあったはずだろう?それを借りたい」
「ほぉほぉほぉ、本を乱暴に扱ったあげく、アンタはまーた本が借りたいと?」
クーロンがあきらかに小バカにしたような顔でニーツを見る。
「それでワシが素直にはいどうぞ、とでも言って貸すと、アンタは思ってるのかえ?」
「勘違いするな。別に俺が借りるわけじゃない」
ニーツは至極冷静に言う。
「本を借りるのは、八重だ」
いきなりニーツの口から自分の名が出てきたことに驚いて、八重は思わずニーツの顔を見つめた。
「ニーツ、どういうことだ?」
「お前も聞いただろう。俺はこれ以上このジジイから本を貸してもらえそうもない。だから、お前がこいつから本を借りるんだ。それなら文句ないだろう、クーロン?」
「ふん、こじつけだな」
クーロンはふんっと鼻を鳴らす。
「大体、お前、ただの人間じゃろう?ただの人間に本を貸すのは好かんな」
「ただの人間というわけでもないな」
ニーツが意味ありげに笑って言う。
「そいつは<ルナシー>という人間でな。月から呪いを受けているんだ」
その言葉にクーロンの片眉がぴくっと上がる。
「…ほぉ、<ルナシー>ねぇ」
クーロンは、丸眼鏡の奥から、値踏みするように八重の全身を眺め回す。
「月に呪いを受けた人間か…。噂には聞いていたが、本物を見るのは初めてじゃな。しかし、八重といったな。お前が<ルナシー>であるという証拠はあるのか?」
「…在ったらどうするんだ?」
「そうじゃな…、今回だけは特別に本を貸してやっても良いぞ。お前が<ルナシー>なら、その本が必要な理由も分かる気がするからのう…」
「それは、どういう意味だ?」
しかし、クーロンはそれには答えず、黒い瞳で八重を見つめた。
「お前、証拠を見せるのか?見せんのか?」
「…」
無言で八重は握った拳に力を圧縮させた。紫色の光が拳を包む。
「<ルナ>」
どごおおおんという音と共に、拳を突き立てられた牢の床は、拳大の穴が開いた。
「…<ルナシー>の力、<ルナ>だ。それとも私が変身する姿を見たいか?」
「いや、これで結構」
クーロンはすうっと手を前に出した。
「約束通り、本を貸してやろう」
PC イートン ニーツ 八重
場所 メイルーン市長邸地下牢
NPC (ナスビ) クーロン
---------------------------------------------------
「お前はいつもいつもいつも本の扱いが荒すぎるんじゃー!!」
床にたたきつけた本から飛び出してくるなり、クーロンは怒鳴り声を張り上げた。
それを見たイートンは腰を抜かし、…その前に、耳を塞ぎ…、驚いて、体長十センチほどのそのホログラフィを見つめた。
鎖のついた丸い眼鏡の奥の瞳は、鋭くきらりと光っている。そしてその黒髪から飛び出している耳は、ニーツのそれと同じようにぴんと尖っていた。
「もしかして…、魔族、ですか?」
「ああ、お前はこいつを見るのは初めてだったな」
ニーツがふんと鼻を鳴らしそうな顔で言う。
「こいつは、魔界図書館の司書の一人だ。通称クーロン」
「魔界図書館…」
イートンはごくりと唾を飲み込んだ。ニーツの話から、ある程度察しはついていたが、本物の魔界図書館司書に会うのは初めてだ。その前に、ついこの間まで、イートンは魔界に図書館が存在するということも知らなかった。
(そういえば、この姿にも、どことなく威厳が感じられるような…)
「ニーツ!!」
しかし、その思いはクーロンががみがみどなる声であっさりとかき消された。
「お前はどうしてそう、本の扱いが荒いんじゃ!!今日こそ、今日こそ、反省作文を書いてもらうぞ!!」
「あいかわらず煩いジジイだな。こうやるのがお前を呼ぶ一番手っ取り早い方法なんだよ」
「そんなことをしないで<召喚術>!召喚魔法を使え!!お前なら簡単に出来るじゃろうに!!」
「何言ってる。ここには召喚術をするだけの道具がないだろう。第一、そんなことをしたら、ホログラフィじゃなくお前本人が出てきて厄介だ」
「きいーっ!!」
ホログラフィのクーロンは地団太を踏む。
「全く!このワシが本体なら!お前など、正座三時間の作文十枚じゃ!!」
「ふん、複製の本のためにそんなことをする義理はないな」
「あのう…、ニーツ君」
イートンがおずおずと質問する。
「その…、<召喚術>って、一体何です?」
「何だ、知らないのか、イートン?」
ニーツが意外そうな顔をして言う。
「お前は結構人間の中では博識なほうだと思ってはいたが」
「すいません…、僕、魔術関係の知識はさっぱりで…、古代史なんかは得意なんですけどね」
「私も知らないな」
クーロンが現れて以来、黙っていた八重も口を開いた。
「私も、魔力を持たないせいか、どうも魔術関係にはうとくてね。その、<召喚術>とはどういうものなんだ?」
「まあ、カンタンに言えば、この世界に魔族を呼び出す術が<召喚術>だ」
ニーツが言う。
「俺がこれから借りようと思っているのはその<召喚術>についての本だ。クーロン、たしか、<召喚術体系>という本が図書館にあったはずだろう?それを借りたい」
「ほぉほぉほぉ、本を乱暴に扱ったあげく、アンタはまーた本が借りたいと?」
クーロンがあきらかに小バカにしたような顔でニーツを見る。
「それでワシが素直にはいどうぞ、とでも言って貸すと、アンタは思ってるのかえ?」
「勘違いするな。別に俺が借りるわけじゃない」
ニーツは至極冷静に言う。
「本を借りるのは、八重だ」
いきなりニーツの口から自分の名が出てきたことに驚いて、八重は思わずニーツの顔を見つめた。
「ニーツ、どういうことだ?」
「お前も聞いただろう。俺はこれ以上このジジイから本を貸してもらえそうもない。だから、お前がこいつから本を借りるんだ。それなら文句ないだろう、クーロン?」
「ふん、こじつけだな」
クーロンはふんっと鼻を鳴らす。
「大体、お前、ただの人間じゃろう?ただの人間に本を貸すのは好かんな」
「ただの人間というわけでもないな」
ニーツが意味ありげに笑って言う。
「そいつは<ルナシー>という人間でな。月から呪いを受けているんだ」
その言葉にクーロンの片眉がぴくっと上がる。
「…ほぉ、<ルナシー>ねぇ」
クーロンは、丸眼鏡の奥から、値踏みするように八重の全身を眺め回す。
「月に呪いを受けた人間か…。噂には聞いていたが、本物を見るのは初めてじゃな。しかし、八重といったな。お前が<ルナシー>であるという証拠はあるのか?」
「…在ったらどうするんだ?」
「そうじゃな…、今回だけは特別に本を貸してやっても良いぞ。お前が<ルナシー>なら、その本が必要な理由も分かる気がするからのう…」
「それは、どういう意味だ?」
しかし、クーロンはそれには答えず、黒い瞳で八重を見つめた。
「お前、証拠を見せるのか?見せんのか?」
「…」
無言で八重は握った拳に力を圧縮させた。紫色の光が拳を包む。
「<ルナ>」
どごおおおんという音と共に、拳を突き立てられた牢の床は、拳大の穴が開いた。
「…<ルナシー>の力、<ルナ>だ。それとも私が変身する姿を見たいか?」
「いや、これで結構」
クーロンはすうっと手を前に出した。
「約束通り、本を貸してやろう」
PR
トラックバック
トラックバックURL: