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PC 八重・ニーツ・(イートン)
場所 メイルーン 市長邸
NPC ワトスン=ベーカーウォール(エドガー)・ナスビ・執事クリエッド
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ドゴオオオン!!
盛大な音を立てて壁は粉々に砕け散った。
「おい、大丈夫か、ナスビ」
八重は瓦礫の中にナスビの姿を探したが、何処にもいない。
「ナスビ!」
焦って大声を上げた八重は、廊下の端を見てため息をついた。
たぶん、爆風で廊下の端まで転がったであろうナスビが壁際にころんと転がっている。
「・・・だからもう少し離れろと言ったんだ」
『煩い!早く起こさんかッ!!』
八重に抱きかかえられても、ナスビはまだ不満そうに足をばたばたさせている。
『オマエのせいでまた転がってしまったではないか!もっと気を使え!!』
「全く、助けてやったのにその言い方はないんじゃないか?かわいげのないヤツだな」
『煩い!つべこべ言わずさっさと市長の元へ急げ!』
「それもそうだが、お前、<ヴェルンの涙>は探さなくていいのか?」
『その必要はない』
八重の言葉に、ナスビは自信たっぷりに言った。
『<ヴェルンの涙>は市長が持っている』
「これは俺たちにとってとても大切なものなんだ。だから、仮に君が本当にかわいい女の子だったとしても、俺は渡さなかっただろうな」
そう言って、エドガーは胸元から金色の鎖を引き出した。鎖には、涙形をした、みずみずしい光を放つ紫色の宝石がついている。
「まるでアメジストみたいだ・・・。これが、<ヴェルンの涙>?」
「そのとおりだよ、イートン君」
はっとしてイートンは市長の顔を見た。市長の顔は、先ほどとは違い、年相応の憂いとしわを湛えている。
「ワト・・スン・・・市長・・・?」
「すまないね、イートン君。君にはいつも迷惑のかけどおしだ」
そう言って、<市長>は寂しそうな笑みをイートンに向けた。
「特に、<エドガー>の顔など、君は二度と見たくないだろうに。私が、<彼ら>を抑えられなかったばっかりに、本当にすまなかった」
「いえ・・・そんな・・・」
先ほどまで<エドガー>のことで怒っていたにもかかわらず、イートンは思わず謝ってしまう。
「そして君も、<クリスティ>と<エドガー>のせいで迷惑をかけてしまい、すまなかった。・・・謝った所で許されることではないが、許して欲しい」
今度はニーツのほうを向いて、市長は深々と頭を下げる。
「それはそうと、お前にとって、どうして<ヴェルンの涙>がそんなに大切なんだ。エドガーの話から察するに、どうやら、ただの宝石として、大切にしているわけではなさそうだが」
まだ先ほどの<エドガー>と<クリスティ>を引きずっているらしく、ニーツがむっとした声で尋ねる。
「あのっ・・・!ニーツ君!いくらなんでも市長に<お前>は・・・・」
「いいんだ、イートン君」
焦って言うイートンを市長が静止する。
「君たちに迷惑をかけどおしの私を、今更敬ってもらおうとは思わないよ。・・・そうだな、そのことを話すことが今の私に出来る精一杯の償いだろう。分かった、正直に答えよう」
そう言って市長は胸元の宝石を、憂いのこもった表情で静かに擦った。
「これは、私にとっての<鎮静剤>なのだよ」
「鎮静剤・・・?」
イートンが不思議そうに市長を見つめる。
「それは・・・、どういう意味ですか?」
「このところ、この街が少し平和になったことに気づいたかね?」
「平和・・・、僕たちが来たときは別に、治安も前と何も変わっていないように感じましたが」
「<月夜の野犬>が現れなくなったんだよ」
その言葉に、イートンは戦慄を覚えた。
「それって・・・。そういう意味・・なんですか・・・?」
「どういう意味なんだ、イートン?」
ニーツがむっとして尋ねる。
「俺にはワケがさっぱりわからないんだが」
「<月夜の野犬>は、本名を<ジェームズ>という、・・・満月の夜に何人もの人間を殺す凶悪な殺人鬼だ。・・・そして、私の四人目の人格だよ」
市長のその言葉に、ニーツの頭の中にイートンの伯父の言葉が蘇った。
・・ジェームズは、人を殺すことをなんとも思っていない殺人快楽主義者なんだ・・。
「つまり、要はその宝石で、<ジェームズ>を抑えられるっていうのか?」
「そうだ。満月の夜、決まって私は<ジェームズ>になっていたものだった。それが、この宝石を身に着けるようになってからというもの、満月の晩に、私は気が狂わなくなったのだ。・・・最も、他の人格は未だ抑えられないがね。しかし、それでも<ジェームズ>にならずにすむということで、私は、どれだけ救われたことか・・・」
『いたぞ!市長だ!』
市長の話は、突如聞こえてきたその大声で遮られた。
「ナスビ、そんな大声で叫ばなくとも分かるんだが」
そう言って、ナスビを抱いた八重がドアの向こうに現れた。
「八重さん!」
イートンが嬉しそうに叫ぶ。
「よかった・・・、ナスビちゃんも、無事だったんですねっ」
『あーっ!あれだ!<ヴェルンの涙>!!』
ぴょんっと、ナスビは八重の腕から飛び降りた。そして市長の足元にかじりつく。
『返せッ!我輩にそれを返せッ!!』
「・・・この生き物は何だね?」
市長が苦笑してイートンに尋ねる。イートンも、苦笑して答えた。
「えーっと・・・、自称、<ヴェルンの守護霊>だそうです・・・」
『誰が自称だ!我輩はヴェルンの守護霊なり!それは我輩にとって大切なものだ!我輩に返してもらおう!』
そう言って、ナスビはぴょんぴょんと市長の周りを飛び跳ねる。市長はそれを不思議そうに見つめると言った。
「そういえば、君は・・・、たしか、ヴェルンの遺跡調査をしたとき、宝石と共に出てきた木彫りのウサギ人形だね?まさか君に意思があるとは知らず、ゴミ置き場に捨ててしまったが・・・」
『なぬ!木彫りのウサギ人形とは失礼な!我輩はヴェルンの守護霊であるぞ!!さあ、早くそれを返せ!』
「・・・悪いが、そればかりは出来ない相談だ」
市長は優しいが、同時にとても寂しそうに笑った。
「クリエッド」
いつの間にか、背後のドアのところには執事のクリエッドが立っていた。市長は穏やかに告げる。
「君たちがどうしてもこの宝石を欲しがるのなら、すまないが・・・、私はそれを阻止しなければならない」
クリエッドの手には拳銃が握られていた。それはぴったりと八重の脳天に突きつけられている。市長は静かに告げた。
「クリエッド、この人達を地下牢へご案内しなさい」
PC 八重・ニーツ・(イートン)
場所 メイルーン 市長邸
NPC ワトスン=ベーカーウォール(エドガー)・ナスビ・執事クリエッド
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ドゴオオオン!!
盛大な音を立てて壁は粉々に砕け散った。
「おい、大丈夫か、ナスビ」
八重は瓦礫の中にナスビの姿を探したが、何処にもいない。
「ナスビ!」
焦って大声を上げた八重は、廊下の端を見てため息をついた。
たぶん、爆風で廊下の端まで転がったであろうナスビが壁際にころんと転がっている。
「・・・だからもう少し離れろと言ったんだ」
『煩い!早く起こさんかッ!!』
八重に抱きかかえられても、ナスビはまだ不満そうに足をばたばたさせている。
『オマエのせいでまた転がってしまったではないか!もっと気を使え!!』
「全く、助けてやったのにその言い方はないんじゃないか?かわいげのないヤツだな」
『煩い!つべこべ言わずさっさと市長の元へ急げ!』
「それもそうだが、お前、<ヴェルンの涙>は探さなくていいのか?」
『その必要はない』
八重の言葉に、ナスビは自信たっぷりに言った。
『<ヴェルンの涙>は市長が持っている』
「これは俺たちにとってとても大切なものなんだ。だから、仮に君が本当にかわいい女の子だったとしても、俺は渡さなかっただろうな」
そう言って、エドガーは胸元から金色の鎖を引き出した。鎖には、涙形をした、みずみずしい光を放つ紫色の宝石がついている。
「まるでアメジストみたいだ・・・。これが、<ヴェルンの涙>?」
「そのとおりだよ、イートン君」
はっとしてイートンは市長の顔を見た。市長の顔は、先ほどとは違い、年相応の憂いとしわを湛えている。
「ワト・・スン・・・市長・・・?」
「すまないね、イートン君。君にはいつも迷惑のかけどおしだ」
そう言って、<市長>は寂しそうな笑みをイートンに向けた。
「特に、<エドガー>の顔など、君は二度と見たくないだろうに。私が、<彼ら>を抑えられなかったばっかりに、本当にすまなかった」
「いえ・・・そんな・・・」
先ほどまで<エドガー>のことで怒っていたにもかかわらず、イートンは思わず謝ってしまう。
「そして君も、<クリスティ>と<エドガー>のせいで迷惑をかけてしまい、すまなかった。・・・謝った所で許されることではないが、許して欲しい」
今度はニーツのほうを向いて、市長は深々と頭を下げる。
「それはそうと、お前にとって、どうして<ヴェルンの涙>がそんなに大切なんだ。エドガーの話から察するに、どうやら、ただの宝石として、大切にしているわけではなさそうだが」
まだ先ほどの<エドガー>と<クリスティ>を引きずっているらしく、ニーツがむっとした声で尋ねる。
「あのっ・・・!ニーツ君!いくらなんでも市長に<お前>は・・・・」
「いいんだ、イートン君」
焦って言うイートンを市長が静止する。
「君たちに迷惑をかけどおしの私を、今更敬ってもらおうとは思わないよ。・・・そうだな、そのことを話すことが今の私に出来る精一杯の償いだろう。分かった、正直に答えよう」
そう言って市長は胸元の宝石を、憂いのこもった表情で静かに擦った。
「これは、私にとっての<鎮静剤>なのだよ」
「鎮静剤・・・?」
イートンが不思議そうに市長を見つめる。
「それは・・・、どういう意味ですか?」
「このところ、この街が少し平和になったことに気づいたかね?」
「平和・・・、僕たちが来たときは別に、治安も前と何も変わっていないように感じましたが」
「<月夜の野犬>が現れなくなったんだよ」
その言葉に、イートンは戦慄を覚えた。
「それって・・・。そういう意味・・なんですか・・・?」
「どういう意味なんだ、イートン?」
ニーツがむっとして尋ねる。
「俺にはワケがさっぱりわからないんだが」
「<月夜の野犬>は、本名を<ジェームズ>という、・・・満月の夜に何人もの人間を殺す凶悪な殺人鬼だ。・・・そして、私の四人目の人格だよ」
市長のその言葉に、ニーツの頭の中にイートンの伯父の言葉が蘇った。
・・ジェームズは、人を殺すことをなんとも思っていない殺人快楽主義者なんだ・・。
「つまり、要はその宝石で、<ジェームズ>を抑えられるっていうのか?」
「そうだ。満月の夜、決まって私は<ジェームズ>になっていたものだった。それが、この宝石を身に着けるようになってからというもの、満月の晩に、私は気が狂わなくなったのだ。・・・最も、他の人格は未だ抑えられないがね。しかし、それでも<ジェームズ>にならずにすむということで、私は、どれだけ救われたことか・・・」
『いたぞ!市長だ!』
市長の話は、突如聞こえてきたその大声で遮られた。
「ナスビ、そんな大声で叫ばなくとも分かるんだが」
そう言って、ナスビを抱いた八重がドアの向こうに現れた。
「八重さん!」
イートンが嬉しそうに叫ぶ。
「よかった・・・、ナスビちゃんも、無事だったんですねっ」
『あーっ!あれだ!<ヴェルンの涙>!!』
ぴょんっと、ナスビは八重の腕から飛び降りた。そして市長の足元にかじりつく。
『返せッ!我輩にそれを返せッ!!』
「・・・この生き物は何だね?」
市長が苦笑してイートンに尋ねる。イートンも、苦笑して答えた。
「えーっと・・・、自称、<ヴェルンの守護霊>だそうです・・・」
『誰が自称だ!我輩はヴェルンの守護霊なり!それは我輩にとって大切なものだ!我輩に返してもらおう!』
そう言って、ナスビはぴょんぴょんと市長の周りを飛び跳ねる。市長はそれを不思議そうに見つめると言った。
「そういえば、君は・・・、たしか、ヴェルンの遺跡調査をしたとき、宝石と共に出てきた木彫りのウサギ人形だね?まさか君に意思があるとは知らず、ゴミ置き場に捨ててしまったが・・・」
『なぬ!木彫りのウサギ人形とは失礼な!我輩はヴェルンの守護霊であるぞ!!さあ、早くそれを返せ!』
「・・・悪いが、そればかりは出来ない相談だ」
市長は優しいが、同時にとても寂しそうに笑った。
「クリエッド」
いつの間にか、背後のドアのところには執事のクリエッドが立っていた。市長は穏やかに告げる。
「君たちがどうしてもこの宝石を欲しがるのなら、すまないが・・・、私はそれを阻止しなければならない」
クリエッドの手には拳銃が握られていた。それはぴったりと八重の脳天に突きつけられている。市長は静かに告げた。
「クリエッド、この人達を地下牢へご案内しなさい」
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