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2025/03/11 05:21 |
37.もっと強固に頑丈に/イートン(千鳥)
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PC  八重 ニーツ イートン
場所  メイルーン
NPC 木兎ナスビ 伯父 執事
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『コラーッ。何をぼけっとしておるのだ!!』
 八重の荷物から転がり落ちた、『ソレ』は、着地に失敗し、長い廊下を転がっていった。

 ゴロゴロゴロゴ。

 トラップがその軽い体に反応することは無く、先ほど落ちてきた瓦礫の間に挟まって止まる。
「ナスビちゃん!」
 慌てて近寄ろうとしたイートンの襟を掴むと、八重が前に出た。
「一度通った道とはいえ、迂闊に動くのは危険だ。慎重に行こう」
 ゆっくりと、近寄る二人に、ナスビがジタバタと暴れだす。
『我輩の心配などいらぬ!』
「大丈夫ですよ、ちゃんと取ってあげますから」
 手を伸ばしたイートンから逃れるように、ピョン!とナスビが跳ねた。今度はしっかりと、その4本の足が地面に着く。紅玉の埋め込まれた瞳が、何かを感じ取り、キラリと光った。
『ほら見たことか。お前たちがグズグズしておるうちに、アヤツが市長を見つけたようだぞ!』
「ニーツ君ですか?」
『随分と散らかった部屋の・・・大きな箱の中に市長は隠れておったようだな』
「見えるのか!?」
 天井を見上げながら答えるナスビに、八重が驚いてたずねる。
『【ヴェルンの涙】が近い。我輩の力もそれと共に高まる』
「・・・散らかった部屋?」
 昔の記憶を辿るように、イートンは顎に手を当てた。彼の背中を押しながら、八重は多少興奮気味で足を速めた。
「私たちがそれを取り戻したら、『ルナシー』について話してくれるんだな?」
『シツコイぞ!我輩に二言は無いと・・・』
「――――!?」

 その途端、二人と一匹の頭上で、天井が唸りをあげた。そのまま一気に落下する。鈍い音と共に砂埃が広がり、彼らが歩いていた所は新たな行き止まりになった。

「大丈夫か?イートン」
「な、何とか・・・」

 ゲホゲホと咳き込みながら答えたイートンは、その瞬間、何かが足りないことに気が付く。
「ナスビちゃんがいない!?まさか、ペッタンコに!?」
『誰がペッタンコだ!!』

 遠くでナスビの声が聞こえる。どうやら落とされた壁の、反対側に逃げていったらしい。そしてナスビは続ける。

『そんなことより、あの魔族が捕まりおった!』
「捕まる?」
『市長の顔つきが変わったのだ。あれは恐らく、お前たちが標的にしておった・・・』

「エドガーッ!?」

 まるで、親の敵の名でも呼ぶように、イートンの顔が厳しくなる。立ち上がると、くるりと向きを変えた。
「イートン?」
「僕はニーツ君の所に行ってきます!!多分クリスティの部屋、僕らが分かれた道をひたすら右です。八重さんはナスビちゃんをお願いします」
「・・・あぁ」
 呆気にとられて遅くれた八重の返事を聞こうともせずに、イートンは既に飛び出していた。先ほどまでの動きとは全く別物である。

「そういえば、母親がなんとか言ってたな・・・」

 その手に、紫の光を纏わせて八重は硬く閉じた壁に手を当てた。相当に分厚い。壁の向こうで騒ぐナスビの声が随分と遠く聞こえる。
「少し後ろに下がってくれないか?手加減出来そうに無い」

 ---- 

「綺麗で可愛いお嬢さん。俺と遊ばないか?」
 先ほどまでの、殴り倒したいような上目遣いやクネクネとした仕草が一変に消えうせた。実際の年齢より、多少若い印象を受ける表情と声色で『エドガー』が、ニーツを見下ろしている。
「・・・・・」
 先ほどと、どっちがマシかといえば、大いに悩むところである。
「君は恥ずかしがり屋さんなんだね」
 口を閉じ、様子を見ていたニーツの耳元に、エドガーが囁いた。
「・・・・・」
 体中に鳥肌が立ったのが分かった。
「大丈夫だよ、怖がらなくても・・・グアッ!?」
「やってられるかッ!!!」
 
―――クリスティの方がまだマシだッ!!

 そう結論つけたニーツは思い切りエドガーの腹を蹴る。しかし、彼の細足では思ったほどの効果は得られなかった。
「そんなに怯えなくたって、純情なんだね」
 その足を掴まれて、ニーツは右手に魔力を溜めた。こんな愚かな人間は進んで消すべきだ。「いい加減にしろ!」その言葉が、喉の先まで出かかった時、聞きなれた声が割り込んだ。

「ニーツ君ッ!!大丈夫ですか!!!」
 イートンだ。床の上で押し倒されているニーツに顔色を変える。しかし、部屋に入ることは出来なかった・・・。

 ドゴォッ!! 

 最後のトラップ、ハンマーを思い切り顔面で受け止め、イートンの体は廊下まで吹き飛ぶ。

 「「・・・・」」

 ため息と共に額に手を当てたニーツに、エドガーが視線をやる。
「もしかして、イートンの知り合いなのか?」
「知らない・・・」
 そんなニーツの冷たい言葉にもめげず、イートンはよろよろと立ち上がった。直撃を受け、床に転がった眼鏡は驚くべきことにヒビすら入っていない。目つきが随分と悪いのは、視界の悪いせいか、はたまた心情の問題か。
 
「さっさと、その体をどけろ」
 ゴフッ。
 イートンの蹴りと共に、ニーツの上から不快極まりないエドガーの体が消える。
「ず、・・・随分な扱いじゃないか。イートン」
 腹に手をあてて小さくうめきながらも、エドガーは変わらぬ笑みを向けた。
 ・・・もしかしたらマゾなのかも知れない。
「アンタにはこれで十分だろ?」
 そのまま胸倉を掴み、イートンは睨み付けるが、
「いやぁ、近くで見るとますます彼女そっくりだ」  
 相変わらず懲りないエドガーを思い切り殴りつける。

「おい・・・」
 これでは、交渉どころじゃ無くなる。自分の事は棚に置いて、身を起こしたニーツが声をかけるが、イートンは振り向きもしなかった。
「イートン」
 どちらかというと、漫才にも聞こえなくは無い二人の会話に、ニーツは思い切りイートンの耳を引っ張った。
「聞けと言っているだろうが、この愚か者―――ッ!!」
「うひゃ!?ニーツ君!?」
 今し方ニーツの存在に気が付いたようにイートンが顔を顔を向ける。
「お前のせいで、交渉がむちゃくちゃだ!」
 すでにボコボコになっているエドガーを指差して、ニーツが叫ぶ。
「えぇ!?だって、ニーツ君だって、さっきアイツに魔力ぶつけようとしてたじゃないですかぁぁ」
 忘れたフリして、しっかり覚えているらしい。
「オレは!」

「もしかして・・・・君。男の子?」

 ピタリ。

 二人の動きが止まった。
「えーっと・・・」
 イートンが見えないようにニーツを肘でつつく。しかし、ニーツは無言でそれに答えた。
「・・・エドガーさん、『ヴェルンの涙』を頂けませんか?」
 仕方なく棒読みのイートンにエドガーは、すっと腕を上げる。

「駄目駄目だね」

 そして、目の前で大きな『ペケ』を作った。  
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2007/02/17 23:24 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

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