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PC 八重 イートン ニーツ
場所 メイルーン
NPC 木兎 伯父
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イートンの伯父が入れてくれた珈琲が薫る。何でも、四種類の豆をブレンドしたオリジナル珈琲だとか。
窓の外が明るい。
夜が静かに明けてゆく。
「それで、結局、その市長とは、一体どういう人物だというんだね?」
じれたように八重が伯父に尋ねる。
「これから私は嫌でもその人物に会う羽目になる。それなのにその人物が異常な人物だとだけ聞かされて、全く情報をもらえないというのは少々遺憾だな」
「しかし、君があの伝説の存在<ルナシー>とはね。君の体の構造がどうなっているのか、是非とも調べたいな」
「話を逸らさないで頂きたい」
そう言った後、八重はちろりとイートンを睨む。その目は(余計なことを話すな)と言っていた。
「すみません、つい・・・」
「それで、その市長とは、一体、どういう人物なんだ」
伯父は、イートンと目をあわせると苦笑して肩をすくめた。
「やはり、話さなければならないんだろうな・・・」
「そうですね・・・」
「前フリはもういい。早く話してくれ。ニーツが目覚める前に是非とも聞いておきたいことだ」
そう、ニーツには場合によっては女装してもらわなくてはならない。そのニーツを説得するためにも、情報は必要だった。
伯父は、ふうと諦めたようにため息をつくと、おもむろに話し始めた。
「君は、<ジェキル博士とハイドロ氏>という話はもちろん知っているだろう」
「ああ、それが?」
『我輩は知らんぞ』
テーブルの上をちょこまかしていたウサギが口を開いた。
『それは一体どのような話なのだ?』
「へえ~、ウサギさんは知らないんですか?有名なのに」
『何度言わせるのだ!我輩はウサギなどではなく、ヴェルンの・・・』
「なんか、その言い方ってちょっと呼びづらいですよね。そーだ!」
イートンはおもむろにウサギを抱き上げるとこう宣言した。
「名前をつけてあげましょう。ウサギさんの名前は、そうですね・・・、<ナスビ>っていうのはどうでしょう?」
「たしかに、その体の丸さはナスビを思わせるな・・・」
伯父の言葉に八重もうなづいた。
「たしかに、そうかもしれないな・・・」
「じゃあ、決定ですね、ナスビちゃんっ」
『ふざけるな!!誰がそんな馬鹿げた名前・・・』
「それでその話はですね・・・」
『我輩の話を聞けーーー!!』
ジェキル博士とハイドロ氏というのはこの世界では結構有名な話である。
聡明で優しい、善人の鏡のような医師、ジェキル。
しかし、彼には裏の顔があった。
残忍で無慈悲な、悪魔のような男、ハイドロ。
そう、彼は天使と悪魔の心をあわせ持つ、極端なまでの二重人格だった。
「もしそういう人物が」
伯父は八重を見てにやりと笑った。
「・・・実際に存在しているとしたら?」
「・・・それが市長なのか?」
「いや、もっとたちが悪い」
伯父はここでコーヒーを一杯すすった。
「彼の中には四人、人間が存在している」
椅子を斜めに倒し、ぶらぶらさせながら伯父は指をおって数え始めた。
「普段は聡明な市長、ワトスン=ベーカーウォール。その時は何の問題もないがな。その中に、十歳の少女、クリスティ。・・・クリスティになったときの市長のフリルのスカートは吐き気を催すぞ。なんせ、クマの人形まで抱いてるんだからな。軽薄な男、エドガー。・・・コイツが女好きで妹を誘惑してたヤツだ。マダム、ハドソン。・・・世界が自分中心じゃないと気がすまないヤツだ。そういえば、ハドソン夫人のときのメイクも相当なもんだな。最後が、ジェームス。・・・こいつが一番厄介だ。こいつさえなければ俺もずいぶん気が晴れるんだがな」
「何が厄介だと?」
八重にしてみれば、五重人格である時点で、すでに厄介な人物であることに変わりない。それに輪をかけるように厄介な人物とはどんな人物なのか。
「こいつはな・・・、破壊主義者なんだ。殺人をなんとも思わない。今まで何人こいつの被害にあったかわからないな」
八重の顔がぴくっと動いた。
「ほう・・・」
小さく息を吐くように言葉を発する。
破壊、殺人、・・・人を、喰らう。
「とまあ、こういう厄介な人物だ、市長は。で、ヴェルンの涙のことだがな。一番手っ取り早いのは<エドガー>を誘惑することだろう。アイツは女好きだからな。女のためなら宝石の一つや二つ、ころっと渡しちまう」
「そのためには・・・ニーツ君ですね」
イートンか静かな寝息を立てているニーツのほうを横目で見る。
「でもニーツ君が・・・その・・・承諾してくれる可能性は・・・」
「・・・皆無だな」
イートンと八重はそろってため息をついた。すると、伯父が思いがけないことを言った。
「なんなら俺が説得してやろうか?」
「!!」
イートンと八重はそろって伯父を見つめた。
「ほ、本気で言ってるんですか、伯父さん・・・」
「ああ、俺は本気だよ。言ったからには必ず説得してやるさ。但し、条件がある」
ここで、伯父は八重ににっこりと笑いかけた。妖しいほどに。
「君の細胞を少々」
八重は苦虫を噛み潰したような顔で苦笑した。
PC 八重 イートン ニーツ
場所 メイルーン
NPC 木兎 伯父
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イートンの伯父が入れてくれた珈琲が薫る。何でも、四種類の豆をブレンドしたオリジナル珈琲だとか。
窓の外が明るい。
夜が静かに明けてゆく。
「それで、結局、その市長とは、一体どういう人物だというんだね?」
じれたように八重が伯父に尋ねる。
「これから私は嫌でもその人物に会う羽目になる。それなのにその人物が異常な人物だとだけ聞かされて、全く情報をもらえないというのは少々遺憾だな」
「しかし、君があの伝説の存在<ルナシー>とはね。君の体の構造がどうなっているのか、是非とも調べたいな」
「話を逸らさないで頂きたい」
そう言った後、八重はちろりとイートンを睨む。その目は(余計なことを話すな)と言っていた。
「すみません、つい・・・」
「それで、その市長とは、一体、どういう人物なんだ」
伯父は、イートンと目をあわせると苦笑して肩をすくめた。
「やはり、話さなければならないんだろうな・・・」
「そうですね・・・」
「前フリはもういい。早く話してくれ。ニーツが目覚める前に是非とも聞いておきたいことだ」
そう、ニーツには場合によっては女装してもらわなくてはならない。そのニーツを説得するためにも、情報は必要だった。
伯父は、ふうと諦めたようにため息をつくと、おもむろに話し始めた。
「君は、<ジェキル博士とハイドロ氏>という話はもちろん知っているだろう」
「ああ、それが?」
『我輩は知らんぞ』
テーブルの上をちょこまかしていたウサギが口を開いた。
『それは一体どのような話なのだ?』
「へえ~、ウサギさんは知らないんですか?有名なのに」
『何度言わせるのだ!我輩はウサギなどではなく、ヴェルンの・・・』
「なんか、その言い方ってちょっと呼びづらいですよね。そーだ!」
イートンはおもむろにウサギを抱き上げるとこう宣言した。
「名前をつけてあげましょう。ウサギさんの名前は、そうですね・・・、<ナスビ>っていうのはどうでしょう?」
「たしかに、その体の丸さはナスビを思わせるな・・・」
伯父の言葉に八重もうなづいた。
「たしかに、そうかもしれないな・・・」
「じゃあ、決定ですね、ナスビちゃんっ」
『ふざけるな!!誰がそんな馬鹿げた名前・・・』
「それでその話はですね・・・」
『我輩の話を聞けーーー!!』
ジェキル博士とハイドロ氏というのはこの世界では結構有名な話である。
聡明で優しい、善人の鏡のような医師、ジェキル。
しかし、彼には裏の顔があった。
残忍で無慈悲な、悪魔のような男、ハイドロ。
そう、彼は天使と悪魔の心をあわせ持つ、極端なまでの二重人格だった。
「もしそういう人物が」
伯父は八重を見てにやりと笑った。
「・・・実際に存在しているとしたら?」
「・・・それが市長なのか?」
「いや、もっとたちが悪い」
伯父はここでコーヒーを一杯すすった。
「彼の中には四人、人間が存在している」
椅子を斜めに倒し、ぶらぶらさせながら伯父は指をおって数え始めた。
「普段は聡明な市長、ワトスン=ベーカーウォール。その時は何の問題もないがな。その中に、十歳の少女、クリスティ。・・・クリスティになったときの市長のフリルのスカートは吐き気を催すぞ。なんせ、クマの人形まで抱いてるんだからな。軽薄な男、エドガー。・・・コイツが女好きで妹を誘惑してたヤツだ。マダム、ハドソン。・・・世界が自分中心じゃないと気がすまないヤツだ。そういえば、ハドソン夫人のときのメイクも相当なもんだな。最後が、ジェームス。・・・こいつが一番厄介だ。こいつさえなければ俺もずいぶん気が晴れるんだがな」
「何が厄介だと?」
八重にしてみれば、五重人格である時点で、すでに厄介な人物であることに変わりない。それに輪をかけるように厄介な人物とはどんな人物なのか。
「こいつはな・・・、破壊主義者なんだ。殺人をなんとも思わない。今まで何人こいつの被害にあったかわからないな」
八重の顔がぴくっと動いた。
「ほう・・・」
小さく息を吐くように言葉を発する。
破壊、殺人、・・・人を、喰らう。
「とまあ、こういう厄介な人物だ、市長は。で、ヴェルンの涙のことだがな。一番手っ取り早いのは<エドガー>を誘惑することだろう。アイツは女好きだからな。女のためなら宝石の一つや二つ、ころっと渡しちまう」
「そのためには・・・ニーツ君ですね」
イートンか静かな寝息を立てているニーツのほうを横目で見る。
「でもニーツ君が・・・その・・・承諾してくれる可能性は・・・」
「・・・皆無だな」
イートンと八重はそろってため息をついた。すると、伯父が思いがけないことを言った。
「なんなら俺が説得してやろうか?」
「!!」
イートンと八重はそろって伯父を見つめた。
「ほ、本気で言ってるんですか、伯父さん・・・」
「ああ、俺は本気だよ。言ったからには必ず説得してやるさ。但し、条件がある」
ここで、伯父は八重ににっこりと笑いかけた。妖しいほどに。
「君の細胞を少々」
八重は苦虫を噛み潰したような顔で苦笑した。
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