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2025/03/10 23:39 |
28.イートン 盆ウサを起こす/イートン(千鳥)
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PC  八重 イートン (ニーツ)
場所  ヴェルン湖遺跡
NPC ベル=リアン シュワルツェネ=リアン 木兎
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 煌く星屑を静かに湛える水面が波立つ。ヴェルン湖を大きく囲むように光の筋が円を描いた。魔方陣の内部の温度がぐんと上昇し、昼間に劣らぬ明るさを辺りに与える。
 そんな中で、イートンは素早く装置をセットして立ち上がった。
(爆発まで・・・あと5分)
 ニーツがあの体で動けるのか、不安は拭えなかったが彼の元に戻るわけにもいかない。爆発が起こればこの魔法陣内に存在するすべてのものが消滅するのだ。
発動した魔法は結界。唯一つの空を戴くこの大地を空間ごと切り離し、性質を変化させる。ヴェルンの魔方陣なら強大な爆発にも十分耐えられるはずだ。
 
「八重さん!時間が!」
 二人の魔族と戦う彼の名前を呼ぶ。相変わらず不利には変わりなかったが、動きを読まれたベル=リアンがだいぶ苛立っているのが分かった。しかし、二人の魔族を置いて結界から脱出するほどの一撃も与えられない・・・。
「先に行け!」
 シュワルツネの攻撃をかわして八重が怒鳴り返す。こちらを振り向く余裕も無い。
「で、でも」
 先ほどの繰り返しであるのは分かっていたが、イートンは言葉を濁さずにはいられなかった。自分ばかりが安全でいるわけにはいかないのだから。
「逃げちゃえばいいのに。折角この人間が頑張ってるんだからさ!」
 ベルが笑みを浮かべながら手を振り上げる。途端、いくつもの風の刃がイートンを襲い、皮膚を裂いた。反射的に両手で庇う。
「イートン!?・・くっ」
 慌てて八重が振り向くが、その隙を逃さずシュワルツェネの一撃が来る。
「・・・・・・」
 その様子を唇を噛み締めて見ていたイートンは何も言わず踵を返した。ベルの嘲笑が背後から聞こえたが、イートンはあえて耳から閉め出すことにした。
(私が足手まといになったら何の意味も無い!結界から出ないと・・・)

 光の一線を越えると、涼やかな風がイートンに吹き当てられた。急に視界が暗くなる。
(このままでは二人とも助からない)
 動かしていた足から意識を切り離し、イートンは必死で頭を回転させた。
 だから、気が付かなかったのだ。暗い木の影に不自然に積まれた瓦礫の山に。
 イートンは正面から思い切りその山に突っ込んだ―――――――。

「いたたた・・・なんでこんな所に・・・」
 それは遺跡の一部だった。おそらく湖から引き上げられ、市長によって『不用』と判断された出土品の山。思い切り突っ込んだため、頂上の一部が転がり落ちてくる。 コロコロとイートンの元にやってきたのは、不思議な木像だった。よく見れば、木馬ならぬ木兎。木目一つ無い不思議な白い木の球ふたつ、団子のように串刺しに繋がっている。それを興味深げに見ていたイートンだが、すぐに今置かれた状況を思い出す。
「ハッ!そんなことより八重さんとニーツ君を助けないと!!」

『それが願いか?』

 聞き覚えの無い低い声が急に頭に響いた。
「え・・・?」
『我輩はヴェルンの兎。この地の守護を引継ぎし者。汝が望むなら、それを叶えようヴェルンの民よ』
(兎さんが喋った・・・・)
 驚くことこの上ないが、イートンはその言葉にすがらずにはいられなかった。
「お願いしますッ!!急がないとッ。あの魔族の動きを止めて―――」
 最後まで言えなかった。
 木兎の三角の口から凄まじい魔力が放出されたのだ。

 ゴォォォォォォ!!

 尾は途切れることなく、その白熱の塊をシュワルツェネにぶつける。
「――――なに!?」
 シュワルツネが慌てて棍を縦にして障壁を張るが、圧倒的な力に湖の中央まで弾き飛ばされる。 
「な、なんだ・・・?」
 八重もまた攻撃の元を探すが輝く結界に阻まれ、外の世界を見ることは出来ない。兄に駆け寄るベルを見て、八重は呟いた。
「とりあえず、チャンスだな」 
 
「なんて・・・出鱈目な…」
 直線的で、圧倒的。無駄で荒削りとも言える攻撃にただ驚くばかり。そんなイートンに木兎はしれっと答えた。
『たとえ滅びた都であっても、この地に破壊をもたらす者。当然の制裁である』
「・・・・あ」
 木兎の言葉に引っ掛かりを覚え、イートンは口を開いた。
 そして、結界の中で爆発が起こった―――――。

 背を向けていたイートンであっても、目を焼くような白い閃光に顔を覆った。爆音はない。ただヒュウと空気を擦るような高い音を響かせ、光が天を越えた。
『・・・・・・』
 大きく抉られた底。遺跡のあとなどまるきり無い。落ちてきた水滴がその無残な跡を隠すように溜まった。 
 呆然とその場所をみつめる木兎にイートンは言いにくそうに謝った。
「スイマセン・・・破壊・・・しちゃいました」
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2007/02/17 23:00 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

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