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PC 八重 ニーツ イートン
場所 ヴェルン湖畔
NPC ベル=リアン シュワルツェネ=リアン
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咄嗟に後ろへ跳んだが、腹部への直撃はかなり堪えた。
「くぅ…」
「しぶといな」
腹部をおさえ、蹲る八重を見て、シュワルツェネが舌打ちをした。そんな魔族達に、小さく唇を吊り上げて、立ち上がり、八重が答える。
「…生憎な」
人間の生への執着をなめるな、と八重は心の中で呟いた。ヒエログリフの謎を解く前に、死ぬなんてもってのほかだ。それに、もし此処で八重がやられでもしたら…
「ニーツに、馬鹿にされるだろう?」
もう、なりふり構っていられなかった。
八重は<ルナ>を両手に宿し、再び二人の方へ向かっていった。
「見つけた…。イ-トン、此処で降ろせ…」
そう言ってニーツが指し示したのは、地面に半ば埋まった石版の前。石版には、紅い光を放つ珠が埋め込まれていた。
「ニーツ君、これは?」
「魔法陣の…発動装置…。これを起動すれば…魔法陣も…発動するはずだ…」
「本当ですか?」
「ああ…」
頷くニーツを見て、イ-トンはニーツの身体を地面に降ろした。途端にガクンとニーツがバランスを崩し、慌ててそれを支える。
「大丈夫ですか!?」
「ああ…大したこと…ない」
明らかにニーツは無理をしているようだったが、イ-トンはそれ以上何も言わなかった。ニーツはスッと息を一つ吸うと、イ-トンの手から離れて石版に触れる。
辺りの魔力の流れが変わった。人間では到底扱いきれない圧倒的な量の魔力が、ニーツに従う。
「イ-トン…今から…すぐに引き返せ」
「え、でも…」
ニーツを放っておいて良いのか、とでも問いたげな瞳を、イ-トンは向ける。だが、ニーツは無視して続けた。
「魔法陣が…起動したら、爆薬を使え…そしてすぐに、八重を連れて…逃げるんだ」
「ニーツ君は…」
なおも逡巡するイ-トンに、ニーツはフッと笑顔を向けた。これまでの人を馬鹿にしたような笑いではない、人を安心させるような、落ち着いた笑顔。
「俺は…大丈夫だから」
「……」
「行け!」
強い響きでニーツは言った。イ-トンは、無言で裾を翻す。
イ-トンが戻るのを横目で見て、ニーツは小さく呟いた。
「さあて…本当に…どうなるかな…」
魔法陣の発動には、相当な魔力が要った。此程大きな魔力は、久しく扱っていない。シュワルツェネと闘っていたときさえも。
内で反乱する魔力に、ニーツの身体は悲鳴を上げていた。
呼吸一つが、苦しいくらいに。
元々、この魔法陣の発動、維持には、何百人もの人間が、増幅装置を使って当たっていたという。それを魔族とはいえ、一人でやろうというのは、流石に骨が折れる。
(それでも…やるしかないし…な)
-グア-
ニーツの魔力が、一層増した。答えるように、石版の珠が、そしてニーツの右目が爛々と輝く。
(あの兄弟に…なめられっ放しというのも…癪だし…)
「死なせるわけにも…いかないしな…」
そう口にして、ニーツは苦笑を浮かべる。
意外と、自分はあの二人を気に入っているのかもしれないと思う。
長い、退屈な生活の中で、此程刺激を受ける出来事はそうないだろう。
珠の中に、フワリと六芒星のが浮かび上がった。同時に、ヴェルン湖の北方、南方、そして東と西、それぞれを挟んで二つずつ、計六ヶ所から、光が空に向けて走った。
ヴェルン遺跡の魔法陣が発動したのだ。
「…しくじるなよ」
PC 八重 ニーツ イートン
場所 ヴェルン湖畔
NPC ベル=リアン シュワルツェネ=リアン
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咄嗟に後ろへ跳んだが、腹部への直撃はかなり堪えた。
「くぅ…」
「しぶといな」
腹部をおさえ、蹲る八重を見て、シュワルツェネが舌打ちをした。そんな魔族達に、小さく唇を吊り上げて、立ち上がり、八重が答える。
「…生憎な」
人間の生への執着をなめるな、と八重は心の中で呟いた。ヒエログリフの謎を解く前に、死ぬなんてもってのほかだ。それに、もし此処で八重がやられでもしたら…
「ニーツに、馬鹿にされるだろう?」
もう、なりふり構っていられなかった。
八重は<ルナ>を両手に宿し、再び二人の方へ向かっていった。
「見つけた…。イ-トン、此処で降ろせ…」
そう言ってニーツが指し示したのは、地面に半ば埋まった石版の前。石版には、紅い光を放つ珠が埋め込まれていた。
「ニーツ君、これは?」
「魔法陣の…発動装置…。これを起動すれば…魔法陣も…発動するはずだ…」
「本当ですか?」
「ああ…」
頷くニーツを見て、イ-トンはニーツの身体を地面に降ろした。途端にガクンとニーツがバランスを崩し、慌ててそれを支える。
「大丈夫ですか!?」
「ああ…大したこと…ない」
明らかにニーツは無理をしているようだったが、イ-トンはそれ以上何も言わなかった。ニーツはスッと息を一つ吸うと、イ-トンの手から離れて石版に触れる。
辺りの魔力の流れが変わった。人間では到底扱いきれない圧倒的な量の魔力が、ニーツに従う。
「イ-トン…今から…すぐに引き返せ」
「え、でも…」
ニーツを放っておいて良いのか、とでも問いたげな瞳を、イ-トンは向ける。だが、ニーツは無視して続けた。
「魔法陣が…起動したら、爆薬を使え…そしてすぐに、八重を連れて…逃げるんだ」
「ニーツ君は…」
なおも逡巡するイ-トンに、ニーツはフッと笑顔を向けた。これまでの人を馬鹿にしたような笑いではない、人を安心させるような、落ち着いた笑顔。
「俺は…大丈夫だから」
「……」
「行け!」
強い響きでニーツは言った。イ-トンは、無言で裾を翻す。
イ-トンが戻るのを横目で見て、ニーツは小さく呟いた。
「さあて…本当に…どうなるかな…」
魔法陣の発動には、相当な魔力が要った。此程大きな魔力は、久しく扱っていない。シュワルツェネと闘っていたときさえも。
内で反乱する魔力に、ニーツの身体は悲鳴を上げていた。
呼吸一つが、苦しいくらいに。
元々、この魔法陣の発動、維持には、何百人もの人間が、増幅装置を使って当たっていたという。それを魔族とはいえ、一人でやろうというのは、流石に骨が折れる。
(それでも…やるしかないし…な)
-グア-
ニーツの魔力が、一層増した。答えるように、石版の珠が、そしてニーツの右目が爛々と輝く。
(あの兄弟に…なめられっ放しというのも…癪だし…)
「死なせるわけにも…いかないしな…」
そう口にして、ニーツは苦笑を浮かべる。
意外と、自分はあの二人を気に入っているのかもしれないと思う。
長い、退屈な生活の中で、此程刺激を受ける出来事はそうないだろう。
珠の中に、フワリと六芒星のが浮かび上がった。同時に、ヴェルン湖の北方、南方、そして東と西、それぞれを挟んで二つずつ、計六ヶ所から、光が空に向けて走った。
ヴェルン遺跡の魔法陣が発動したのだ。
「…しくじるなよ」
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