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PC 八重 ニーツ (イートン)
場所 ヴェルン湖畔
NPC ベル=リアン シュワルツェネ=リアン クーロン ユサ
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ニーツとシュワルツェネ、二人の間で魔力がぶつかり、火花が飛ぶ。
「遅い…」
驚くべきスピードで、シュワルツェネはニーツの横に回り込んだ。ニーツは、死角から襲ってくる棍を、咄嗟に張った障壁で防ぐ。
彼は、魔力だけではなく、体術にも優れているようだ。全く、隙がない。二人は、距離を離して対峙する。
「何故、本気を出さない?」
静かに、シュワルツェネが問い掛けてきた。
「俺が、本気を出していないと?」
「そう、見えるな。少なくとも、少なくとも、弟の攻撃から人間を守るだけで精一杯なんて、そんな事はないだろう?」
「見ていたのか」
「弟には悪いがな」
このような会話の間にも、二人の周りでは絶えず火花が散っている。話は途切れ、二人が同時に動いた。その時ふと、ニーツは背後に魔力を感じた。避けられないと判断し、チッと舌打ちして、なるべく被害を少なくしようと振り返った時、目に入った物は…
「こりゃあぁぁぁぁっ!!!」
「げっ」
燃える本と、見慣れた人物のホログラフィー。思わずニーツは顔をしかめた。
「…クーロン」
いつもニーツが行っている図書館の、クーロン地区担当司書の老人だった。
「ニーツ!いつも本は大事にしろと言っているだろうが!何故そんな簡単なことが守れん!?」
「どうせ、魔力で作った複製品だろうが」
「それでも、本は本じゃわい」
ニーツのささやかな反抗に、ツーンと老人は横を向いた。ニーツはそれを、半眼で睨む。
「……このくそジジィ…」
「ワシがジジィなら、お主だってジジババの仲間じゃ。全く、いつまで経っても大人げのない」
いつもなら此処で一発殴るところだが、いかんせん、相手がホログラフィーなのでどうしようもない。
「とーにかくじゃ!!もう一冊の本はきっちり返す事じゃ。全く、ただでさえ貸し出し禁止なのを長いつきあいだから貸してやっているのに。複製でも、作るの面倒なんじゃぞ。もしもう一冊も今回みたいに燃やしたらどうなることか、よぉく考えるんじゃな」
「…燃えたのは俺の所為じゃないんだが…」
そう呟いて、ニーツは八重を見た。八重もベル=リアンも、突然のクーロンの来襲に目を丸くしている。
「それでも!借りたお主の責任じゃい!今決めた、そう決めた、ワシが決めた!!という訳で、今度返しに来たときは、説教一時間と反省文を覚悟しておくんじゃな」
「反省文って…おい!!」
鉄砲…否、ガトリングガンのように言いたいことだけを言って、ホログラフィーは消えた。一瞬、辺りがしーんと静まり返る。
「ええと…」
嵐のように現れて去って行ったクーロンに面食らいながらも、八重はニーツに話しかけた。
「…悪いな」
そんな八重を、ニーツは無言で睨む。余計なことを、とその瞳は語っていた。
「そうそう、それとな」
「うわ」
突然、ニョキッとクーロンの姿が再び現れる。クーロンは、ニーツにしか聞こえない声で囁いた。
「あの魔族には気を付けなさい。何故か、同族に対しては滅法強い。特殊な技を…」
フウッと、今度は何かにかき消されるかのように、クーロンの姿が消えた。同時に、ニーツの足下に、複雑な陣が浮かぶ。
真っ先に我に返ったシュワルツェネが、何かを仕掛けてきた事は解った。彼に対して、隙を見せすぎたと、ニーツは舌打ちする。
ニーツは、慌ててそこから逃れようとしたが、陣の完成の方が早かった。
紅い光が、ニーツを包んで、天へ向かって立ち上る。
「ニーツ!!」
八重が、ニーツに駆け寄る。
「兄ぃ!」
同時に、ベル=リアンも自分の兄へ駆け寄った。
「あの技?あの技使ったの!?」
「ああ。なかなか隙が得られなかったが…」
「じゃあ、もう僕らの勝ち同然だね。これこそ兄ぃの最強技だもんね」
はしゃぐベル=リアン。
「兄ぃのあの技なら、敵がどんな魔力を持ってたって構わないもんね。だって…」
紅い光が、スウッと消えた。ニーツは変わらずに立っている。一瞬ホッとした八重だったが、次の瞬間、ニーツの身体がグラリと傾いだ。
「お…おい!どうした…!」
「く…油断した…。やって…くれるじゃ…ないか」
ニーツは八重に支えられながら、胸を押さえて喘ぐように魔族の兄弟を睨んだ。額には脂汗が浮かんでいる。
身体の中を、灼け付くような痛みが駆け巡っている。
「今、お前を苛んでいるのは、お前自身の魔力だ」
「シュワルツェネ兄ぃの技は、人の魔力をそのままその人に反射させることが出来るんだよ。自分の中で、魔力が暴れてるの解るでしょう?相手の魔力が強ければ強いほど、効果を発揮するんだ。どう?自分の魔力に苦しめられる気分は」
「…良くは…ないな!」
ニーツはそう言い放って、魔力を放った。それは、まっすぐベル=リアンめがけて飛んだが、シュワルツェネが障壁を張って防いだ。
「く…ああ…」
「あはは。そんな状態で魔法なんか出しちゃ、よけい苦しくなるだけだよ。もっと自分に苦痛が返ってくるよ?」
「ニーツ!!無理するな!!」
八重が、腕の中で苦しむニーツに叱咤の声を上げる。
しかし、厄介なことをしてくれた、と八重は心の中で独りごちた。ベル=リアン一人だけなら何とかなったかもしれないが、二人とも倒す自信は、八重にはない。
「そうそう、忘れていた…」
その時、シュワルツェネが軽い口調でそう呟く。だが、その先の言葉は、八重の目を瞠らせるのに十分な物だった。
「あの街にいる…イ-トン?だったか。アレもどうにかしないとな」
「イ-トンを、知っているのか!?」
「当然だ」
そう言って、シュワルツェネは、手に紅い光を宿した。
「ユサ!!大変だ!!」
手下の一人が、そう言って、ユサの所に飛び込んできた。
「どうした?」
「イ-トンが…イ-トンが逃げた!!」
「何だと!?」
そう怒鳴って立ち上がったユサの首筋には、紅い文字が浮かび上がっていた…
PC 八重 ニーツ (イートン)
場所 ヴェルン湖畔
NPC ベル=リアン シュワルツェネ=リアン クーロン ユサ
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ニーツとシュワルツェネ、二人の間で魔力がぶつかり、火花が飛ぶ。
「遅い…」
驚くべきスピードで、シュワルツェネはニーツの横に回り込んだ。ニーツは、死角から襲ってくる棍を、咄嗟に張った障壁で防ぐ。
彼は、魔力だけではなく、体術にも優れているようだ。全く、隙がない。二人は、距離を離して対峙する。
「何故、本気を出さない?」
静かに、シュワルツェネが問い掛けてきた。
「俺が、本気を出していないと?」
「そう、見えるな。少なくとも、少なくとも、弟の攻撃から人間を守るだけで精一杯なんて、そんな事はないだろう?」
「見ていたのか」
「弟には悪いがな」
このような会話の間にも、二人の周りでは絶えず火花が散っている。話は途切れ、二人が同時に動いた。その時ふと、ニーツは背後に魔力を感じた。避けられないと判断し、チッと舌打ちして、なるべく被害を少なくしようと振り返った時、目に入った物は…
「こりゃあぁぁぁぁっ!!!」
「げっ」
燃える本と、見慣れた人物のホログラフィー。思わずニーツは顔をしかめた。
「…クーロン」
いつもニーツが行っている図書館の、クーロン地区担当司書の老人だった。
「ニーツ!いつも本は大事にしろと言っているだろうが!何故そんな簡単なことが守れん!?」
「どうせ、魔力で作った複製品だろうが」
「それでも、本は本じゃわい」
ニーツのささやかな反抗に、ツーンと老人は横を向いた。ニーツはそれを、半眼で睨む。
「……このくそジジィ…」
「ワシがジジィなら、お主だってジジババの仲間じゃ。全く、いつまで経っても大人げのない」
いつもなら此処で一発殴るところだが、いかんせん、相手がホログラフィーなのでどうしようもない。
「とーにかくじゃ!!もう一冊の本はきっちり返す事じゃ。全く、ただでさえ貸し出し禁止なのを長いつきあいだから貸してやっているのに。複製でも、作るの面倒なんじゃぞ。もしもう一冊も今回みたいに燃やしたらどうなることか、よぉく考えるんじゃな」
「…燃えたのは俺の所為じゃないんだが…」
そう呟いて、ニーツは八重を見た。八重もベル=リアンも、突然のクーロンの来襲に目を丸くしている。
「それでも!借りたお主の責任じゃい!今決めた、そう決めた、ワシが決めた!!という訳で、今度返しに来たときは、説教一時間と反省文を覚悟しておくんじゃな」
「反省文って…おい!!」
鉄砲…否、ガトリングガンのように言いたいことだけを言って、ホログラフィーは消えた。一瞬、辺りがしーんと静まり返る。
「ええと…」
嵐のように現れて去って行ったクーロンに面食らいながらも、八重はニーツに話しかけた。
「…悪いな」
そんな八重を、ニーツは無言で睨む。余計なことを、とその瞳は語っていた。
「そうそう、それとな」
「うわ」
突然、ニョキッとクーロンの姿が再び現れる。クーロンは、ニーツにしか聞こえない声で囁いた。
「あの魔族には気を付けなさい。何故か、同族に対しては滅法強い。特殊な技を…」
フウッと、今度は何かにかき消されるかのように、クーロンの姿が消えた。同時に、ニーツの足下に、複雑な陣が浮かぶ。
真っ先に我に返ったシュワルツェネが、何かを仕掛けてきた事は解った。彼に対して、隙を見せすぎたと、ニーツは舌打ちする。
ニーツは、慌ててそこから逃れようとしたが、陣の完成の方が早かった。
紅い光が、ニーツを包んで、天へ向かって立ち上る。
「ニーツ!!」
八重が、ニーツに駆け寄る。
「兄ぃ!」
同時に、ベル=リアンも自分の兄へ駆け寄った。
「あの技?あの技使ったの!?」
「ああ。なかなか隙が得られなかったが…」
「じゃあ、もう僕らの勝ち同然だね。これこそ兄ぃの最強技だもんね」
はしゃぐベル=リアン。
「兄ぃのあの技なら、敵がどんな魔力を持ってたって構わないもんね。だって…」
紅い光が、スウッと消えた。ニーツは変わらずに立っている。一瞬ホッとした八重だったが、次の瞬間、ニーツの身体がグラリと傾いだ。
「お…おい!どうした…!」
「く…油断した…。やって…くれるじゃ…ないか」
ニーツは八重に支えられながら、胸を押さえて喘ぐように魔族の兄弟を睨んだ。額には脂汗が浮かんでいる。
身体の中を、灼け付くような痛みが駆け巡っている。
「今、お前を苛んでいるのは、お前自身の魔力だ」
「シュワルツェネ兄ぃの技は、人の魔力をそのままその人に反射させることが出来るんだよ。自分の中で、魔力が暴れてるの解るでしょう?相手の魔力が強ければ強いほど、効果を発揮するんだ。どう?自分の魔力に苦しめられる気分は」
「…良くは…ないな!」
ニーツはそう言い放って、魔力を放った。それは、まっすぐベル=リアンめがけて飛んだが、シュワルツェネが障壁を張って防いだ。
「く…ああ…」
「あはは。そんな状態で魔法なんか出しちゃ、よけい苦しくなるだけだよ。もっと自分に苦痛が返ってくるよ?」
「ニーツ!!無理するな!!」
八重が、腕の中で苦しむニーツに叱咤の声を上げる。
しかし、厄介なことをしてくれた、と八重は心の中で独りごちた。ベル=リアン一人だけなら何とかなったかもしれないが、二人とも倒す自信は、八重にはない。
「そうそう、忘れていた…」
その時、シュワルツェネが軽い口調でそう呟く。だが、その先の言葉は、八重の目を瞠らせるのに十分な物だった。
「あの街にいる…イ-トン?だったか。アレもどうにかしないとな」
「イ-トンを、知っているのか!?」
「当然だ」
そう言って、シュワルツェネは、手に紅い光を宿した。
「ユサ!!大変だ!!」
手下の一人が、そう言って、ユサの所に飛び込んできた。
「どうした?」
「イ-トンが…イ-トンが逃げた!!」
「何だと!?」
そう怒鳴って立ち上がったユサの首筋には、紅い文字が浮かび上がっていた…
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