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PC イートン (八重 ニーツ)
場所 メイルーン
NPC アエル 伯父さん
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「・・・アエル。シニワンというのは何者なんですか?」
未だ痛む肩を押えながらイートンは尋ねた。
地下牢は暗く、あれから一体どれだけの時が過ぎたのか、自分には知る由も無い。
「う~ん、ユサの腹心の部下って奴かな・・・?昔のイートンみたいな」
それは悪い奴だ。イートンは複雑な心境で頷いた。
「それで?いつからこの町にいるんですか?」
そばかすの浮かんだ鼻の頭をかき、アエルはふと首をかしげる。
「分からん」
「え?」
「昔からいたような・・・いや、違う。ユサが羽振り良くなったのはつい最近だっけ・・・」
曖昧な答えが気になった。鮮やかな緑の髪に金色の瞳。
武術の達人といった風体だったが・・・
(彼は本当に人間なのだろうか?)
そういえば、倉庫で彼の姿は無かったように思える。ニーツがいればこんな疑問もわかずに済んだのだろうが・・・。
(八重さんとニーツ君は仲良くしてるでしょうか)
ふと、イートンは気になった。
まぁ、八重は大人だし、自分のように鳩尾をくらうことも無いだろうが・・・
「アエル。僕ちょっと出かけてきます」
「は?」
「調べたいことがあるんです」
キョトンとするアエルを尻目に、イートンが腰をあげた。
「どうやって?」
「こうやって」
石壁の隙間に手を伸ばし、その一つを押した。
ガコン。
また別の石を上、下、奥へと動かす。その手は一見ランダムに見えた。
「な・・・なんだよ、それは」
「隠し通路です」
にっこりと笑みを浮かべて振り返る。そこに大人が一人通れる大きな穴が出来上がる。
「ユサにいつ閉じ込められるか分からない身だったものでね、僕も」
それだけいうと、滑るようにイートンは中へ飛び込んだ。
日の暮れた研究室で、男は実験台の前を行ったり来たりした。
しかし、その紫の瞳がビーカーの中におちる抽出液から離れることは無かった。
コンコン。
ドアが遠慮がちにたたかれる。
「伯父さん・・・?」
小さな声がドア越しに聞こえた。
その声に全く覚えは無いが、どうやら自分の甥らしい。
「僕です、イートンですってば」
「知らん」
そっけなく言ってみれば、扉の前の主は大きな音を立てて扉を開けた。
しまった、鍵をかけるのを忘れた。
「お久しぶりですね」
「記憶に無いな」
伸び放題の黒い髪をガシガシとかく。今は実験に夢中なのだ、そんな甥に構う余裕など無い。
「そうですかぁ・・・この青と赤の液体、綺麗ですね」
背後で困ったように首をかしげたのが分かった。ランプに照らされた影がちょこんと動いたのである。
「混ぜたら紫になるのかな」
「ちょ!??まてっ!!」
男は慌てて振り返る。そんなことしたら実験室はおろかここいら一面が消滅する。
「冗談ですよ、やだなぁ、伯父さん」
「この悪童めッ」
吐き捨てると男は実験台から離れる。そこには金髪の、母親似の顔があった。
「俺の妹は元気か?」
「ふ~ん、ここはちょうど、ヴェルン湖に位置する」
イートンが持ってきた本を見ながら伯父はまた行ったり来たりし始めた。相変わらず止まる事を知らない人だ。
「ヴェルン湖っていうんですか?あの湖は」
イートンは驚いて顔を上げる。この土地の人間は村外れの湖としか呼ばない。
「あぁ。学術的にってやつだな。名前なんて無くたって存在してるんだ。物ってのは」
「名前は力ですよ。軽視するものではない」
モノ書きのイートンとしては見逃し難い言葉だ。
「でも、今更行っても無駄だと思うがな」
喧嘩腰のイートンを気にもせず、伯父は肩をすくめる。
「どうしてです?」
「あそこは一度水を抜いて一大発掘が行われてるんだ。お探しの品はもう無いだろう」
「えぇ!?いつ?発掘品はどこに行ったんですか??」
「つい最近だ。場所って言えば、そりゃ決まってるだろ・・・。アノ市長のところだよ」
「アノ市長ですか・・・・」
そして二人の間に気まずい沈黙がおりた。
PC イートン (八重 ニーツ)
場所 メイルーン
NPC アエル 伯父さん
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「・・・アエル。シニワンというのは何者なんですか?」
未だ痛む肩を押えながらイートンは尋ねた。
地下牢は暗く、あれから一体どれだけの時が過ぎたのか、自分には知る由も無い。
「う~ん、ユサの腹心の部下って奴かな・・・?昔のイートンみたいな」
それは悪い奴だ。イートンは複雑な心境で頷いた。
「それで?いつからこの町にいるんですか?」
そばかすの浮かんだ鼻の頭をかき、アエルはふと首をかしげる。
「分からん」
「え?」
「昔からいたような・・・いや、違う。ユサが羽振り良くなったのはつい最近だっけ・・・」
曖昧な答えが気になった。鮮やかな緑の髪に金色の瞳。
武術の達人といった風体だったが・・・
(彼は本当に人間なのだろうか?)
そういえば、倉庫で彼の姿は無かったように思える。ニーツがいればこんな疑問もわかずに済んだのだろうが・・・。
(八重さんとニーツ君は仲良くしてるでしょうか)
ふと、イートンは気になった。
まぁ、八重は大人だし、自分のように鳩尾をくらうことも無いだろうが・・・
「アエル。僕ちょっと出かけてきます」
「は?」
「調べたいことがあるんです」
キョトンとするアエルを尻目に、イートンが腰をあげた。
「どうやって?」
「こうやって」
石壁の隙間に手を伸ばし、その一つを押した。
ガコン。
また別の石を上、下、奥へと動かす。その手は一見ランダムに見えた。
「な・・・なんだよ、それは」
「隠し通路です」
にっこりと笑みを浮かべて振り返る。そこに大人が一人通れる大きな穴が出来上がる。
「ユサにいつ閉じ込められるか分からない身だったものでね、僕も」
それだけいうと、滑るようにイートンは中へ飛び込んだ。
日の暮れた研究室で、男は実験台の前を行ったり来たりした。
しかし、その紫の瞳がビーカーの中におちる抽出液から離れることは無かった。
コンコン。
ドアが遠慮がちにたたかれる。
「伯父さん・・・?」
小さな声がドア越しに聞こえた。
その声に全く覚えは無いが、どうやら自分の甥らしい。
「僕です、イートンですってば」
「知らん」
そっけなく言ってみれば、扉の前の主は大きな音を立てて扉を開けた。
しまった、鍵をかけるのを忘れた。
「お久しぶりですね」
「記憶に無いな」
伸び放題の黒い髪をガシガシとかく。今は実験に夢中なのだ、そんな甥に構う余裕など無い。
「そうですかぁ・・・この青と赤の液体、綺麗ですね」
背後で困ったように首をかしげたのが分かった。ランプに照らされた影がちょこんと動いたのである。
「混ぜたら紫になるのかな」
「ちょ!??まてっ!!」
男は慌てて振り返る。そんなことしたら実験室はおろかここいら一面が消滅する。
「冗談ですよ、やだなぁ、伯父さん」
「この悪童めッ」
吐き捨てると男は実験台から離れる。そこには金髪の、母親似の顔があった。
「俺の妹は元気か?」
「ふ~ん、ここはちょうど、ヴェルン湖に位置する」
イートンが持ってきた本を見ながら伯父はまた行ったり来たりし始めた。相変わらず止まる事を知らない人だ。
「ヴェルン湖っていうんですか?あの湖は」
イートンは驚いて顔を上げる。この土地の人間は村外れの湖としか呼ばない。
「あぁ。学術的にってやつだな。名前なんて無くたって存在してるんだ。物ってのは」
「名前は力ですよ。軽視するものではない」
モノ書きのイートンとしては見逃し難い言葉だ。
「でも、今更行っても無駄だと思うがな」
喧嘩腰のイートンを気にもせず、伯父は肩をすくめる。
「どうしてです?」
「あそこは一度水を抜いて一大発掘が行われてるんだ。お探しの品はもう無いだろう」
「えぇ!?いつ?発掘品はどこに行ったんですか??」
「つい最近だ。場所って言えば、そりゃ決まってるだろ・・・。アノ市長のところだよ」
「アノ市長ですか・・・・」
そして二人の間に気まずい沈黙がおりた。
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