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PC 八重 イートン (ニーツ)
場所 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン
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金目の少年魔族は、二人を見てにっこりと笑った。相変わらず、歌うように言葉を紡ぐ。
「オジサンたち、ハンターなの?」
「お前が、ベル=リアン?」
八重が慌てて彼から離れると、警戒の眼差しをむけた。少年は、立ち上がってこちらの方へ向き直り、麦藁帽子を跳ね飛ばす。黒に近い、深い緑の髪が湖を渡る風に揺れた。
イートンがいたら、『可愛い!』とか言って騒ぐだろうな、とこっそりと心の中でニーツは思った。金色の瞳は、魔族の中ではよくある物だ。
「そうだよ。オジサンたち、僕を殺しに来たんでしょう?だったら…」
ベル=リアンがそう言うと、ザワリと、空気が揺れた。
「死んじゃいなよ!!」
火が突然巻き起こり、敵意をもって八重に向かって疾る。だが、彼に到達する前に、霧散した。
「…!ニーツ!!」
いつの間にか八重の隣に移動していたニーツが、振るった手を引っ込めながら、目を細めて呟いた。
「性質の悪い子供だ…」
「…あれも、私より年上とか、そういうことはないだろうね?」
「正真正銘の子供だ。人を殺したり、破壊する事しか考えていない。恐らく、20歳にもなっていないだろうな。赤子のようなものだ。魔力も、大したものじゃない。…まあ、俺のようにこの姿で留まっている方が、本当は珍しいんだけどな」
「あれ?綺麗なお姉…えと、お兄ちゃん…かな?も魔族なの?珍しいね」
一瞬、自分の攻撃が防がれたことに目を瞠ったベル=リアンだったが、すぐに好奇の眼差しをニーツに向ける。
「ね、ね、名前はなんて言うの?せっかく会えたんだから、教えてよ」
「お前などに教える義理は…」
「コイツはニーツという」
「…おい」
ニーツの拒絶の言葉を遮って、八重が少年の質問に答えた。ニーツは、半眼で八重を睨む。ベル=リアンは、ニーツの名前を聞いて、パッと顔を輝かせた。
「え?え?ニーツ?って、あのニーツ!?」
「…お前がどのニーツのことを言っているのか知らないが、多分そのニーツだと思うが」
「ホント?ホント!?本物?うわ~会えるなんて凄い!!」
「ほう。有名人なのか?お前」
うんざりとした顔で腕を組むニーツの横で、八重が尋ねる。
「……長生きすると色々あるんだよ」
「へえ。お前も何かしたのか?コイツのように強盗とか、同族殺したとか、女癖が悪くて有名だと…」
-ドガッ-
八重の後頭部に、衝撃が来た。何か堅い物がぶち当てられたようだ。一瞬、八重の目の前に火花が散る。
「…失礼な」
頭に当たった物は、そのまま落ちずにニーツの手の中に舞い戻り、消える。
「おま…それ…ほ…ん…」
後頭部の痛みに顔をしかめながら、八重がたどたどしく抗議する。ニーツが八重に当てた物は、あの図書館で借りた本だった。実はもう借りてから3日過ぎているのだが、イ-トンがまだ読み切っていない、という理由でまだ返してきていなかったのだ。今一冊はイ-トンが持っており、ニーツが持っているのは、あの分厚い方だった。ついでに言うと、装丁はものすごく堅い。
どうやら、身長差を考えて直接頭をはたくのは無理、と判断し、魔力を使って本を彼の後頭部に落としたのだろう。きちんと八重は腹部をガードしていたのだが、無駄になった。
「あはは。仲がいいね」
『何処が』
ベル=リアンの台詞に、二人の言葉がはもる。それを聞いてますます少年魔族は笑い転げた。
「ニーツさんって、もっと大人で気難しいと思っていましたよ。僕、うちのじいさんたちに良く話聞いてました」
「じいさん…」
思わず、八重は口の端をひくつかせる。ニーツは自分の年齢を三桁だと言っていたが、一体何歳なのだろうか?
それに、ベル=リアンの言葉づかいが丁寧になっている事にも驚いた。
「何で人間なんかとつるんでるんですか?」
「別に。単なる気まぐれだ」
鬱陶しそうに、ニーツは答えるが、ベル=リアンは上機嫌の様子で尚も話し掛けてくる。
「それでも勿体ないですよ。ねえ、僕達と一緒に来ないですか?楽しいですよ」
「人を苛めるのが?」
「そうです。あいつら、弱っちいんだもん」
アハハと笑うベル=リアンに、冷たい視線を送りながら、ニーツは腕を外し、右手を腰に当てた。
「断る。お前みたいなやつが、一番嫌いだ」
「そうですか。残念ですね。じゃあ、戦うしかないじゃないですか」
「…お前ごときが、俺に勝てると思っているのか?」
「僕じゃあ、無理でしょうね。でも、兄なら、きっと可能です。僕は足止めするだけでいい」
「兄、だと…?」
片眉を跳ね上げて、八重が反応する。
「さっきも思ったが、魔族にも兄とかいるのか?」
「当たり前だろう。人間達は俺達に偏見持ちすぎだ」
「ふうん。思っていたより人間に近いのだな。ということは、お前にも家族とかいるのか?」
「さあな」
八重の質問に、ニーツは肩をすくめて答える。
「そんなことより、何かしてくるぞ」
ニーツの目は、ベル=リアンの周りに集まる魔力の流れを捉えていた。
大した相手ではない、とは言っても、人間はもとより、そこら辺にいる雑魚魔族に比べれば、格段に魔力は高い。何をやってきてもおかしくない。
「それじゃあ、行っきま~す!!」
PC 八重 イートン (ニーツ)
場所 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン
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金目の少年魔族は、二人を見てにっこりと笑った。相変わらず、歌うように言葉を紡ぐ。
「オジサンたち、ハンターなの?」
「お前が、ベル=リアン?」
八重が慌てて彼から離れると、警戒の眼差しをむけた。少年は、立ち上がってこちらの方へ向き直り、麦藁帽子を跳ね飛ばす。黒に近い、深い緑の髪が湖を渡る風に揺れた。
イートンがいたら、『可愛い!』とか言って騒ぐだろうな、とこっそりと心の中でニーツは思った。金色の瞳は、魔族の中ではよくある物だ。
「そうだよ。オジサンたち、僕を殺しに来たんでしょう?だったら…」
ベル=リアンがそう言うと、ザワリと、空気が揺れた。
「死んじゃいなよ!!」
火が突然巻き起こり、敵意をもって八重に向かって疾る。だが、彼に到達する前に、霧散した。
「…!ニーツ!!」
いつの間にか八重の隣に移動していたニーツが、振るった手を引っ込めながら、目を細めて呟いた。
「性質の悪い子供だ…」
「…あれも、私より年上とか、そういうことはないだろうね?」
「正真正銘の子供だ。人を殺したり、破壊する事しか考えていない。恐らく、20歳にもなっていないだろうな。赤子のようなものだ。魔力も、大したものじゃない。…まあ、俺のようにこの姿で留まっている方が、本当は珍しいんだけどな」
「あれ?綺麗なお姉…えと、お兄ちゃん…かな?も魔族なの?珍しいね」
一瞬、自分の攻撃が防がれたことに目を瞠ったベル=リアンだったが、すぐに好奇の眼差しをニーツに向ける。
「ね、ね、名前はなんて言うの?せっかく会えたんだから、教えてよ」
「お前などに教える義理は…」
「コイツはニーツという」
「…おい」
ニーツの拒絶の言葉を遮って、八重が少年の質問に答えた。ニーツは、半眼で八重を睨む。ベル=リアンは、ニーツの名前を聞いて、パッと顔を輝かせた。
「え?え?ニーツ?って、あのニーツ!?」
「…お前がどのニーツのことを言っているのか知らないが、多分そのニーツだと思うが」
「ホント?ホント!?本物?うわ~会えるなんて凄い!!」
「ほう。有名人なのか?お前」
うんざりとした顔で腕を組むニーツの横で、八重が尋ねる。
「……長生きすると色々あるんだよ」
「へえ。お前も何かしたのか?コイツのように強盗とか、同族殺したとか、女癖が悪くて有名だと…」
-ドガッ-
八重の後頭部に、衝撃が来た。何か堅い物がぶち当てられたようだ。一瞬、八重の目の前に火花が散る。
「…失礼な」
頭に当たった物は、そのまま落ちずにニーツの手の中に舞い戻り、消える。
「おま…それ…ほ…ん…」
後頭部の痛みに顔をしかめながら、八重がたどたどしく抗議する。ニーツが八重に当てた物は、あの図書館で借りた本だった。実はもう借りてから3日過ぎているのだが、イ-トンがまだ読み切っていない、という理由でまだ返してきていなかったのだ。今一冊はイ-トンが持っており、ニーツが持っているのは、あの分厚い方だった。ついでに言うと、装丁はものすごく堅い。
どうやら、身長差を考えて直接頭をはたくのは無理、と判断し、魔力を使って本を彼の後頭部に落としたのだろう。きちんと八重は腹部をガードしていたのだが、無駄になった。
「あはは。仲がいいね」
『何処が』
ベル=リアンの台詞に、二人の言葉がはもる。それを聞いてますます少年魔族は笑い転げた。
「ニーツさんって、もっと大人で気難しいと思っていましたよ。僕、うちのじいさんたちに良く話聞いてました」
「じいさん…」
思わず、八重は口の端をひくつかせる。ニーツは自分の年齢を三桁だと言っていたが、一体何歳なのだろうか?
それに、ベル=リアンの言葉づかいが丁寧になっている事にも驚いた。
「何で人間なんかとつるんでるんですか?」
「別に。単なる気まぐれだ」
鬱陶しそうに、ニーツは答えるが、ベル=リアンは上機嫌の様子で尚も話し掛けてくる。
「それでも勿体ないですよ。ねえ、僕達と一緒に来ないですか?楽しいですよ」
「人を苛めるのが?」
「そうです。あいつら、弱っちいんだもん」
アハハと笑うベル=リアンに、冷たい視線を送りながら、ニーツは腕を外し、右手を腰に当てた。
「断る。お前みたいなやつが、一番嫌いだ」
「そうですか。残念ですね。じゃあ、戦うしかないじゃないですか」
「…お前ごときが、俺に勝てると思っているのか?」
「僕じゃあ、無理でしょうね。でも、兄なら、きっと可能です。僕は足止めするだけでいい」
「兄、だと…?」
片眉を跳ね上げて、八重が反応する。
「さっきも思ったが、魔族にも兄とかいるのか?」
「当たり前だろう。人間達は俺達に偏見持ちすぎだ」
「ふうん。思っていたより人間に近いのだな。ということは、お前にも家族とかいるのか?」
「さあな」
八重の質問に、ニーツは肩をすくめて答える。
「そんなことより、何かしてくるぞ」
ニーツの目は、ベル=リアンの周りに集まる魔力の流れを捉えていた。
大した相手ではない、とは言っても、人間はもとより、そこら辺にいる雑魚魔族に比べれば、格段に魔力は高い。何をやってきてもおかしくない。
「それじゃあ、行っきま~す!!」
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