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PC 八重・ニーツ・(イートン)
場所 メイルーンの西 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン
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場所はメイルーンの西・・・・。
「魔族ベル=リアン、か・・・」
ユサからもらった手配書の写しを見ながら八重が呟く。どこまでもヒースが咲き誇る、そのほかには何もない道。そこを八重とニーツは二人並んで歩いていた。目指すは西。ヴェルンのあった方向だ。そこに今二人が狙う賞金首が潜んでいる。
「ふぅん、ここ一ヶ月のうちに放火、殺人、強盗、か。たいしたやつだ」
「バカな魔族の一人だな。何も考えずに暴れるバカは嫌いだ」
「ほう、では私のことも嫌いか?」
その質問にニーツは八重のほうを見た。
「私は<ウサギ>だからな。私こそお前の言う<何も考えず暴れるバカ>、だ」
「・・・お前、何が言いたい」
すっとニーツは八重を見つめる。そんなニーツに八重はふっと笑って言った。
「別に深い意味はないさ。ただ、お前が私をどう思っているか気になっただけだ」
「そんなことをお前が気にする必要はない。俺はお前という人間が面白いからついてきているだけだ。特に仲間意識もない」
「ふうん、そうかね・・・」
それきり二人の会話はぷっつりと途切れた。互いに黙々と歩くだけで、会話を交わそうともしない。こうして並んで歩いている今、二人の関係があらためて浮き彫りになった。二人をつなぐものは結局イートンだったのだ。イートンがいない今、互いに己が道を歩くタイプである二人の接点は皆無に等しい。
しかし、魔族のニーツはどうとして、人間である八重にとって、どこまでも長い道のりを、ただ会話もなく黙々と歩くことは苦痛だった。雰囲気がどうにも気まずく、落ち着かないのだ。
(全く・・・、イートンは今頃どうしているだろうな・・・)
空を見上げ、八重は思わずふうとため息をついた。今頃、彼はどんな気持ちで二人の帰りを待っていることだろう。
(アイツがいないと、どうも雰囲気が落ち着かんな)
おもむろに八重はタバコを取り出すとトントン、と箱をたたいてタバコを一本取り出した。ボシュっとオイルライターで火をつける。
「・・・何だ、そのニオイは」
ふいにニーツがタバコに興味を示しだした。
「あまり嗅がないニオイだ」
「これかね?これは私の愛用している<アイボリー・グレイ>という煙草だ。・・・この煙草は輸入物だから、あまり嗅がないニオイで当然だな」
「<アイボリー・グレイ>か・・・」
しばらく何か考え込むような仕草をした後、ニーツは言った。
「俺も吸う」
「は?」
思わず八重はタバコを落としそうになった。
「俺も吸う。俺にもくれ」
「・・・いくら魔族でも、さすがに子供に煙草をすすめる気にはならないな」
「子供?」
今度はニーツが顔をしかめた。
「俺は子供じゃない。人間なんかよりずっと年上だ」
唖然としている表情の八重に、ニーツはなおも言う。
「まあ、人間のお前が勘違いするのも無理ないと思うが、俺の歳は少なくとも三桁はある。お前はせいぜい四十かそこらだろう?お前なんかより、俺はずっと年上だ」
しかし、なおも不審そうな表情が消えない八重にニーツは言う。
「いいか、魔族だって子供のときは弱い。歳をとるたびに魔力が強くなっていくんだ。俺の魔力が、子供のものだと思うか?」
八重は首を振った。
「解っただろう?解ったら早くそれをくれ」
「解ったよ・・・」
半信半疑で、八重はニーツにタバコを差し出した。渋々火をつけてやる。
「これを・・・、どうするんだ?」
「煙をこう、肺まで吸い込むんだ」
そう言って、八重は煙を吸い込んでみせる。ニーツも真似をして煙を吸い込む。
「・・・うっ、ゲホゲホっ!!ゴホっ!!」
「お、おい、大丈夫か、ニーツ?」
「う・・・煩い・・・、ゴホっ!!」
八重はあらためて、ニーツに<アイボリー・グレイ>がキツめのタバコだということを忠告しておかなかったことを後悔した。むせるニーツはとても苦しそうだ。しかし、八重が助けようとすると、意地を張って傍に近寄らせまいとする。
「ふ・・・、クククっ・・・」
ふいに八重は笑い出した。年上だと言い張り、口では意地張っててもタバコに弱いニーツのことがとても可笑しくなったのだ。
「わ、笑うなッ・・・ケホっ!!」
「ふふっ、やっぱりお前は子供だよ、ニーツ。・・・ふふっ、はははっ」
「笑うなと言って・・・ゲホゲホっ!!」
「ああ、君にはやはりタバコはまだ早かったな。悪かった、悪かった」
「だから!子ども扱いするな!!ゲホっ!!」
むせるニーツの背中を、しばらく八重はうれしそうにとんとんとさすり続けていた。
荒地の中の道を西に歩きつづけて二時間半。たどり着いた場所は、大きな湖だった。
「丁度よかった。ここで一休みするか。たぶんヴェルンまではまだしばらくはかかるだろうしな」
湖の傍に気持ちよさそうな木陰を見つけ、八重が提案すると、ニーツも
「そうだな」
と、あっさりと承諾してくれた。
ふと、二人は湖の岸辺に座る一人の少年を見つけた。その少年は麦藁帽子をかぶり、釣りをしている様子だ。
「やあ、釣れているかね?」
興味を持って八重は少年に話しかけた。
「君はこの近くに住んでいるのかな?だったら、ここからヴェルンまでどのくらいかかるか教えてもらいたいのだが」
「ここがヴェルンだよ」
八重の方を見ようともせずに少年が答える。
「昔はヴェルンだったんだけど、今は湖になってるんだ。今はここは<ヴェルン湖>っていう」
「そんな・・・、それは本当かね?」
思わず少年の肩を掴んで振り向かせた八重は息を呑んだ。
「お前・・・」
「あれ、ひょっとしてオジサンたち僕のこと探してたの?」
見つめる少年の瞳は獣のような金色をしていた。少年は歌うように言う。
「僕が魔族ベル=リアンだからかな?」
PC 八重・ニーツ・(イートン)
場所 メイルーンの西 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン
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場所はメイルーンの西・・・・。
「魔族ベル=リアン、か・・・」
ユサからもらった手配書の写しを見ながら八重が呟く。どこまでもヒースが咲き誇る、そのほかには何もない道。そこを八重とニーツは二人並んで歩いていた。目指すは西。ヴェルンのあった方向だ。そこに今二人が狙う賞金首が潜んでいる。
「ふぅん、ここ一ヶ月のうちに放火、殺人、強盗、か。たいしたやつだ」
「バカな魔族の一人だな。何も考えずに暴れるバカは嫌いだ」
「ほう、では私のことも嫌いか?」
その質問にニーツは八重のほうを見た。
「私は<ウサギ>だからな。私こそお前の言う<何も考えず暴れるバカ>、だ」
「・・・お前、何が言いたい」
すっとニーツは八重を見つめる。そんなニーツに八重はふっと笑って言った。
「別に深い意味はないさ。ただ、お前が私をどう思っているか気になっただけだ」
「そんなことをお前が気にする必要はない。俺はお前という人間が面白いからついてきているだけだ。特に仲間意識もない」
「ふうん、そうかね・・・」
それきり二人の会話はぷっつりと途切れた。互いに黙々と歩くだけで、会話を交わそうともしない。こうして並んで歩いている今、二人の関係があらためて浮き彫りになった。二人をつなぐものは結局イートンだったのだ。イートンがいない今、互いに己が道を歩くタイプである二人の接点は皆無に等しい。
しかし、魔族のニーツはどうとして、人間である八重にとって、どこまでも長い道のりを、ただ会話もなく黙々と歩くことは苦痛だった。雰囲気がどうにも気まずく、落ち着かないのだ。
(全く・・・、イートンは今頃どうしているだろうな・・・)
空を見上げ、八重は思わずふうとため息をついた。今頃、彼はどんな気持ちで二人の帰りを待っていることだろう。
(アイツがいないと、どうも雰囲気が落ち着かんな)
おもむろに八重はタバコを取り出すとトントン、と箱をたたいてタバコを一本取り出した。ボシュっとオイルライターで火をつける。
「・・・何だ、そのニオイは」
ふいにニーツがタバコに興味を示しだした。
「あまり嗅がないニオイだ」
「これかね?これは私の愛用している<アイボリー・グレイ>という煙草だ。・・・この煙草は輸入物だから、あまり嗅がないニオイで当然だな」
「<アイボリー・グレイ>か・・・」
しばらく何か考え込むような仕草をした後、ニーツは言った。
「俺も吸う」
「は?」
思わず八重はタバコを落としそうになった。
「俺も吸う。俺にもくれ」
「・・・いくら魔族でも、さすがに子供に煙草をすすめる気にはならないな」
「子供?」
今度はニーツが顔をしかめた。
「俺は子供じゃない。人間なんかよりずっと年上だ」
唖然としている表情の八重に、ニーツはなおも言う。
「まあ、人間のお前が勘違いするのも無理ないと思うが、俺の歳は少なくとも三桁はある。お前はせいぜい四十かそこらだろう?お前なんかより、俺はずっと年上だ」
しかし、なおも不審そうな表情が消えない八重にニーツは言う。
「いいか、魔族だって子供のときは弱い。歳をとるたびに魔力が強くなっていくんだ。俺の魔力が、子供のものだと思うか?」
八重は首を振った。
「解っただろう?解ったら早くそれをくれ」
「解ったよ・・・」
半信半疑で、八重はニーツにタバコを差し出した。渋々火をつけてやる。
「これを・・・、どうするんだ?」
「煙をこう、肺まで吸い込むんだ」
そう言って、八重は煙を吸い込んでみせる。ニーツも真似をして煙を吸い込む。
「・・・うっ、ゲホゲホっ!!ゴホっ!!」
「お、おい、大丈夫か、ニーツ?」
「う・・・煩い・・・、ゴホっ!!」
八重はあらためて、ニーツに<アイボリー・グレイ>がキツめのタバコだということを忠告しておかなかったことを後悔した。むせるニーツはとても苦しそうだ。しかし、八重が助けようとすると、意地を張って傍に近寄らせまいとする。
「ふ・・・、クククっ・・・」
ふいに八重は笑い出した。年上だと言い張り、口では意地張っててもタバコに弱いニーツのことがとても可笑しくなったのだ。
「わ、笑うなッ・・・ケホっ!!」
「ふふっ、やっぱりお前は子供だよ、ニーツ。・・・ふふっ、はははっ」
「笑うなと言って・・・ゲホゲホっ!!」
「ああ、君にはやはりタバコはまだ早かったな。悪かった、悪かった」
「だから!子ども扱いするな!!ゲホっ!!」
むせるニーツの背中を、しばらく八重はうれしそうにとんとんとさすり続けていた。
荒地の中の道を西に歩きつづけて二時間半。たどり着いた場所は、大きな湖だった。
「丁度よかった。ここで一休みするか。たぶんヴェルンまではまだしばらくはかかるだろうしな」
湖の傍に気持ちよさそうな木陰を見つけ、八重が提案すると、ニーツも
「そうだな」
と、あっさりと承諾してくれた。
ふと、二人は湖の岸辺に座る一人の少年を見つけた。その少年は麦藁帽子をかぶり、釣りをしている様子だ。
「やあ、釣れているかね?」
興味を持って八重は少年に話しかけた。
「君はこの近くに住んでいるのかな?だったら、ここからヴェルンまでどのくらいかかるか教えてもらいたいのだが」
「ここがヴェルンだよ」
八重の方を見ようともせずに少年が答える。
「昔はヴェルンだったんだけど、今は湖になってるんだ。今はここは<ヴェルン湖>っていう」
「そんな・・・、それは本当かね?」
思わず少年の肩を掴んで振り向かせた八重は息を呑んだ。
「お前・・・」
「あれ、ひょっとしてオジサンたち僕のこと探してたの?」
見つめる少年の瞳は獣のような金色をしていた。少年は歌うように言う。
「僕が魔族ベル=リアンだからかな?」
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