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2025/03/10 12:15 |
13.夢から覚めて/イートン(千鳥)
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PC  八重 イートン ニーツ  
場所  エルフの森・幻影世界
NPC オベロン・ティターニア
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 あの日の事を日記に書くことは無かった
 しかし、その後に続くのは悪夢であった・・・。
 
 瞼を開ければ、そこは不思議な空間だった。
 母親の子宮のように、水に満たされ遮断された世界。ここから出なければ、自分は傷つけられることも無いだろう。外部の悪意に触れることも・・・。
「さっさと目を覚ませ。八重!」
 ニーツの声が耳に届き、イートンの頭はクリアになった。見るとニーツが八重が包まれた膜に手を触れている。彼の夢に干渉しているのだろう。
「ダメだなぁ」
 クスリ。持っていた短刀の刃を容赦なく膜に立てる。ズブリ。内側からは意外なほどに柔らかい。そして、イートンはその手に掴んでいたモノを引き上げる。
その手は、短刀を持っていたのとは、反対の手であった。

「何なのこの子!?」
 殴られ赤くなった頬を押えてエンジが叫んだ。
「ふん、まだそんな猿芝居を続けるつもりか?」
 再び手を上げたニーツにエンジが八重の名を呼んだ。
 パシッ。 
 思わず手を掴むと少年とまともに目が合った。冷たさを宿した赤と青の不思議な色の瞳がふと緩む。
「なんて顔をしてるんだ?」
「え・・・」
 自分は、エンジが殴られて・・・彼女を守らなくてはいけなくて・・・。
「今にも泣きそうだ」
「騙されないでッ!こんな子殺しちゃってよ」
(誰が・・・誰を殺す?)

 死ぬのは・・・死んだのは、誰だ?

「分かったよ、エンジ・・・」
 幸せな“今”を守るためなら、自分は何も厭わない。八重はニーツを掴んだまま左手に力をこめた。そして、
「え・・?」
 後方にいたエンジが強く地面に叩き付けられた。
「な・・・や、八重ちゃん?」
 その口から赤い血が滴り落ちる。こんな光景を二度と自分は見たくなかったのに。しかし、守れる“今”は存在しないのだ。それはもう“過去”のことだから

「やっと目が覚めたか、馬鹿者が」
 八重の手に<ルナ>の力が宿った瞬間に彼の覚醒は察知できた。ニーツが鼻を鳴らした。
「その顔は不快だ。さっさと正体を現せ」
 もう彼女の顔に惑わされたりしない。八重はエンジを見下ろした。

「駄目じゃないですか、八重さん。女性にそんな乱暴な」
「「イートン!?」」
 二人が振り向くと、そこにはイートンが立っていた。
 彼の膜に触れた途端、強い拒絶にあったニーツは仕方がなく八重のほうから取り掛かったのだ。ニッコリと笑みを浮かべてイートンは立っていた。
 しかし、そんなイートンの様子は彼の言葉とは180度ズレていた・・・。
「オベロンさん、いいかげんにしないと細君の命は無いですよ」
 短刀はピッタリと女の首に当てられていた。気を失っているらしい美女はこの森の王妃、ティターニアであろう。
「自力で悪夢から脱け出すとはな・・・」
 エンジの姿をとったまま、オベロンが口を開いた。
「僕はね、夢で起きたことを全て書き記すことにしてるんです」
 クーロンで会った夢解き師が言った言葉を繰り返す。 
「悪夢も全て、ネタになりますから」
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2007/02/17 22:48 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

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