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PC イートン ニーツ (八重)
場所 エルフの森・幻影世界
NPC フェアリー・(オベロン・ティターニア)・幻影達
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意味もなく人殺しをしない。ということは、逆を言えば意味があれば人殺しをする、という事で…
ついでに言うと、先程『躊躇いはしない』とはっきりと言っていたし。
結論を言うと、このままでいくと確実に――殺される。
「あ…あの、ニーツ…君、これはですね…。あの…」
-バチン-
慌てて手を離したイートンの顔のすぐ横で、火花、いや、雷撃が弾けた。ヒッっと思わずイートンは声を詰まらせる。
(おおお…怒ってる~!?)
イートンは心の中で叫び声をあげた。見るからに、ニーツは怒っている。それを更に煽る様に、クスクスと耳障りなフェアリー達の笑い声が響く。
-殺しちゃいなさい…さあ、早く…-
「うるさい…」
低い声でニーツが呟くと、一気にニーツの魔力が膨れ上がった。あちこちで雷撃が起き、フェアリーの声が聞こえた周辺の木々が、一気に炭と化した。下手したら森一つ消し去るほどの魔力の具現に、流石にフェアリー達も言葉をなくす。
(き…切れてる…!!完全に)
「俺が今、一番気に入らないのは、お前達だ…。その笑い、不快だ」
フェアリーたちに向かって言い放つニーツの瞳に、暗い光が一瞬閃いた。だが無論、イートンに、そのようなことに気付く余裕などない。
今や、この空間はニーツが支配していた。此処にいるすべての者の命をニーツ一人が握っているような状態だ。
だが…
―オベロン様~ティターニア様~!!―
フェアリーの一人が、恐怖に耐えかねて、森の主達の名を呼ぶ。その瞬間、辺りにピンク色の霧が突然発生した。
イートンはキョトンとし、ニーツはハッと我に返ったが、遅かった。
二人は成す術もなく、術中に捕らわれていた。
何かから逃げるように、ニーツは一人、走っていた。息が切れ、汗がにじみ、長い髪があちこちに張り付いて鬱陶しい。
「あ…っ」
何かに躓いた様に、ニーツは転んだ。
小さな自分の手が見える。本当に小さく、無力な。
―クスクス…ほら、あれだよ…―
―男でも女でもないの…?気持ち悪いなぁ―
―それにあの目の色…変なの~―
「嫌だ…私は…」
囁かれる言葉に、ニーツは耳をふさいで蹲る。しかし、手と髪の毛の壁を通してさえ、彼らの嘲笑が消えることは無い。頭の中に直接届く響くように、耳の奥へと入り込んでくる。ニーツが耐えかねて、叫びだしそうになった瞬間、フッと、ニーツの頭に、そっと誰かの手が添えられた。その途端、ニーツを苛んでいた『声』がぴたりと止む。顔をあげると、男の影が、そこにあった。逆光で顔は見えないが、優しげな気配が伝わってくる。
「また、苛められたのか?」
若い、男の声が降って来る。男の手は、優しくニーツの髪を梳いた。
暖かい手。
(いつも、私を安心させてくれる手…)
(でも、俺は、知らない手…記憶にない…)
急速に、”今”のニーツの意識が浮かび上がる。そして。
「誰だ?お前…」
身体も、元のニーツの姿へと変化する。冷ややかな瞳で男の影を見据え、トンッっと指で突く。
「消えろ」
-ピキン-
男の影に、亀裂が入った。それはどんどん広がっていき、最後には、跡形もなく影は消え失せる。
「…悪いが、昔のことは憶えてない。惑わされる事もない」
それでも一瞬、ニーツの胸に、チクリと痛みが走ったが、ニーツは無視して立ち上がった。
長かった髪と同時に、切り離した過去から、目を背ける。辺りを見回すと、不思議な空間だった。グニャグニャとした、定まらない空間。
幻影を操るオベロンと、記憶を操るティタ-ニアの、多重幻影空間である。憶えてないこととはいえ、記憶を覗き見られたことに、ニーツは不快感を覚えた。
「この空間…さっさと壊して外に出るか…」
そう、呟いて、その為の魔力を練り上げようとしたとき、ニーツはある物を見つけて、その作業を中断した。空間に浮かぶ、いくつかの球体。その中の二つに、見知った顔が閉じこめられていた。
フッと、ニーツは溜め息をつく。
「…そういえば、こいつらも居たな…」
八重とイ-トン。どうやら、散らばった筈の三人は、オベロン達によって此処に集められたようだ。向こうにとって、一気にいたぶれて都合がいいわけだが、こちらにとっても、何かと都合がいい。
二人は今、さぞかし良い夢を見ているのだろう。良い夢を見ながら、生気を吸い取られ、やがて緩慢に死に向かう-はっきり言って、悪趣味だ。
(過去に捕らわれていたって、何もできやしないのに…)
心の中で独りごち、一度目を閉じる。
そして一瞬迷った後、どちらかというと近い方にいた、イ-トンが閉じこめられている檻へと、足を向けた。
PC イートン ニーツ (八重)
場所 エルフの森・幻影世界
NPC フェアリー・(オベロン・ティターニア)・幻影達
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意味もなく人殺しをしない。ということは、逆を言えば意味があれば人殺しをする、という事で…
ついでに言うと、先程『躊躇いはしない』とはっきりと言っていたし。
結論を言うと、このままでいくと確実に――殺される。
「あ…あの、ニーツ…君、これはですね…。あの…」
-バチン-
慌てて手を離したイートンの顔のすぐ横で、火花、いや、雷撃が弾けた。ヒッっと思わずイートンは声を詰まらせる。
(おおお…怒ってる~!?)
イートンは心の中で叫び声をあげた。見るからに、ニーツは怒っている。それを更に煽る様に、クスクスと耳障りなフェアリー達の笑い声が響く。
-殺しちゃいなさい…さあ、早く…-
「うるさい…」
低い声でニーツが呟くと、一気にニーツの魔力が膨れ上がった。あちこちで雷撃が起き、フェアリーの声が聞こえた周辺の木々が、一気に炭と化した。下手したら森一つ消し去るほどの魔力の具現に、流石にフェアリー達も言葉をなくす。
(き…切れてる…!!完全に)
「俺が今、一番気に入らないのは、お前達だ…。その笑い、不快だ」
フェアリーたちに向かって言い放つニーツの瞳に、暗い光が一瞬閃いた。だが無論、イートンに、そのようなことに気付く余裕などない。
今や、この空間はニーツが支配していた。此処にいるすべての者の命をニーツ一人が握っているような状態だ。
だが…
―オベロン様~ティターニア様~!!―
フェアリーの一人が、恐怖に耐えかねて、森の主達の名を呼ぶ。その瞬間、辺りにピンク色の霧が突然発生した。
イートンはキョトンとし、ニーツはハッと我に返ったが、遅かった。
二人は成す術もなく、術中に捕らわれていた。
何かから逃げるように、ニーツは一人、走っていた。息が切れ、汗がにじみ、長い髪があちこちに張り付いて鬱陶しい。
「あ…っ」
何かに躓いた様に、ニーツは転んだ。
小さな自分の手が見える。本当に小さく、無力な。
―クスクス…ほら、あれだよ…―
―男でも女でもないの…?気持ち悪いなぁ―
―それにあの目の色…変なの~―
「嫌だ…私は…」
囁かれる言葉に、ニーツは耳をふさいで蹲る。しかし、手と髪の毛の壁を通してさえ、彼らの嘲笑が消えることは無い。頭の中に直接届く響くように、耳の奥へと入り込んでくる。ニーツが耐えかねて、叫びだしそうになった瞬間、フッと、ニーツの頭に、そっと誰かの手が添えられた。その途端、ニーツを苛んでいた『声』がぴたりと止む。顔をあげると、男の影が、そこにあった。逆光で顔は見えないが、優しげな気配が伝わってくる。
「また、苛められたのか?」
若い、男の声が降って来る。男の手は、優しくニーツの髪を梳いた。
暖かい手。
(いつも、私を安心させてくれる手…)
(でも、俺は、知らない手…記憶にない…)
急速に、”今”のニーツの意識が浮かび上がる。そして。
「誰だ?お前…」
身体も、元のニーツの姿へと変化する。冷ややかな瞳で男の影を見据え、トンッっと指で突く。
「消えろ」
-ピキン-
男の影に、亀裂が入った。それはどんどん広がっていき、最後には、跡形もなく影は消え失せる。
「…悪いが、昔のことは憶えてない。惑わされる事もない」
それでも一瞬、ニーツの胸に、チクリと痛みが走ったが、ニーツは無視して立ち上がった。
長かった髪と同時に、切り離した過去から、目を背ける。辺りを見回すと、不思議な空間だった。グニャグニャとした、定まらない空間。
幻影を操るオベロンと、記憶を操るティタ-ニアの、多重幻影空間である。憶えてないこととはいえ、記憶を覗き見られたことに、ニーツは不快感を覚えた。
「この空間…さっさと壊して外に出るか…」
そう、呟いて、その為の魔力を練り上げようとしたとき、ニーツはある物を見つけて、その作業を中断した。空間に浮かぶ、いくつかの球体。その中の二つに、見知った顔が閉じこめられていた。
フッと、ニーツは溜め息をつく。
「…そういえば、こいつらも居たな…」
八重とイ-トン。どうやら、散らばった筈の三人は、オベロン達によって此処に集められたようだ。向こうにとって、一気にいたぶれて都合がいいわけだが、こちらにとっても、何かと都合がいい。
二人は今、さぞかし良い夢を見ているのだろう。良い夢を見ながら、生気を吸い取られ、やがて緩慢に死に向かう-はっきり言って、悪趣味だ。
(過去に捕らわれていたって、何もできやしないのに…)
心の中で独りごち、一度目を閉じる。
そして一瞬迷った後、どちらかというと近い方にいた、イ-トンが閉じこめられている檻へと、足を向けた。
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