忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/16 19:11 |
1.イートン旅立つ/イートン(千鳥)
-------------------------------------------------------
PC:イートン
NPC:メリーディア
場所:フレデリアのアレイド家邸宅
----------------------------------------

――ごめんなさいっ、ごめんなさい、イートン!
 
 そう言って、涙を流すメリーディアの服はいつもの上等なドレスでは無かった。色 褪せたその服でさえ、彼女の美しさを遜色させることは無かった。私たちは愛し合っ ていたわけではない。唇さえ触れたことは無い。それは、自分達の将来が全て決められ ていたからだ。

――私、好きな人が出来たの。貴族ではないけれど・・・

 私だって、貴族なんて言えるもんか。
兄も、家の者も誰も私の事など認めてはいない。しかし言葉は出なかった。

――幸せになるわ、必ず。さようならイートン。

 さようなら、メリーディア・・・

 ・・・・それから2年が過ぎた・・・・・
 
 ごそっ。
 アレイド邸の閲覧室で何かが動いた。それが大きく波うつ。膨大な図書の中で動く。 それは、まるで本のお化けのようだ。
「もう、朝か」
 イートンは包まっていた毛布を勢い良く蹴飛ばした。小さな埃を舞い上がらせ毛布 が広がる。それは彼が小さく口ずさんだ言葉と共に奇麗に折りたたまれた。
 小さな格子窓から降る薄暗い光は、それでも太陽が半分以上昇っていることを教え てくれる。
「・・・」
 光に反射して存在をあらわにする塵を不機嫌そうに見上げて、イートンは扉を開け た。片手には形の無い蝋燭の皿、片手には古代英雄の物語。
 広い屋敷には多くの使用人がいたが彼はその誰一人にも会うことは無かった。廊下 の角でふと立ち止まる。その前を若いお手伝い達が通り抜けていく。そうやって、イ ートンはこの屋敷でけして人に会わなかった。

 イートンは軽装に着替えると屋敷を出た。母親宛に置手紙を置いておく。イートン は2年前から何度も小旅行を繰り返していた。それは英雄の物語を書く為である。自 分を英雄に仕立てるつもりは無い。誰か、自分ではない偉大な存在を探して旅に出 た。実際にそんな人物などいないことは、とうに分かってしまったが。
(誰かの、昔話を聞くのもいいな)
 人生の辛さ、儚さを知る人物の・・・。クーロンとフレデリアを行き来しながらイ ート
ンはそんなことを思っていた。そう、今日最初に会った人物について書いてみよう。
 それがどんなに残酷な殺人鬼であろうと、どんなに愚かな小心者であろうと。
モノ書き特有の突然の閃きにイートンは満足げに頷いた。クーロンへの道のりは真っ 直ぐに続く。当然この道を通る奴にろくな人間なんて居やしない。

 追い風がイートンの緑かかった金髪を揺らす。誰かに呼ばれるように、彼は振り向 いた。
 そしてイートンはある人物に出会う。
PR

2007/02/17 22:36 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<第十七話「奪還」/オプナ・クロース(葉月瞬) | HOME | 2.ニンジンと私/イートン(千鳥)>>
忍者ブログ[PR]