======================================================
PC:八重・イートン・ニーツ・(ウピエル)
場所:ジュデッカ地下監獄
NPC :看守 るーむめいと
======================================================
「この『幽玄の門』はまさにこの世とあの世の境。一度この門をくぐった囚人はけしてこの地下監獄がら逃げ出すことは出来ない」
「……」
「あっ、お前さんは長くても半年で出られるんだ!そう悲観するなよっ」
無言のイートンに慌てたように看守が言い直した。
その大きな手で背中を叩かれて、イートンは息を詰まらせながら、「はぁ」とため息のような返事を返す。
重々しい口ぶりで言った看守の台詞は、まさに昨日イートンが読んだ旅行書に書いてあった文章そのままだった。
(しかし、この威圧感は実際に見ないと分からないな…)
巨大な石の扉の端には屈強な門番が控える。
その門番たちが左右についた重いハンドルを同時に回した。
ズズズズッ。
彼らの荒い息と、石の扉が床をこする音が暫く続き、その内部が明らかになっていく。
扉の断面は複雑な文様を描き互いが合致している為、左右同時に力が働かないと動かない仕組みになっているようだ。
これは逃亡を防ぐための仕掛けの一つなのだろう。
細部を観察するイートンの腕を看守が引っ張った。
「さぁ、さっさとこい!」
縛られてはいない。
逃げるなら今だなのだろう。
しかし、イートンにはこの看守の手を振りほどくだけの力も度胸もなかった。
「あーあ、入っちゃった」
どうやって、監獄に侵入するか。
そんな事で頭を悩ませていた日々が嘘のようだ。
人生何が起こる変わらない。
==========
イートンが入れられるのは、もっとも罪の軽い者たちが集められた地下一階だった。
扉につけられた小窓から、多くの人々の視線と野次がイートンに浴びせられる。
「ひょーっ。今回の新入りは随分とやわな野郎だなぁ」
「おいおい、お嬢ちゃん。一体なにやらかしたんだァ!?」
大勢の人間の皮膚や垢の臭いが混ざり合った淀んだ空気が辺りを満たしていた。
まるで晒し者のように奥へ奥へと歩いていくうちに、イートンの顔も青くなっていく。
牢の中の人間の顔を確認する作業さえ、三人ともたなかった。
どの囚人も目があっただけで命を奪われそうなほど凶悪だったのだ。
「僕…なんか、ぺろっと食べられちゃいそうですよね」
「安心しろ、この階には人を食う奴はいない」
ジョークなのだろうか。
看守の意図も読み取れないまま、乾いた笑いを浮かべる。
(どのみち、ドクターレンはこんな浅い階にはいないでしょうしね…)
「独房は満室でな。お前さんには二人部屋に入ってもらう。ここだ」
「ぇ!?ちょっとまっ」
突如足を止めた看守は、鍵を開けると素早くイートンを押し込んだ。
余所見をしていたイートンは足を止めることすら出来ず、牢の床に鼻を強打した。
「ったたた」
「おぃ。デイヴィス。どういうことだ?」
中に居た男が不機嫌そうに抗議した。
口調は荒かったが、どこか知的な雰囲気を漂わせる声だった。
顔は暗くて見えなかったが、おそらくこの監獄ではマシな人種だ。
「ほら、こんな坊主、下手な奴らと一緒に出来ないだろ」
「だったら、お前に払った代金はどうなるんだ」
「まぁまぁ、他の事は出来る限り優遇してやるからよう」
「だったら俺の没収した荷物から本をとってきてくれ。『ヴァニア幻獣図鑑』ってやつだ」
声を潜めた二人の会話が進む。
難攻不落な監獄とはいえ、看守の買収は日常茶飯事なようだ。
それから何度か言葉を交わすと、看守は去り、小さな部屋に沈黙がおちる。
「あ、あのー、私はイートン・アレイドと言う者です。よろしくお願いします」
場違いな新入りの挨拶に、壁に背をもたれていた男は、そこで初めてまじまじとイートンの顔をみた。
「お前…頭がおかしいんじゃないか?一体なにやらかしたんだ」
「濡れ衣です。スリの子供を捕まえてこっそり注意してやったら、誘拐犯に仕立て上げられて逃げられたんです」
自分で説明しても情けなくなる。
案の定、男は無言で呆れ顔を作った。
「…まぁ、他の連中にはいわねぇこった。そうだな、子供数人殺してることにでもしとけ。ここでは多くヤっただけ箔がつくからな。二部屋向こうのセバスチャンなんか、30人は殺したってうそぶいてたぜ。ただのこそ泥のくせしてよ」
物騒な会話にイートンは身を硬くした。
「じゃあ、貴方もそういう・・・?」
「商売に失敗した。くそ、やっぱ軍の人間なんかに関わるんじゃなかったぜあのカマ野郎…」
思い出しても腹が立つのか、男は唾を吐き捨てた。
「えーっと、本屋さんとか?」
あり得ないことは分かっている。
先程の貴重な図鑑の名前を思い出し、イートンは希望を込めてきいてみた。
「密猟だ。俺は幻獣・珍獣を狩るハンターさ」
そう言ってはベリオル・ハーネスは狡猾な笑いを浮かべた。
PC:八重・イートン・ニーツ・(ウピエル)
場所:ジュデッカ地下監獄
NPC :看守 るーむめいと
======================================================
「この『幽玄の門』はまさにこの世とあの世の境。一度この門をくぐった囚人はけしてこの地下監獄がら逃げ出すことは出来ない」
「……」
「あっ、お前さんは長くても半年で出られるんだ!そう悲観するなよっ」
無言のイートンに慌てたように看守が言い直した。
その大きな手で背中を叩かれて、イートンは息を詰まらせながら、「はぁ」とため息のような返事を返す。
重々しい口ぶりで言った看守の台詞は、まさに昨日イートンが読んだ旅行書に書いてあった文章そのままだった。
(しかし、この威圧感は実際に見ないと分からないな…)
巨大な石の扉の端には屈強な門番が控える。
その門番たちが左右についた重いハンドルを同時に回した。
ズズズズッ。
彼らの荒い息と、石の扉が床をこする音が暫く続き、その内部が明らかになっていく。
扉の断面は複雑な文様を描き互いが合致している為、左右同時に力が働かないと動かない仕組みになっているようだ。
これは逃亡を防ぐための仕掛けの一つなのだろう。
細部を観察するイートンの腕を看守が引っ張った。
「さぁ、さっさとこい!」
縛られてはいない。
逃げるなら今だなのだろう。
しかし、イートンにはこの看守の手を振りほどくだけの力も度胸もなかった。
「あーあ、入っちゃった」
どうやって、監獄に侵入するか。
そんな事で頭を悩ませていた日々が嘘のようだ。
人生何が起こる変わらない。
==========
イートンが入れられるのは、もっとも罪の軽い者たちが集められた地下一階だった。
扉につけられた小窓から、多くの人々の視線と野次がイートンに浴びせられる。
「ひょーっ。今回の新入りは随分とやわな野郎だなぁ」
「おいおい、お嬢ちゃん。一体なにやらかしたんだァ!?」
大勢の人間の皮膚や垢の臭いが混ざり合った淀んだ空気が辺りを満たしていた。
まるで晒し者のように奥へ奥へと歩いていくうちに、イートンの顔も青くなっていく。
牢の中の人間の顔を確認する作業さえ、三人ともたなかった。
どの囚人も目があっただけで命を奪われそうなほど凶悪だったのだ。
「僕…なんか、ぺろっと食べられちゃいそうですよね」
「安心しろ、この階には人を食う奴はいない」
ジョークなのだろうか。
看守の意図も読み取れないまま、乾いた笑いを浮かべる。
(どのみち、ドクターレンはこんな浅い階にはいないでしょうしね…)
「独房は満室でな。お前さんには二人部屋に入ってもらう。ここだ」
「ぇ!?ちょっとまっ」
突如足を止めた看守は、鍵を開けると素早くイートンを押し込んだ。
余所見をしていたイートンは足を止めることすら出来ず、牢の床に鼻を強打した。
「ったたた」
「おぃ。デイヴィス。どういうことだ?」
中に居た男が不機嫌そうに抗議した。
口調は荒かったが、どこか知的な雰囲気を漂わせる声だった。
顔は暗くて見えなかったが、おそらくこの監獄ではマシな人種だ。
「ほら、こんな坊主、下手な奴らと一緒に出来ないだろ」
「だったら、お前に払った代金はどうなるんだ」
「まぁまぁ、他の事は出来る限り優遇してやるからよう」
「だったら俺の没収した荷物から本をとってきてくれ。『ヴァニア幻獣図鑑』ってやつだ」
声を潜めた二人の会話が進む。
難攻不落な監獄とはいえ、看守の買収は日常茶飯事なようだ。
それから何度か言葉を交わすと、看守は去り、小さな部屋に沈黙がおちる。
「あ、あのー、私はイートン・アレイドと言う者です。よろしくお願いします」
場違いな新入りの挨拶に、壁に背をもたれていた男は、そこで初めてまじまじとイートンの顔をみた。
「お前…頭がおかしいんじゃないか?一体なにやらかしたんだ」
「濡れ衣です。スリの子供を捕まえてこっそり注意してやったら、誘拐犯に仕立て上げられて逃げられたんです」
自分で説明しても情けなくなる。
案の定、男は無言で呆れ顔を作った。
「…まぁ、他の連中にはいわねぇこった。そうだな、子供数人殺してることにでもしとけ。ここでは多くヤっただけ箔がつくからな。二部屋向こうのセバスチャンなんか、30人は殺したってうそぶいてたぜ。ただのこそ泥のくせしてよ」
物騒な会話にイートンは身を硬くした。
「じゃあ、貴方もそういう・・・?」
「商売に失敗した。くそ、やっぱ軍の人間なんかに関わるんじゃなかったぜあのカマ野郎…」
思い出しても腹が立つのか、男は唾を吐き捨てた。
「えーっと、本屋さんとか?」
あり得ないことは分かっている。
先程の貴重な図鑑の名前を思い出し、イートンは希望を込めてきいてみた。
「密猟だ。俺は幻獣・珍獣を狩るハンターさ」
そう言ってはベリオル・ハーネスは狡猾な笑いを浮かべた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: