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PC:八重・イートン・ニーツ・(ウピエル)
場所:ジュデッカ
NPC :ナスビ(抜け殻)
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東西に向かって一直線にのびる大通りでは、週に一度の市がたち人々の賑わいを見せていた。
店のいくつかには、ジュデッカのシンボルである〝赤い足枷と青い天秤〟のマークが描かれている。これは、囚人たちが労働によって生産した製品の印である。町人の殆どが看守という特殊なこの町では囚人たちが重要な労働源となっているようだ。
体格の良いジュデッカの人々にもまれ、商品を見る余裕がなくなってくると、イートンは人ごみから逃れるために、脇道を探した。ぶつかる人に何度も謝りながら、人の流れから逸れてゆく。その時、自分の懐に伸びる小さな手を感じた。
「!?」
素早く掴んだ腕は、小さな少年のものだった。驚いた表情は、まさかイートンに捕まるとは思わなかったようだ。
「は、放せよっ」
暴れる少年を伴って裏路地へ入る。イートンの表情は苦笑だった。故郷では自分も仲間たちとよく同じ事をしたものだ。ちょうどこの少年と同じような年頃だった。
「君を役人に突き出すつもりはありませんけどね、ここはジュデッカですよ?捕まったらきっとあの監獄に入れられてしまいますよ」
褐色の肌に琥珀色の目をもつ少年は、どうみても異国の人間だった。旅の途中に金に困ってしまったのだろうか。子供にお説教するというのは、どうにも楽しくなかったが、イートンは少しだけ怖がらせるように言った。
少年にはそれが気に入らなかったのかもしれない。
思い切り、脛を蹴られた。
「痛っ!?」
思わずうずくまると、横で少年が思い切り叫んだ。
「誰か助けてーっ!!人さらいだ!!」
「えぇ!?」
そのまま、少年は走り出す。慌てて後を追おうと立ち上がったイートンを、後ろから幾つもの太い腕が捕まえた。
「大人しくしろ!誘拐犯めっ」
「ち、違います!あの男の子がっ」
「親の敵めっ、言い訳なら後でたっぷり言わせてやる!」
「そんな~~~」
こうしてイートンは、ジュデッカ監獄への侵入を果たすこととなる。
★☆★
「イートン・アレイド、24歳。フレデリア出身……あなた貴族でしょう?子供を誘拐するなんて恥ずかしくないですか?」
「だから濡れ衣ですって!」
「しかし、あなたが少年を人気の無い場所に連れて行くところを目撃している人が居るんですよ」
「それは、彼が僕の財布を盗もうとしたからです」
取調室で、このような問答を続けて一時間は経つ。肝心の少年は逃げてしまったので、罪としては実証しにくいようだ。しかし、取調官は、ニヤリと口の端を上げてこう言った。
「誘拐は重い罪ですが、保釈金、金貨30枚であなたを直ぐに釈放することも出来ますよ」
「30!?」
そんな大金直ぐに払えるわけが無い。
(困ったなぁ……)
貴族だと知ってこちらの足元を見てきたのだ。しかし、イートンにはそれだけの金はない。実家に知れたら間違いなく兄が「払ってやるから勘当しろ」といってくるだろう。アレイド家にそれだけの執着は無かったが、作家としてひとり立ちできるまでは父の援助が必要だった。
情けないといわれても、それが事実なのだ。
自分を溺愛している二番目の兄ならば、金貨30枚だろうが300枚だろうが払ってくれるに違いなかったが、船で世界を飛び回る彼を捕まえるのは至難の業だったし、間違いなく金を送金してくれるだけでは済まないだろう。彼がやってくれば確実にこれからの計画に支障が出る。
「・・・払えないと言ったら、どうなるんですか?」
「監獄で半年、誰かがあなたを無実だと証明してくれる事を待つことになりますね」
PC:八重・イートン・ニーツ・(ウピエル)
場所:ジュデッカ
NPC :ナスビ(抜け殻)
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東西に向かって一直線にのびる大通りでは、週に一度の市がたち人々の賑わいを見せていた。
店のいくつかには、ジュデッカのシンボルである〝赤い足枷と青い天秤〟のマークが描かれている。これは、囚人たちが労働によって生産した製品の印である。町人の殆どが看守という特殊なこの町では囚人たちが重要な労働源となっているようだ。
体格の良いジュデッカの人々にもまれ、商品を見る余裕がなくなってくると、イートンは人ごみから逃れるために、脇道を探した。ぶつかる人に何度も謝りながら、人の流れから逸れてゆく。その時、自分の懐に伸びる小さな手を感じた。
「!?」
素早く掴んだ腕は、小さな少年のものだった。驚いた表情は、まさかイートンに捕まるとは思わなかったようだ。
「は、放せよっ」
暴れる少年を伴って裏路地へ入る。イートンの表情は苦笑だった。故郷では自分も仲間たちとよく同じ事をしたものだ。ちょうどこの少年と同じような年頃だった。
「君を役人に突き出すつもりはありませんけどね、ここはジュデッカですよ?捕まったらきっとあの監獄に入れられてしまいますよ」
褐色の肌に琥珀色の目をもつ少年は、どうみても異国の人間だった。旅の途中に金に困ってしまったのだろうか。子供にお説教するというのは、どうにも楽しくなかったが、イートンは少しだけ怖がらせるように言った。
少年にはそれが気に入らなかったのかもしれない。
思い切り、脛を蹴られた。
「痛っ!?」
思わずうずくまると、横で少年が思い切り叫んだ。
「誰か助けてーっ!!人さらいだ!!」
「えぇ!?」
そのまま、少年は走り出す。慌てて後を追おうと立ち上がったイートンを、後ろから幾つもの太い腕が捕まえた。
「大人しくしろ!誘拐犯めっ」
「ち、違います!あの男の子がっ」
「親の敵めっ、言い訳なら後でたっぷり言わせてやる!」
「そんな~~~」
こうしてイートンは、ジュデッカ監獄への侵入を果たすこととなる。
★☆★
「イートン・アレイド、24歳。フレデリア出身……あなた貴族でしょう?子供を誘拐するなんて恥ずかしくないですか?」
「だから濡れ衣ですって!」
「しかし、あなたが少年を人気の無い場所に連れて行くところを目撃している人が居るんですよ」
「それは、彼が僕の財布を盗もうとしたからです」
取調室で、このような問答を続けて一時間は経つ。肝心の少年は逃げてしまったので、罪としては実証しにくいようだ。しかし、取調官は、ニヤリと口の端を上げてこう言った。
「誘拐は重い罪ですが、保釈金、金貨30枚であなたを直ぐに釈放することも出来ますよ」
「30!?」
そんな大金直ぐに払えるわけが無い。
(困ったなぁ……)
貴族だと知ってこちらの足元を見てきたのだ。しかし、イートンにはそれだけの金はない。実家に知れたら間違いなく兄が「払ってやるから勘当しろ」といってくるだろう。アレイド家にそれだけの執着は無かったが、作家としてひとり立ちできるまでは父の援助が必要だった。
情けないといわれても、それが事実なのだ。
自分を溺愛している二番目の兄ならば、金貨30枚だろうが300枚だろうが払ってくれるに違いなかったが、船で世界を飛び回る彼を捕まえるのは至難の業だったし、間違いなく金を送金してくれるだけでは済まないだろう。彼がやってくれば確実にこれからの計画に支障が出る。
「・・・払えないと言ったら、どうなるんですか?」
「監獄で半年、誰かがあなたを無実だと証明してくれる事を待つことになりますね」
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