キャスト:アダム・クロエ
NPC:シックザール
場所:クリノクリアの森→ヴィヴィナ渓谷川辺
――――――――――――――――
轟音を立てて、火の付いた巨大な枯木が崖下へと転落してゆく。
砂利を跳ね散らかしながらそれが川岸に着地したのを見届けて、
クロエは大きすぎる身体を持て余すように、ゆっくりと
絶壁に身を滑らせた。
川岸まであと2メートルほどまで、というところで呪文を紡ぎ、
人型で着地する。
意外に強い反動によろめきつつもなんとか踏みとどまって
先に落ちた枯れ木を探す。枯れ木は衝撃でだいぶ削れていたが
まだ火を伴って煙を上げていた。
「よい、しょ…」
火が廻っていない枝の部分を両手で掴んで、引きずる。
しかし足場が悪い上に枯れ木は相当な重さなので、結局
枯れ木の位置はさほど変わらなかった。
「クロエさん、えと、ありがとう…いいよそこで。俺が行くから」
なぜか引きつった笑顔でよろりと立ち上がるアダム。
クロエは動かない枯れ木を手放して、小走りで彼の元へ行くと
脇の下から首を滑り込ませてアダムの体重を支えた。
「ありがと」
「さっき悲鳴をあげてましたけど大丈夫ですか?」
『燃えた大木でも落ちてきたんじゃない?』
剣の軽い皮肉に、苦笑する。
「ごめんなさい……火の点け方、わからなくて」
「いいよ。俺の荷物も水浸しで、火を点ける道具もしばらく
使えそうもないし――助かったよ」
どうにかアダムを枯れ木の元まで連れてくる。木はいよいよ本格的に
燃え出し、焚き木を足さずともあと数時間はもちそうだった。
手ごろな岩に座り、ぐしゃぐしゃに濡れた上着を脱ぎながらアダムが
ふと疑問を投げかけてきた。
「それにしてもこれ、どうしたの?」
「さっきの場所まで遡って、余波で燃えた木を運んできたんです」
『そんな手間かけるくらいなら僕達乗せて上まで行けたじゃん!?』
「あ」
剣のツッコミに呆然と立ち尽くす。アダムも数秒ほど気まずそうに
炎を見つめていたが、ふっと息をつくと、クロエを見上げて笑った。
「休んでいこうよ。さすがにちょっと疲れたしね。ここはだいぶ
下流で追っ手も来る様子ないし…。
よく考えたら俺、あんま寝てない上に朝からなんも食ってないんだ」
『やーっぱり人には甘いんだからぁ、アダムはー』
「うるせっ」
ばちん、と木が爆ぜる。羽虫のように細かい火の粉が立ち上り、
虚空で消えた。
「あー…その、クロエさん。悪いけどちょっとむこう向いててもらえるかな」
「?」
突然わからないことを言ってきたアダムの様子を訝って、彼の顔を見る。
何かを躊躇していることはわかるが、何に迷っているのかがわからない。
アダムは自分の体を両手で示しながら、言いにくそうに口を開いた。
「なんていうか…俺、びしょ濡れじゃん?」
「ええ」
『川にドボンだしね。それも自ら』
頷く。剣も調子を合わせて口を挟む。アダムもうんうんと頷いて、時間を
稼ぐように腕を組んだ。
「で、ほら。びしょ濡れってことはなんていうか服もびしょ濡れなんだよね」
「そうですね」
「できれば乾かしたほうがいいよね」
「はい」
「でも服着たままだと乾かしにくいと思わない?」
「思います」
「それって脱がなきゃいけないってことだよね」
「はい」
ここまでアダムは始終笑顔だったが、少なからず疲労をにじませて
きていたのは傍目にも明らかだった。
望みをかけるように、最後に身を乗り出して訊いてくる。
「俺が言いたいこと、わかってくれた?」
遥かスズナ山脈から流れる雪解け水は、相当な冷たさだろう。
アダムの言いたいことはよくわかる。
「えっと、服を脱いで乾かしたいんですよね」
「そう!」
クロエが聞いたそのままのことを繰り返すと、顔を輝かせてアダムが
びしと人差し指でさしてきた。
クロエもにっこり笑って、それに応える。
「どうぞ?」
「なんでだぁああああああああっ!!!!!!」
頭を抱えて絶叫するアダムの様子に仰天して、クロエは慌てて
うずくまるアダムの顔を覗き込んだ。
「え?どういう事ですか?私、今おかしい事言いましたか?」
「なんでそんな『心外だ』みたいな顔できちゃうの、クロエさん…」
ぐったりと力ない声音でそれだけ言って、顔を伏せる。
だがすぐに顔をあげ、傍に転がっていた手ごろな流木に
脱いだ上着をかけると、それを火のそばに立てながら言ってくる。
「んと、いいや。まぁなんていうか俺がいいって言うまで
とりあえず川でも見てて。振向いちゃ駄目だからね」
「え、なんで――」
「いいからっ!お願い!」
強引にそこで話を切られ、しぶしぶとクロエはアダムと
背中合わせになる格好で岩に腰を下ろした。
それを確認してからか、一拍遅れて背後からがさがさとアダムが
服を脱いでいる音が聞こえてくる。
「いててて」
「傷、痛みます?」
不安になって――振り返らないまま、訊く。
さきほどの襲撃以前に、アダムは既に手負いである。
クロエもいくつか手傷を負ったが、ドラゴンの回復力は
人間の比にならないほど高い。今日中にでも完治するだろう。
だが、アダムは人間だ。人間は寿命が短いばかりか治癒力も遅い。
返事はすぐに返ってきた。
「うーん、まぁ痛いっちゃ痛いけど、動けないこともないから大丈夫。
…あちゃー、この包帯ももう限界だな。新しいのはっと…駄目だ。濡れてら」
その後も音は聞こえてきていた。服を脱ぐ音に続き、鞄をひっくり返して
中身を物色している音、アダムのくしゃみなど。
一刻ののち、さすがに飽きてきてクロエは肩越しに問いかけた。
「アダムー、もういいですかー?」
「ダメッ!今一番ダメ!」
慌てたような制止に従い、振り返りかける首を止める。
何かを企むような含み笑いを混ぜながら、剣がぼそりと付け加えた。
『アダムの下着姿見たいなら別だけどね』
「おまっ、余計なこと言うなよ!」
「人の身体って、興味あります」
「クロエさんなんて事言うのちょっと!」
いよいよ慌てる声。そんなアダムに軽く口を尖らせつつ、クロエは反論する。
「だって人のお友達ってあまりいないんですもの。森から出ることだって
ほとんどないし、ラドフォードに来る人間の数は限りがありますから」
「だからって純情な男の子の裸は見ないでお願いだから」
「えー…?」
『環境の違いって怖いねー』
剣の声に首を傾げながらも、視線を虚空から川の流れに戻す。
不意に吹き付けた風――断崖から降りてきた冷たい空気に、
すくむ身体を自分で抱き寄せる。
「ねぇ、アダム」
「んー?」
服を掛ける枝を探しにでも行ったのか、声は遠いところから聞こえてきた。
かまわず、続ける。
「さっき、私の"歌"。褒めてくれましたよね」
「ん……あぁ、綺麗だったよ。ホント」
石を踏む音と共に近づいてくる声。よいしょ、と言って座ったらしいアダムの
気配を感じつつ、クロエは川の煌きを見つめながら決然と言い放った。
「もうあんな事言わないでください」
言ってしまってから――
揃えた膝に両肘をつき、口だけを残して顔を手で覆う。
炎の音と水の流れる音にかき消されそうな、アダムの呟きが背後から漏れた。
「え」
「嬉しかったんです。とっても……。だけど、駄目です。
あれはとても恐ろしい兵器なんです。アダム」
顔を上げて首だけで振向く。りん、とささやかな鈴の音が勢いで鳴った。
肩越しに、意外に広いアダムの裸の背が少しだけ見える。
それを確認して――というわけでもないが、クロエは再び川に向き直った。
「あれをひとたび放ってしまえば、私にはもうどうすることもできません。
目の前の生命が消えていくのを見るしかないんです。
そして気づいたときには、そこに私しかいない…」
アダムは何も言わない。姿が見えないことで、もしかして彼が
この独白を聞いていないのではないかという危惧が頭をかすめたが、
返事のかわりに気まずそうに身じろぎする彼の気配を感じる。
「私は……あれを誇りに思いたくないんです」
暗い眼差しでそれだけ言って、いったん口を閉じる。
沈黙を埋めるように吹き抜ける風は相変わらず冷たい。
「ラドフォードで何が起きたのか、話してもらえますか」
――――――――――――――――
さーて今回のRendora診断だよ!
なんといっても半裸のアダムんがドキドキ度と
ヤヴァイ度を稼ぎまくってひどい結果になったよ!
クロエの暗い独白で胸キュン(悪い意味で)度は3、
次はほんわか度が上がるといいね!
Rendora診断(最高五つ★)
恋愛レベルLv1.5
ドキドキ度… ☆★★★★
ほんわか度…☆☆☆☆★
ヤヴァイ度… ★★★★★
胸キュン度… ☆☆★★★
NPC:シックザール
場所:クリノクリアの森→ヴィヴィナ渓谷川辺
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轟音を立てて、火の付いた巨大な枯木が崖下へと転落してゆく。
砂利を跳ね散らかしながらそれが川岸に着地したのを見届けて、
クロエは大きすぎる身体を持て余すように、ゆっくりと
絶壁に身を滑らせた。
川岸まであと2メートルほどまで、というところで呪文を紡ぎ、
人型で着地する。
意外に強い反動によろめきつつもなんとか踏みとどまって
先に落ちた枯れ木を探す。枯れ木は衝撃でだいぶ削れていたが
まだ火を伴って煙を上げていた。
「よい、しょ…」
火が廻っていない枝の部分を両手で掴んで、引きずる。
しかし足場が悪い上に枯れ木は相当な重さなので、結局
枯れ木の位置はさほど変わらなかった。
「クロエさん、えと、ありがとう…いいよそこで。俺が行くから」
なぜか引きつった笑顔でよろりと立ち上がるアダム。
クロエは動かない枯れ木を手放して、小走りで彼の元へ行くと
脇の下から首を滑り込ませてアダムの体重を支えた。
「ありがと」
「さっき悲鳴をあげてましたけど大丈夫ですか?」
『燃えた大木でも落ちてきたんじゃない?』
剣の軽い皮肉に、苦笑する。
「ごめんなさい……火の点け方、わからなくて」
「いいよ。俺の荷物も水浸しで、火を点ける道具もしばらく
使えそうもないし――助かったよ」
どうにかアダムを枯れ木の元まで連れてくる。木はいよいよ本格的に
燃え出し、焚き木を足さずともあと数時間はもちそうだった。
手ごろな岩に座り、ぐしゃぐしゃに濡れた上着を脱ぎながらアダムが
ふと疑問を投げかけてきた。
「それにしてもこれ、どうしたの?」
「さっきの場所まで遡って、余波で燃えた木を運んできたんです」
『そんな手間かけるくらいなら僕達乗せて上まで行けたじゃん!?』
「あ」
剣のツッコミに呆然と立ち尽くす。アダムも数秒ほど気まずそうに
炎を見つめていたが、ふっと息をつくと、クロエを見上げて笑った。
「休んでいこうよ。さすがにちょっと疲れたしね。ここはだいぶ
下流で追っ手も来る様子ないし…。
よく考えたら俺、あんま寝てない上に朝からなんも食ってないんだ」
『やーっぱり人には甘いんだからぁ、アダムはー』
「うるせっ」
ばちん、と木が爆ぜる。羽虫のように細かい火の粉が立ち上り、
虚空で消えた。
「あー…その、クロエさん。悪いけどちょっとむこう向いててもらえるかな」
「?」
突然わからないことを言ってきたアダムの様子を訝って、彼の顔を見る。
何かを躊躇していることはわかるが、何に迷っているのかがわからない。
アダムは自分の体を両手で示しながら、言いにくそうに口を開いた。
「なんていうか…俺、びしょ濡れじゃん?」
「ええ」
『川にドボンだしね。それも自ら』
頷く。剣も調子を合わせて口を挟む。アダムもうんうんと頷いて、時間を
稼ぐように腕を組んだ。
「で、ほら。びしょ濡れってことはなんていうか服もびしょ濡れなんだよね」
「そうですね」
「できれば乾かしたほうがいいよね」
「はい」
「でも服着たままだと乾かしにくいと思わない?」
「思います」
「それって脱がなきゃいけないってことだよね」
「はい」
ここまでアダムは始終笑顔だったが、少なからず疲労をにじませて
きていたのは傍目にも明らかだった。
望みをかけるように、最後に身を乗り出して訊いてくる。
「俺が言いたいこと、わかってくれた?」
遥かスズナ山脈から流れる雪解け水は、相当な冷たさだろう。
アダムの言いたいことはよくわかる。
「えっと、服を脱いで乾かしたいんですよね」
「そう!」
クロエが聞いたそのままのことを繰り返すと、顔を輝かせてアダムが
びしと人差し指でさしてきた。
クロエもにっこり笑って、それに応える。
「どうぞ?」
「なんでだぁああああああああっ!!!!!!」
頭を抱えて絶叫するアダムの様子に仰天して、クロエは慌てて
うずくまるアダムの顔を覗き込んだ。
「え?どういう事ですか?私、今おかしい事言いましたか?」
「なんでそんな『心外だ』みたいな顔できちゃうの、クロエさん…」
ぐったりと力ない声音でそれだけ言って、顔を伏せる。
だがすぐに顔をあげ、傍に転がっていた手ごろな流木に
脱いだ上着をかけると、それを火のそばに立てながら言ってくる。
「んと、いいや。まぁなんていうか俺がいいって言うまで
とりあえず川でも見てて。振向いちゃ駄目だからね」
「え、なんで――」
「いいからっ!お願い!」
強引にそこで話を切られ、しぶしぶとクロエはアダムと
背中合わせになる格好で岩に腰を下ろした。
それを確認してからか、一拍遅れて背後からがさがさとアダムが
服を脱いでいる音が聞こえてくる。
「いててて」
「傷、痛みます?」
不安になって――振り返らないまま、訊く。
さきほどの襲撃以前に、アダムは既に手負いである。
クロエもいくつか手傷を負ったが、ドラゴンの回復力は
人間の比にならないほど高い。今日中にでも完治するだろう。
だが、アダムは人間だ。人間は寿命が短いばかりか治癒力も遅い。
返事はすぐに返ってきた。
「うーん、まぁ痛いっちゃ痛いけど、動けないこともないから大丈夫。
…あちゃー、この包帯ももう限界だな。新しいのはっと…駄目だ。濡れてら」
その後も音は聞こえてきていた。服を脱ぐ音に続き、鞄をひっくり返して
中身を物色している音、アダムのくしゃみなど。
一刻ののち、さすがに飽きてきてクロエは肩越しに問いかけた。
「アダムー、もういいですかー?」
「ダメッ!今一番ダメ!」
慌てたような制止に従い、振り返りかける首を止める。
何かを企むような含み笑いを混ぜながら、剣がぼそりと付け加えた。
『アダムの下着姿見たいなら別だけどね』
「おまっ、余計なこと言うなよ!」
「人の身体って、興味あります」
「クロエさんなんて事言うのちょっと!」
いよいよ慌てる声。そんなアダムに軽く口を尖らせつつ、クロエは反論する。
「だって人のお友達ってあまりいないんですもの。森から出ることだって
ほとんどないし、ラドフォードに来る人間の数は限りがありますから」
「だからって純情な男の子の裸は見ないでお願いだから」
「えー…?」
『環境の違いって怖いねー』
剣の声に首を傾げながらも、視線を虚空から川の流れに戻す。
不意に吹き付けた風――断崖から降りてきた冷たい空気に、
すくむ身体を自分で抱き寄せる。
「ねぇ、アダム」
「んー?」
服を掛ける枝を探しにでも行ったのか、声は遠いところから聞こえてきた。
かまわず、続ける。
「さっき、私の"歌"。褒めてくれましたよね」
「ん……あぁ、綺麗だったよ。ホント」
石を踏む音と共に近づいてくる声。よいしょ、と言って座ったらしいアダムの
気配を感じつつ、クロエは川の煌きを見つめながら決然と言い放った。
「もうあんな事言わないでください」
言ってしまってから――
揃えた膝に両肘をつき、口だけを残して顔を手で覆う。
炎の音と水の流れる音にかき消されそうな、アダムの呟きが背後から漏れた。
「え」
「嬉しかったんです。とっても……。だけど、駄目です。
あれはとても恐ろしい兵器なんです。アダム」
顔を上げて首だけで振向く。りん、とささやかな鈴の音が勢いで鳴った。
肩越しに、意外に広いアダムの裸の背が少しだけ見える。
それを確認して――というわけでもないが、クロエは再び川に向き直った。
「あれをひとたび放ってしまえば、私にはもうどうすることもできません。
目の前の生命が消えていくのを見るしかないんです。
そして気づいたときには、そこに私しかいない…」
アダムは何も言わない。姿が見えないことで、もしかして彼が
この独白を聞いていないのではないかという危惧が頭をかすめたが、
返事のかわりに気まずそうに身じろぎする彼の気配を感じる。
「私は……あれを誇りに思いたくないんです」
暗い眼差しでそれだけ言って、いったん口を閉じる。
沈黙を埋めるように吹き抜ける風は相変わらず冷たい。
「ラドフォードで何が起きたのか、話してもらえますか」
――――――――――――――――
さーて今回のRendora診断だよ!
なんといっても半裸のアダムんがドキドキ度と
ヤヴァイ度を稼ぎまくってひどい結果になったよ!
クロエの暗い独白で胸キュン(悪い意味で)度は3、
次はほんわか度が上がるといいね!
Rendora診断(最高五つ★)
恋愛レベルLv1.5
ドキドキ度… ☆★★★★
ほんわか度…☆☆☆☆★
ヤヴァイ度… ★★★★★
胸キュン度… ☆☆★★★
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