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2025/03/10 06:26 |
Rendora-13/アダム(Caku)
PC アダム、クロエ
NPC シックザール
PLACE フィキサ砂漠→砂漠の洞窟
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天高く噴出する湧水。炎天下の砂漠が、束の間だけ心地良い湿度をはらんだ。
きらきらと太陽に反射する水の粒を見上げながら、アダムはぽかーんと口を開けていた。干からびそうになっていた口腔に、冷たい水が滑り込む。

「…おー…」

『あんまり大口開けてるとバカっぽく見えるヨ?』

「…うっせ」

刀の嫌味で、ようやく開いた口が塞がった。アダムは水で濡れた頭をがしがしと掻いて、なかば湖になりけている噴出孔まで近づいていく。即席湖にはぴちぴちとした魚…ではなく、やたらドぎづい彩色のトカゲだったりやけに耳の大きいキツネがじたばたしている。先程の洪水大噴出部分の、砂の中にいた動物達だろう。なんだか可哀想なので、シックザールで渡し舟を出してやると必死につかまってサカサカっとこちらにやってくるトカゲ。

「わりぃわりぃー、おどかした?」

答えはもちろん返ってこない。こちらをじっと凝視するトカゲを降ろしてやると一瞬で砂の下に潜って行った。そうしてトカゲやキツネを七匹ほど助けていると、いつの間に人型に戻ったのか、クロエがにこにこと笑顔で後ろに立っていた。

「意外と出ちゃいました」

『意外だよねぇ、どっちかっていうと豪快?』

二人のやり取りを呆れつつ聞きながら、ジャケットの裏にくくりつけてある瓶を取り出す。とっくの昔に空になっていたソレに、澄んだ水を流し込む。瓶の量からして、せいぜい一日程度しか持たないだろうがないよりマシである。使い込みすぎてゆるくなりつつある蓋をしっかりと締めながら、アダムは後ろの少女に振り返る。

「ありがと、クロエさん。マジで助かった」

「よかった」

にこっと笑うクロエ。炎天下の砂漠が、一気に陽の色をした花畑に見えた。熱砂の蜃気楼だとしても、ちょぴり幸せなアダムであった。

***

「綺麗ですね」

赤い斜光を一身に浴びながらクロエが笑う。砂漠の夕日に感動しているみたいで、隣のアダムも見慣れてはいないが見たことがない訳でもない。正統エディウス帝國に入る際には旅の間五日間ほど見続けた光景。
だが、曲りなりにも冒険者であるアダムにとって、砂漠の夕日は別の意味を持っている。

「日が暮れ…ちゃったよ…」

やや茫然自失気味に、がっくりと肩を落とす。その腰元からシックザールの暢気きわまる声が続いた。

『寒くなるよねー』

「?だって暑かったですよ?」

「あークロエさん、その、砂漠ってね…」

森育ちのクロエにとって、砂漠の朝夕の寒暖さが生死に直結するほどスゴいのだということをアダムが説明すると、

「砂漠ってすごいんですね!でもアダムも色んなこと知っててすごいですっ!」

感心された。あれもうなんか、生死とか野宿とかマジ死ぬかもとかどーでもよくなってきました。心の中が幸せな気持ちでいっぱいです。

『アダム、へらへら笑ってないで対策考えたほうがいいよ、僕とかクロエさんとかより一番死んじゃいそうなんだから』

「…そういやそうだった、珍しくまともな意見どうも」

シックザールの突っ込みで我にかえるアダム。見渡す限りの砂丘に、何か命を繋ぐ術はないかと「異常眼」の瞳で見渡してみる。と、

「んー…なんだ、ありゃ」

「何か見えますか?」

眉間に皺を寄せて遠くを睨むアダムの隣で、クロエも首をかしげながら同じ方角を眺める。夕日の落ちた砂漠は空の群青色を映して青く地平線まで広がっている。
アダムは眉間に皺を寄せたまま、一点を凝視したまま呟いた。

「向こうに、なんか洞穴っぽいのがある」


***

砂漠の岩山の影にまぎれるように、ぽつりと影の中には穴があいていた。穴は地中深くまで続いているようで、奥底から風のような、泣き声のような不思議な音が響いている。
ほの暗い洞窟の中は不気味極まりないというに、アダムは暢気に鼻歌を歌いながらリュックを漁っていた。と、目的の物を見つけたのか小さく笑ってリュックから手をぬく。手には何かが握られていた、そこにはどの街にもありふれているランプが一つ。アダムは二人のちょうど真ん中あたりの地面にそれを置く、とランプが勝手に光り輝き、熱を生み出した。

「これ、どうやって火がついてるんですか?」

クロエが興味深そうに、灯りの元のランプをつついた。見た目は普通の古びたランプだが、油もないランプからどうして火がでるのか不思議らしい。

「実はクロエさん、これはちょっとした便利魔法道具なんですよ」

アダムがちょっとだけ嬉しそうに説明を始める。なぜかところどころが凹んでいるランプを持って意気揚々と喋り始める。凹んでいるのは先日クロエの背から川へダイブした際にできたのかもしれない。

「ほら、ランプのガラスに魔法の文字が刻印されてるでしょ?周囲のマナで火を起こすことでできるんですよ、いやぁ魔力のない俺みたいな旅人には本当便利なシロモンで、しかもなんとちょっとぐらいの魔物なら近寄ってこないような微力の聖なる波長が出てるっていう」

ふんぞり返って鼻高々に自慢するアダムだったが、腰脇から冷静で容赦のない補足が飛んできた。

『うん、でもちょっと前に坑道の中で野営してたときに使ったら見事にモンスターに見つかって散々な目にあったヨネ。しかも確かそれ、依頼金ちょろまかした詐欺師の部屋からぬす…』

「だー余計なことはいいのっ!」

アダムが即座にシックザールの発言を打ち消す。クロエはくすくすと笑って

「じゃあなんかすごいモンスターが来ちゃうかもしれませんね」

「いや、あの時はあれだ。運が悪かったんだって」

『運が悪いのはいつものコトだよネ』

「黙れ、もの押し竿」

魔法のランプの周囲はたしかに暖かく、息を潜めるようにこちらを伺っていた蝙蝠や蟲の息遣いはぱったりと消えていた。周囲の不気味さも、煌々と辺りを照らすランプの光には勝てないようで、アダムは小さく安堵の溜息をつく。と、ランプが幾重にもぶれた。

「あ?」

気が抜けたことで、ちょっと眠気がきたかな…と瞳を手の甲でこすった。が、あまりの熱さにびっくりして、何か言おうとした瞬間に視野が真っ黒に染まって、体の感覚がぶっつりと切れた。ただ、右目が異常に発熱していたことだけは理解できた。たしか、これは、アイツが言ってた

『…眼鏡をはずしたままにすれば、命の保障はしませんよ?』

あ、眼鏡。アダムは重大な事実を思い出した。そういや忘れてたけど、アレがないと―…
かつて、ある魔女に掘り起こされた古代の秘術。一度踊りだすと止まらない呪いの靴のように、それは主人の意図に反して永久に動き続けるモノだと、アイツは、帽子屋は言った。奴は、そんなものは魔法でも魔術でもなく、ただの呪いだとも言った。呪われた赤い靴は、靴を履いた少女の首が手首が胴体が落とされようとも決して止まることがないように、呪われた瞳はアダムの命がどうなろうとも頓着しない。ただ見るという呪いを続けるために、アダムの命を、血を吸い取っていく、と。

「アダム!?」

クロエの悲鳴が聞こえた。こりゃ出血による貧血だなーとアダムは冷静に分析した、までは良かったが、そのまま脆くも意識は暗闇に落ちていったしまった。

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2008/10/23 18:37 | Comments(0) | TrackBack() | ○Rendora

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