忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/16 15:35 |
Get up!! 01 /コズン(ほうき拳)
PC:コズン
NPC: !)巨漢の?アルグレート 受付の人
場所:ダンジョン/アカデミー併設のギルド・エドランス支部

 静寂を保っていた暗い石の地下道。
 その闇の中へ、ゆっくりと灯火と足音が近づいてくる。石壁に映った影か揺ら
めき、足音に舞うホコリが明かりを受けてきらきらと光る。

 闇に侵入してきたのは若い戦士だった。
 革鎧に身を包み、腰には小剣が収まっている。
 右手で赤々とした松明を掲げ、松脂の臭いと吹き散らされたホコリに鼻をひく
ひくさせる。
 左に括った小盾をからりと言わせながら鼻を摘む。

「あー、ちくしょー」

 男はぐりぐりと鼻を動かした後、少し遠くを見る。ただ見ただけなのだが、何
となく睨んでいるように目は尖っている。

「部屋、か」

 酷く悪い目付きの先には凹んだ壁と木製の宝箱がある部屋が見えた。
 朽ちた扉が戦士の方に倒れている。その周辺には壁が崩れ、石やら岩やらが散
らばっている。
 腐敗臭がその下からする、少し石を除けてやると、ライオンの頭やら大蝙蝠の
やらが無茶苦茶にはりついた生き物が見えてくる。
 おおかた、地震か何かで守護者であるキメラが潰れたのだろう。

 戦士は決めつけると宝箱に近寄る。それだけで吹き上がるホコリに顔をしかめ
ながらも、一気に進む。
 守護者以外の罠はないだろうと踏んで、いっきに宝は箱を開ける。


 しばらくの沈黙。


 そして宝箱を閉める。


 開ける。閉める。開ける。閉める。
 引きつり笑いが顔を浸食した。


「ここでカラかよ!!」


 八つ当たりを込めて蹴りを叩き込むと、石畳のがらがらと回って口を開ける。
 巻き上げた輝くホコリが盛大に舞い、松明に照らされたフタが舌のようにぶら
ぶらと動く。

「くそ、ふざけやがって、この野郎」

 どこをどう蹴り飛ばしても、宝箱はからっぽのままだった。





 学校の流用品である机、生徒達の書いたポスターやら依頼の張り紙やらが壁に
掛けられ。

 遅い昼の休み時間であるらしく受付もいない。この場にいるのは巨漢と中肉中
背の青年だけだ。
 
 ギルドの待合室のテーブルに?巨漢の?アルグレートが座っていると、ちりち
りと背筋に重圧を感じた。
 巨漢は頑健そのものの若者でつるりと剃り上がった頭と金色の無駄に豊かなあ
ごひげを夏の太陽に輝かせている。
 その自慢の金色をふわりと揺らしアルグレートは振り返った。

 目に入ったのは赤茶けた髪の青年が睨むような目で、振り向いたアルグレート
を突き刺していた。
 後ろのテーブルに槍をたてかけふてぶてしく座っている。布製の人形をらしき
ものを右手に引っかけてぶらぶらさせていた。
 着ている革鎧はホコリにまみれていて、そのホコリがアルグレートの方へ舞
い、余計に不快感を煽った。

「ああぁん、んだよ。オレになんか文句あんのか?」

 不機嫌に吐き出した低い声だった。

「てめぇに、用はねぇ、後ろからガンとばしてんじゃねぇよ、ガキが」
「うるせぇ、このタコ助、暑苦しいんだよ。反射して眩しいんだ」

それがアルグレートの好戦性を触発させるのに十分なのだろう。

「……誰がタコだと」

 岩のような拳を握りしめ、立ち上がるアルグレート。
 合わせて青年も立ち上がるが、体格差は圧倒的だった。
 鎧こそ脱いではいるが?巨漢の?名の通り、目付きの悪い男の二回り以上大き
く、威圧感は十分だった。そして差もまた十分だ。

 体格とはそれだけで戦士の素質たり得る。大きければそれだけで根本的な筋肉
量が違い、タフだ。
 その大きさでもってオーガーはゴブリンを支配するし、知能ある人間は知能な
き巨竜が圧倒される。
 野蛮な社会であればあるほどに体格はものを言う。

 冒険者、いや、この二人のチンピラにしたって同じことが言える。

「やんのかよ。丁度いい。オレは機嫌がわりぃんだ」

 もっともそれを理解すべき理性は野蛮に取って代わられ、判断は叫びになり思
考は血潮に変わる。

「このオレに、タコは禁句だ、クソガキ。お人形でもうちでいじってな。そいつ
しかお友達いねぇんだろ?」

 口をゆがめる巨漢の顔は嘲りを表した。

 にやりと青年は引きつりながら笑い叫ぶ。

「タコ。オレはクソガキじゃねぇ、コズンだ!」

 激昂される前に、コズンは突っ込んでいく。みぞおちを狙った全体重をかけた
一撃を繰り出すが、体をと筋肉の鎧に防がれる。

 鼻を一つ鳴らすと、アルグレートは近くにあった椅子を持ち上げ、横殴りに叩
きつける。

 鈍い破壊音があたりに響き、ばらばらと木片が散り、その中に布の人形がくる
くると舞う。
 コズンは壁まで吹き飛ばされ、叩きつけられた衝撃で息を吐き出す。

 しばらく床に体を落とすが、ふらふらと立ち上がり、コズンは口から床へ血を
吐き出す。
 赤茶けた髪は木片がへばりつき、着ている皮鎧には血がこびりいてる。
 右腕を押さえ、壁に寄りかかるそれでもなお、黒い目はにらむように巨漢を見
ていた。

「んだ、これで終わりか、デカ物。いや、このタコ。だったらその暑苦しい頭を
こっちにむけんな、太陽が反射して暑いんだよ」

 しばらくふらついた後、言い放つと力ないふらついた足取りで、床に転がって
いる放り出されぼろぼろになった小さな布の人形を拾い上げる。

 タコ――もとい?巨漢の?アルグレートは歯の奥を鳴らして、殴打を放つ。転
がる音だけが響く。

 人形が宙でくるくると回り、また床へ落ちた。

 受付の人間が帰ってきたときには、木片の飛び散った床で青年が無造作に転が
っているだけだった。


------------------------------------------------------------------------
PR

2007/06/04 22:40 | Comments(0) | TrackBack() | ○Get up!!

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<易 し い ギ ル ド 入 門 【26】/イェルヒ(フンヅワーラー) | HOME | 異界巡礼-8 「君が望むなら」/フレア(熊猫)>>
忍者ブログ[PR]