PC:リウッツィ マシュー エルガ
NPC:ジラルド
場所:コールベル(ブージャム)
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女性は話上手で、案内された店に着き、手当を受ける頃には、エルガはコールベルにきた目的や自分の所属などを一通り喋り、女性の職業やこの店の扱っている商売などについて、一通り聞き終わっていた。
骨董屋と説明された店内は、なるほど古いものがとにかくたくさんあるようだが、なんだか雑然としていて埃っぽい。
「質屋って呼ぶ人もいますしね」
とは、傷の手当をしてくれた青年の言葉だ。
「そうねぇ、骨董屋のイメージってなんかこう、もっとお高く止まってる感じじゃない?
むしろ親しみを持って迎えられてるんじゃないかしら?」
エルガの様子を見守っていた女性は、エルガの手当てが終わって一安心したのか、今度は店内の商品を眺めて回っている。
職業は魔法書の背取りだと言っていたが、彼女にとって店内の骨董品はその好奇心の延長線に続くものなのかもしれない。
「案外、エルガさんの目的の本も商品の中に混ざってたりしてね」
「あ、それだったらちょっと楽でいいですね」
エルガのコールベル来訪の目的は図書館の図書資料だ。
ソフィニアの図書館になかったものを、エルガの指導教官が照会していたのだが、どうやらコールベルには、指導教官の閲覧したい資料の著者と似たような名前の著名人が何人かいるらしく、魔法の知識のない司書との手紙のやり取りでは埒が明かず、エルガが派遣されることになったのだ。
「一応、商品じゃからのー。図書館のが安くつくと思うがのぉ」
「一応って言わないでください」
不思議なしゃべり方の男性に、青年がすかさず突っ込みをいれる。
それがおもしろくて、エルガの口元が緩む。
それにしても…先ほどの現象はなんだったのだろうか。
魔法使いとしての習慣で、つい、エルガの思考はそっちに向かう。
誰かの魔法…というには、いまいち不確かだ。
最近、別の出張で不確かな魔法に巻き込まれたことがあったが(あれは、結局、指導教官の言う通り「偶発的に発生した魔法を、エルガと偶然出会った冒険者が現象の源を突き止めて解除した」と報告書を提出してしまったのだが)、案外自分はそういうものに感応しやすいタチなのかもしれない。
と、なると、この猫又に懐かれているのもその延長なのだろうか。
怪我の手当を受けている間に、結局例の焔猫はエルガの膝の上に居座ってしまったのだ。
おそるおそるきれいに光る毛皮に触ってみると、それは「ニャ」と短く声を出した。
「あ、そうだ。エルガさんは仕事の途中だったのよね。ごめんなさい。
つい店内が面白くって。ほら、ガット」
エルガが少し困っているのを察してか、女性が焔猫に声をかける。
精霊の扱いにも動物の扱いにも慣れないエルガの膝の上は、それほど居心地がよくなかったのかもしれない。今後はその声掛けに応じて、さっと床に降り立った。
「そうじゃのう。あんまり遅くなると図書館も閉まってしまうからの」
「そうなんですか?」
「ソフィニアが例外なのよ。普通は、あの街ほど遅くまで図書館を使おうって人もいないもの」
「あぁ、なるほど…」
ソフィニアの、しかも魔術学院の図書館―資料を閲覧する教員の足が絶えず、夜遅くまで学生が残って勉強している―に慣れていたエルガにとって、明るいうちに閉まってしまう図書館というものは想定外だった。
となると、目的地までは少し急いだほうがいいのかもしれない。
「お姉さん方は、船着場の場所はわからんじゃろー」
店主がのほほんと言う。
ここまでの雰囲気から、店主と青年が旅行者を騙す人種ではないことは分かっていたが―正直、騙されてもそれはそれで面白いからエルガは別にいいのだが―、怪我の手当までしてもらって、その上道案内までしてもらうのは、どうなんだろうと思ってしまう。
「そうね。コールベルの道って意外と複雑なんだもの」
女性が気負いなくそういうのを聞いて、エルガもなんとなく曖昧に頷いてしまった。
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NPC:ジラルド
場所:コールベル(ブージャム)
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女性は話上手で、案内された店に着き、手当を受ける頃には、エルガはコールベルにきた目的や自分の所属などを一通り喋り、女性の職業やこの店の扱っている商売などについて、一通り聞き終わっていた。
骨董屋と説明された店内は、なるほど古いものがとにかくたくさんあるようだが、なんだか雑然としていて埃っぽい。
「質屋って呼ぶ人もいますしね」
とは、傷の手当をしてくれた青年の言葉だ。
「そうねぇ、骨董屋のイメージってなんかこう、もっとお高く止まってる感じじゃない?
むしろ親しみを持って迎えられてるんじゃないかしら?」
エルガの様子を見守っていた女性は、エルガの手当てが終わって一安心したのか、今度は店内の商品を眺めて回っている。
職業は魔法書の背取りだと言っていたが、彼女にとって店内の骨董品はその好奇心の延長線に続くものなのかもしれない。
「案外、エルガさんの目的の本も商品の中に混ざってたりしてね」
「あ、それだったらちょっと楽でいいですね」
エルガのコールベル来訪の目的は図書館の図書資料だ。
ソフィニアの図書館になかったものを、エルガの指導教官が照会していたのだが、どうやらコールベルには、指導教官の閲覧したい資料の著者と似たような名前の著名人が何人かいるらしく、魔法の知識のない司書との手紙のやり取りでは埒が明かず、エルガが派遣されることになったのだ。
「一応、商品じゃからのー。図書館のが安くつくと思うがのぉ」
「一応って言わないでください」
不思議なしゃべり方の男性に、青年がすかさず突っ込みをいれる。
それがおもしろくて、エルガの口元が緩む。
それにしても…先ほどの現象はなんだったのだろうか。
魔法使いとしての習慣で、つい、エルガの思考はそっちに向かう。
誰かの魔法…というには、いまいち不確かだ。
最近、別の出張で不確かな魔法に巻き込まれたことがあったが(あれは、結局、指導教官の言う通り「偶発的に発生した魔法を、エルガと偶然出会った冒険者が現象の源を突き止めて解除した」と報告書を提出してしまったのだが)、案外自分はそういうものに感応しやすいタチなのかもしれない。
と、なると、この猫又に懐かれているのもその延長なのだろうか。
怪我の手当を受けている間に、結局例の焔猫はエルガの膝の上に居座ってしまったのだ。
おそるおそるきれいに光る毛皮に触ってみると、それは「ニャ」と短く声を出した。
「あ、そうだ。エルガさんは仕事の途中だったのよね。ごめんなさい。
つい店内が面白くって。ほら、ガット」
エルガが少し困っているのを察してか、女性が焔猫に声をかける。
精霊の扱いにも動物の扱いにも慣れないエルガの膝の上は、それほど居心地がよくなかったのかもしれない。今後はその声掛けに応じて、さっと床に降り立った。
「そうじゃのう。あんまり遅くなると図書館も閉まってしまうからの」
「そうなんですか?」
「ソフィニアが例外なのよ。普通は、あの街ほど遅くまで図書館を使おうって人もいないもの」
「あぁ、なるほど…」
ソフィニアの、しかも魔術学院の図書館―資料を閲覧する教員の足が絶えず、夜遅くまで学生が残って勉強している―に慣れていたエルガにとって、明るいうちに閉まってしまう図書館というものは想定外だった。
となると、目的地までは少し急いだほうがいいのかもしれない。
「お姉さん方は、船着場の場所はわからんじゃろー」
店主がのほほんと言う。
ここまでの雰囲気から、店主と青年が旅行者を騙す人種ではないことは分かっていたが―正直、騙されてもそれはそれで面白いからエルガは別にいいのだが―、怪我の手当までしてもらって、その上道案内までしてもらうのは、どうなんだろうと思ってしまう。
「そうね。コールベルの道って意外と複雑なんだもの」
女性が気負いなくそういうのを聞いて、エルガもなんとなく曖昧に頷いてしまった。
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