PC:マリエル
NPC:ハーフエルフの青年
場所:魔術学院
*新キャラです。魔術学院学生の14歳女子。詳しいことはこちらのプロフをどうぞ。というか、プロフ読んでからじゃないと内容よくわかんなさそう。
http://terraromance.rulez.jp/pc-list/list.cgi?id=56&mode=show
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魔術学院の教授の研究室や資料室の集中している棟に来ると、マリエルは毎回どうしても表情が強張ってしてしまう。
ふだん使っているの講義棟では同世代の友達と固まっているし、周りも似たようなもので、移動時間は賑やかなものだ。
しかしここは、すれ違う人間は、今年14になるマリエルより少なくとも10前後は年上の人間ばかりだし、高齢の教授であることのほうが多い。
しかも、なんだか皆いつも怒っているようにしかめっつらをしているように見える。
やっぱり、自分のような年ごろの人間がうろちょろしているのは不自然な場所だ。
(でも、魔術学院の知識は、学生に…いや全ての人間に開かれてしかるべきよね)
思わず雰囲気に押されてしまいそうな自分に言い聞かせながら、マリエルは目的の研究室を目指す。
誰かとすれ違うたびに、軽く会釈を返しながら埃っぽい廊下を進む。
いくつか階段を上って、さらに廊下を進んだあと、1つのドアの前で足を止めた。
やや緊張しながらドアをノックする。
中に人がいた場合、その人物に資料貸出しの手続きをしてもらえばよいが、ノックをしても返事が返ってこなかった場合、この資料室の管理者である教授―その人はこの部屋のはす向かいに別に部屋を持っているのだが―に部屋を開けてもらう必要がある。
それはマリエルには少し気の重いことであったし、さらにその教授がいなかった場合、また出直す必要があり、もっと億劫なのだ。
「はーい、あいてますよー」
明るい男性の声が返ってきて、マリエルは少しほっとする…と同時に、おや、と思う。
「失礼します」
できるだけ音を立てないように注意してドアを開け、部屋の中に入った。
「あれ! 君若いね~。何の用かな?」
部屋の中は奥から規則正しく背の高い本棚が並んでいるが、閲覧者のための席も入口近くに確保されている。
そこに一人の若い男性が腰かけていた。資料を読んでいたところのようで、テーブルの上に置いた本のページに指をはさんでいる。
(あれ…、この人)
髪がかけられて露出した耳は、マリエルにはない特徴的な形をしていた。
先のとがった形は、マリエルとは違う種族の生き物であることの現れだ。
(ハーフエルフ…かな)
確信はなかったが、なんとなくそう思う。
魔術学院はエルフの学生も、数は少ないが何人かいるので、マリエルも彼らを見かけたことがある。
青年は、透明感のある肌や髪の色はエルフの特徴を有しているのだが、エルフの学生たちのように遠目からでもわかるような華やかさや淡麗さがあまり感じられなかったのだ。
「論文集をお借りしたくって」
驚きを表情に出さないように気をつけながら、マリエルは言う。
「貸出希望ねー。あ、ごめん。そういうときっていつもどうしてる?」
「貸出簿に名前と所属を記入して、資料を探してもらってます」
「そうなんだ…。えーと、あの辺の棚かな。ちょっと待ってね」
青年は明らかに不慣れな様子で、何冊か並んだ帳面を調べていたが、「あった」とマリエルの見慣れた貸出簿を取り出た。
「はい。筆記用具は…」
「あ、いつも、そこの用具入れのものを使わせていただいています。えっと…今日は、いつもいらっしゃる女性の方は、今日はおやすみなんですか?」
思い切って、マリエルは質問をしてみる。
普段だったら、いつもこの資料室で作業をしている女性が貸出手続きをしてくれるのだ。
短くした髪や男性のような長身から印象に残る人で、最近は少し雑談もするようになり、彼女が学院で研究助手のような仕事をしていて、この部屋を使っていることも聞いていた。
実は部屋にいたのが違う人物で、すこしがっかりしていたのだ。
「あー、えっちゃんね。うん、彼女今、コールベルの方に出張なんだよ」
「コールベル…」
「そう。ていうか彼女、結構出張多いからそんなにいつもいないんだけどね。君、ここって結構くるの?」
「あ、何回かですけど…。ベッケラート先生の講義の課題が出たときに先生の研究室の資料が参考になるので…」
ベッケラートとは、この資料室の管理者でもある教授の名前だ。
「ふーん。あれかな。君の年齢でベッケラート先生ってことは『魔法才覚基礎』? あの講義ってそんな資料参照させるっけ」
「はい、そうです。せっかくの機会なので、ちゃんと調べておきたくって」
マリエルが答えると、青年はにやっと笑って言った。
「真面目だねぇ、君。君みたいな歳から論文なんか読んでたら、将来ハゲるよ」
彼流の冗談だとしても、あんまりな言いように、マリエルはとっさに返答ができない。
ぐらっと気持ちが苛立つが、なんとか表情に出さないように努めて愛想笑いを浮かべる。
「はは。あ、貸出簿だよね。ごめんごめん。とりあえず書いてもらえる? 僕は資料を探しとくから」
「あ、はい」
青年が本棚を探し始めたので、マリエルは自分で戸棚を開けて、筆記用具を用意することにする。
本来ならば、勝手に部屋の備品をいじらないほうがいいのだろうが、青年は別に構わなさそうであったし、彼に自分から声をかけたい心境でもなかった。
マリエルが貸出簿に記入しおわった頃、青年が数冊の資料を机の上に置いた。
「おまたせー。いくつかここにない資料があったから、あとで図書館の方も行ってみてね」
「ありがとうございます。お忙しいところをすみません」
「いいよー。忙しくないっていうか今、ここにさぼりに来てたとこだし」
「……」
「僕、普段、会計科にいるんだけどさー。先生たちの請求資料の領収書届けと資料室の在庫確認のついでにさぼってたわけ。
えっちゃんがいたらお茶でも飲んでたんだけどねー」
へらへらと説明する青年に、マリエルは、ほんのり重たい感情を感じる。
普段、与えられた課題には全力を持って取り組むことをよしとするマリエルには、青年の行動がいま一つ理解できないのだ。
(……苦手なタイプかもしれない)
魔術学院の友人たちはおおむね勉強熱心な人間たちだということもあって、青年の不真面目さを肯定する様子に、マリエルはそう結論づけた。
「ありゃ?」
マリエルが筆記用具を片付けていると、青年が貸出簿を見て、妙な声を上げた。
「ねぇね、もしかして、君、コールベルのあたりの出身だったりする?」
言いあてられて、マリエルは驚く…と同時に、彼と何かつながりがあるかもしれないという予感に少し不快になる。
「あ、はい。そうです」
遠慮がちにマリエルがうなづくと、青年の表情がぱぁっと明るくなる。
「えー! そうだったんだ! コールベルのマリエル・フォールってことは、あれだよね。ベッケラート先生の魔法査定器具の標準化の調査のときの子だよね。
うわぁ、びっくり」
「確かに、先生の調査を受けましたが…」
急に大声を出して、やけに嬉しそうな様子の青年に、マリエルはついていけずに、あいまいな笑顔で返答する。
「あれって4年前だよね。僕、あのとき、先生んとこのゼミ生だったんだよ。えっちゃんもだけど。んで、あの調査のテスターでコールベル組だったんだよ」
「え、そうなんですか!」
さすがに、マリエルも目を見張る。
マリエルが魔術学院に進学するきっかけが、まさにその魔法査定器具の調査だ。
魔力の強さや適性を測定する器具を開発のため、いくつかの地域の子どもたちを対象に行われたもので、マリエルの通っていたコールベルの学校も、その調査の対象だったのだ。
「うっわぁ、ちょっと感動。そっか。そりゃあいるよねぇ。
たしかあの調査がきっかけで魔力があることがわかってうち来た子って、君とあと何人かってくらいだよねぇ。
君の調査とったのは僕じゃないから、会ってはないんだけどね。いやでも懐かしいなぁ。
あ、そっか、だからさっきコールベルの話でたときちょっと変な顔したのかぁ」
興奮した青年はまくしたてるように話す。
「いやぁ、なんかまた機会あったら話そうよ。僕はたいてい会計科にいるからさ。学費払うときでも来てよ。
会計科のハーフエルフの人って言ったらたいてい事務畑のみんなはわかるから」
「またよろしくお願いします」
できるだけこれからもこの人には会いたくないな、と思いながら、マリエルは青年に軽く頭を下げた。
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新キャラつくりました。マリエル・フォール。通称マリ子。
精神不安定な14歳です。
NPC:ハーフエルフの青年
場所:魔術学院
*新キャラです。魔術学院学生の14歳女子。詳しいことはこちらのプロフをどうぞ。というか、プロフ読んでからじゃないと内容よくわかんなさそう。
http://terraromance.rulez.jp/pc-list/list.cgi?id=56&mode=show
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魔術学院の教授の研究室や資料室の集中している棟に来ると、マリエルは毎回どうしても表情が強張ってしてしまう。
ふだん使っているの講義棟では同世代の友達と固まっているし、周りも似たようなもので、移動時間は賑やかなものだ。
しかしここは、すれ違う人間は、今年14になるマリエルより少なくとも10前後は年上の人間ばかりだし、高齢の教授であることのほうが多い。
しかも、なんだか皆いつも怒っているようにしかめっつらをしているように見える。
やっぱり、自分のような年ごろの人間がうろちょろしているのは不自然な場所だ。
(でも、魔術学院の知識は、学生に…いや全ての人間に開かれてしかるべきよね)
思わず雰囲気に押されてしまいそうな自分に言い聞かせながら、マリエルは目的の研究室を目指す。
誰かとすれ違うたびに、軽く会釈を返しながら埃っぽい廊下を進む。
いくつか階段を上って、さらに廊下を進んだあと、1つのドアの前で足を止めた。
やや緊張しながらドアをノックする。
中に人がいた場合、その人物に資料貸出しの手続きをしてもらえばよいが、ノックをしても返事が返ってこなかった場合、この資料室の管理者である教授―その人はこの部屋のはす向かいに別に部屋を持っているのだが―に部屋を開けてもらう必要がある。
それはマリエルには少し気の重いことであったし、さらにその教授がいなかった場合、また出直す必要があり、もっと億劫なのだ。
「はーい、あいてますよー」
明るい男性の声が返ってきて、マリエルは少しほっとする…と同時に、おや、と思う。
「失礼します」
できるだけ音を立てないように注意してドアを開け、部屋の中に入った。
「あれ! 君若いね~。何の用かな?」
部屋の中は奥から規則正しく背の高い本棚が並んでいるが、閲覧者のための席も入口近くに確保されている。
そこに一人の若い男性が腰かけていた。資料を読んでいたところのようで、テーブルの上に置いた本のページに指をはさんでいる。
(あれ…、この人)
髪がかけられて露出した耳は、マリエルにはない特徴的な形をしていた。
先のとがった形は、マリエルとは違う種族の生き物であることの現れだ。
(ハーフエルフ…かな)
確信はなかったが、なんとなくそう思う。
魔術学院はエルフの学生も、数は少ないが何人かいるので、マリエルも彼らを見かけたことがある。
青年は、透明感のある肌や髪の色はエルフの特徴を有しているのだが、エルフの学生たちのように遠目からでもわかるような華やかさや淡麗さがあまり感じられなかったのだ。
「論文集をお借りしたくって」
驚きを表情に出さないように気をつけながら、マリエルは言う。
「貸出希望ねー。あ、ごめん。そういうときっていつもどうしてる?」
「貸出簿に名前と所属を記入して、資料を探してもらってます」
「そうなんだ…。えーと、あの辺の棚かな。ちょっと待ってね」
青年は明らかに不慣れな様子で、何冊か並んだ帳面を調べていたが、「あった」とマリエルの見慣れた貸出簿を取り出た。
「はい。筆記用具は…」
「あ、いつも、そこの用具入れのものを使わせていただいています。えっと…今日は、いつもいらっしゃる女性の方は、今日はおやすみなんですか?」
思い切って、マリエルは質問をしてみる。
普段だったら、いつもこの資料室で作業をしている女性が貸出手続きをしてくれるのだ。
短くした髪や男性のような長身から印象に残る人で、最近は少し雑談もするようになり、彼女が学院で研究助手のような仕事をしていて、この部屋を使っていることも聞いていた。
実は部屋にいたのが違う人物で、すこしがっかりしていたのだ。
「あー、えっちゃんね。うん、彼女今、コールベルの方に出張なんだよ」
「コールベル…」
「そう。ていうか彼女、結構出張多いからそんなにいつもいないんだけどね。君、ここって結構くるの?」
「あ、何回かですけど…。ベッケラート先生の講義の課題が出たときに先生の研究室の資料が参考になるので…」
ベッケラートとは、この資料室の管理者でもある教授の名前だ。
「ふーん。あれかな。君の年齢でベッケラート先生ってことは『魔法才覚基礎』? あの講義ってそんな資料参照させるっけ」
「はい、そうです。せっかくの機会なので、ちゃんと調べておきたくって」
マリエルが答えると、青年はにやっと笑って言った。
「真面目だねぇ、君。君みたいな歳から論文なんか読んでたら、将来ハゲるよ」
彼流の冗談だとしても、あんまりな言いように、マリエルはとっさに返答ができない。
ぐらっと気持ちが苛立つが、なんとか表情に出さないように努めて愛想笑いを浮かべる。
「はは。あ、貸出簿だよね。ごめんごめん。とりあえず書いてもらえる? 僕は資料を探しとくから」
「あ、はい」
青年が本棚を探し始めたので、マリエルは自分で戸棚を開けて、筆記用具を用意することにする。
本来ならば、勝手に部屋の備品をいじらないほうがいいのだろうが、青年は別に構わなさそうであったし、彼に自分から声をかけたい心境でもなかった。
マリエルが貸出簿に記入しおわった頃、青年が数冊の資料を机の上に置いた。
「おまたせー。いくつかここにない資料があったから、あとで図書館の方も行ってみてね」
「ありがとうございます。お忙しいところをすみません」
「いいよー。忙しくないっていうか今、ここにさぼりに来てたとこだし」
「……」
「僕、普段、会計科にいるんだけどさー。先生たちの請求資料の領収書届けと資料室の在庫確認のついでにさぼってたわけ。
えっちゃんがいたらお茶でも飲んでたんだけどねー」
へらへらと説明する青年に、マリエルは、ほんのり重たい感情を感じる。
普段、与えられた課題には全力を持って取り組むことをよしとするマリエルには、青年の行動がいま一つ理解できないのだ。
(……苦手なタイプかもしれない)
魔術学院の友人たちはおおむね勉強熱心な人間たちだということもあって、青年の不真面目さを肯定する様子に、マリエルはそう結論づけた。
「ありゃ?」
マリエルが筆記用具を片付けていると、青年が貸出簿を見て、妙な声を上げた。
「ねぇね、もしかして、君、コールベルのあたりの出身だったりする?」
言いあてられて、マリエルは驚く…と同時に、彼と何かつながりがあるかもしれないという予感に少し不快になる。
「あ、はい。そうです」
遠慮がちにマリエルがうなづくと、青年の表情がぱぁっと明るくなる。
「えー! そうだったんだ! コールベルのマリエル・フォールってことは、あれだよね。ベッケラート先生の魔法査定器具の標準化の調査のときの子だよね。
うわぁ、びっくり」
「確かに、先生の調査を受けましたが…」
急に大声を出して、やけに嬉しそうな様子の青年に、マリエルはついていけずに、あいまいな笑顔で返答する。
「あれって4年前だよね。僕、あのとき、先生んとこのゼミ生だったんだよ。えっちゃんもだけど。んで、あの調査のテスターでコールベル組だったんだよ」
「え、そうなんですか!」
さすがに、マリエルも目を見張る。
マリエルが魔術学院に進学するきっかけが、まさにその魔法査定器具の調査だ。
魔力の強さや適性を測定する器具を開発のため、いくつかの地域の子どもたちを対象に行われたもので、マリエルの通っていたコールベルの学校も、その調査の対象だったのだ。
「うっわぁ、ちょっと感動。そっか。そりゃあいるよねぇ。
たしかあの調査がきっかけで魔力があることがわかってうち来た子って、君とあと何人かってくらいだよねぇ。
君の調査とったのは僕じゃないから、会ってはないんだけどね。いやでも懐かしいなぁ。
あ、そっか、だからさっきコールベルの話でたときちょっと変な顔したのかぁ」
興奮した青年はまくしたてるように話す。
「いやぁ、なんかまた機会あったら話そうよ。僕はたいてい会計科にいるからさ。学費払うときでも来てよ。
会計科のハーフエルフの人って言ったらたいてい事務畑のみんなはわかるから」
「またよろしくお願いします」
できるだけこれからもこの人には会いたくないな、と思いながら、マリエルは青年に軽く頭を下げた。
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新キャラつくりました。マリエル・フォール。通称マリ子。
精神不安定な14歳です。
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