PC:ヴォルペ シオン オプナ クロース
NPC:フィミル ブレッザ・プリマヴェリーレ 屍使い・ツクヨミ アマツ
場所:マキーナ幽霊屋敷→移動空間
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「逃がしません、ツクヨミ!」
シオンは咄嗟にツクヨミの消えた空間を手刀で薙いだ。その刹那、まるで布を切り裂いたかのように空間に穴があく。
「シオン君!?」
「危険ですから、ここで待っていてください。かならず取り戻しますから」
そう言うとシオンは、返事も聞かずに空間の裂け目に飛びこんだ。
* * * * * * * * * *
奇妙な浮遊感。周囲360°を不愉快な色彩で彩られた空間で二人の生物が対峙している。
一人はこの空間にはまったく似つかわしくない、女性ともとれる美しい容貌をした白髪の青年。
一人はこの空間にこれ以上ないくらいにマッチした、狂喜の笑みを浮かべるオレンジ色の髪の青年。
「やっぱり追って来たね。シオン…君はどうして赤の他人のタメにそこまでするのかなぁ?君は風使いだから知ってると思うけど、空間を切り開いて割りこんでくるってのは自殺行為だよ?空間の歪みにズタズタに引き裂かれてね、普通の人間ならまず助からないよ?」
口元を歪めるツクヨミ。それに対してシオンは目を細める。
「だから、ですよ。皆さんを危険な目にあわせるわけにはいきませんからね」
シオンの答えにツクヨミは不気味に高笑いする。狂ったかのような笑い声が不愉快な空間に響き渡り木霊した。ひとしきり笑った後、ツクヨミは額を押さえて俯く。
「…シオン、僕は昔から君が大っ嫌いだったよ」
顔を上げたツクヨミからもの凄い殺気が溢れ出してきた。狂気と殺気の入り混じった瞳がシオンを見つめる。シオンはそれを悲しげな瞳で受け、口を開く。
「……やはり…そうですか。最初あなたを見たときから気にはなっていたのですけど、今の言葉で確信しましたよ」
そこでいったん言葉を切り、ツクヨミを見つめる。ツクヨミもシオンを見つめた。
「私の中には千年大蛇の血が流れています。私を生み出した研究所が千年大蛇の力を利用しようとしたからです」
「………」
「後になって解った事ですけど、そういった研究所は、私の所を除いて他に3つあったそうです…」
「………」
「その一つが、ツクヨミ研…」
そこまで言った瞬間、超高熱の火炎弾がシオンに向けて放たれていた。とっさに風で作ったバリアで防いだものの、この不愉快な空間では風の集まりが悪いのか完全に防ぐ事が出来ず、右腕に火が燃え移った。右腕に巻いていた白い布が一瞬で燃えつき、露わになった右腕も軽い火傷を負ったいた。
しかしそれよりも目を引くのは右手の甲から二の腕にかけての痛々しい裂傷だった。まるで内側から力が加えられ、それに耐えきれず裂けたかのような…通常では有り得ない傷…シオンはとっさに右腕を左手で包みこんだ。
「…そうさ、僕も千年大蛇の実験台にされたサイボーグさ!僕の、この体には、千年大蛇の…オロチの肉が使われているんだよ!」
ツクヨミが絶叫する。狂喜の笑顔には涙が流れていた。
「凄い力だよ!?手加減しなかったら撫でるだけで鉄板がへこむんだよ?鉄砲の弾丸だって通さないし…笑っちゃうだろ!?見た感じはただのひ弱な人間さ、それが本性は化物だ!!アーハッハッハッハーーー!!!」
壊れたかのように笑いつづけるツクヨミを、シオンは悲しげな瞳で見つめていた。負った火傷はほぼ完治したといえるくらいに再生していた。今、奇襲をかければ不意をつかれたツクヨミは避ける事は出来ないだろう。その隙にグリオベルガを奪い、空間を切り裂いて脱出する。
しかし、シオンはそれが出来なかった。
「知ってる?オロチの研究をしていた研究所は皆同時にテロリストの襲撃を受けて壊滅したんだ。偶然にしては出来すぎてるだろ?…ソフィニアの政府が危険性を感じて処分しようとしたんだ。自分達が命じたくせに…本当、勝手だよねぇ?」
「それは知っています。しかしどの研究所からも実験中のサイボーグは回収されなかったらしいです。死体すら、発見できなかったらしいです」
シオンの答えに、ツクヨミは意外な顔をする。
「へぇ、よく知ってるね。トリプルSクラスの超極秘事項だよ?」
「自分で調べたんです。あらゆる手を使って…」
シオンの顔に影が落ちる。あまり思い出したくない記憶らしい。
「ふふ、じゃあツクヨミ研究所の真実を教えてあげよう。テロリストの襲撃があった時、研究所の奴等は我先にと逃げ出したんだ。僕の拘束が不完全だったにもかかわらずね」
ツクヨミが頬を吊り上げて不気味な笑みを浮かべる。
「みんな、僕が殺したんだよ。テロリストも、研究員も…みんなね。叩き潰し、引き千切り、焼き殺して…ね」
再びツクヨミが高笑いする。これ以上ないくらいに、笑顔で…
「なぜ、そんなことを…」
悲痛な顔を浮かべるシオンを、殺気を露わにしてツクヨミが睨む。
「…君のせいだろ?シオン…いや、サリュー…僕はいつも君と比べられていたよ。君が一番オロチの力を引き出せる可能性が高かったからね。所詮僕は頑丈なだけのサイボーグさ、オロチの筋肉を使っていてもね。4体の実験体の落ちこぼれだった僕には、君の様に臓器まで再生できる力なんて無かった。来る日も来る日も、研究員のヤツアタリの対象になっていたよ」
そこで一息ついて、ツクヨミは今までとは違う種類の笑みを浮かべた。
「ああ、心配しないで、今は君のこと大好きだから。こんなに美しいとは思わなかったからね」
再び狂喜の笑みを浮かべる。
「だから僕のコレクションになっちゃいな」
ツクヨミがグリオベルガを持っていない方の手を真横に突き出す。するとそこの空間がひび割れ、そして真っ黒な穴が開いた。ツクヨミが手を戻すと、そこから黒い髪の少年が出てきた。拘束具にも似たラバースーツのようなものを着ており、顔には黒い仮面をつけている。
その少年を見て、シオンは絶句した。
「気がついたかい。これ、僕達の兄弟だよ。なかなか可愛い顔をしていたからコレクションに加えてあげたんだ~♪さあ、アマツちゃん、お兄ちゃんに挨拶をしよう」
アマツと呼ばれた少年はこくりと頷くと、一瞬でシオンとの間合いを詰めて来た。
「!?」
不意を突かれたものの、繰り出された正拳をなんとかガードしたシオン。が、しかし、ガードした腕に激痛が走る。いつのまにかアマツの手に鋭い刃の仕込まれたナックルが握られていたのだ。
続けて繰り出された拳打を何とか回避し、間合いをとるシオン。そんなシオンを見てツクヨミが自慢げに説明する。
「アマツをなめちゃいけないよ。体は小さくてもサイボーグ、まともにヒットすれば君でもあばら骨が折れるよ?おまけに…」
間合いを取ったはずのシオンの鳩尾に、アマツの拳がめり込む。
「千年大蛇の骨が使われているアマツの動きは予測不可能。しかも伸縮自在の手足に間合いなんてない」
血を吐いてうずくまるシオンをアマツが静かに見下ろす。
「おやおや、もう終りかい?アマツにはまだまだ能力が沢山あるのに、残念だなぁ。アマツ、とどめ刺しちゃいなよ、ああ、解ってるとは思うけど顔はダメだよ?」
頷き、拳を硬く握ってうずくまるシオンヘを叩き落すアマツ。間一髪、シオンは身を捻ってそれをかわした。
「へぇ、頑張るねぇ、シオン。でも僕は知ってるんだよ?君の弱点をね」
ツクヨミの言葉が終るとほぼ同時に、シオンの体に変化が起きた。身構えようにもまったく力が入らないのだ。
「実はアマツのナックルには神経毒が塗られていてね。君、再生能力は高いらしいけど、毒や麻痺といったモノにはめっぽう弱いんだってねぇ」
息も絶え絶えにツクヨミを見上げるシオン。その顔は汗に濡れ、余裕がまったく無かった。
「うぅ~ん、良い表情だねぇ、シオン。もっとよがって楽しませてよ」
アマツがゆっくりとシオンに近づく。それはさながら死神の足音のようだった。
NPC:フィミル ブレッザ・プリマヴェリーレ 屍使い・ツクヨミ アマツ
場所:マキーナ幽霊屋敷→移動空間
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「逃がしません、ツクヨミ!」
シオンは咄嗟にツクヨミの消えた空間を手刀で薙いだ。その刹那、まるで布を切り裂いたかのように空間に穴があく。
「シオン君!?」
「危険ですから、ここで待っていてください。かならず取り戻しますから」
そう言うとシオンは、返事も聞かずに空間の裂け目に飛びこんだ。
* * * * * * * * * *
奇妙な浮遊感。周囲360°を不愉快な色彩で彩られた空間で二人の生物が対峙している。
一人はこの空間にはまったく似つかわしくない、女性ともとれる美しい容貌をした白髪の青年。
一人はこの空間にこれ以上ないくらいにマッチした、狂喜の笑みを浮かべるオレンジ色の髪の青年。
「やっぱり追って来たね。シオン…君はどうして赤の他人のタメにそこまでするのかなぁ?君は風使いだから知ってると思うけど、空間を切り開いて割りこんでくるってのは自殺行為だよ?空間の歪みにズタズタに引き裂かれてね、普通の人間ならまず助からないよ?」
口元を歪めるツクヨミ。それに対してシオンは目を細める。
「だから、ですよ。皆さんを危険な目にあわせるわけにはいきませんからね」
シオンの答えにツクヨミは不気味に高笑いする。狂ったかのような笑い声が不愉快な空間に響き渡り木霊した。ひとしきり笑った後、ツクヨミは額を押さえて俯く。
「…シオン、僕は昔から君が大っ嫌いだったよ」
顔を上げたツクヨミからもの凄い殺気が溢れ出してきた。狂気と殺気の入り混じった瞳がシオンを見つめる。シオンはそれを悲しげな瞳で受け、口を開く。
「……やはり…そうですか。最初あなたを見たときから気にはなっていたのですけど、今の言葉で確信しましたよ」
そこでいったん言葉を切り、ツクヨミを見つめる。ツクヨミもシオンを見つめた。
「私の中には千年大蛇の血が流れています。私を生み出した研究所が千年大蛇の力を利用しようとしたからです」
「………」
「後になって解った事ですけど、そういった研究所は、私の所を除いて他に3つあったそうです…」
「………」
「その一つが、ツクヨミ研…」
そこまで言った瞬間、超高熱の火炎弾がシオンに向けて放たれていた。とっさに風で作ったバリアで防いだものの、この不愉快な空間では風の集まりが悪いのか完全に防ぐ事が出来ず、右腕に火が燃え移った。右腕に巻いていた白い布が一瞬で燃えつき、露わになった右腕も軽い火傷を負ったいた。
しかしそれよりも目を引くのは右手の甲から二の腕にかけての痛々しい裂傷だった。まるで内側から力が加えられ、それに耐えきれず裂けたかのような…通常では有り得ない傷…シオンはとっさに右腕を左手で包みこんだ。
「…そうさ、僕も千年大蛇の実験台にされたサイボーグさ!僕の、この体には、千年大蛇の…オロチの肉が使われているんだよ!」
ツクヨミが絶叫する。狂喜の笑顔には涙が流れていた。
「凄い力だよ!?手加減しなかったら撫でるだけで鉄板がへこむんだよ?鉄砲の弾丸だって通さないし…笑っちゃうだろ!?見た感じはただのひ弱な人間さ、それが本性は化物だ!!アーハッハッハッハーーー!!!」
壊れたかのように笑いつづけるツクヨミを、シオンは悲しげな瞳で見つめていた。負った火傷はほぼ完治したといえるくらいに再生していた。今、奇襲をかければ不意をつかれたツクヨミは避ける事は出来ないだろう。その隙にグリオベルガを奪い、空間を切り裂いて脱出する。
しかし、シオンはそれが出来なかった。
「知ってる?オロチの研究をしていた研究所は皆同時にテロリストの襲撃を受けて壊滅したんだ。偶然にしては出来すぎてるだろ?…ソフィニアの政府が危険性を感じて処分しようとしたんだ。自分達が命じたくせに…本当、勝手だよねぇ?」
「それは知っています。しかしどの研究所からも実験中のサイボーグは回収されなかったらしいです。死体すら、発見できなかったらしいです」
シオンの答えに、ツクヨミは意外な顔をする。
「へぇ、よく知ってるね。トリプルSクラスの超極秘事項だよ?」
「自分で調べたんです。あらゆる手を使って…」
シオンの顔に影が落ちる。あまり思い出したくない記憶らしい。
「ふふ、じゃあツクヨミ研究所の真実を教えてあげよう。テロリストの襲撃があった時、研究所の奴等は我先にと逃げ出したんだ。僕の拘束が不完全だったにもかかわらずね」
ツクヨミが頬を吊り上げて不気味な笑みを浮かべる。
「みんな、僕が殺したんだよ。テロリストも、研究員も…みんなね。叩き潰し、引き千切り、焼き殺して…ね」
再びツクヨミが高笑いする。これ以上ないくらいに、笑顔で…
「なぜ、そんなことを…」
悲痛な顔を浮かべるシオンを、殺気を露わにしてツクヨミが睨む。
「…君のせいだろ?シオン…いや、サリュー…僕はいつも君と比べられていたよ。君が一番オロチの力を引き出せる可能性が高かったからね。所詮僕は頑丈なだけのサイボーグさ、オロチの筋肉を使っていてもね。4体の実験体の落ちこぼれだった僕には、君の様に臓器まで再生できる力なんて無かった。来る日も来る日も、研究員のヤツアタリの対象になっていたよ」
そこで一息ついて、ツクヨミは今までとは違う種類の笑みを浮かべた。
「ああ、心配しないで、今は君のこと大好きだから。こんなに美しいとは思わなかったからね」
再び狂喜の笑みを浮かべる。
「だから僕のコレクションになっちゃいな」
ツクヨミがグリオベルガを持っていない方の手を真横に突き出す。するとそこの空間がひび割れ、そして真っ黒な穴が開いた。ツクヨミが手を戻すと、そこから黒い髪の少年が出てきた。拘束具にも似たラバースーツのようなものを着ており、顔には黒い仮面をつけている。
その少年を見て、シオンは絶句した。
「気がついたかい。これ、僕達の兄弟だよ。なかなか可愛い顔をしていたからコレクションに加えてあげたんだ~♪さあ、アマツちゃん、お兄ちゃんに挨拶をしよう」
アマツと呼ばれた少年はこくりと頷くと、一瞬でシオンとの間合いを詰めて来た。
「!?」
不意を突かれたものの、繰り出された正拳をなんとかガードしたシオン。が、しかし、ガードした腕に激痛が走る。いつのまにかアマツの手に鋭い刃の仕込まれたナックルが握られていたのだ。
続けて繰り出された拳打を何とか回避し、間合いをとるシオン。そんなシオンを見てツクヨミが自慢げに説明する。
「アマツをなめちゃいけないよ。体は小さくてもサイボーグ、まともにヒットすれば君でもあばら骨が折れるよ?おまけに…」
間合いを取ったはずのシオンの鳩尾に、アマツの拳がめり込む。
「千年大蛇の骨が使われているアマツの動きは予測不可能。しかも伸縮自在の手足に間合いなんてない」
血を吐いてうずくまるシオンをアマツが静かに見下ろす。
「おやおや、もう終りかい?アマツにはまだまだ能力が沢山あるのに、残念だなぁ。アマツ、とどめ刺しちゃいなよ、ああ、解ってるとは思うけど顔はダメだよ?」
頷き、拳を硬く握ってうずくまるシオンヘを叩き落すアマツ。間一髪、シオンは身を捻ってそれをかわした。
「へぇ、頑張るねぇ、シオン。でも僕は知ってるんだよ?君の弱点をね」
ツクヨミの言葉が終るとほぼ同時に、シオンの体に変化が起きた。身構えようにもまったく力が入らないのだ。
「実はアマツのナックルには神経毒が塗られていてね。君、再生能力は高いらしいけど、毒や麻痺といったモノにはめっぽう弱いんだってねぇ」
息も絶え絶えにツクヨミを見上げるシオン。その顔は汗に濡れ、余裕がまったく無かった。
「うぅ~ん、良い表情だねぇ、シオン。もっとよがって楽しませてよ」
アマツがゆっくりとシオンに近づく。それはさながら死神の足音のようだった。
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