PC:ヴォルペ、シオン、オプナ、クロース
NPC:フィミル、ゴリ男、ブレッザ・プリマヴェリーレ、屍使いツクヨミ
場所:マキーナのファーストフード店
***********************************
☆あらすじ☆
夜深き森の中、フィミルは悪魔達の追尾を受けていた。
執拗に攻撃を仕掛けてくる悪魔達から逃れる術はなく、フィミルは仕方なく
自身の内に眠る天使の力を解放する。しかし、善戦空しくフィミルは力尽きて
倒れてしまう。命を取られそうになったその時、正義感に燃えるヴォルペが現
れる。
ヴォルペはその内に潜む九尾狐ブレッザ・プリマヴェリーレの力を解放し、
悪魔達を撃退する。その力を目の当たりにしたフィミルは、自身の護衛をヴォ
ルペに頼む。当然の如く引き受けてしまったヴォルペは、傷ついた少女ととも
に一路マキーナの町へと降って行った。
同じ頃、マキーナ付近の森で追尾されている人物がいた。
銀髪の人造人間(ホムンクルス)、シオンである。
追っ手は錬金術師の組織から送られた、屍使い・ツクヨミだった。
何とかツクヨミを撃退したシオンだったが、ツクヨミが最後に放った炎の魔
法の直撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。偶然通りがかった、オプナとク
ロースを庇ったためだ。
オプナは回復魔法で回復しようとするが、間に合わないと見て取るや、一路
付近の町マキーナへと飛んで行くのであった。
マキーナの宿屋「三匹の蛙」亭に宿を取るオプナ、クロース、シオン。
そこに、ヴォルペ、フィミルまでがやって来た。
二人が食事をしようと席に着くと、そこへツクヨミとクロースとオプナを追
って来た魔術師バーキンが襲撃してきた。
二人の鉢合わせの魔法で壊滅した「三匹の蛙」亭から何とか抜け出た五人
は、朝食を取ろうと立ち寄ったファーストフード店で鉢合わせることになっ
た。
一方、ツクヨミはコレクションを増やすため「三匹の蛙」亭の主人を魔獣化
してしまうのだった――。
***********************************
五人が親しくなりつつある最中、突如店の大通りに面している扉が破砕され
た。
続いて、爆音が轟く。
その爆音の中に獣特有の唸る様な怒声が聞こえて来たことは、云うまでもな
い。
「何だ!?」
最初に席を蹴立てて反応したのは、ヴォルペだった。彼の反応速度は、五人
の中において最速なのだ。何しろ九尾狐であるブレッザが体の一部を形成して
いるのだ。常人ではないその体運動は常軌を逸していた。体が反応する前に、
ブレッザの警告がヴォルペの脳内に反響したのは言うまでも無いが。
次に反応したのは、意外にもフィミルであった。彼女は悪魔との追尾行で感
覚が研ぎ澄まされていた。危機管理能力が極端に高くなっているのだ。当然、
隣に座っていたヴォルペに注意を促されての反応だが。
「獣……いや、人が化身したもの……ですね」
急激に反応を示した二人に反して、シオンはゆっくりと静かに振り向くと冷
静に分析した。彼の洞察力は、人智を超えていた。人ではない、人造人間(ホム
ンクルス)特有の知性を醸し出していた。
シオンに対して、同じ人造人間(ホムンクルス)であるクロースの方は無反応
である。感情が乏しい、というよりは感情が欠落している感がある。騒ぎに全
く意を介さず、静かにカウンターに向かってジュースを啜っている。
オプナは暫く様子を見るつもりでいたが、状況はそう巧く事を運んではくれ
なかった。
獣人が雄叫びを一声上げると、五人のいるカウンターに向かって突進して来
たのだ。
完全に獣と化した身ごなしで。
だが、彼は完全に獣と化していたわけではなかった。
突進の最中、獣の唸り声の間に僅かに混ざった人としての言語を、オプナは
聞き逃さなかった。
『……よぐも……よぐも、わだじの店をおぉぉぉぉっ!』
一度目の突進でカウンターは粉砕したが、咄嗟の機転で五人とも飛び退って
いた。
ヴォルペはフィミルを、シオンはクロースを庇って。そしてオプナは――。
「そういうのを、逆恨みって言うのよ! あの時あの店を壊したのは、私達じ
ゃないでしょっ!!」
ゴリラのような男――ゴリ男の特攻を間一髪の所で交わすと、オプナは猛然
と叫んでいた。
猛獣が激突したカウンター付近は、もうもうと埃を舞い立たせている。視界
を遮るかのように。その塵埃(じんあい)から何とか這い出したオプナの額に、
人差し指が突き立てられた。見るとその先端には、魔法の光が浩々と点ってい
る。
「お嬢さん。君はねぇ、逃げちゃいけないんだ。ボクの前から逃げちゃいけな
い。何故なら、これからボクのコレクションになってもらわなきゃいけないか
らねぇ」
屍使い・ツクヨミが狂気じみた笑みを迸らせると、呪文を唱えだした。
(……儀式魔法!?)
それが、完成間近の儀式魔法だということを、オプナは瞬時に理解した。そ
してその儀式魔法が、どのような種類のものであるかも。
オプナは強気に妖艶な笑みを零すと、人差し指から額を逸らし代わりに自分
の左手を押し付けた。彼女の左手には、幾何学的に重ねられた魔法円が描かれ
ていた。
「悪いわね。私の左手は、特別製なの」
そう言うが早いか、婉然と魔法円に描かれている呪文を解き放つオプナ。僅
かに相手の呪文よりも早い。
「【呪詛返し(カウンターマジック)】!」
*◆*◆*
ツクヨミが解き放とうとしていた呪文は、“ネクロマンシー”だった。死霊
や邪霊を呼び寄せ、生気を失った肉体――死体に憑依させ、操る魔法だ。オプ
ナに邪霊を憑依させ、同時に殺す事によって操り人形に仕立て上げようとした
のだ。それが、ツクヨミの常套手段だった。今までは。
だが、オプナの放った“カウンターマジック”は、相手の放った魔法をそっ
くりそのまま跳ね返す魔法だった。長い詠唱時間を短縮するために、呪文を魔
法円の構成要素の一部に組み込む事によって、咄嗟の機転に用立てたのだ。呪
文を描き込み直す必要があるので、一日に一度しか仕えない手ではあるが、オ
プナにとってそれは必殺の技であった。魔法研究の成果とも言える。
兎も角、逆にカウンターマジックによってツクヨミの身体に邪霊が憑依して
しまったのだった。これには、流石のツクヨミも読んでおらず面食らった。邪
霊が憑依すると人間の身体はどうなるか。ネクロマンサーでもあるツクヨミは
熟知していた。そしてそれは、オプナも同様だった。
ツクヨミの身体は極度の拒絶反応を示す。正邪の霊が互いに相殺作用を引き
起こしているのだ。つまり、二匹の蛇の様に互いに喰らい尽くそうと戦ってい
るのだ。その様を見て取るや、ツクヨミが邪霊に完全に喰らわれる前にオプナ
は行動を起こしていた。
ツクヨミの心臓の辺りには、一本のナイフが突き立っていた。
それは、呪術用に使うナイフであった。オプナの、ナイフだ。懐から取り出
されたそのナイフの刀身は、赤く塗り込められていた。否、赤く見えるそれ
は、時と共に黒ずんでいく。それは、血液だった。ツクヨミの血液が滴ってい
るのだ。
未だ、新鮮な肢体に深々と突き刺さったナイフは、ツクヨミの血に染まって
いた。
「コレクションには、貴方自身がおなりなさい」
オプナは口許を不敵に歪ませると、そのままゆっくりとナイフを引き抜いて
いった。
*◆*◆*
邪霊に取り付かれ、止めを刺されて生命活動を手放したツクヨミは、オプナ
の操り人形――否、操り死体と化した。
それと同時に、ゴリ男の活動も停止した。
命令を下していた存在が、消失――生ける屍へと変貌したからだ。だから、
命令が反故になったのだ。そして、アンデッドに思考能力などありはしない。
だからこそ、活動を停止したのだ。
その場の変化に逸早く気付いたヴォルペは、素早く行動に転じていた。
NPC:フィミル、ゴリ男、ブレッザ・プリマヴェリーレ、屍使いツクヨミ
場所:マキーナのファーストフード店
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☆あらすじ☆
夜深き森の中、フィミルは悪魔達の追尾を受けていた。
執拗に攻撃を仕掛けてくる悪魔達から逃れる術はなく、フィミルは仕方なく
自身の内に眠る天使の力を解放する。しかし、善戦空しくフィミルは力尽きて
倒れてしまう。命を取られそうになったその時、正義感に燃えるヴォルペが現
れる。
ヴォルペはその内に潜む九尾狐ブレッザ・プリマヴェリーレの力を解放し、
悪魔達を撃退する。その力を目の当たりにしたフィミルは、自身の護衛をヴォ
ルペに頼む。当然の如く引き受けてしまったヴォルペは、傷ついた少女ととも
に一路マキーナの町へと降って行った。
同じ頃、マキーナ付近の森で追尾されている人物がいた。
銀髪の人造人間(ホムンクルス)、シオンである。
追っ手は錬金術師の組織から送られた、屍使い・ツクヨミだった。
何とかツクヨミを撃退したシオンだったが、ツクヨミが最後に放った炎の魔
法の直撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。偶然通りがかった、オプナとク
ロースを庇ったためだ。
オプナは回復魔法で回復しようとするが、間に合わないと見て取るや、一路
付近の町マキーナへと飛んで行くのであった。
マキーナの宿屋「三匹の蛙」亭に宿を取るオプナ、クロース、シオン。
そこに、ヴォルペ、フィミルまでがやって来た。
二人が食事をしようと席に着くと、そこへツクヨミとクロースとオプナを追
って来た魔術師バーキンが襲撃してきた。
二人の鉢合わせの魔法で壊滅した「三匹の蛙」亭から何とか抜け出た五人
は、朝食を取ろうと立ち寄ったファーストフード店で鉢合わせることになっ
た。
一方、ツクヨミはコレクションを増やすため「三匹の蛙」亭の主人を魔獣化
してしまうのだった――。
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五人が親しくなりつつある最中、突如店の大通りに面している扉が破砕され
た。
続いて、爆音が轟く。
その爆音の中に獣特有の唸る様な怒声が聞こえて来たことは、云うまでもな
い。
「何だ!?」
最初に席を蹴立てて反応したのは、ヴォルペだった。彼の反応速度は、五人
の中において最速なのだ。何しろ九尾狐であるブレッザが体の一部を形成して
いるのだ。常人ではないその体運動は常軌を逸していた。体が反応する前に、
ブレッザの警告がヴォルペの脳内に反響したのは言うまでも無いが。
次に反応したのは、意外にもフィミルであった。彼女は悪魔との追尾行で感
覚が研ぎ澄まされていた。危機管理能力が極端に高くなっているのだ。当然、
隣に座っていたヴォルペに注意を促されての反応だが。
「獣……いや、人が化身したもの……ですね」
急激に反応を示した二人に反して、シオンはゆっくりと静かに振り向くと冷
静に分析した。彼の洞察力は、人智を超えていた。人ではない、人造人間(ホム
ンクルス)特有の知性を醸し出していた。
シオンに対して、同じ人造人間(ホムンクルス)であるクロースの方は無反応
である。感情が乏しい、というよりは感情が欠落している感がある。騒ぎに全
く意を介さず、静かにカウンターに向かってジュースを啜っている。
オプナは暫く様子を見るつもりでいたが、状況はそう巧く事を運んではくれ
なかった。
獣人が雄叫びを一声上げると、五人のいるカウンターに向かって突進して来
たのだ。
完全に獣と化した身ごなしで。
だが、彼は完全に獣と化していたわけではなかった。
突進の最中、獣の唸り声の間に僅かに混ざった人としての言語を、オプナは
聞き逃さなかった。
『……よぐも……よぐも、わだじの店をおぉぉぉぉっ!』
一度目の突進でカウンターは粉砕したが、咄嗟の機転で五人とも飛び退って
いた。
ヴォルペはフィミルを、シオンはクロースを庇って。そしてオプナは――。
「そういうのを、逆恨みって言うのよ! あの時あの店を壊したのは、私達じ
ゃないでしょっ!!」
ゴリラのような男――ゴリ男の特攻を間一髪の所で交わすと、オプナは猛然
と叫んでいた。
猛獣が激突したカウンター付近は、もうもうと埃を舞い立たせている。視界
を遮るかのように。その塵埃(じんあい)から何とか這い出したオプナの額に、
人差し指が突き立てられた。見るとその先端には、魔法の光が浩々と点ってい
る。
「お嬢さん。君はねぇ、逃げちゃいけないんだ。ボクの前から逃げちゃいけな
い。何故なら、これからボクのコレクションになってもらわなきゃいけないか
らねぇ」
屍使い・ツクヨミが狂気じみた笑みを迸らせると、呪文を唱えだした。
(……儀式魔法!?)
それが、完成間近の儀式魔法だということを、オプナは瞬時に理解した。そ
してその儀式魔法が、どのような種類のものであるかも。
オプナは強気に妖艶な笑みを零すと、人差し指から額を逸らし代わりに自分
の左手を押し付けた。彼女の左手には、幾何学的に重ねられた魔法円が描かれ
ていた。
「悪いわね。私の左手は、特別製なの」
そう言うが早いか、婉然と魔法円に描かれている呪文を解き放つオプナ。僅
かに相手の呪文よりも早い。
「【呪詛返し(カウンターマジック)】!」
*◆*◆*
ツクヨミが解き放とうとしていた呪文は、“ネクロマンシー”だった。死霊
や邪霊を呼び寄せ、生気を失った肉体――死体に憑依させ、操る魔法だ。オプ
ナに邪霊を憑依させ、同時に殺す事によって操り人形に仕立て上げようとした
のだ。それが、ツクヨミの常套手段だった。今までは。
だが、オプナの放った“カウンターマジック”は、相手の放った魔法をそっ
くりそのまま跳ね返す魔法だった。長い詠唱時間を短縮するために、呪文を魔
法円の構成要素の一部に組み込む事によって、咄嗟の機転に用立てたのだ。呪
文を描き込み直す必要があるので、一日に一度しか仕えない手ではあるが、オ
プナにとってそれは必殺の技であった。魔法研究の成果とも言える。
兎も角、逆にカウンターマジックによってツクヨミの身体に邪霊が憑依して
しまったのだった。これには、流石のツクヨミも読んでおらず面食らった。邪
霊が憑依すると人間の身体はどうなるか。ネクロマンサーでもあるツクヨミは
熟知していた。そしてそれは、オプナも同様だった。
ツクヨミの身体は極度の拒絶反応を示す。正邪の霊が互いに相殺作用を引き
起こしているのだ。つまり、二匹の蛇の様に互いに喰らい尽くそうと戦ってい
るのだ。その様を見て取るや、ツクヨミが邪霊に完全に喰らわれる前にオプナ
は行動を起こしていた。
ツクヨミの心臓の辺りには、一本のナイフが突き立っていた。
それは、呪術用に使うナイフであった。オプナの、ナイフだ。懐から取り出
されたそのナイフの刀身は、赤く塗り込められていた。否、赤く見えるそれ
は、時と共に黒ずんでいく。それは、血液だった。ツクヨミの血液が滴ってい
るのだ。
未だ、新鮮な肢体に深々と突き刺さったナイフは、ツクヨミの血に染まって
いた。
「コレクションには、貴方自身がおなりなさい」
オプナは口許を不敵に歪ませると、そのままゆっくりとナイフを引き抜いて
いった。
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邪霊に取り付かれ、止めを刺されて生命活動を手放したツクヨミは、オプナ
の操り人形――否、操り死体と化した。
それと同時に、ゴリ男の活動も停止した。
命令を下していた存在が、消失――生ける屍へと変貌したからだ。だから、
命令が反故になったのだ。そして、アンデッドに思考能力などありはしない。
だからこそ、活動を停止したのだ。
その場の変化に逸早く気付いたヴォルペは、素早く行動に転じていた。
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