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2024/05/17 00:56 |
第五話「ケロヨンの悲劇」/フィミル(セツ)
PC:フィミル ヴォル
場所:街道~三匹の蛙亭
NPC:お客さん モンスター



森を抜けて、街道に出る頃には夜は明けて、悪魔の気配は完全に消えていた
風の通らない森よりも思いのほか寒く、自分の腕を抱いて露出した部分をさする
「砌[みぎり]よ・・・・」
魔力も大分回復して来たようで、難なく置いてきぼりにした荷物を呼び出すことが出来た
遠くにある物を転移させるのは至難の技だが、このレザーザックにはあらかじめ魔方陣が刺繍されていた。そうすることにより呼び出しは初級魔法にまで成り下がる
「へぇ、便利なものだね」
「ええ、特に私なんて忘れ物が多くて、この魔術にはお世話になりっぱなしなんですよ」
「ははは・・・・・は、はっくしょん」
思わず笑うと、お兄さんは「いや、失礼」と顔をしかめた
「防寒具の類はお持ちですか?」
「うん、一応」
と、そこで冷たい風が吹いてきたので、自分も急いでザックを漁る。そろそろ寒くなると思って、前の街で買ったものがあるはずだった
足元まで隠す真っ黒なマントだ。結ぶ紐の先にフワフワしたファーのボールが付いていて、それが子供っぽいと思うのだが、そう思うのは自分だけだと知っていた
羽織って、しっかり前を合わせると結構暖かい
お兄さんも上着を着込んでいる
「砌よ」
今度は悲哀の翼を呼び出した。そう言えば何でこんな名を付けたのだろう?よく思い出せない
まぁいいか、と思ってマントの上から背負う
「物騒だね、何でそんな物背負ってるの?」
ごもっともだ、しかもこれは刃渡り1m強もある長物で、柄も合わせると自分の目線程もある。見た目より遥かに軽いので扱いには困らないが、やはり異様なのだろう
「えっと・・・・一応護身用なんです」
「へ、へぇ~」
納得してくれたのか怪しいところだが、しょうがない。実際この剣は自分にとっての十字架なのだ。我が身の罪深きを忘れないための・・・・
と、急にお兄さんが立ち止まった
「?」
こちらを見て笑む
「雪だ」
見上げた顔に冷たい感触、雪だ
パラパラと、灰色の雲から零れ落ちるように
マントの中から腕を伸ばす、冷たい
雪は好きな物の一つだった。地面に寝転んで、ずっと雪が舞い落ちるのを見ていたいと思ったが、取り敢えず諦めた
「急ごう」
「はい」
既に自己紹介など終えていたので、目的地が同じだと言う事もわかっている
まだ積もる気配さえない雪は風に戯れて、触れた物を次第に凍てつかせるのだった


助けてもらったお礼に、とお兄さんを連れ込んだのは「三匹の蛙亭」と言う宿屋兼食堂兼酒場のようなところだった
どう見ても年下の自分におごらせる事をお兄さんは頑なに拒んだが、実は自分は大金持ちの娘で親のお金だから、と嘘まで付いてやっと承諾した
実は訳あって私にはかなりの貯金があるので、旅費には困らない
街についた時にはもう夕方近くだったので、「三匹の蛙亭」はそれなりの賑わいを見せていた。先にそこで宿を取り(お兄さんの分も取ってしまおうとしたが、気づかれた)久しぶりの温かい食事にありつくことになった
「で、そのお嬢様が何で旅なんかしてるの?」
「かわいい娘には旅をさせろ、ということで」
「ふ~ん、そうなんだ、大変だね。あれ、でも何で魔法が使えるの?」
「えっと・・・・・護身用、です」
「へ~、もうそんな時代なんだ」
・・・・実はこのお兄さん、少し単純というか、人を信じやすいところがあるようだ
「それでですね・・・・・」
「うん?」
お兄さんは嬉々と食事をしていたが、その手を止めてこちらを見る
「あの、えっと・・・私に護衛として雇われてはもらえないでしょうか?」
「いいよ」
その即答ぶりに少し呆気にとられながら、それでもなんとか言葉を続ける
「それで報酬なんですが・・・・・」
「ふぇ?ん・・・・んぐ、ごめん、えっと報酬か・・・・相場はどのくらいなの?」
「私もそれが聞きたかったのですが・・・・」
「う~ん・・・・・あっ、そう言えばこれからの行き先は決めてないって言ったよね」
「はい、特には」
「じゃあ僕についてこない?それならお金もいらないし」
戸惑う。契約関係ならともかく、好意に甘えてこの人を巻き込みたくはなかった。恩を仇で返すようなものだ
「あの、実は私は狙われているんです。ご迷惑をかけるわけには・・・・・」
「え?そなの。でも気にしないで、僕も狙われてるから」
「え?」
「それに今から迷惑掛けるみたいだし?」
お兄さんの視線の先をみると、窓から怪物(大きな鳥のような)が硝子を蹴破って入ってくる所だった
「三匹の蛙亭」はパニックになり、お兄さんは荷物を漁っている。どうやらお兄さんのお客さんのようだ。いいかげんダルい体に鞭打って、とりあえずテーブルの影に身を隠した
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2007/02/17 00:41 | Comments(0) | TrackBack() | ○造られし者達

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