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2024/05/17 08:52 |
第三話「月下」/シオン(ケン)
PC:シオン クロース オプナ
場所:マキーナ周辺森
NPC:屍使い
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風をまとった光牙(鞘に入れた状態)の一撃を受け、大きく吹き飛ぶ男、大の大人の
男を吹き飛ばしたのは驚く事に華奢な体付きをした少年だった。

自分の身長をゆうに越える聖柄の太刀をまるで棍の様に構えるとまだ残っている男達
を一瞥する、月光を受け白銀に輝く髪を夜風になびかせ、月明かりに照らされて幻想
的な美しさを漂わせる横顔は絶世の美女を思わせる、それでいて僅かに幼さを残して
いた。

先ほどまで出ていた月が再び厚い雲に覆われ始めた頃、白髪の少年は最後の男の鳩尾
に突きを入れて昏倒させていた。

パチパチ

白髪の少年が先ほど昏倒させた男を調べようとした時だった、オレンジ色の散切りの
髪をした長身の20代前半の青年が拍手をしながら白髪の少年に近寄ってきた。いつ
もなら微笑みをたたえて挨拶をする白髪の少年だが場合が場合で不意に現れたオレン
ジ頭の青年に僅かばかりの警戒心を宿した眼で見つめる。
その様子を見て、オレンジ頭の青年は不適な笑みになり口を開く。

「いいね~、その表情、その眼」

オレンジ頭の青年はにやにやと笑いながら近づいてくる。

「貴方はどなたですか?」

オレンジ頭の青年の言動に白髪の少年は少し眉をひそめつつ問う

「へ~、そんな声をしてるんだ、モロ僕の好みだよ」

質問の答えになっていない返答、オレンジ頭の青年は白髪の少年の顎に手を添え、妖
しい光を放つ紺色の瞳でまじまじと見つめてくる。

「お、おやめなさい」

その瞳に魅入ってしまっていた事に気付き、顔を赤らめながらも慌てて跳びのく白髪
の少年、それを愉快そうに眺めていたオレンジ頭の青年はにやにやと笑いながら右手
に刀、左手に剣を何所からともなく取り出した。

「残念だけどそろそろ本題に入ろうか、シオン・エレハイン」

「!…なぜ私の名前を?」

シオン・エレハインと呼ばれた白髪の少年は一瞬驚いたがすぐに冷静に物事を解釈し
た。

「…やはりさっきの人達は貴方が差し向けてきたのですね?」

シオンの問いにオレンジ頭の青年は満足そうに笑う。それが意味するものは―――肯
定―――

「いいね~頭が言い人って言うのも好きだよ…でもね」

言った途端、シオンの足首を何者かが掴み、そのまま逆さ釣りの状態で持ち上げられ
る。

「ぁ…何!?」

「僕が差し向けたのは人じゃないんだよね

シオンの青紫色の瞳に映った者は先ほど確かに昏倒したはずの男であった。普通の人
間ならまだまだ気を失っている一撃だったはずだ。

「言い忘れたけど僕の名前は『屍使い』…君を襲っていたのは僕が操っていた死体君
達だよ」

オレンジ頭の青年、屍使いが勝ち誇って言う、そして再びシオンに近づこうとして足
を止めた。

「へ~君…やっぱりスゴイよ」

刹那、シオンを掴んでいた死体がシオンを中心い発生したつむじ風にズタズタに切り
裂かれる、それはその周辺にあった他の死体も巻きこみ、風が止んだときには死体達
は一つ残らず消し飛ばされていた。

「あの状態で詠唱を完成するなんて、並大抵のレベルじゃない…ますます欲しくなっ
た」

屍使いの言葉が終るよりも早く、風をまとわせた光牙を手に構え、突っ込んでくるシ
オン、それを跳躍でかわす屍使い、上に跳ぶことを読んでいたかのように、振り帰り
際の突きは正確に屍使いの鳩尾を捕らえていただろう、しかし屍使いの背中から炎の
翼が生え、空を切る事にとどまった。シオンはすぐさま風の翼を広げ、屍使いを追撃
する。

「はっはっは、まさか僕が炎の魔法を使えるとは思わなかっただろ?」

屍使いの言葉を無視し、繰り出されるシオンの突きを屍使いは器用に左右の刀剣でさ
ばく、屍使いが火の玉を飛ばしてきたらシオンは風の盾で防ぐ、風と火は基本的には
火のほうが強いが防御、支援にに関しては風の方が勝る、激しい空中戦が続くさな
か、シオンに好機が訪れる。突きと見せかけて繰り出した光牙をなぎに変更した際、
屍使いの右腕を強く打ちつけ、怯んだ所を風をまとった突きを胸元に御見舞いしたの
だ。たまらずむせ返る屍使いに光牙を突き付ける。

「もう勝負はつきました。お引きなさい、そして二度と私の前に姿を現さないでくだ
さい」

強い口調で言い放つシオンを屍使いは見つめると、ニィっと口元を吊り上げて笑う。

「へ、さすがにつよいね、こりゃ本気でいかなきゃやばいか」

その言葉を聞きシオンは改めて構えなおす、が屍使いは相変わらず下品に笑いつづけ

「まあ、まてって、ビッグバン・メテオ…炎系の最上級魔法だ、それを避ける事がで
きれば、君の言う通りもう二度と君の前には姿を現さないよ」

言って屍使いは大容量の詠唱を始める。しかしシオンは少し考えていたが受けること
にした、避ける事に関しては風使いの右に出る者はいない、それが魔法や銃と言った
飛び道具ならなおさらだった。

「わかりました、受けましょう」

屍使いはニヤ~っと妖しく笑う、その間にも詠唱はどんどんと終って行く。

「(さすがにウィンドシールドでは防ぎきれませんね…)」

シオンはいつ放たれても良いように身構える、その数秒後、詠唱は完成した。

「じゃあ避けてみな!」

そう言った屍使いはいきなり後ろを振り返ると明後日の方向にビックバン・メテオを
放出した、そのエネルギーは凄まじく、火、水、風、土の中で威力で言えば最強と言
うのもうなづけるほどだった、もちろんウィンドシールドなんてもんで受けてたら風
の盾ごと消滅するだろう…しかしそれを屍使いはあらぬ方向に放出したのだ、しか
し、シオンはその意味がすぐにわかった、避けさせないためにしたのだ、ビックバ
ン・メテオの進行方向には二人の旅人がいた、一人は紅の長髪に桜色のローブを羽織
った20代くらいの女性だ、もう一人は対照的に白っぽい頭髪に10代くらいの少女だ。
あの距離、あのタイミングではビッグバン・メテオを防ぐ事はもちろん、かわす事も
不可能だろう。

「死体操作と同様に、僕のやり方は人から嫌われるんだ、君は放っておけるかな?」

最上級魔法を放ったため、荒い息遣いだが屍使いははっきりと聞こえる声で言った。
もっともシオンにはもう聞こえていなかったかもしれないが。

「ふふ、やっぱり行ったか、そうで無くちゃね」

フフフと不適に笑い屍使いは高みの見物を決めこんだ。

迫り来るビックバン・メテオにやっと気付いたのか、二人が走り始める、やはりだ、
今からでは間に合わないだろう、シオンは目を瞑り、精神を集中し、身体の中にいる
『あいつ』に問いかけた。『千年大蛇』サイボーグであるシオンが作られる際、人間
の細胞と一緒にかかけ合わせたもう一つの細胞の正体だ、この細胞のおかげでシオン
は尋常ならぬ身体能力を身につけることが可能だった、しかし制限時間は5分だ、それ
を過ぎると……シオンは無意識に右腕の傷を包帯越しにさする。

再び開いたシオンの瞳は銀色に輝き、肩ちょっとまであった白髪はプラチナブロンド
の長髪に変わりその身体は金色の淡い燐光に包まれていた。

加速したシオンは金色の残像を引きながら信じられないスピードでビックバン・メテ
オの前に回りこむとそれを両の手で押さえる。そのかいもあって二人は無事に範囲外
までかけぬけた。
それを確認し、シオンはさらに力をこめる、もはや身体は限界に近かったが、力を振
り絞り、ビックバン・メテオを消滅させた、その際の大爆発に巻きこまれ吹き飛ばさ
れたシオンは元の姿に戻っていた。
泥の地面を滑走し、大木に激突してやっと止まった。両腕は焼け爛れ、背中にも激痛
が走る朦朧とする意識の中、先ほどの二人が駆け寄ってくるのが見えた。

「こっちに来てはいけません、早くお逃げなさい」

と、言おうとしたが叶わず、シオンは意識を失ってしまった。


「す、すごい…なんて綺麗なんだ…オマケにこれほどの力があるとはな~…フフフ、
楽しくなってきた、また逢えるのを楽しみにしてるよ、大丈夫、君なら生き残れるっ
て…」

そう言い残すと屍使いはオレンジ色の火の玉になり何所かに消えて行った。
後には何の痕跡も残さずに…
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2007/02/17 00:40 | Comments(0) | TrackBack() | ○造られし者達

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