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2024/05/17 03:03 |
羽衣の剣 2/デコ(さるぞう)

PC:  デコ、ヒュー
NPC: イーネス
場所:  コタナ村

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「良かったな、少し休め。」
デコは、座り込んだ娘の肩に毛布と言うには少しくたびれた布を掛け、ポンポンと叩く。


イーネスの持ってきた薪を暖炉にくべ直すと、デコの鋭い瞳に炎が揺らぐ。
そしてヒューに視線を送り
「坊主ももうちょっと横になっておくんだな、少しでも体力を回復させたほうがいい。」

と横になる事を促した。



幾度と無く叩き付けるような風が窓と言わず建物全体を揺らす。
薪のパチパチ爆ぜる音だけが空間を支配し始め、無音と違う静寂が辺りを占める。

そして、その静寂に全員が身を委ねていた時、異変は起こった・・・

「グゥ~」

デコとイーネスの視線が音の方に向く

「そういえば、食って無い、二日ほど」
と、自分の腹に視線を送ると、無表情のまま呟いた。

イーネスもホッとして落ち着いたのだろう、フッと笑みを浮かべ立ち上がると
「パンとスープくらいしか残って無いけどね」
とキッチンの方へ歩を向けた。


ドアを開けキッチンに向おうとする彼女に向い
「すまない、恩に着る」
とヒューは軽く頭を下げ短く感謝の祈りらしき言葉を呟いた。


デコはそんなやり取りを目をやると軽く唇の端を上げる。
そして、娘が部屋を出たのを見計らって自分の外套に目を送りどっこいせと立ち上がった。

「これ以上外が荒れる前に宿に戻る、一晩このまま休めば毒も完全に抜けるだろうさ。」

そう言いながらヒューの体を見渡すと
手にした外套を羽織ながら外に出る支度を始める。

「俺が言うのもなんだが、こんな時、外出るの危ない。」
デコの視線に自分の視線を重ねると真面目な声で注意をする。


「なぁに、慣れたもんさ」と髭を撫で余裕のある視線で出口に向おうとした時に
ドカンという破壊音と共にイーネスの悲鳴が耳に入る!

咄嗟に体中を駆け巡る緊張と共に足が勝手にキッチンのある方へと向う。
同じくヒューも立て掛けてある剣に手を伸ばしデコの後へと続くように跳ね起きる。

感じ取った危険に対する男としての本能か、はたまた神に仕える使命感なのか。


ドアを跳ね開けると勝手口が壊され巨大な影が壊された扉の向こうに浮かぶ。

幸いイーネスは飛び退いて難を逃れたが足を捻ったのかその場から立ち上がる事が出来ずに
それでも、ずるずると部屋の奥へと退く。

「大丈夫か?」
イーネスを庇う様に彼女の前に立ちはだかるヒューと
さらにその前に立ち塞がり巨大な影の正体を見極めようとする司祭。

鋭い双眸を目の前の影に向けると後ろから
「熊だな、かなりでかい。」
とヒューの声が聞こえ
同時に熊の怒号が周辺に己が熊である事を告げる。


熊の怒号に冷や汗を浮かべながらも視線は動かさない。
「ちっ、わかってるよ、群れを率いるために先頭を泳ぐんだろ?」
ボソリと呟き左手に聖印、右手に鮪皮をなめした砂袋(スタナー)を持つと
「小僧、イーネスを頼むぞ!」
と振り向かずに叫ぶと転がるようにに家の外へと飛び出した。


1フィート近い体躯の巨大な姿がデコを見下ろす・・・
自分の倍近くの巨体は圧倒的な威圧感を生み出しデコの心臓を握りつぶそうとする。

だが、デコは知っている。

どんな相手であろうと前を泳いだ以上引けない、引いてはいけないと言う事を・・・




そして、まさに今、巨大熊の一撃がデコに振り下ろされようとしていた。




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2010/02/05 00:38 | Comments(0) | TrackBack() | ○羽衣の剣

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