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2024/11/01 08:01 |
9.ファイアー・アゲート/フレア(熊猫)
キャスト:ディアン・フレア
NPC:傭兵
場所:フレデリア街道沿い~休憩地の宿屋
―――――――――――――――
-nervous-
―――――――――――――――

朝起きたら、またマレフィセントがいなかった。


「なぜ止めなかった!?」
「止めたさ。けどきかないんで、一人が追いかけてった…。
 俺らの仲間の一人がな」


フレアは苛立ちと頭痛を覚えていた。


自分はどうして気付くことなく眠っていたのか?
この傭兵達は一体、何のために村の入り口を見張っているのか?


「俺らもついていこうとしたんだが、こちらが手薄になるのもまずいしな」

憔悴した様子で別の傭兵が、不精髭の生えたあごをさすって
会話に加わる。

村の入り口に立てられた簡素な作りのテントの前に、
傭兵達は詰めていた。
テントの前にはいくつか椅子が置いてあり、
そこには二人の男が座っている。

「そいつもまだ帰ってない」
「そんな…」
「まだ死んだと決まった訳じゃねぇ。迷ったか何かして
 野宿したのかもしれん」

フレアの真後ろに立っていたディアンが、一歩踏み出して彼女の真横に
移動してきた。

「それだったら、合図があっても良さそうだな?」

こちらの鋭い視線から逃れるようにして、無精ひげの傭兵は
ディアンに視線を転じた。

「…確かに、何かあれば鏑矢を射つ事にはしている。それを待って
 昨日から交代で見張ってるが…」
「まだ?」
「あぁ」

無骨な手で目を覆い、前かがみに背を曲げる傭兵を見下ろしてから、
フレアは踵を返した。

「行かないと」

いろいろな感情や思考がめまぐるしく渦巻き、頭の痛みを加速させる。

悪魔といえども、まだマレフィセントは子供だ。

しかも既に一夜明けている。

いつ出ていったのか定かではないが、真夜中から早朝にかけての
森は、寒い。
そうでなくとも、旅団を全滅させた魔物だか魔族だかがいる方向へ
向かったというのだ。


――もしかして?


「おい、フレア」

ふいにディアンの声に思考を遮られて、フレアは苛立ちを
彼に向けて爆発させた。

「何だ!」
「何か言うことあるだろ?」

傭兵のほうにあごをしゃくるディアンに静かに諌められて、フレアは
振り返ると、ばつが悪そうに目を伏せた。

「……ありがとう、すまなかった」
「まぁ、心配すんのは当たり前だからな」

もう顔をあげた傭兵は、「気にするな」というように軽く片手を上げた。

「俺らも仲間を探しに行こうとしていた所なんだ。今、人手を募っている…。
 どうせ森に入るなら、昼まで待ったほうがいい。そのほうが安全だ」


フレアはもう一度傭兵に礼を言うと、ディアンと共に宿へ戻った。


・・・★・・・

「もしかして、あの子、確かめに行ったのかも」

部屋の中を行ったりきたりしながら、フレアは昼を待っていた。
ディアンは椅子に座り、そんなフレアの様子を眺めている。

「確かめ?」
「そう。自分の家族がいないかどうか」

ディアンが丸腰なのに対して、フレアはいつでも出て行けるように、
帯剣すらしている。
そして、さきほどからずっとブーツの靴紐を結びなおしている。

「マレフィセントが行った先は多分、噂で聞いた東の沼だ…。
 そこには魔族か、悪魔か知らないが、とにかく彼女の心を動かす
 『もの』がある」
「――まぁ、なくは無い話だな」

フレアはようやく足を止めて、部屋にひとつしかない窓に寄った。
宿の窓からは、村の広間が見える。ちらほらと、何人かの冒険者や
傭兵らしき姿が集まってきているようだった。

「そろそろ行こうか?」
「まだ早ぇよ。昼飯食ってからじゃないと、もたんぞ」

振り向くと、いつの間にかディアンは帯剣して立っている。
慌ててフレアは装備を確認しなおすと、宿のドアを開け放った。


もしマレフィセントが、沼で家族を見つけていたら――

(帰ってこないかもしれない)


そうなったら、私は心から喜べるだろうか?


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2007/02/12 23:05 | Comments(0) | TrackBack() | ○異界巡礼

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