キャスト:ディアン・フレア・マレフィセント
NPC:なし
場所:宿屋
―――――――――――――――
-realgar-
―――――――――――――――
親愛なる二人へ。
この手紙を読んでいるということは、無事なのだな?
怪我もしていないだろうな?病気も?
本当にすまないと思っている。
今回のことは全部私のせいなのに、すべてを二人に押し付けてしまった。
それなのに大した礼も謝罪もできなくて…。
こちらはおかげで大丈夫だ。ディアンも変わりない。
変わりといえば、新しい出会いもあったんだ。マレフィセントという。
とても可愛い女の子だ。今は彼女とも同行して、ライガールに向かっている。
ヴィルフリードが言ったとおりだ…。私は出会いを楽しんでいる。
いつか来る別れを思うと、まだ少し怖いけれど…。
だけど二人に出会えたことは、別れてしまった今でも、後悔なんかしていない。
・・・★・・・
夜通し歩くことを覚悟していたが、それは出会ったばかりの少女にとっては
酷だろうということで、街道沿いの寂れた宿屋に泊まることになった。
それがどれだけの危険を孕んでいるかわからなかった。しかし、
追っ手に怯えながら夜道を歩くのもぞっとしない。
横には畳んだ外套が置いてある。フレアのものだが、出会ったときから
ここに来るまで少女に羽織らせてやったのだ。
もちろん寒さを心配してもあったのだが、こうでもしないと、
彼女の姿を夜警に見咎められかねない。
「きっと、君にとってこの世界は変に映るんだろう」
飽きずに真っ暗な窓の外――消えかかった街灯と、よろい戸が閉められた
向かいの青果店しかない、景色とも言えないような景色――を見ている
少女の背中へ、ベッドに腰をかけたままフレアは声をかけた。
もちろん少女が意味を解すことを望んでいたわけではない。
しかしマレフィセントは振り返ると、蹄でごつごつと足音をたてて
近づき、こちらの隣に座ってきた。
「私も、この姿を見て驚かなかったわけじゃない――」
ランプの色に染まっている少女の髪を指で梳いてやると、彼女は
もう何も心配ないとでも言いたげに、こちらの脇腹に
頭を突っ込んでくる。
「他の皆もそうだ。この世界にいる人は、きっと君を見たら驚くだろう」
さりげなく自分の脇腹に食い込んだ角の位置を変えながら、
フレアは続けた。
「君は…悪魔にそっくりな姿をしているから。けれど、人によっては
助けようとするかもしれない。その…殺そうとするかもしれない」
おとぎ話でも聞くように、マレフィセントはじっと耳を傾けている。
「一番怖いのは、姿じゃない。『知らない』という事なんだと私は思う」
ぱた、ぱた、という音は、すぐ真後ろから聞こえた。少女が尻尾を振って、
毛布を叩いているに違いなかった。
「私はまだ君のことを、恐れるべき相手なのかどうか『知らない』んだ」
フレアはベッドの脇にある小さなテーブルに手を伸ばした。
上には、さっき使った封蝋の印が置いてある。それを通り越して、
台つきランプを調節し、灯を消す。
その間、マレフィセントは頭をフレアの膝に移動させた。
「でもね」
目を伏せて少女を見やる。
「もし、君が『恐れるべき相手』だったとしても――」
もう尻尾は動いていない。かわりに、かすかな呼吸のリズムが
膝を通して伝わってきていた。
「私は、君の味方でいようと思う。マレフィセント」
ディアンがいるはずの、隣の部屋からは何も聞こえない。
当たり前だ。今は誰もが眠る時間なのだ。
・・・★・・・
特に朝晩は冷えるから、ふたりとも身体に気をつけてほしい。
ヴィルフリードも寝酒なんかしないように。
リタ、いつかまた出会うことがあったら、その時こそ一緒に朝食を。
追伸
礼にもならないかもしれないけれど、私から二人に、贈り物をひとつだけ。
白檀(びゃくだん)の栞だ。透かし彫りが綺麗だろう?
それぞれ絵柄が違うんだ。
ヴィルフリードはあまり本を読まないかもしれないけど、
白檀は霊木といわれている木だから、お守り代わりにもなるだろう。
それでなくても、いい香りを楽しんでもらえたら嬉しい。
――フレア・フィフス
NPC:なし
場所:宿屋
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-realgar-
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親愛なる二人へ。
この手紙を読んでいるということは、無事なのだな?
怪我もしていないだろうな?病気も?
本当にすまないと思っている。
今回のことは全部私のせいなのに、すべてを二人に押し付けてしまった。
それなのに大した礼も謝罪もできなくて…。
こちらはおかげで大丈夫だ。ディアンも変わりない。
変わりといえば、新しい出会いもあったんだ。マレフィセントという。
とても可愛い女の子だ。今は彼女とも同行して、ライガールに向かっている。
ヴィルフリードが言ったとおりだ…。私は出会いを楽しんでいる。
いつか来る別れを思うと、まだ少し怖いけれど…。
だけど二人に出会えたことは、別れてしまった今でも、後悔なんかしていない。
・・・★・・・
夜通し歩くことを覚悟していたが、それは出会ったばかりの少女にとっては
酷だろうということで、街道沿いの寂れた宿屋に泊まることになった。
それがどれだけの危険を孕んでいるかわからなかった。しかし、
追っ手に怯えながら夜道を歩くのもぞっとしない。
横には畳んだ外套が置いてある。フレアのものだが、出会ったときから
ここに来るまで少女に羽織らせてやったのだ。
もちろん寒さを心配してもあったのだが、こうでもしないと、
彼女の姿を夜警に見咎められかねない。
「きっと、君にとってこの世界は変に映るんだろう」
飽きずに真っ暗な窓の外――消えかかった街灯と、よろい戸が閉められた
向かいの青果店しかない、景色とも言えないような景色――を見ている
少女の背中へ、ベッドに腰をかけたままフレアは声をかけた。
もちろん少女が意味を解すことを望んでいたわけではない。
しかしマレフィセントは振り返ると、蹄でごつごつと足音をたてて
近づき、こちらの隣に座ってきた。
「私も、この姿を見て驚かなかったわけじゃない――」
ランプの色に染まっている少女の髪を指で梳いてやると、彼女は
もう何も心配ないとでも言いたげに、こちらの脇腹に
頭を突っ込んでくる。
「他の皆もそうだ。この世界にいる人は、きっと君を見たら驚くだろう」
さりげなく自分の脇腹に食い込んだ角の位置を変えながら、
フレアは続けた。
「君は…悪魔にそっくりな姿をしているから。けれど、人によっては
助けようとするかもしれない。その…殺そうとするかもしれない」
おとぎ話でも聞くように、マレフィセントはじっと耳を傾けている。
「一番怖いのは、姿じゃない。『知らない』という事なんだと私は思う」
ぱた、ぱた、という音は、すぐ真後ろから聞こえた。少女が尻尾を振って、
毛布を叩いているに違いなかった。
「私はまだ君のことを、恐れるべき相手なのかどうか『知らない』んだ」
フレアはベッドの脇にある小さなテーブルに手を伸ばした。
上には、さっき使った封蝋の印が置いてある。それを通り越して、
台つきランプを調節し、灯を消す。
その間、マレフィセントは頭をフレアの膝に移動させた。
「でもね」
目を伏せて少女を見やる。
「もし、君が『恐れるべき相手』だったとしても――」
もう尻尾は動いていない。かわりに、かすかな呼吸のリズムが
膝を通して伝わってきていた。
「私は、君の味方でいようと思う。マレフィセント」
ディアンがいるはずの、隣の部屋からは何も聞こえない。
当たり前だ。今は誰もが眠る時間なのだ。
・・・★・・・
特に朝晩は冷えるから、ふたりとも身体に気をつけてほしい。
ヴィルフリードも寝酒なんかしないように。
リタ、いつかまた出会うことがあったら、その時こそ一緒に朝食を。
追伸
礼にもならないかもしれないけれど、私から二人に、贈り物をひとつだけ。
白檀(びゃくだん)の栞だ。透かし彫りが綺麗だろう?
それぞれ絵柄が違うんだ。
ヴィルフリードはあまり本を読まないかもしれないけど、
白檀は霊木といわれている木だから、お守り代わりにもなるだろう。
それでなくても、いい香りを楽しんでもらえたら嬉しい。
――フレア・フィフス
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