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2024/05/16 19:02 |
4.Childish darknes/マレフィセント(Caku)
キャスト:ディアン・マレフィセント・フレア
NPC:なし
場所:街道

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黒い髪は、好きだった。
だから、擦り寄った。いつだってそうだ、黒い髪の人は優しく頭を撫でてくれ
る。






母親も、こちらの世界の母親も見事な黒い髪の持ち主だった。
偶然、の一言で片付けられる、些細な類似点。
それだけで、少女は十分だった。
そんな不確かな要素だけでも、少女が心を預ける理由には十分な気がした。


どこに向かっているのか。
尋ねようとして、止めた。言葉が通じないのだから、きっとワカラナイ。
黒い髪の人と、白い人。
どこに行くんだろう?夜の街道はどこまでも真っ直ぐに続いている気がした。
どこへ行くんだろう?道の果ては闇夜に続いていて捕らえきれなかった。




何処に、行くの?


そう思う。
この道の果ては、どんな場所なんだろう?
知らない場所は、どんな世界なんだろう?
思わず今になって不安がひしひしと鎌首をもたげてきた。

知らない場所に行くのは、とても恐い事だ。母親の世界から切り離された時の
彼女は何も出来ずに怯えて泣きじゃくるだけだった。
何もかも知らない、理解できない ということの絶対の孤独、不安をすでに知
っているから。

「どうしたの?寒いの?」

暖かい掌をくれる人は、今までの母親達よりも幼いように見えた。
大丈夫、大丈夫。黒い髪は守護の象徴、きっと自分を守ってくれる。
そう思った。場違いな妄想でも、安易な思い違いでもいい。そう思っていれ
ば、まだ自分は知らない世界に行けると思うから。


擦り寄ると、やっぱり微笑んで額を撫でてくれる。
思ったとおりの回答が来て、小さく微笑んだ。やっぱり黒い髪の人はどの世界
でも優しいのだ。




「しかし、この近くに街灯はないのかな?ずいぶん暗い」
「だいぶ歩いたからな、もうすぐ街か宿か何か見えると思うんだが…」

何かを話している。
少女にはワカラナイ言葉の群れ。
以前、こちらの世界の母親が少女に文字を教えてみようかなとど言ってみたこ
とがあった。
しかし、彼の連れの女性は(彼女も見事な黒髪の優しい人だった)

「駄目よ、悪魔の言葉は血統を表すものなんだから。
悪魔を呼び出す呪文が、呼び出す悪魔で違うように。悪魔の血統は言葉で記さ
れるの。
その同じ言葉で、音で喋る悪魔こそ、彼女の同族である確率が高いわ。
だから、余計な言葉を与えては駄目。彼女の言語は誇り高い純血悪魔の証なの
だから」

人の世界に混じれば混じるほど、悪魔の血統は薄れていく。
人に呼び出されるのは、人に必要とされたため。悪魔自身が安易に人間界に関
わるのは己の闇の存在を薄めることに他ならない。
人間界は光の世界だ、だから、闇はどうしても人の世界に在ると薄れてしま
う。

だから、脅威的な力を持ちつつも、力ある悪魔は容易に人の世界に出てこな
い。
人が闇を呼び込むなら、問題はない。それはきちんと闇を必要としていると、
呪文で魔術師達が詠唱してこちら側に闇が潜めるべき”影”を用意するから
だ。
それが、悪魔の召還魔法の原理。
人は闇を呼び込む代わりに、己が身の影を闇が光の世界で潜めるように提供す
る。
力を貸す代償に、その施行期間中に隠れる場所を提供するのが本来の悪魔召還
の基本である。


だが、稀に光の下でも闇を薄れさせない者達がいる。
それはまさしく“闇”そのもの。つまりは純血の悪魔か、それに準じた闇の一
族。
それ自体が光に相反する闇、もしくは影をもつ者。それか、人の属性たる光を
持ちつつも、決して真昼の性ではない夜明けと夕暮れをもつ者達。

体という棺の中に、闇という名の血の流れる者達。
光に当てられても、棺の中の血は輝きを吸い込み、永遠に捕らえてしまう。





目の前に白い人はよく目立つ。
闇の中でも、白いマントが綺麗に見えるから。

だいぶこの二人になれてきたマレフィセントは、たんだん遊びだすようになっ
た。

ディアンのマントの裾を掴もうと手を伸ばす。
と、するりと歩く動きで、あった場所から動いてしまった。

手を伸ばす、捕まえる。と、動く、逃げる。

手を伸ばす、捕まえる。と、動く、逃げる。

手を伸ばす、捕まえる。と、動く、逃げる。

手を伸ばす、捕まえる。と、動く、逃げる。

手を伸ばす、捕まえる。と、動く、逃げる。



…と、目の前の白い人が、怪訝そうに振り返る。
ぴたりと、少女も動きを止めて、そおっと上目遣いに伺う。

やや間が空いて、再びディアンは歩き出した。
そして、またもマレフィセントが、彼のマントの裾で遊びだす。



くすくすと、忍び笑いが弾けた。
どこか不機嫌そうに、ディアンが背中越しで問いかけた。

「…おい、フレア。何笑ってんだよ」

「いや、ディアンも中々子供の相手が上手いんだな、と思って」

「…?」

さっきから、なんか後ろで跳ね回ってると思って振り向くのだが、そのたびに
マレフィセントは素早く動きを止めて上目遣いに見上げてくる。
なんだか、止まったことに罪悪感を感じ、また歩き出す。
と、またもマレフィセントが嬉しそうに裾にじゃれつく。後ろから眺めている
フレアにとってはなかなか愉快な光景だ。


「何してんだよ、コイツ」

「いいじゃないか、ディアン。子守も出来るならきっといいお父さんになれる
よ」

「悪魔の子供(ガキ)の子守っつうのも新鮮だな」

「確かに」



じゃれつく娘は、お構いなしに裾で遊んでいる。
闇夜の中で、悪魔の娘の遊びはディアンとフレアの歩みが止まるまで続いたの
であった。





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2007/02/12 23:02 | Comments(0) | TrackBack() | ○異界巡礼

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