PC@マレフィセント・ディアン・フレア
NPC@ザイリッツなど傭兵団その他
場所@魔の森・沼地
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泥が鞭状にしなりながら、幾重にも枝分かれた。
ディアンの一薙ぎで三本が撃墜され、ザイリッツの剣戟で1本がはじけ跳ぶ。
「足元に気をつけろ!」
断ち切られたはずの泥の触手が跳ね上がり、一人の兵士にまき付こうと伸び
る。
それをフレアの剣が横割って両断し、今度こそ元の泥に戻って地べたに落ち
た。
「沼の中に隠れてるらしい本体をぶった斬らんと、埒があかん」
ザイリッツの苦言は、再び襲い掛かった二本の触手を絶ちながら呻いた。
同じく舌打ちしながらもディアンが沼側から直線で向かってきた攻撃を、神速
にも劣らない速さで断ち切った。
森側からは、蔦の雨。沼側からは、泥の触手の嵐。
しかし、どうも沼側の攻撃の方が早く、また動きも鋭い。
それに比べると森側は何故かよたよたと遅く、また動きもまばらだ。
しきりにマレフィセントが異界の言葉で囁きながらも沼をちらちらと気にして
いるあたり、どうやら相手は沼の中なのだろうか。そうディアンは予測した。
「……マレ」
幾度もフレアに呼ばれるさいに、かけられた名前。
その言葉は理解できなくても、自身を指し示す言葉であるとは理解しているの
か、マレフィセントはぴくりと反応した。
黒薔薇のように棘の生えた翼で触手を逆に絡めとりながらディアンの側に来
る。
「お前にして欲しいことがある」
マレフィセントは、じっとディアンを見つめた。
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ーーーーー
「何考えてるんだディアン!!」
フレアの怒号で、幾人かが振り返る。
こんな攻撃が乱舞している際に、痴話喧嘩でもしてるのかと不思議そうな気
配。
「俺に出来るんだったら俺がしてる。だが俺がここを離れたら沼からの攻撃が
あいつらにも及ぶ。フレアの危険だって高まる」
「そんな事聞いてない!マレフィセントを沼に放り込むだなんて、絶対させな
い!!」
叫びながらも、剣は悪魔の群れを薙ぐ。
こうしている間にも、どんどん自分達の体力が減っていく。これでは勝ち目も
クソもない。
「…沼の中の相手と一騎打ちしろっつてんじゃねぇ。
おびき出してくれるだけでいいんだ、危険だ。そりゃあ危険だ。だがな、ここ
でもろとも死ぬ選択よりは幾分道がある」
「でも!!………でも」
こういう時に、言葉が通じないのは不便だった。
マレフィセントは不思議そうに首を傾げるばかりで、ディアンの伝えた内容を
理解しているのかは不明だ。
そんなあどけない仕草の少女を敵陣に送り込むなど、思わずフレアの顔が歪ん
だ。
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白い人に言われた言葉の欠片すら分からない。
だけど、マレフィセントにだって理解できることは、このままじゃいけないと
いうこと。
なんとなく、やるべき事だけはわかった。
フレアの悲しそうな顔が不思議でたまらくて、そっと手を伸ばした。
どこか怪我したのかもしれない、そんな時は痛くて苦しくて泣きそうになる。
だから、触って撫でてあげれば、その痛みが和らぐかもしれないと思っての行
動だった。
なのに、フレアはますます苦しそうな顔をした。
「θююω@υ(大丈夫?)?」
言葉は通じず、意味は渡らない。
それでも、喋らずにはいられない。大丈夫?どうしてそんなに顔が苦しそうな
の?と。
唇から漏れた言葉が青く燐光のように瞬いて夜の空気に消えていく。
そして、頭上から鞭が襲い来る。
フレアが咄嗟にマレフィセントを抱きしめて鞭を落とす。
暖かい温もりで、少しだけ勇気と安心が生まれる。また、抱きしめてもらいた
いと思う。
そのためには、飛ばなければとも。
フレアから離れて、翼を広げた。
見つめる先には、虚無を流し込んだかのような泥の沼地。暗黒の淵。
ー汝が深淵を覗く時、深淵もまた汝を覗いているー
太古の言葉どおりに、マレフィセントがその水面を見つめると、水面の奥底か
らも視線を感じた。
全身に角が生え始める。それは角というより、鎧に近い外見を持った。
白い骨を纏う、甲冑の娘。
白い騎士、とは言えずともその姿は戦地を駆ける騎士にも似て。
どこかで蹄が駆ける音が聞こえる。遠く遠く、遙か遠く空の果てから。
夜が悪魔の時というなら、それは相手の時刻でもあり、またマレフィセントの
時でもある。
その決意を抱くものを的確に現すならば、確かに今の少女は騎士だった。
沼に飛び込むと、幾つもの触手が四肢にまき付いた。
それを逆に翼で絡め、鞭の元を辿っていく。絡まった鞭は自身の翼となって相
手の攻撃を逆に我が物へと変えた。
沼の奥底で身じろぎするのは、同胞にて夜の子供達。
Colorful Fruit
少女は、思わず仰け反った。
見つめ、見えたものがあまりに異形であり、そして
Colorful Fruit……
「マレフィセント!!」
沼から飛び出してきた少女に、安堵の叫びをあげたフレア。
傭兵とフレアとディアン達が見守る中、ついにマレフィセントの翼に引き摺ら
れて出てきたものは。
頭頂部がイソギンチャクのように触手と化した、蛇のような魔物だった。
蛇の肢体には、寄生するかのように絡みつき這いずる悪魔の植物。
植物にはたわわに実った赤い果実がぶら下がっていたが、それが一斉に弾け
て。
中に実っていたのは、人間の眼球だった。
それは青い瞳だったり、黒い瞳だったり、鳶色でもあったりした。
傭兵達が後悔した点を上げるとすれば、それが仲間やかつて森で犠牲になった
キャラバンの者達の瞳であることに気がついてしまったことだろう。
蛇の尾はすでに植物の蔦となって幾重にも枝分かれて沼の外に広がっていっ
た。
そこから、森への神経を通しているのだろうか。尾から続く蔦は森の木々に絡
んでいて、一斉に森の果実が始めて白濁した眼球を開いたのだ。
Colorful Fruit
第二戦の、はじまりである。
NPC@ザイリッツなど傭兵団その他
場所@魔の森・沼地
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泥が鞭状にしなりながら、幾重にも枝分かれた。
ディアンの一薙ぎで三本が撃墜され、ザイリッツの剣戟で1本がはじけ跳ぶ。
「足元に気をつけろ!」
断ち切られたはずの泥の触手が跳ね上がり、一人の兵士にまき付こうと伸び
る。
それをフレアの剣が横割って両断し、今度こそ元の泥に戻って地べたに落ち
た。
「沼の中に隠れてるらしい本体をぶった斬らんと、埒があかん」
ザイリッツの苦言は、再び襲い掛かった二本の触手を絶ちながら呻いた。
同じく舌打ちしながらもディアンが沼側から直線で向かってきた攻撃を、神速
にも劣らない速さで断ち切った。
森側からは、蔦の雨。沼側からは、泥の触手の嵐。
しかし、どうも沼側の攻撃の方が早く、また動きも鋭い。
それに比べると森側は何故かよたよたと遅く、また動きもまばらだ。
しきりにマレフィセントが異界の言葉で囁きながらも沼をちらちらと気にして
いるあたり、どうやら相手は沼の中なのだろうか。そうディアンは予測した。
「……マレ」
幾度もフレアに呼ばれるさいに、かけられた名前。
その言葉は理解できなくても、自身を指し示す言葉であるとは理解しているの
か、マレフィセントはぴくりと反応した。
黒薔薇のように棘の生えた翼で触手を逆に絡めとりながらディアンの側に来
る。
「お前にして欲しいことがある」
マレフィセントは、じっとディアンを見つめた。
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「何考えてるんだディアン!!」
フレアの怒号で、幾人かが振り返る。
こんな攻撃が乱舞している際に、痴話喧嘩でもしてるのかと不思議そうな気
配。
「俺に出来るんだったら俺がしてる。だが俺がここを離れたら沼からの攻撃が
あいつらにも及ぶ。フレアの危険だって高まる」
「そんな事聞いてない!マレフィセントを沼に放り込むだなんて、絶対させな
い!!」
叫びながらも、剣は悪魔の群れを薙ぐ。
こうしている間にも、どんどん自分達の体力が減っていく。これでは勝ち目も
クソもない。
「…沼の中の相手と一騎打ちしろっつてんじゃねぇ。
おびき出してくれるだけでいいんだ、危険だ。そりゃあ危険だ。だがな、ここ
でもろとも死ぬ選択よりは幾分道がある」
「でも!!………でも」
こういう時に、言葉が通じないのは不便だった。
マレフィセントは不思議そうに首を傾げるばかりで、ディアンの伝えた内容を
理解しているのかは不明だ。
そんなあどけない仕草の少女を敵陣に送り込むなど、思わずフレアの顔が歪ん
だ。
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白い人に言われた言葉の欠片すら分からない。
だけど、マレフィセントにだって理解できることは、このままじゃいけないと
いうこと。
なんとなく、やるべき事だけはわかった。
フレアの悲しそうな顔が不思議でたまらくて、そっと手を伸ばした。
どこか怪我したのかもしれない、そんな時は痛くて苦しくて泣きそうになる。
だから、触って撫でてあげれば、その痛みが和らぐかもしれないと思っての行
動だった。
なのに、フレアはますます苦しそうな顔をした。
「θююω@υ(大丈夫?)?」
言葉は通じず、意味は渡らない。
それでも、喋らずにはいられない。大丈夫?どうしてそんなに顔が苦しそうな
の?と。
唇から漏れた言葉が青く燐光のように瞬いて夜の空気に消えていく。
そして、頭上から鞭が襲い来る。
フレアが咄嗟にマレフィセントを抱きしめて鞭を落とす。
暖かい温もりで、少しだけ勇気と安心が生まれる。また、抱きしめてもらいた
いと思う。
そのためには、飛ばなければとも。
フレアから離れて、翼を広げた。
見つめる先には、虚無を流し込んだかのような泥の沼地。暗黒の淵。
ー汝が深淵を覗く時、深淵もまた汝を覗いているー
太古の言葉どおりに、マレフィセントがその水面を見つめると、水面の奥底か
らも視線を感じた。
全身に角が生え始める。それは角というより、鎧に近い外見を持った。
白い骨を纏う、甲冑の娘。
白い騎士、とは言えずともその姿は戦地を駆ける騎士にも似て。
どこかで蹄が駆ける音が聞こえる。遠く遠く、遙か遠く空の果てから。
夜が悪魔の時というなら、それは相手の時刻でもあり、またマレフィセントの
時でもある。
その決意を抱くものを的確に現すならば、確かに今の少女は騎士だった。
沼に飛び込むと、幾つもの触手が四肢にまき付いた。
それを逆に翼で絡め、鞭の元を辿っていく。絡まった鞭は自身の翼となって相
手の攻撃を逆に我が物へと変えた。
沼の奥底で身じろぎするのは、同胞にて夜の子供達。
Colorful Fruit
少女は、思わず仰け反った。
見つめ、見えたものがあまりに異形であり、そして
Colorful Fruit……
「マレフィセント!!」
沼から飛び出してきた少女に、安堵の叫びをあげたフレア。
傭兵とフレアとディアン達が見守る中、ついにマレフィセントの翼に引き摺ら
れて出てきたものは。
頭頂部がイソギンチャクのように触手と化した、蛇のような魔物だった。
蛇の肢体には、寄生するかのように絡みつき這いずる悪魔の植物。
植物にはたわわに実った赤い果実がぶら下がっていたが、それが一斉に弾け
て。
中に実っていたのは、人間の眼球だった。
それは青い瞳だったり、黒い瞳だったり、鳶色でもあったりした。
傭兵達が後悔した点を上げるとすれば、それが仲間やかつて森で犠牲になった
キャラバンの者達の瞳であることに気がついてしまったことだろう。
蛇の尾はすでに植物の蔦となって幾重にも枝分かれて沼の外に広がっていっ
た。
そこから、森への神経を通しているのだろうか。尾から続く蔦は森の木々に絡
んでいて、一斉に森の果実が始めて白濁した眼球を開いたのだ。
Colorful Fruit
第二戦の、はじまりである。
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