忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/03/10 06:48 |
11.アッシュローズ/フレア(熊猫)
キャスト:ディアン・フレア(・マレフィセント)
NPC:レンジャー(ディーナッツ)
場所:フレデリア街道沿い~魔の森
―――――――――――――――

- Speed of feeling runs -

―――――――――――――――


誰かの笑い声を聞いたような気がして、フレアは唾を飲み込んだ。


ひどく堅い唾だった。
ゆれる馬の背の上で、ちょっと振り返る。

誰もいないのはわかっているのに。
笑い声など聞こえるはずないのに。

森の入り口は、既に遠かった。

と、

「おい、おい!止まれっ!」

突然、横の茂みを突き破り、目の前に一人の男が飛び込んできた。

フレアは慌てて手綱を引いた。馬も驚いて、
激しく首を振りながら前足を上げる。
すんでのところで落馬しそうになったが、どうにか
馬は落ち着いてくれた。

「なんだ、あんた」

ディアンも馬を止めて、この密集した森の中で器用に向きを変える。
男はあえぐ胸を押さえるように手をあてて、もう片方の腕を振った。

「聞いてくれ。俺はディーナッツ。レンジャーをやっている者だ」
「レンジャー?」

レンジャーとは森や谷などの自然地区を保護、管理をする者達の
総称である。
また森を通過する旅人の案内(ナビ)もし、禁猟区での
密猟者の捕縛を行ったりもする。

「俺は本来、この森よりずっと西のエリアを担当していて、
 ここは管轄じゃない。
 だけど今回の件で、助っ人に来たんだ」

いや――、と、彼はふっと何かを確認するように横を見た。
だがすぐに首を横に振って、早口でまくしたてる。

「そんなことはどうだっていい。いいか、この森には入るな!
 なんでかって聞くまでもないだろう。
 死人が出てる。それも一人や二人じゃないんだ」
「死人?」

まともに驚いて、フレアは聞き返した。
ディーナッツと名乗ったレンジャーは大きく息を吐くと、
立ったまま膝に手を置いた。

「そうだよ――俺らの前にいた班は全滅だ。俺も5人の同僚と
 組んでいたが、3人死んだ。あとの一人は行方不明、
 最後のひとりは…狂った」

フレアはとっさにディアンを見た。ディアンは口を一文字にして
苦い顔をしている。彼女はさらにレンジャーに問い返した。

「一体なにが…?」
「知るかよ。わかるもんか。俺は帰るんだ」

おぼつかない足取りで森の入り口に向かうレンジャーの背を、
フレアは見送ることしかできなかった。

「フレア」


ディアンの呼びかけに振り向くと、彼は目で「どうする?」と
訊いてきていた。


フレアは迷うことなくうなずいて、手綱を取った。


・・・★・・・


「いぶし出すつもりだな」


前を走っているディアンのつぶやきが聞こえたのは、
この森が異常に静かだからに他ならなかった。


西風が吹いている。
このときばかりは、追い風は有難くない。
何かが燃える臭い。

「ひどい事をする…」

手の甲を鼻に押し付けて、フレアは上を見上げた。

日はとうに中天を過ぎ、あとは傾くばかりである。
その太陽も煙の黒いゆらぎに覆われて、
そのシルエットを不気味に森に落としている。
そのせいで、どう控えめに見ても空は暗い。

この森に入ってから既に、かなりの時間が経っている。


ヒィイイ…ン


まるでそのものが悲鳴のような、鏑矢の音がする。
鏑矢の音を聞くのはこれで二回目だが、この数は
あてにならないとフレアは踏んでいた。

自分ならば、鏑矢を打つ余裕があるくらいなら走って逃げる。
逃げ切れるかどうかは別として。

(何が起きているんだろう)

東に向かえば向かうほど、森は少しずつ様子を変えていた。
大木の姿はまばらになってゆき、背の低い木と、
湿地にあるような下草が目立っている。
馬の足には泥がつくようになり、疲れのせいもあってか
足取りは重い。

こんな寂しい場所に、あの少女はいるのだろうか。

(急がないと――)



頬に何かがあたった。花びらかと思って指で払うと、灰だった。



PR

2007/02/12 23:05 | Comments(0) | TrackBack() | ○異界巡礼

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<10.紅い森「RED FORESUT」/マレフィセント(Caku) | HOME | 12.常磐世界/マレフィセント(Caku)>>
忍者ブログ[PR]