PC:レオン、ピエール
場所:シカラグァ直轄領
NPC:ユリアン
--------------------------------------------------------------------------------
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
盛大な溜息を吐きながらレオンは走っていた。身じろぎ一つしないとは言え人一人を肩
に背負い、よく分からない薬の素材やら簡単な身の回りの品も合わせるとやはりそれなり
に重量がある。それでもなおレオンが走らなければいけない理由は、彼の約10mほど後
ろにあった。
「待てー!」
「こっちに逃げたぞ、追えー!」
「逃がすなー!」
王宮を護る警備兵にしては数が少ない気もしたが、何かの事情で追っ手が減っているな
らそれはそれで好都合な事だ。深くは考えない事にしてレオンはただ走る。
影に潜み追っ手を隠れてやりすごし、あるいは見つからないように息を潜めながら移動
したりしつつレオンは出来るだけ人が居ない方へ居ない方へと進んでいく。
気が遠くなるほどの時間――実際には一時間程だが――を経て、レオンはようやく裏門
へたどり着く事ができた。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
物陰で一息吐くレオン。気を取り直して顔をあげると、ちょうど裏門を見て戻ってきた
らしい警備兵と目がばったりこんにちわ。
「いたぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「冗談だろこんな展開っ!?」
警備兵が叫びをあげるのと同時に裏門に向けて一目散に駆け出す。
街にでる事ができれば身を隠す場所も増えいくらでも追っ手をごまかす事もできようが、
大荷物とすぐ後ろにいる警備兵がそれを阻む。
「いい加減にしろよまったく……!!」
どうやって追っ手を振り切ろうか考えるレオン。そんな彼の視界の中で裏門がどんどん
と大きくなっていく。いるはずの門兵も何故か見当たらない、どちらにしても駆け抜ける
しかないが、その後はどうする?
焦りばかりが募っていくこの状況で、何か救いはないかとと張り巡らしていた感覚に響
いた音があった。
カッカッカッカッ
ガラガラガラガラ
蹄鉄が石畳を刻む音とそれに付随する車輪の音。それがなんの音かを確信したレオンの
目の前にまさにそれが姿を現す。二頭立ての馬車――それも、都合がいい事に後ろからさ
っと乗り込めるタイプの幌馬車。人が走るよりも少し早い程度の速度で走っている馬車に
通りすがりざまに荷物を放り込み、ついで自分も飛び乗る。
追っ手達が裏門にたどり着く頃にはもう馬車は宵闇の中に消え、逃亡者の姿は影も形も
見えなくなっていた。
「やれやれ、なんとか抜け出すまでは上手くいったか」
御者席との間にも捲れるようにはなっているものの幌が下がっており、とりあえず御者
が自分達に気付いた様子はない。
一息ついたレオンはとりあえず簀巻きにしていたユリアンを開放する事にした。神経が
太いのかなんなのか、すぴーとかいう寝息を立てているのが妙に腹立たしい。剥ぎ取った
毛布を羽織って、幌を支える柱に背を預けると疲れがでたのか眠気がこみ上げて来た。も
しかしたら隣で気持ちよさそうに寝てるヤツがいるのがいけないのかも知れない。
ごとごと ごとごと
ゆったりとした馬車のリズムという駄目押しを受け、レオンはいつの間にか眠りへと落
ちていった。
★☆◆◇†☆★◇◆
「あの、本当にこの馬車でよろしいのですか?長期ですとかなりお値段張りますけど」
レオンとユリアンが馬車に乗り込む数時間前、シカラグァ直轄領に古くから軒を並べる
老舗貸し馬車屋『天馬の駆け足』はかつてないほど珍妙な事態を迎えていた。
「うむ、それで頼む。代金はこちらの方が支払ってくれる事になっているハズでな」
何故かフル装備で店に現れた自称騎士。所属する騎士団は橙の国のものと言うのですぐ
には確認が取れず、仮にホンモノだとしても何故従者ではなく本人が、しかもフル装備で
馬車を仮に来るのか。
さらにはこの店が保有する馬車の中でももっとも値が張る、サスペンションを搭載し快
適性を追及、さらには幌に強化呪法を施し雨でも火でも矢でも大丈夫な仕様になっている
上流階級がお忍びで旅行する時に使うような超高級仕様幌馬車を可能な限り長く借りたい
とまでいいだす始末。
それだけなら、まだよかったのだ。
「……失礼ですが、これをどちらで手に入れられましたか?」
問題なのは、支払いの段階で彼が差し出した一枚の紙。非公式ではあるが代金を王家の
方で負担する事が記されており、最後にはアナスタシアと署名まで入っている。ホンモノ
ならいいが、もし偽物だった場合は下手をすると処罰されてもおかしくはない。
「あまり詳しくは話せないのだが……是非にと頼まれごとをしてな、その時に受け取った
のだ」
……結局、店主はその自称騎士の言う事を信じて馬車を貸す事にした。結果として王家
と直接的なコネを持つ事になったこの店はますます繁栄する事になるのだが、それはまた
別のお話。
馬車を借りる事に成功したピエールは、荷物を詰めて裏門から少し離れた外壁沿いのと
ころで待機。
後は裏庭の様子を見通せる部屋で状況を見守っていたアナスタシア付きのメイドがタイ
ミングを見計らってピエールにカンテラで合図を送り、なんとか無事合流する事ができた
のだった。
場所:シカラグァ直轄領
NPC:ユリアン
--------------------------------------------------------------------------------
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
盛大な溜息を吐きながらレオンは走っていた。身じろぎ一つしないとは言え人一人を肩
に背負い、よく分からない薬の素材やら簡単な身の回りの品も合わせるとやはりそれなり
に重量がある。それでもなおレオンが走らなければいけない理由は、彼の約10mほど後
ろにあった。
「待てー!」
「こっちに逃げたぞ、追えー!」
「逃がすなー!」
王宮を護る警備兵にしては数が少ない気もしたが、何かの事情で追っ手が減っているな
らそれはそれで好都合な事だ。深くは考えない事にしてレオンはただ走る。
影に潜み追っ手を隠れてやりすごし、あるいは見つからないように息を潜めながら移動
したりしつつレオンは出来るだけ人が居ない方へ居ない方へと進んでいく。
気が遠くなるほどの時間――実際には一時間程だが――を経て、レオンはようやく裏門
へたどり着く事ができた。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
物陰で一息吐くレオン。気を取り直して顔をあげると、ちょうど裏門を見て戻ってきた
らしい警備兵と目がばったりこんにちわ。
「いたぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「冗談だろこんな展開っ!?」
警備兵が叫びをあげるのと同時に裏門に向けて一目散に駆け出す。
街にでる事ができれば身を隠す場所も増えいくらでも追っ手をごまかす事もできようが、
大荷物とすぐ後ろにいる警備兵がそれを阻む。
「いい加減にしろよまったく……!!」
どうやって追っ手を振り切ろうか考えるレオン。そんな彼の視界の中で裏門がどんどん
と大きくなっていく。いるはずの門兵も何故か見当たらない、どちらにしても駆け抜ける
しかないが、その後はどうする?
焦りばかりが募っていくこの状況で、何か救いはないかとと張り巡らしていた感覚に響
いた音があった。
カッカッカッカッ
ガラガラガラガラ
蹄鉄が石畳を刻む音とそれに付随する車輪の音。それがなんの音かを確信したレオンの
目の前にまさにそれが姿を現す。二頭立ての馬車――それも、都合がいい事に後ろからさ
っと乗り込めるタイプの幌馬車。人が走るよりも少し早い程度の速度で走っている馬車に
通りすがりざまに荷物を放り込み、ついで自分も飛び乗る。
追っ手達が裏門にたどり着く頃にはもう馬車は宵闇の中に消え、逃亡者の姿は影も形も
見えなくなっていた。
「やれやれ、なんとか抜け出すまでは上手くいったか」
御者席との間にも捲れるようにはなっているものの幌が下がっており、とりあえず御者
が自分達に気付いた様子はない。
一息ついたレオンはとりあえず簀巻きにしていたユリアンを開放する事にした。神経が
太いのかなんなのか、すぴーとかいう寝息を立てているのが妙に腹立たしい。剥ぎ取った
毛布を羽織って、幌を支える柱に背を預けると疲れがでたのか眠気がこみ上げて来た。も
しかしたら隣で気持ちよさそうに寝てるヤツがいるのがいけないのかも知れない。
ごとごと ごとごと
ゆったりとした馬車のリズムという駄目押しを受け、レオンはいつの間にか眠りへと落
ちていった。
★☆◆◇†☆★◇◆
「あの、本当にこの馬車でよろしいのですか?長期ですとかなりお値段張りますけど」
レオンとユリアンが馬車に乗り込む数時間前、シカラグァ直轄領に古くから軒を並べる
老舗貸し馬車屋『天馬の駆け足』はかつてないほど珍妙な事態を迎えていた。
「うむ、それで頼む。代金はこちらの方が支払ってくれる事になっているハズでな」
何故かフル装備で店に現れた自称騎士。所属する騎士団は橙の国のものと言うのですぐ
には確認が取れず、仮にホンモノだとしても何故従者ではなく本人が、しかもフル装備で
馬車を仮に来るのか。
さらにはこの店が保有する馬車の中でももっとも値が張る、サスペンションを搭載し快
適性を追及、さらには幌に強化呪法を施し雨でも火でも矢でも大丈夫な仕様になっている
上流階級がお忍びで旅行する時に使うような超高級仕様幌馬車を可能な限り長く借りたい
とまでいいだす始末。
それだけなら、まだよかったのだ。
「……失礼ですが、これをどちらで手に入れられましたか?」
問題なのは、支払いの段階で彼が差し出した一枚の紙。非公式ではあるが代金を王家の
方で負担する事が記されており、最後にはアナスタシアと署名まで入っている。ホンモノ
ならいいが、もし偽物だった場合は下手をすると処罰されてもおかしくはない。
「あまり詳しくは話せないのだが……是非にと頼まれごとをしてな、その時に受け取った
のだ」
……結局、店主はその自称騎士の言う事を信じて馬車を貸す事にした。結果として王家
と直接的なコネを持つ事になったこの店はますます繁栄する事になるのだが、それはまた
別のお話。
馬車を借りる事に成功したピエールは、荷物を詰めて裏門から少し離れた外壁沿いのと
ころで待機。
後は裏庭の様子を見通せる部屋で状況を見守っていたアナスタシア付きのメイドがタイ
ミングを見計らってピエールにカンテラで合図を送り、なんとか無事合流する事ができた
のだった。
PR
トラックバック
トラックバックURL: