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2024/05/17 00:35 |
滅びの巨人―6 隕石襲来/テッツ(月草)
PC  ;雑 テッツ
NPC ;プレオバンズ
場所  ; ポポルの郊外にある広場
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赤い閃光が走った次の瞬間に、壮絶な衝撃に見舞われた。
塵、泥、小石やその他もろもろの地面にはいつくばっていた物体が、絶え間なく体を叩く。
雑とセイルは、ひたすらに伏せて防御体制をとる。
しばらくして収まったころ、二人は顔を上げた。

「く、いてて。おい、大丈夫か」
「ああ、おかげさまで。一体何があったんだ?」
「わからん。とにかく、ただ事じゃねえぜ。おい、あれを見てみろ」

見ると、そこには信じがたい光景が広がっていた。
筋骨隆々たる兵士のごとく、逞しかった大木は小枝のようにへし折られ、
燃え盛る炎は、さながら絵画で描かれる地獄の業火をほうふつとさせた。
小鳥がさえずり、エルフたちが愛する、平和な森は無慚にも抉り取られていた。

「こいつは……何なんだよ、これ!?」

 得体の知れぬ、壮絶な破壊のエネルギーを前に、セイルは無意識のうちに恐怖にも似た感情を抱いていた。

「どうやら、これの元凶はあいつのようだな」

 雑は、まっすぐにクレーターの中心部を指差した。

この地獄の最中に、小さな石ころがひっそりとたたずむ。
無言のうちに邪気を放つそれが、この惨状をもたらしたことは明らかだった。
あれは一体なんなのだろうか? 雑は、セイルと顔を見合わせる。
近寄って確かめようとしたところ、後ろから老人の声に呼び止められた。

「君達、ちょっとまちなさい。ここは私にまかせなさい。私が安全を確かめてこよう」
「あん? あ、おいちょっと待ってくれよじいさん」

 バンズは後ろから無言のうちに二人を追い越すと、有無を言わさず二人をその場にとどめた。あっけにとられたセイルと雑を尻目に、バンズは足早にすすむ。

放射状に波打つクレーターの中央に向かって、バンズは歩いていく。
セイルと雑を始め、集まってきた野次馬達が、固唾を呑んで彼を見守った。
中央の数歩手前、石の直前でバンズは足を止め、警戒する動物のように鋭い視線を注ぐ。
数分間の沈黙が流れた後、彼は石に向かっておもむろに手を伸ばした。

「待て、じいさん!? そいつには触るな!」

 これは雑の直感だった。胸の内奥から来る、けたたましいまでの嫌悪感が、危険を知らせてくる。あれは、触ってはいけない代物だ、と。
緊張の面持ちで、声をかける雑をよそに、バンズは平然と石を手に取った。そして、にこやかに集まってきた村人に声をかけた。

「ああ、大丈夫のようだ。みなさん、ご心配なく。この石に特に危険はないようです」

辺りはすっかり人だかりができていて、盛大なセレモニーでもあるかのごとくだった。
もっとも、そんなおめでたいものではなかったが。

「さあ、みなさん。今日のところはこれでお開きにしましょう。炎の処理は私達に任せて、念のために自宅の中へ避難されてください」
「おいおい、もうちょっと説明してくれよ」
「いいからいいから。詳しいことはまた明日にしましょう。今日のところは明日の仕事に備えて、早く休むべきです」
「じいさん!」

 雑はなおもバンズに食い下がる。この突然の破壊をもたらした隕石が安全だというのが、彼には訝しくてならなかったのだ。

バンズは聞き分けのない子供をまくし立てるように、野次馬達を家まで帰らせた。
どこか釈然としない風の村人に対しては、手短な説明を交えて安心させるようにしていた。
満月のように人のよさそうな笑みを浮かべられると、どの村人も安心してしまうのだった。
雑とセイルばかりは最後まで説明を要求し続けたが、不承不承帰途に着いたのだった。
辺りが静かになるのを見はからって、テッツはバンズに耳打ちした。

「(うまく誤魔化したの)」
「(まったくだ、彼は勘がいいから参ったよ)」
「(で、ほんとのところはどうなんじゃ?)」
「(きわめて恐ろしい存在だ、これは。正体は、私には検討もつかない)」

バンズの目は、徐々に鋭さを増していった。
注意深く観察すると、彼の手はごく薄い、肉眼には見えぬほど緻密に編みこまれ、
かつ高度な布陣が、塵ほどの隙間もなく張りめぐらされていた。
彼は絶えず布陣に魔力を送りつつ、村人達との対応をしていたのだった。

しかし、強固な布陣で押さえ込まれているにも関わらず、
石はなおも、汚らわしい獣の胎児のようにびくびくと脈動を始めつつある。

「(すぐに私の研究室へ来てほしい。とにかくこれは、一刻も早く処分せねばならん)」
「(うむ、わかった)」

この場自分達が居合わせることができて、本当によかった。
テッツとバンズは、つくづくとそう思った。
もしこれが、気づかずに暴れだしていたらどのような事態にいたっていたか。
彼らには、火を見るように明らかな推測ができた。
この惑星の末路は、炎にくべられた枯木のようなものだったろう、と。

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2007/11/20 00:54 | Comments(0) | TrackBack() | ○滅びの巨人

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