PC:スーシャ ロンシュタット
NPC:バルデラス 自警団員
場所:セーラムの街
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スーシャは、おどおどしながら周囲を見た。
――自分達以外、誰もいない。
人間はおろか、残飯をあさる野良猫や野良犬も、いない。
いつもなら、とっくに出歩いているはずなのに。
生活している匂いが、今日は極端に感じられない。
――それが、どんなに不気味なことか、スーシャは痛いほど理解した。
「この町に、今何が起きているんだ? 昨日は仕立て屋の家族が殺されていたし、今
朝は医者夫婦が殺されていた……」
危険な状況を察したらしい団員は、辺りの様子を警戒しながら呟く。
その横顔に隙はなく、それなりに場数を踏んできた経験を物語っていた。
ただし、今彼が直面しているのは未経験の恐怖だが。
「まさか、今度は神隠しでも起きてるっていうのか?」
「違う」
「何でそう言い切れる?」
ロンシユタットは答える代わりに、団員の後方にある建物の屋根に目をやる。
「お出ましだ」
「何?」
いぶかしげに団員が振り向こうとした瞬間――大きな影が彼めがけて降ってきた。
途端、スーシャのすぐ近くで衝撃音が轟いた。
「きゃあっ」
スーシャは思わず目を覆った。
団員が、ベンチを突き破って近くの壁に叩き付けられていたからだ。
降ってきた影にはじき飛ばされたのだと理解するまでには、多少の時間がかかった。
「ぐ……あっ……」
団員のかすかな声に恐々と目から手をどけてみると、彼はずるずると壁に寄りかかろ
うとしているところだった。
即死は免れたが、かなりの重傷である。
体のあちこちから赤い液体がしみ出し、地面にしたたり落ちる。
「し、しっかりして下さい……」
おずおずと近寄って声をかけたが、返事をする気力はないらしく、目を閉じたまま
だ。
嫌な呼吸音が、のどの奥から聞こえている。
――このままでは、死んでしまう。
スーシャは、緊張した顔付きで手を握りしめた。
――今、自分にできる事は。
スーシャは、覚悟したように深呼吸をすると、団員の体にそっと指先をかざした。
ロンシュタットは身軽な動作でソレの動きを交わし、バルデラスを掴み取った。
すぐ背後に迫っていたソレに、振り向くことなくバルデラスを突き刺す。
背後で、おぞましい絶叫が上がった。
降り立ったソレは、絶叫の主にふさわしい、おぞましい姿をしていた。
かろうじて人間と呼べそうな形態だが、目はぎょろりとしていて瞳孔がなく、巨大な
口からは鋭い牙がのぞく様は、間違いなく人間以外の生き物――魔物のそれだった。
嫌な臭いのする体液が、傷口からあふれている。
ロンシュタットは顔色一つ変えず、バルデラスを持ち直す。
体勢を整えるためか、ソレは飛び退き、ロンシュタットと距離を置く。
「あ~っ、くっせぇなコイツ! ロン、後で責任持って俺様を洗えよ。臭いが取れな
くなったらお前のせいだからな!」
嫌そうな口調でバルデラスがぼやいた瞬間、ソレは高く飛び跳ねて襲いかかってき
た。
「う……?」
激痛のただ中にいた団員は、突然痛みが消えたのを感じ、目を開けた。
「お!?」
痛みが消えただけではなく、体が自由に動くことを知り、団員はさらに驚く。
「俺……無事だったのか?」
信じられない思いで、唖然と体のあちこちを確認するが、かすり傷一つ負っていな
かった。
「大丈夫……ですか?」
ハッとして顔を上げると、スーシャが弱々しい笑みを浮かべていた。
「すごいですね……あんなにひどくぶつかったから、死んじゃうんじゃないか、って
思ったんですけど……ケガ一つしてない、なんて……」
「あ、ああ……?」
今一つ釈然としないながら、団員は頷いたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
NPC:バルデラス 自警団員
場所:セーラムの街
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スーシャは、おどおどしながら周囲を見た。
――自分達以外、誰もいない。
人間はおろか、残飯をあさる野良猫や野良犬も、いない。
いつもなら、とっくに出歩いているはずなのに。
生活している匂いが、今日は極端に感じられない。
――それが、どんなに不気味なことか、スーシャは痛いほど理解した。
「この町に、今何が起きているんだ? 昨日は仕立て屋の家族が殺されていたし、今
朝は医者夫婦が殺されていた……」
危険な状況を察したらしい団員は、辺りの様子を警戒しながら呟く。
その横顔に隙はなく、それなりに場数を踏んできた経験を物語っていた。
ただし、今彼が直面しているのは未経験の恐怖だが。
「まさか、今度は神隠しでも起きてるっていうのか?」
「違う」
「何でそう言い切れる?」
ロンシユタットは答える代わりに、団員の後方にある建物の屋根に目をやる。
「お出ましだ」
「何?」
いぶかしげに団員が振り向こうとした瞬間――大きな影が彼めがけて降ってきた。
途端、スーシャのすぐ近くで衝撃音が轟いた。
「きゃあっ」
スーシャは思わず目を覆った。
団員が、ベンチを突き破って近くの壁に叩き付けられていたからだ。
降ってきた影にはじき飛ばされたのだと理解するまでには、多少の時間がかかった。
「ぐ……あっ……」
団員のかすかな声に恐々と目から手をどけてみると、彼はずるずると壁に寄りかかろ
うとしているところだった。
即死は免れたが、かなりの重傷である。
体のあちこちから赤い液体がしみ出し、地面にしたたり落ちる。
「し、しっかりして下さい……」
おずおずと近寄って声をかけたが、返事をする気力はないらしく、目を閉じたまま
だ。
嫌な呼吸音が、のどの奥から聞こえている。
――このままでは、死んでしまう。
スーシャは、緊張した顔付きで手を握りしめた。
――今、自分にできる事は。
スーシャは、覚悟したように深呼吸をすると、団員の体にそっと指先をかざした。
ロンシュタットは身軽な動作でソレの動きを交わし、バルデラスを掴み取った。
すぐ背後に迫っていたソレに、振り向くことなくバルデラスを突き刺す。
背後で、おぞましい絶叫が上がった。
降り立ったソレは、絶叫の主にふさわしい、おぞましい姿をしていた。
かろうじて人間と呼べそうな形態だが、目はぎょろりとしていて瞳孔がなく、巨大な
口からは鋭い牙がのぞく様は、間違いなく人間以外の生き物――魔物のそれだった。
嫌な臭いのする体液が、傷口からあふれている。
ロンシュタットは顔色一つ変えず、バルデラスを持ち直す。
体勢を整えるためか、ソレは飛び退き、ロンシュタットと距離を置く。
「あ~っ、くっせぇなコイツ! ロン、後で責任持って俺様を洗えよ。臭いが取れな
くなったらお前のせいだからな!」
嫌そうな口調でバルデラスがぼやいた瞬間、ソレは高く飛び跳ねて襲いかかってき
た。
「う……?」
激痛のただ中にいた団員は、突然痛みが消えたのを感じ、目を開けた。
「お!?」
痛みが消えただけではなく、体が自由に動くことを知り、団員はさらに驚く。
「俺……無事だったのか?」
信じられない思いで、唖然と体のあちこちを確認するが、かすり傷一つ負っていな
かった。
「大丈夫……ですか?」
ハッとして顔を上げると、スーシャが弱々しい笑みを浮かべていた。
「すごいですね……あんなにひどくぶつかったから、死んじゃうんじゃないか、って
思ったんですけど……ケガ一つしてない、なんて……」
「あ、ああ……?」
今一つ釈然としないながら、団員は頷いたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
PR
トラックバック
トラックバックURL: