PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?)
場所:エドランス国 香草の畑
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はー、これ結構便利ねー」
リリアは声を潜めながら、感心したようにつぶやいた。
日が暮れてしばらくたった周囲は、畑で切り開かれているとはいえやはり山の中、
すっかり暗く静まり返っていた。
しかしそれはあくまで「ヒト」の感覚ではそうというだけで、むしろ小動物や昆
虫といったささやかな生命達の多くは、外敵に見つかりにくい夜にこそ活動的にな
る。
そういう意味で夜の自然とは、昼間とはまた違った命の息吹が、満ち溢れた世界
であった。
畑荒らしをどうにかする為にこのまま畑にとどまることにした一行は、たそがれ
時に畑を見に来た村の兎人にその旨を伝えて、畑の外の茂み、つまり森の中に陣を
張って待ち伏せることにした。
そう決めたのはいいものの、待ち伏せをスキルとして身につけているのはリック
とリリアぐらいで、アベルとラズロもそれなりに気配の消し方は身につけているも
のの、戦闘待機の状態を維持し続けたまま長時間というのは無理だった。
気配を消すに一生懸命で、すぐに動き出せないようではせいぜい見てるだけだ。
騎士や傭兵の偵察のスキルとしては十分だが、撃退・捕縛を臨機応変に行う待ち
伏せには足らない。
ましてやヴァネッサはその足らないレベルすら身につけていないとなると、距離
も必要になり、ますます敵を捕らえるのは無理だろう。
相手側からないうえに、多少能力はあっても経験も浅く、パーティとしても初ミ
ッションとなれば、メンバーを分けるのは避けたいところ。
アカデミーの基礎課程で学んだことが身についてきたか、全員がそのことに気が
つき頭を悩ませていたところ、ヴァネッサの提案で魔法をためすことにした。
魔法で隠れるといっても、姿を隠すような(いわゆる透明化)タイプはまだ難しい
し、ましてや他人にかけるのはかなり上級になるために今のヴァネッサにはできな
いし、幻術タイプにしてもまだまだ初級魔法使いの道を歩き出したばかりでは考え
るまでもなかった。
他の四人も魔法の実力は体を鍛えるようにいかないことは良くわかっているので、
ヴァネッサの魔法には、言い方は悪いがはじめから期待していなかった。(誤解の無
いように付け加えておくなら、独学で初級レベルとはいえ魔法を取得したヴァネッサ
の才能は十分過ぎるぐらいで、あくまでまだ経験地が足らないという事なのだ)
そんなヴァネッサの提案とは、隠れ方自体はリックのレンジャー(というかシー
フ?)のやり方で、それを初級魔法の「隠れんぼ」で強化するというものだった。
「隠れんぼ」は気配を消すのではなく、周囲の自然の気配と同化してまぎれさせ
る魔法で、無機質な人工建造物の中では使えないうえ、あくまで気配をごまかすだ
けで、視覚的に花にも作用しないため、ある程度レベルがあがると使われなくなる
のだが、効果は個人対象でなく範囲指定だし、精霊の力を借りるので魔力消費も少
なくてすむ――つまり疲れにくいため長時間の使用も比較的楽という長所もある。
今回のようにパーティでおぎない合える場合は利用価値の高い魔法で、実技だけ
でなく座学もまじめに受けているヴァネッサは、自分にできることについてはちゃ
んと応用まで考えられるようになっていたのだった。
リックがアベルとラズロとともに場所を選び、草木をととのえて5人が潜める場
所を作った。
その上でヴァネッサが慎重に魔法をかけて全員でいつでも飛び出せる体制で待機
していた。
それぞれが初めての事に多少の緊張を伴いながら様子を伺っていたわけだったが、
それぞれ納得の効果が出ているようだった。
「中にいるからわかりにくいけど、確かに気配がまぎれているみたいね」
リリアは声を潜めたりなるべく動きを抑えたりしているものの、特別な集中や緊
張をしていない自分達の周りで、昆虫や小動物が警戒もせずに普通にいる状況に感
心していた。
「たしかにな、この程度の声なら気づいたとしても、動物やむしの鳴き声と変わら
ないように知覚されてるみたいだな。」
ラズロも手を伸ばせば届きそうな距離を、栗鼠かなにかの小動物が横切るのを視
界に捕らえながら確認するようにささやいた。
同意するように頷いたアベルだったが、畑と森の境界、予測侵入経路のほうを目
を凝らすようにして顔をしかめた。
「効果はあるみてーだけど、火が使えないとさすがにみづらいな」
ある程度の夜目は利くが、敵の正体は依然として不明だ。
どんな些細な異変も見過ごさないと言い切るには、明るいとは言いがたい今宵の
月明かりでは心もと無かった。
畑に入って現場を押さえてから動くことになるとはいえ、できるだけ早いうちか
ら様子がわかれば対応も整えやすい。
「ふっふーん、私がいるから大丈夫!」
そういって振り返ったリリアの瞳は猫のように縦に収束し、金色に光っていた。
「……私は猫だからね」
いつ模様に陽気な声色。
なのにどこか不安を感じさせる緊張感を漂わせながら、リリアが言った。
リックもなぜか固唾を呑むようにして様子を見ている。
「……へー、夜目が利くのか」
「……ではまかせよう」
アベルもラズロも普通に頷いた。
アカデミーにきてから、眷属ではない獣人、ライカンスロープとよばれる種族が
いることを知ったし、眷族に比べれば半人と呼ばれるように圧倒的に自分達に近い
姿で、混血すらあるとなれば、リリアが「猫」を告白したところで、見た目からし
て眷属ではないし、アベル、ヴァネッサ、ラズロの三人からしたら「ああ、獣人か
ぁ」ぐらいの事で、リリアがそれを言うだけでなぜ緊張しているのかはさっぱりわ
からなかった。
当然、リリアとリックが安堵したように笑顔を向け合っているのを見ても「な
に?」
というのが正直なところだった。
「リリア?」
なぜだかその笑顔がヴァネッサには泣き出しそうに見えてきにかかった。
リリアはなんでもない、と首を振ると暗闇を見据えるように奥に向き直った。
「ねえ、この仕事が終わってゆっくりできるときにさ、みんなに聞いてほしいこと
があるんだけど、いいかな?」
「うん、いいけど?」
ヴァネッサはよくわからないまま返事をした。
アベルたちもふしぎそうな顔をしているが、リックの顔を見る限り、そんなに悪
いことではなさそうだった。
そのあとはなんとなくみんな黙ったまま(待ち伏せだからあたりまえといえばそ
のとおりではあったが)しばらく時が過ぎた。
「……きたよ、三人?」
ふいに、小さいながらいつもとは違う硬い声でリリアが囁いた。
「なんだか小柄な……、あれは……コボルド?」
目を細めて闇にうごめく影を捕らえながらリリアが呟く。
「! もう一人、後ろに人間らしいのがいるよ。コボルド3に人間1。 全員レザー
アーマーにショートソード、弓とか他に目立つ装備はなし」
手馴れた様子で情報を出すリリアに、近くに浮かんでいた妖精が感心したように
いった。
『へえ、ほんとに冒険者みたいだ』
「……いたのかよ」
ことばはわからないものの、すっかりその存在をわすれいたアベルの呟きに、実
は全員が心の中で頷いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?)
場所:エドランス国 香草の畑
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はー、これ結構便利ねー」
リリアは声を潜めながら、感心したようにつぶやいた。
日が暮れてしばらくたった周囲は、畑で切り開かれているとはいえやはり山の中、
すっかり暗く静まり返っていた。
しかしそれはあくまで「ヒト」の感覚ではそうというだけで、むしろ小動物や昆
虫といったささやかな生命達の多くは、外敵に見つかりにくい夜にこそ活動的にな
る。
そういう意味で夜の自然とは、昼間とはまた違った命の息吹が、満ち溢れた世界
であった。
畑荒らしをどうにかする為にこのまま畑にとどまることにした一行は、たそがれ
時に畑を見に来た村の兎人にその旨を伝えて、畑の外の茂み、つまり森の中に陣を
張って待ち伏せることにした。
そう決めたのはいいものの、待ち伏せをスキルとして身につけているのはリック
とリリアぐらいで、アベルとラズロもそれなりに気配の消し方は身につけているも
のの、戦闘待機の状態を維持し続けたまま長時間というのは無理だった。
気配を消すに一生懸命で、すぐに動き出せないようではせいぜい見てるだけだ。
騎士や傭兵の偵察のスキルとしては十分だが、撃退・捕縛を臨機応変に行う待ち
伏せには足らない。
ましてやヴァネッサはその足らないレベルすら身につけていないとなると、距離
も必要になり、ますます敵を捕らえるのは無理だろう。
相手側からないうえに、多少能力はあっても経験も浅く、パーティとしても初ミ
ッションとなれば、メンバーを分けるのは避けたいところ。
アカデミーの基礎課程で学んだことが身についてきたか、全員がそのことに気が
つき頭を悩ませていたところ、ヴァネッサの提案で魔法をためすことにした。
魔法で隠れるといっても、姿を隠すような(いわゆる透明化)タイプはまだ難しい
し、ましてや他人にかけるのはかなり上級になるために今のヴァネッサにはできな
いし、幻術タイプにしてもまだまだ初級魔法使いの道を歩き出したばかりでは考え
るまでもなかった。
他の四人も魔法の実力は体を鍛えるようにいかないことは良くわかっているので、
ヴァネッサの魔法には、言い方は悪いがはじめから期待していなかった。(誤解の無
いように付け加えておくなら、独学で初級レベルとはいえ魔法を取得したヴァネッサ
の才能は十分過ぎるぐらいで、あくまでまだ経験地が足らないという事なのだ)
そんなヴァネッサの提案とは、隠れ方自体はリックのレンジャー(というかシー
フ?)のやり方で、それを初級魔法の「隠れんぼ」で強化するというものだった。
「隠れんぼ」は気配を消すのではなく、周囲の自然の気配と同化してまぎれさせ
る魔法で、無機質な人工建造物の中では使えないうえ、あくまで気配をごまかすだ
けで、視覚的に花にも作用しないため、ある程度レベルがあがると使われなくなる
のだが、効果は個人対象でなく範囲指定だし、精霊の力を借りるので魔力消費も少
なくてすむ――つまり疲れにくいため長時間の使用も比較的楽という長所もある。
今回のようにパーティでおぎない合える場合は利用価値の高い魔法で、実技だけ
でなく座学もまじめに受けているヴァネッサは、自分にできることについてはちゃ
んと応用まで考えられるようになっていたのだった。
リックがアベルとラズロとともに場所を選び、草木をととのえて5人が潜める場
所を作った。
その上でヴァネッサが慎重に魔法をかけて全員でいつでも飛び出せる体制で待機
していた。
それぞれが初めての事に多少の緊張を伴いながら様子を伺っていたわけだったが、
それぞれ納得の効果が出ているようだった。
「中にいるからわかりにくいけど、確かに気配がまぎれているみたいね」
リリアは声を潜めたりなるべく動きを抑えたりしているものの、特別な集中や緊
張をしていない自分達の周りで、昆虫や小動物が警戒もせずに普通にいる状況に感
心していた。
「たしかにな、この程度の声なら気づいたとしても、動物やむしの鳴き声と変わら
ないように知覚されてるみたいだな。」
ラズロも手を伸ばせば届きそうな距離を、栗鼠かなにかの小動物が横切るのを視
界に捕らえながら確認するようにささやいた。
同意するように頷いたアベルだったが、畑と森の境界、予測侵入経路のほうを目
を凝らすようにして顔をしかめた。
「効果はあるみてーだけど、火が使えないとさすがにみづらいな」
ある程度の夜目は利くが、敵の正体は依然として不明だ。
どんな些細な異変も見過ごさないと言い切るには、明るいとは言いがたい今宵の
月明かりでは心もと無かった。
畑に入って現場を押さえてから動くことになるとはいえ、できるだけ早いうちか
ら様子がわかれば対応も整えやすい。
「ふっふーん、私がいるから大丈夫!」
そういって振り返ったリリアの瞳は猫のように縦に収束し、金色に光っていた。
「……私は猫だからね」
いつ模様に陽気な声色。
なのにどこか不安を感じさせる緊張感を漂わせながら、リリアが言った。
リックもなぜか固唾を呑むようにして様子を見ている。
「……へー、夜目が利くのか」
「……ではまかせよう」
アベルもラズロも普通に頷いた。
アカデミーにきてから、眷属ではない獣人、ライカンスロープとよばれる種族が
いることを知ったし、眷族に比べれば半人と呼ばれるように圧倒的に自分達に近い
姿で、混血すらあるとなれば、リリアが「猫」を告白したところで、見た目からし
て眷属ではないし、アベル、ヴァネッサ、ラズロの三人からしたら「ああ、獣人か
ぁ」ぐらいの事で、リリアがそれを言うだけでなぜ緊張しているのかはさっぱりわ
からなかった。
当然、リリアとリックが安堵したように笑顔を向け合っているのを見ても「な
に?」
というのが正直なところだった。
「リリア?」
なぜだかその笑顔がヴァネッサには泣き出しそうに見えてきにかかった。
リリアはなんでもない、と首を振ると暗闇を見据えるように奥に向き直った。
「ねえ、この仕事が終わってゆっくりできるときにさ、みんなに聞いてほしいこと
があるんだけど、いいかな?」
「うん、いいけど?」
ヴァネッサはよくわからないまま返事をした。
アベルたちもふしぎそうな顔をしているが、リックの顔を見る限り、そんなに悪
いことではなさそうだった。
そのあとはなんとなくみんな黙ったまま(待ち伏せだからあたりまえといえばそ
のとおりではあったが)しばらく時が過ぎた。
「……きたよ、三人?」
ふいに、小さいながらいつもとは違う硬い声でリリアが囁いた。
「なんだか小柄な……、あれは……コボルド?」
目を細めて闇にうごめく影を捕らえながらリリアが呟く。
「! もう一人、後ろに人間らしいのがいるよ。コボルド3に人間1。 全員レザー
アーマーにショートソード、弓とか他に目立つ装備はなし」
手馴れた様子で情報を出すリリアに、近くに浮かんでいた妖精が感心したように
いった。
『へえ、ほんとに冒険者みたいだ』
「……いたのかよ」
ことばはわからないものの、すっかりその存在をわすれいたアベルの呟きに、実
は全員が心の中で頷いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
PR
トラックバック
トラックバックURL: