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2024/05/21 13:30 |
易 し い ギ ル ド 入 門 【2】/シエル(マリムラ)
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『 易 し い ギ ル ド 入 門 【2】』 
   
              ~ 冒険者ギルドの基礎知識 ~



場所 :街道
NPC:ユークリッド
PC :エンジュ  シエル
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 エンジュの希望とユークリッドの薦めにより都会を目指した一行は、ソフィニア方
面へ向かう為、街道を東へと進んでいた。ユークリッドは若干の荷物を手に持ち、シ
エルは背中にリュックらしきモノを背負い、エンジュは両手に焼き鳥と焼きイカ(途
中の露店で買ったらしい)を持って歩いている。
 何とも奇妙な一行だ。

「とりあえず、何をすればいいのかしらね?」

 そう問いかけるのは、擦れ違う馬車等から胡散臭い視線を投げかけられても気にし
た素振りすら見せない、黒ずくめに白マスクの女・シエル。

 コレでも以前に比べれば随分親しみやすい恰好だ、とユークリッドは思う。
 以前はシルエットで辛うじて女性と分かる程度の独特の民族衣装だった上、この無
表情なマスクが異彩を放っていたのだから面食らったモノだ。今はもっと動きやすい
服装を身に纏い、颯爽と歩いている。……まあ、見慣れたというのもあるのかもしれ
ないが。

「……ユークリッド君、どうかした?」

 シエルの怪訝な声に、ユークリッドは「ああ、とりあえず……」と話を切り出し
た。

「ギルドに登録するなら、ちゃんとしたギルド支部があるところがいいだろうね」
「ちゃんとしていないところもあるの?」
「小さな町では、宿屋や酒場なんかに委託されてたりするからなぁ」

 そういうと、情報屋を本職とするユークリッドは、中性的な甘い笑顔をシエルに向
けた。

「こらこら、シエルに色目を使わない!」

 エンジュは、目下のお気に入りに笑いかける弟を肘で小突いて、シエルに抱きつ
く。シエルはされるがままにしていたが、一言、ぽつりと言った。

「……エンジュ、アナタが説明してくれないからでしょ」
「えー、もう何年も前の話なんて忘れちゃったに決まってるじゃない」

 ケロリと答えるエンジュの回答は、コレが初めてではなかった。それが冒険者ギル
ドでもBランクというのだから、頭を抱えるしかない。

「必要なモノは何かあるのかしら」
「そうだね、身分を証明できるモノがあれば言うことナシ。
 まあ、今回は姉さんの推薦がつくから、無くても大丈夫だろうけど。
 あとは……ギルド支部で必要事項に記入するんだけど、嘘は書いちゃダメだよ?
 バレるとギルドランクを剥奪される上に、下手をすると追っ手が掛かるから」
「まー、物騒ねぇ」
「……姉さん、そのくらいは知っておいてよ……」

 そうやって、ユークリッドのギルド入門講座は続く。

「最初は自分で仕事を選ぶのは難しいかもね。実は受付の人次第なんだけど。
 受付の人が初心者向けの依頼しか見せてくれないことがあるんだよ」
「……ふぅん」
「信用がモノを言うのは何処でも一緒。
 ギルド全体の信用を落とさないためにもココは譲れないよね。で。
 初心者向けの仕事を二つ三つこなしたら、初めてギルドランクがつくってワケ」
「つまり、試用期間があるのね」
「そういうコト」

 シエルは首を傾げた。

「エンジュの推薦とユークリッド君の色目でどうにかならないの?」
「うわぁ、何か酷いこと考えてる?」
「面倒ねぇ、どうにかしなさいよ」
「姉さんまでそんな無茶を……勘弁してよ、俺の仕事が無くなる……」

 ユークリッドの脱力する様子は世の女性の母性なるモノを刺激するのか、次の馬車
は目立つ女性陣に目もくれず、ユークリッドにウットリとした視線を向けているでは
ないか。
 エンジュが呆れて弟に拳骨を落とすと、弟は頭を抱えて座り込んだ。
 勿論焼きイカはもうなく、片手はがら空きだ。

「痛っ、何するんだよ姉さん!」
「手加減したでしょうが」
「俺は悪くない~」

 まあ、いつも通りの光景。
 そんなこんなでじゃれあいながら、一行は街を目指す。

「えーと、何だっけ。ああ、仕事仕事」

 まだ頭を押さえているユークリッド。さっきのがよっぽど痛かったらしい。

「小さな依頼は下請けの酒場や宿屋を当たった方がいいかもしれない。
 小さな町で処理できる分は、その町でしか募集をかけなかったりするからね。
 じゃあ、逆はどうかというと、大きな依頼とか広範囲に仕事を探したかったら、
 ギルド支部に出向いた方がいいと思うよ。絶対数が多いと選択肢が広がるし」

 手を広げながら説明するユークリッドに顔も向けず、シエルは顎に手を当て、思案
顔である。エンジュは露店で買った焼き鳥の串が無くなり、面白くなさそうに串を投
げ捨てた。

「そんな説明後々!
 登録しないことには始まらないんでしょ?」

 思い切り伸びをする。豊かな胸が、重そうに揺れた。

「まずは大きい街で登録する!
 その時に詳しいことは教えてくれるわよ」
「……早く何か食べたいのね?」
「もちろん、それもあるわね」

 得意げに笑うエンジュを見ながら、次の街で馬車を借りるのと、立ち寄る町毎に食
費がかかるのとではどちらが安上がりか、シエルは真剣に考えていた。

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2007/02/12 16:59 | Comments(0) | TrackBack() | ○易しいギルド入門

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