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PC レイヴン
場所 クーロン郊外・サイサリア地区
NPC ハーディン ブイヨフ 黒服の男達(6名) 虚無の空イステス
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クーロン郊外・サイサリア地区
崩壊した建物が点々と存在するだけの荒れ果てた大地。
昔は栄えていたらしいが、今となってはその面影を示す物は荒廃した建物ぐらいだろ
う。
まともな人間はこんな所には近寄らない、だがあまり表沙汰に出来ない裏の取引など
の、受け渡し場所としては人気があるらしい。
その荒廃した建物の間を、ハーディンとその用心棒達が走りぬけていた。
「(くそ!奴等め、本気で私を消すつもりか)」
後方から足音も立てずに複数の黒服の男達が追ってくる。
ハーディンは今更ながら後悔していた、なぜあのオウガを待たずにこんな所に来てし
まったのか、答えは自分でも解っている。1回目が苦もなく成功したから図に乗って
いたのだ、一刻も早くアレの部品が欲しかったのだが、ここで死んでしまっては元も
子もない。
「ぎゃはぁ!」
用心棒の一人が奇妙な悲鳴を上げて倒れる。他の用心棒が走りながら銃を発砲する
が、着弾の火花は遥か後方で灯っただけだった。
敵はあきらかに戦いなれしている。建物の影などを利用し、闇を見方にする方法を熟
知している。このまま逃げつづけていれば、いつかはやられてしまうだろう。
ハーディンは手に持った黒いアタッシュケースを忌々しげに見つめる。
「(死んでたまるか、ここまで来て、死んでたまる物か!)」
不意に、前方を走っていた用心棒が足を止める。行き止まりだった…高い高い壁が、
行く手を遮っていた。
「ぐぎゃあ…」
最後尾に居た用心棒が倒れる。残りの用心棒は、すでに四人だけになっていた。
獲物を追い詰めた黒服の男達は、手にした奇妙に曲がった剣を閃かせながら、ゆっく
りと近づいてくる。
「少々やりすぎましたな、ハーディン」
白い服を着た中年の男が、6人の黒服の後ろから進み出てくる。
「ブイヨフ…貴様、裏切ったな!」
「やれやれ、我々に黙ってカナマンの『置き土産』を密かに製作しているのは誰です
かねぇ」
「き、貴様…!」
そこまで言ってハーディンは口に手を当てる、しかし、ブイヨフはそれを見逃さず口
元を歪ませ笑みを作る。
「おや、やはり図星の様ですな。まあ、そう言うわけで、自分が犯した罪を呪って死
んでください」
「…ぐぬぅ」
ハーディンがうめくのと、男達が剣を構えるのは、ほぼ同時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ バキバキバキ!!!
突如、大地が揺れ、轟音と共にハーディンの背後の壁が崩れる。一番壁に近かった用
心棒が、崩れる壁の残骸に潰されそうになった瞬間、ヌっと伸びてきた巨大な拳がそ
の破片を粉々に粉砕した。
「こりゃあ、どう言うことなのか、後でタップリと言いわけを聞かせてもらおうか?
ハーディン」
巨大な拳が引っ込み、代わりに出て来た顔は紛れもなく、オウガ・レイヴンの厳つい
ツラだった。
「レイヴン、遅いぞ!何をしていた!」
自分が安堵したのを隠す様に、ハーディンは鬼に向って叫ぶ。
「なぁに、ま、積もる話しはまた後にしよう…や!」
どさくさにまぎれ、ハーディンに近寄った黒服の男を、一瞬で移動したレイヴンが裏
拳で弾き飛ばす。男は、まるで丸太の直撃を受けたかのように吹き飛び、固い壁に激
突し、グワシャ、と嫌な音を立てて動かなくなった。おそらく即死だろう、折れた骨
が肉と皮膚を突き破って飛び出し、内臓が破裂して血溜りの中に浮かんでいる。
「さ~て、どうするよ、逃げ出すんなら今のうちだぜ? つぅって人が親切に言って
やっても無駄なんだろうけどなぁ」
レイヴンが言い終わる前に、二人の黒服が左右に分かれて襲いかかってきた。一人は
奇妙に曲がった剣を低く構えて足を狙い、もう一人は首を狙って跳躍した。
スピード、太刀筋、技術、どれをとっても黒服達は一流だった、すくなくともそこに
いるハーディンの用心棒よりかは遥かに強い…が。
右から来た男の剣を、右足で受けとめる。曲がった刀身は肉に刃を深くめり込ませる
ための物らしく、レイヴンの足に刃が埋まって行く。
「…な!」
右足に刃をめり込ませた男が驚愕の声を上げる。それもそうだろう、いつもなら骨を
絶つはずのそれは、肉に浅くめり込んだだけでピクリとも動かなくなったのだから。
レイヴンは発達させた筋肉に刃を挟みこみ、なんとか剣を抜こうとしていた男の頭を
右手で鷲掴みにして、少し力を入れた。
左から跳躍してきた男は、同時攻撃を仕掛けた仲間が、いともあっさりと頭を握りつ
ぶされたのにもかかわらず、勢いを緩めることなく首筋、頚動脈に狙い違わず斬りか
かった。が、レイヴンの左手にあっさりと吹き飛ばされ、一人目と同じようにグシャ
グシャの肉塊へと変わり果てた。
およそ1分にも満たない短い間に、3人の同士を失ったにもかかわらず、臆すること
なく残りの3人が動いた。
横薙ぎに払われた剣を胴体で受けとめ、すぐに離れようとした男の頭を一瞬早く鷲掴
み、続く二人目に向って投げ付けた。投げた瞬間、首の骨がいい音を立てて折れ、死
体と化した同胞の下敷きとなった二人目を、全体中をかけて踏みつけた。ゴキゴキバ
キ、と骨と内臓のつぶれる音を骸越しに感じ、飛びかかってきた残る一人を、額に生
えた角で一突きで突き殺した。
「たっく、ああいった連中は逃げ足だけは速えからなぁ」
角にぶら下がった死体を引き抜き、地面に無造作に投げ捨てる。ブイヨフはすでにこ
の場にはいなかった。
「ま、命拾いしたな、ハーディンさんよぉ」
レイヴンは顔に掛かった血を拭いながら振り返った。唖然と立ち尽くすハーディンと
他3名の用心棒を見据えて、シシシと白い歯を剥き出しにして笑う。
「まあ、お前さんに死なれたら俺様はちっと困るんでね。安心しなって、殺させやし
ねぇからよ」
「………守れるものなら…守って見せろよ……戦く大地」
「ああ?」
不意に響いた透き通るような美声に、レイヴンは振り返る。前方20mくらい先に、声
の主は静かに佇んでいた。光沢のある黒銀色の短髪、不健康なほどに青白い肌に氷の
ように冷たい蒼海色の瞳、黒い服に身を包んだ美しい男。
レイヴンの知っている、見るもの全てを安らぎで包み込むかのような美貌を持った白
髪の青年と、まったく正反対の見るもの全てを恐怖の虜にしてしまう冷たい美貌を
持った男だった。
「それとも…その自慢の槍斧で…全てを叩き潰して見せるかよ?戦く大地」
「その声は…アークデーモン『虚無の空イステス』」
アークデーモン=悪魔 この世で鬼に次いで人間から敬遠されている、恐怖の象徴。
そのイステスと呼ばれた悪魔と、レイヴンがじっと見詰め合う。
「すまねぇが、お前さん等は先に行っててくれ」
イステスから目を離さず、レイヴンがハーディン達に言う。
「しかし…」
「いいから、もう危険はねぇはずだ、早く行ってろ」
レイヴンの台詞は普段と変わらない物だったが、口調はふざけてはいなかった。それ
を感じ取ったのか、ハーディンも用心棒も黙って崩れた壁から出ていった。
「まさかお前さんが出てくるとはな、イステス。元気にやってるかい?」
気さくに笑いかけるレイヴンの足元を、真空の刃が切り砕く。
「俺が貴様と手を取り合って…再会を喜ぶとでも思ったのか?戦く大地」
刃を放ったイステスの腕が下がり、レイヴンを睨付ける。
「まだ、あの事で俺様を恨んでいるのか?」
笑みを消し、真顔で言うレイヴン。その表情は珍しく重く沈んでいる様だった。
「……今…俺はファイロスと言う男に雇われている……さっきのブイヨフと『似たよ
うな目的を持った連中』だ」
レイヴンの質問とは関係ない事を答え、背を向ける。
「いずれまた会うだろうな……それまでせいぜい守ってみせることだ…戦く大地よ」
漆黒の悪魔の翼を広げるイステス。他にも考える事はたくさんあるが、その翼を見て
レイヴンの脳裏にあることが浮かんだ。
「ちょっと待ってくれねぇか、一つ聞きたいことがあるんだが」
イステスは無言で背を向けている。
「…お前さんがハーディンの屋敷を襲ったんだな」
疑問ではなく確かめる様な口調で聞くレイヴン。いまのイステスは人間形態で、レイ
ヴンと比べても遥かに背が低い。しかし、悪魔形態の彼は3mをゆうに越す巨大な
アークデーモンになる。アルシャが見た巨大な2枚の翼の影は、悪魔形態のイステス
なのかもしれない。
背を向けたまま、イステスはしばし黙っていたが、顔だけを傾け、その絶対零度の瞳
をレイヴンに向ける。
「……答える義理はない」
翼を強く羽ばたき一瞬で空に舞い上がるかつての相棒を、レイヴンは彼とは対照的
な、真紅のマグマのような瞳で見つめていた。
PC レイヴン
場所 クーロン郊外・サイサリア地区
NPC ハーディン ブイヨフ 黒服の男達(6名) 虚無の空イステス
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クーロン郊外・サイサリア地区
崩壊した建物が点々と存在するだけの荒れ果てた大地。
昔は栄えていたらしいが、今となってはその面影を示す物は荒廃した建物ぐらいだろ
う。
まともな人間はこんな所には近寄らない、だがあまり表沙汰に出来ない裏の取引など
の、受け渡し場所としては人気があるらしい。
その荒廃した建物の間を、ハーディンとその用心棒達が走りぬけていた。
「(くそ!奴等め、本気で私を消すつもりか)」
後方から足音も立てずに複数の黒服の男達が追ってくる。
ハーディンは今更ながら後悔していた、なぜあのオウガを待たずにこんな所に来てし
まったのか、答えは自分でも解っている。1回目が苦もなく成功したから図に乗って
いたのだ、一刻も早くアレの部品が欲しかったのだが、ここで死んでしまっては元も
子もない。
「ぎゃはぁ!」
用心棒の一人が奇妙な悲鳴を上げて倒れる。他の用心棒が走りながら銃を発砲する
が、着弾の火花は遥か後方で灯っただけだった。
敵はあきらかに戦いなれしている。建物の影などを利用し、闇を見方にする方法を熟
知している。このまま逃げつづけていれば、いつかはやられてしまうだろう。
ハーディンは手に持った黒いアタッシュケースを忌々しげに見つめる。
「(死んでたまるか、ここまで来て、死んでたまる物か!)」
不意に、前方を走っていた用心棒が足を止める。行き止まりだった…高い高い壁が、
行く手を遮っていた。
「ぐぎゃあ…」
最後尾に居た用心棒が倒れる。残りの用心棒は、すでに四人だけになっていた。
獲物を追い詰めた黒服の男達は、手にした奇妙に曲がった剣を閃かせながら、ゆっく
りと近づいてくる。
「少々やりすぎましたな、ハーディン」
白い服を着た中年の男が、6人の黒服の後ろから進み出てくる。
「ブイヨフ…貴様、裏切ったな!」
「やれやれ、我々に黙ってカナマンの『置き土産』を密かに製作しているのは誰です
かねぇ」
「き、貴様…!」
そこまで言ってハーディンは口に手を当てる、しかし、ブイヨフはそれを見逃さず口
元を歪ませ笑みを作る。
「おや、やはり図星の様ですな。まあ、そう言うわけで、自分が犯した罪を呪って死
んでください」
「…ぐぬぅ」
ハーディンがうめくのと、男達が剣を構えるのは、ほぼ同時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ バキバキバキ!!!
突如、大地が揺れ、轟音と共にハーディンの背後の壁が崩れる。一番壁に近かった用
心棒が、崩れる壁の残骸に潰されそうになった瞬間、ヌっと伸びてきた巨大な拳がそ
の破片を粉々に粉砕した。
「こりゃあ、どう言うことなのか、後でタップリと言いわけを聞かせてもらおうか?
ハーディン」
巨大な拳が引っ込み、代わりに出て来た顔は紛れもなく、オウガ・レイヴンの厳つい
ツラだった。
「レイヴン、遅いぞ!何をしていた!」
自分が安堵したのを隠す様に、ハーディンは鬼に向って叫ぶ。
「なぁに、ま、積もる話しはまた後にしよう…や!」
どさくさにまぎれ、ハーディンに近寄った黒服の男を、一瞬で移動したレイヴンが裏
拳で弾き飛ばす。男は、まるで丸太の直撃を受けたかのように吹き飛び、固い壁に激
突し、グワシャ、と嫌な音を立てて動かなくなった。おそらく即死だろう、折れた骨
が肉と皮膚を突き破って飛び出し、内臓が破裂して血溜りの中に浮かんでいる。
「さ~て、どうするよ、逃げ出すんなら今のうちだぜ? つぅって人が親切に言って
やっても無駄なんだろうけどなぁ」
レイヴンが言い終わる前に、二人の黒服が左右に分かれて襲いかかってきた。一人は
奇妙に曲がった剣を低く構えて足を狙い、もう一人は首を狙って跳躍した。
スピード、太刀筋、技術、どれをとっても黒服達は一流だった、すくなくともそこに
いるハーディンの用心棒よりかは遥かに強い…が。
右から来た男の剣を、右足で受けとめる。曲がった刀身は肉に刃を深くめり込ませる
ための物らしく、レイヴンの足に刃が埋まって行く。
「…な!」
右足に刃をめり込ませた男が驚愕の声を上げる。それもそうだろう、いつもなら骨を
絶つはずのそれは、肉に浅くめり込んだだけでピクリとも動かなくなったのだから。
レイヴンは発達させた筋肉に刃を挟みこみ、なんとか剣を抜こうとしていた男の頭を
右手で鷲掴みにして、少し力を入れた。
左から跳躍してきた男は、同時攻撃を仕掛けた仲間が、いともあっさりと頭を握りつ
ぶされたのにもかかわらず、勢いを緩めることなく首筋、頚動脈に狙い違わず斬りか
かった。が、レイヴンの左手にあっさりと吹き飛ばされ、一人目と同じようにグシャ
グシャの肉塊へと変わり果てた。
およそ1分にも満たない短い間に、3人の同士を失ったにもかかわらず、臆すること
なく残りの3人が動いた。
横薙ぎに払われた剣を胴体で受けとめ、すぐに離れようとした男の頭を一瞬早く鷲掴
み、続く二人目に向って投げ付けた。投げた瞬間、首の骨がいい音を立てて折れ、死
体と化した同胞の下敷きとなった二人目を、全体中をかけて踏みつけた。ゴキゴキバ
キ、と骨と内臓のつぶれる音を骸越しに感じ、飛びかかってきた残る一人を、額に生
えた角で一突きで突き殺した。
「たっく、ああいった連中は逃げ足だけは速えからなぁ」
角にぶら下がった死体を引き抜き、地面に無造作に投げ捨てる。ブイヨフはすでにこ
の場にはいなかった。
「ま、命拾いしたな、ハーディンさんよぉ」
レイヴンは顔に掛かった血を拭いながら振り返った。唖然と立ち尽くすハーディンと
他3名の用心棒を見据えて、シシシと白い歯を剥き出しにして笑う。
「まあ、お前さんに死なれたら俺様はちっと困るんでね。安心しなって、殺させやし
ねぇからよ」
「………守れるものなら…守って見せろよ……戦く大地」
「ああ?」
不意に響いた透き通るような美声に、レイヴンは振り返る。前方20mくらい先に、声
の主は静かに佇んでいた。光沢のある黒銀色の短髪、不健康なほどに青白い肌に氷の
ように冷たい蒼海色の瞳、黒い服に身を包んだ美しい男。
レイヴンの知っている、見るもの全てを安らぎで包み込むかのような美貌を持った白
髪の青年と、まったく正反対の見るもの全てを恐怖の虜にしてしまう冷たい美貌を
持った男だった。
「それとも…その自慢の槍斧で…全てを叩き潰して見せるかよ?戦く大地」
「その声は…アークデーモン『虚無の空イステス』」
アークデーモン=悪魔 この世で鬼に次いで人間から敬遠されている、恐怖の象徴。
そのイステスと呼ばれた悪魔と、レイヴンがじっと見詰め合う。
「すまねぇが、お前さん等は先に行っててくれ」
イステスから目を離さず、レイヴンがハーディン達に言う。
「しかし…」
「いいから、もう危険はねぇはずだ、早く行ってろ」
レイヴンの台詞は普段と変わらない物だったが、口調はふざけてはいなかった。それ
を感じ取ったのか、ハーディンも用心棒も黙って崩れた壁から出ていった。
「まさかお前さんが出てくるとはな、イステス。元気にやってるかい?」
気さくに笑いかけるレイヴンの足元を、真空の刃が切り砕く。
「俺が貴様と手を取り合って…再会を喜ぶとでも思ったのか?戦く大地」
刃を放ったイステスの腕が下がり、レイヴンを睨付ける。
「まだ、あの事で俺様を恨んでいるのか?」
笑みを消し、真顔で言うレイヴン。その表情は珍しく重く沈んでいる様だった。
「……今…俺はファイロスと言う男に雇われている……さっきのブイヨフと『似たよ
うな目的を持った連中』だ」
レイヴンの質問とは関係ない事を答え、背を向ける。
「いずれまた会うだろうな……それまでせいぜい守ってみせることだ…戦く大地よ」
漆黒の悪魔の翼を広げるイステス。他にも考える事はたくさんあるが、その翼を見て
レイヴンの脳裏にあることが浮かんだ。
「ちょっと待ってくれねぇか、一つ聞きたいことがあるんだが」
イステスは無言で背を向けている。
「…お前さんがハーディンの屋敷を襲ったんだな」
疑問ではなく確かめる様な口調で聞くレイヴン。いまのイステスは人間形態で、レイ
ヴンと比べても遥かに背が低い。しかし、悪魔形態の彼は3mをゆうに越す巨大な
アークデーモンになる。アルシャが見た巨大な2枚の翼の影は、悪魔形態のイステス
なのかもしれない。
背を向けたまま、イステスはしばし黙っていたが、顔だけを傾け、その絶対零度の瞳
をレイヴンに向ける。
「……答える義理はない」
翼を強く羽ばたき一瞬で空に舞い上がるかつての相棒を、レイヴンは彼とは対照的
な、真紅のマグマのような瞳で見つめていた。
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