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PC ロッティー レイヴン
場所 ハーディン邸
NPC アルシャ ジェーン
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レイヴンが放った鉄鎖が風に唸った。
アルシャとロッティーがその先に目を向けたときには、既にその先に捕らえら
れた男の姿があった。
「しっかり案内頼むぞ、兄ちゃん」
飄々とした様子で笑うと、レイヴンがその大きな手でバシバシと男の背を叩く
。
そのたびに男がうめき声を上げた。
「その人は…?」
ロッティーは固い声色でたずねた。
この屋敷を襲った一味で無い事は分かる。
二枚羽を持ち、人々を容赦無く殺戮した男の話を聞いた後では、目の前の人物
は普通過ぎた。
「ただのコソ泥だ―――ただし、飼い主が居るようだな。話してもらおうか?お
前が誰に頼まれ、何を探していたのか」
「くっ」
男の様子から、レイヴンの推測が正しいことが伺える。
ただし、口を開く様子は無い。
しばしそんな様子を眺めていたレイヴンが、絡めていた鎖を強くひいた。
衣服が絞られ骨が軋む音がする。
彼の力ならばそのまま絞め殺すことも造作ない。
「ぐがぁ!?」
「女子供を前に気はすすまねェが、事は一刻を争うんでな」
アルシャが怯えるように後ろでロッティーの服をつかんだ。
ロッティーは経験上、自分たちの前でレイヴンがこれ以上酷いことをするとは
思えなかったが、鬼気迫る彼に睨まれれば、けして冗談とは取れないであろう。
「わ、分かった!!言う、言うから話せッ」
「おぅ、聞き分けが良いじゃねェか」
「俺は、アイローグのブイヨフに頼まれたんだ!!ハーディンが持ってる『カナ
マンの設計図』を探してこいってな!」
「アイローグ…?カナマンの設計図…?」
怪訝な目で、レイヴンは振りかえった。
同様の表情でロッティーは首を傾げたが、アルシャは違った。
「『カナマンの設計図』ですって!?そんなものがうちにあるはずが無いわ」
「一体なんでぇ、そりゃあ」
「カナマンは、数十年前に死んだ発明家なんです。彼は、死ぬ前にとある大きな
発明をしました。そして設計図に書き残したのです。でも…その内容は誰も知ら
ないって…どうやってお父様がそんな物を…」
「この情報は確かなモンだぜ。現に、その噂が流れてからのハーディンの野郎は
、けったいなモンばかり集めてるって聞くからな。それが設計図に書き記されて
いるものの材料なんじゃないかって皆言ってるのさ」
「アイローグは…今父が取引の為に出かけた…会社です」
アルシャが悲痛な表情で言った。
彼らは取引をしている間に、設計図を奪おうとしていたのだ。
「倉庫を探していたおかげで助かったってわけか。ここに無かったらどうするつ
もりなんんだ?」
「…もちろん、本人から聞き出すまでよ」
「くそっ」
口元に陰湿な笑みを浮かべた男を短く罵倒すると、レイヴンは男を床に引きず
り倒した。
「敵が多すぎるな。場所は何処だ!」
胸を叩きつけられ、息絶え絶えの男から場所を聞き出すとレイヴンは素早く立
ちあがって上の階を目指した。
「レイヴンさん!」
「お前等はここをさっさと離れろ!またいつ襲われるかわからねェからな!」
「父を、父をどうか助けてください!!」
アルシャの真摯な声に既に、レイヴンが一度降り返って不敵に笑った。
「まぁ、俺様に任せておけ。お前も死ぬんじゃねぇぞ。その瞬間に俺様の依頼は
終了するんだからな」
そして、隣のロッティーに視線を向ける。
ロッティーはただ頷いた。
レイヴンはアルシャをロッティーに託すとそのままハーディンの元へと向かっ
た。
☆★☆★
「取りあえず…私の泊まってる宿に行こうかしら?残念だけど、私この辺りには
知り合いがい無いのよ。何処か安全な場所を知っていれば良いのだけれど」
ここはクーロンとフレデリアの間である。
フレデリアに、ロッティーのような人間が入れるような場所は無かったし、ま
してやクーロンなど問題外である。
「いえ、父の知り合いは居ても、私自身が頼める家は…」
何の不自由無く暮らしてきた少女は、無力な自分を責めるように俯いた。
命をかけて助けてくれた人々がいるのに―――。
☆★☆★
血と死臭の漂う屋敷を出ると、そこには赤い太陽が沈みはじめていた。
「あの…ロッティーさんって、レイブンさんとどういう関係なんですか?恋人?
」
ロッティーはアルシャの他意の無い言葉に一瞬目を丸くして、笑った。
「違うわ。私はレイヴンさんと昔少しだけ旅をしたことがあるの。仲間と言うよ
り…貴方と同じ依頼人に近い立場だったかしら…」
しかし、8年が経ちロッティーも成長した。
彼と対等とまではいかなくても、少しでも力になり得る存在になりたい。
先ほどのように守られて、慰められてばかりではいけないのだ。
既に自分は目の前にいる少女のように子供ではないのだから。
「私は占い師なの。貴方のお父様を占った」
「貴方が!?父を占って、レイヴンさんと私をひき合わせた…」
「えぇ、でも忘れないで。占いの結果はけして変えられない未来ではないの。知
ることは諦めることではないから…私たちは自分が出来ることを頑張りましょう
!」
ロッティーはアルシャを勇気付けるように微笑んだ。
―――ただ、一つだけ気になるのは…『二枚羽の男』。
己の占いが外れたのならそれでも良い。
しかし、その男のほかに更なる脅威が自分たちの前に立ち塞がっていたとした
ら…。
恐ろしい予感に身震いしながら、ロッティーは先を急いだ。
そんなロッティーを嘲笑うかのように、夕焼けに照らされ金色に輝いた蝶が、
彼女たちの頭上を舞い、消えた。
PC ロッティー レイヴン
場所 ハーディン邸
NPC アルシャ ジェーン
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レイヴンが放った鉄鎖が風に唸った。
アルシャとロッティーがその先に目を向けたときには、既にその先に捕らえら
れた男の姿があった。
「しっかり案内頼むぞ、兄ちゃん」
飄々とした様子で笑うと、レイヴンがその大きな手でバシバシと男の背を叩く
。
そのたびに男がうめき声を上げた。
「その人は…?」
ロッティーは固い声色でたずねた。
この屋敷を襲った一味で無い事は分かる。
二枚羽を持ち、人々を容赦無く殺戮した男の話を聞いた後では、目の前の人物
は普通過ぎた。
「ただのコソ泥だ―――ただし、飼い主が居るようだな。話してもらおうか?お
前が誰に頼まれ、何を探していたのか」
「くっ」
男の様子から、レイヴンの推測が正しいことが伺える。
ただし、口を開く様子は無い。
しばしそんな様子を眺めていたレイヴンが、絡めていた鎖を強くひいた。
衣服が絞られ骨が軋む音がする。
彼の力ならばそのまま絞め殺すことも造作ない。
「ぐがぁ!?」
「女子供を前に気はすすまねェが、事は一刻を争うんでな」
アルシャが怯えるように後ろでロッティーの服をつかんだ。
ロッティーは経験上、自分たちの前でレイヴンがこれ以上酷いことをするとは
思えなかったが、鬼気迫る彼に睨まれれば、けして冗談とは取れないであろう。
「わ、分かった!!言う、言うから話せッ」
「おぅ、聞き分けが良いじゃねェか」
「俺は、アイローグのブイヨフに頼まれたんだ!!ハーディンが持ってる『カナ
マンの設計図』を探してこいってな!」
「アイローグ…?カナマンの設計図…?」
怪訝な目で、レイヴンは振りかえった。
同様の表情でロッティーは首を傾げたが、アルシャは違った。
「『カナマンの設計図』ですって!?そんなものがうちにあるはずが無いわ」
「一体なんでぇ、そりゃあ」
「カナマンは、数十年前に死んだ発明家なんです。彼は、死ぬ前にとある大きな
発明をしました。そして設計図に書き残したのです。でも…その内容は誰も知ら
ないって…どうやってお父様がそんな物を…」
「この情報は確かなモンだぜ。現に、その噂が流れてからのハーディンの野郎は
、けったいなモンばかり集めてるって聞くからな。それが設計図に書き記されて
いるものの材料なんじゃないかって皆言ってるのさ」
「アイローグは…今父が取引の為に出かけた…会社です」
アルシャが悲痛な表情で言った。
彼らは取引をしている間に、設計図を奪おうとしていたのだ。
「倉庫を探していたおかげで助かったってわけか。ここに無かったらどうするつ
もりなんんだ?」
「…もちろん、本人から聞き出すまでよ」
「くそっ」
口元に陰湿な笑みを浮かべた男を短く罵倒すると、レイヴンは男を床に引きず
り倒した。
「敵が多すぎるな。場所は何処だ!」
胸を叩きつけられ、息絶え絶えの男から場所を聞き出すとレイヴンは素早く立
ちあがって上の階を目指した。
「レイヴンさん!」
「お前等はここをさっさと離れろ!またいつ襲われるかわからねェからな!」
「父を、父をどうか助けてください!!」
アルシャの真摯な声に既に、レイヴンが一度降り返って不敵に笑った。
「まぁ、俺様に任せておけ。お前も死ぬんじゃねぇぞ。その瞬間に俺様の依頼は
終了するんだからな」
そして、隣のロッティーに視線を向ける。
ロッティーはただ頷いた。
レイヴンはアルシャをロッティーに託すとそのままハーディンの元へと向かっ
た。
☆★☆★
「取りあえず…私の泊まってる宿に行こうかしら?残念だけど、私この辺りには
知り合いがい無いのよ。何処か安全な場所を知っていれば良いのだけれど」
ここはクーロンとフレデリアの間である。
フレデリアに、ロッティーのような人間が入れるような場所は無かったし、ま
してやクーロンなど問題外である。
「いえ、父の知り合いは居ても、私自身が頼める家は…」
何の不自由無く暮らしてきた少女は、無力な自分を責めるように俯いた。
命をかけて助けてくれた人々がいるのに―――。
☆★☆★
血と死臭の漂う屋敷を出ると、そこには赤い太陽が沈みはじめていた。
「あの…ロッティーさんって、レイブンさんとどういう関係なんですか?恋人?
」
ロッティーはアルシャの他意の無い言葉に一瞬目を丸くして、笑った。
「違うわ。私はレイヴンさんと昔少しだけ旅をしたことがあるの。仲間と言うよ
り…貴方と同じ依頼人に近い立場だったかしら…」
しかし、8年が経ちロッティーも成長した。
彼と対等とまではいかなくても、少しでも力になり得る存在になりたい。
先ほどのように守られて、慰められてばかりではいけないのだ。
既に自分は目の前にいる少女のように子供ではないのだから。
「私は占い師なの。貴方のお父様を占った」
「貴方が!?父を占って、レイヴンさんと私をひき合わせた…」
「えぇ、でも忘れないで。占いの結果はけして変えられない未来ではないの。知
ることは諦めることではないから…私たちは自分が出来ることを頑張りましょう
!」
ロッティーはアルシャを勇気付けるように微笑んだ。
―――ただ、一つだけ気になるのは…『二枚羽の男』。
己の占いが外れたのならそれでも良い。
しかし、その男のほかに更なる脅威が自分たちの前に立ち塞がっていたとした
ら…。
恐ろしい予感に身震いしながら、ロッティーは先を急いだ。
そんなロッティーを嘲笑うかのように、夕焼けに照らされ金色に輝いた蝶が、
彼女たちの頭上を舞い、消えた。
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