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2024/05/21 12:33 |
4. 『四つ羽の死神』邂逅編/レイヴン(ケン)
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  PC  ロッティー  レイヴン
  場所  クーロン
  NPC ソフィア アーリン ジェーン 
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 ソフィアの居る『幻蝶館』は、何人もの女占い師が住まう占い館であった。
 その頂点が、クーロンの影の要人達を何人も占い、信者としてきた『クーロンの道
標』、エルゼである。
 ロッティーは何度かこの館を訪れた事があったが、かの女占い師には一度も出会っ
た事は無かった。
 彼女に会うことは、それ自体が幸運であり、莫大なお金とコネがなければエルゼに
占ってもらう事は不可能と言われていた。

 「こんにちはー。どなたかいらっしゃいますか?」

 今、ロッティーはその『幻蝶館』の前に立っていた。後ろには、彼女の倍はあるの
ではないかと思われる大男、レイヴンが立っている。深紅の外套を纏った彼の外見は
六年前と全くそのままであったが、髪の色だけが染めたのであろうか、変わってい
た。先ほどまでは心細くてたまらないロッティーであったが、レイヴンに再会し、ロ
ッティー人形も懐に戻ってきた為、少しだけ元気を取り戻していた。しかし、いくら
ノッカーを叩いても反応のない館の奥に、次第に表情を曇らせていく。

「どうしたのかしら。誰も居ないなんてはずは無いはずだけど・・・。」

 彼女はソフィアに呼ばれてやってきたのである。戸惑うロッティーの後ろから、ぬ
ぅっと太い腕が伸び、扉を押した。レイヴンは低い声で唸ると、暗い館の奥を鋭い眼
光で睨んだ。

「いや、中には人は居るようだ。ただ妙な雰囲気だがな」

 素早くロッティーを下がらせ、前に出る。彼のハンターとしての勘がこの屋敷の中
の異変にいち早く反応したのだ。僅かに死臭の漂う部屋に向かって、レイヴンはその
地鳴りのような声を張り上げた。

「たのもう!俺様は、ハーディンの使いできたレイヴンというものだ。ソフィアとい
う占い師はいるか?」
「え!?」

 ロッティーが驚いてレイヴンを見上げる。ソフィアと偽ってハーディンを占ったの
は他ならぬロッティーであったのだ。
(じゃあ、ハーディンさんを死神から守る人は、レイヴンさんの事だったの
ね・・・)
 あの時の『再会』のカードの意味を知り、ロッティーは納得する。しかし、レイヴ
ンの探し人が本当はロッティ―であることを教えるよりも早く、中から女が出てき
て、二人に声をかけた。

「ァらぁ、随分といかついおニイさんだねぇ。悪いけど今取り込み中なンだよ。ソフ
ィアなら居ないから帰っておくれ」

 出てきたのは占い師というよりは、娼婦を思わせる艶っぽい女であった。目の前の
巨漢を警戒の面持ちで見上げながら、追っ払うように手を動かした。

「あ、あのッ。アーリンさん!」
「おや、アンタ・・・ロッティーだっけ?」
「ええ、私はソフィアに呼ばれてここに来たんです。・・・・居ないって本当です
か?」

 レイヴンの後ろに隠れていたロッティーが問いただすと、途端にアーリンの表情が
強張った。白い顔はみるみる青くなっていき、とうとう顔を覆うとワッと泣き出した
のである。
 
「アーリンさん!?」

 驚いてロッティー駆け寄ると、アーリンは嗚咽を混じらせながらも、言葉を紡ぐ。
その間レイヴンだけは、部屋の奥底を静かな瞳でじっと見つめていた。

「さ、さっき、ソフィアは死んだんだ」
「・・・え?」
「私たちが、ソフィアの仕事場を見に行ったら、そ、そこにッ」

「違うでしょ。アーリンねえさん。ソフィア姉さんは死んだんじゃなくて殺されたの
よ」

 そこに割り込んだのは、アーリンとは対照的な冷やかで幼い声であった。
 灰色の髪を二つに結んだ幼い少女が酷く大人びた様子でそこに立っている。

「いつ見つけたんだ?」
「2時間くらい前。ここじゃ人殺しが起きたって訴える所もないから、どうしようっ
て話してたの」

 レイヴンの質問に淡々と答えると、少女は「ソッチ」と指を指した。レイヴンは示
された廊下の奥へと姿を消す。

「こ、殺されたって、本当なの?」

 ロッティーは肩を震わせて無くアーリンを支えながら、ソフィアと同じ灰色の髪の
少女に尋ねた。
 群青色の瞳がロッティーを映してクスリと笑う。その表情にロッティーは年端もい
かぬ少女に対して一瞬恐怖を覚えた。

「でも、これで私と貴女の占いのとおりでしょ。ロッティーさん」
「!?あ、あれは・・・」
「貴女も同じだったんでしょう?私の占いを信じて、だから身代わりになったのよ
ね?」

 ハーディンと言う男は、良くない噂をもつ豪商であった。本来仕事を請け負ったエ
ルゼが急用で間に合わず、一番弟子であるソフィアが代わりに行く事になったのだ。
その時、この少女―――ジェーンが言ったのである。

『駄目よ。ソフィア姉さん。ハーディンの家に行ったら姉さんは間違いなく死ぬ事に
なるわ』

 ロッティーも、その時、ソフィアの身に不安を感じていた。だから、ロッティーは
彼女の代わりにハーディンの屋敷に訪れたのだ。

「代わりに貴女が行ったって無駄だったのよ。だって、『ソフィア』姉さんが占った
のよ。現にハーディンの遣いは『ソフィアという占い師』を探しにここまできたんで
しょう?」
「レイヴンさんが殺したって言うの!?」
「そんなこと言ってないわよ、ロッティーさん」

 ジェーンは小さい子に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡いだ。ロッティー
は沈痛な面持ちで唇を噛む。

「おいおい、どうしたんだ?」

 再びロッティーの元に戻ってきたレイヴンは、緊迫した空気の張り巡らされたその
場に訝しげな顔をする。

「レイヴンさん」

 硬い声で彼の名を呼ぶロッティーの瞳は、決意とともに琥珀色から輝く金へと変化
していた。

「ハーディンさんの取引は成功したの?」
「あぁ、一つ目はな。・・・・って、ロッティー。どうしてお前さんがそんなこと知
ってるんだ?」
「まだ、終わってはいないのね?『四つ羽の死神』からは逃げ出せていないのね」
「・・・おぃ。ロッティー?」
「ハーディンさんを占ったのは私なの。ソフィアは私の代わりに死んだんだわ!お願
い、ハーディンさんのところに連れてって!」

 ロッティーの剣幕に驚いて、レイヴンは暫く思案するように黙っていた。しかし、
彼の目的もまた『ハーディンを占った占い師』を彼の元に再び連れてくるといったも
のだったのだ。 

「話はだいたい分かった。ロッティーがいた方が心強いしな。まぁ、守る人間が一人
増えようが俺様には軽いもんだ」

 皺の寄ったロッティーの眉間を指で軽く押して、レイヴンは不敵に言って見せた。

「六年前の契約の延長ってことでな」
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2007/02/25 23:16 | Comments(0) | TrackBack() | ○四つ羽の死神

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