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2024/05/21 14:44 |
3.ロッティー&レイヴン『四つ羽の死神』/ロッティー(千鳥)
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  PC  ロッティー  レイヴン
  場所  クーロン
  NPC ロッティー人形  男
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―――ハーディン氏より再び“ソフィア”に依頼あり。
   至急クーロンの占い館へ来てください ――――

 こんな手紙が、ロッティーの元に届いたのはあの日から一週間ほど経ってからだった。彼女は今、クーロンから少し離れた場所に滞在している。このような事態が起こる事はソフィアもロッティーも予測済みであったので出来ればクーロンで宿を取りたかったのだが、最もあの町で安全と言われる宿屋でさえ、非力なロッティーを見た瞬間、即座に首を横に振った。

――悪い事はいわねぇ。
  アンタのような若い娘さんがうちに泊まったら
  次目が覚めた時にはアンタの居場所は宿屋から娼館の一室にはや変わりさ。

 最近クーロンでは若い娘がさらわれてズィーノに売り飛ばされる事件が多発しているらしい。流石にそれは勘弁と、ロッティーはこのフレデリア貴族が経営する荘園まで場所を離れたのだ。領主直属の自衛団が作られているこの辺りは比較的治安が良い。それでもこうやってボンヤリと窓の外を眺めていると、騒ぎを聞きつけては領内を縦断する自衛団の姿を目にするのだから、つくづく、クーロン一帯と言うのは恐ろしい場所である。

「そんな町にこれから行くのよねぇ・・・」

 ロッティーの表情は暗い。ソフィアの働く占い館には一度だけ行ったことがあるが、それも土地勘あるものについて行ったからこそ、独りではとても辿り付く自信は無い。ロッティーの持つ強運もクーロンという巨大な暴力の渦の中では無に等しいものに感じられた。

「ひとりでは、心細いけど」
 
 それでも行くしかないことは、彼女もよく承知していた。
 何故といわれても分からない。これが“運命”というモノなのかもしれない。 

 ----------

 大陸で最も危険な独立都市国家、クーロン。
 別名“犯罪都市”とも呼ばれ、本来ならば裏で暗躍する巨大な5つの組織が、表となりその都市を治めていた。
 昼間こそ、商売に精を出す人々と、この都市でしか手に入らない色々な品を買う為に市に寄った旅人で、比較的正常な町の様子を見せているが、それも太陽の日の当たるごく一部の場所である。僅かでも道を反れれば死神の足音が常に背後で聞こえる程物騒な場所である。

 そして今、光の当たる通りから紺色の外套を纏った小柄な旅人が薄影の中へと身を投じた。
「・・・・・・」
 骨董屋と茶屋の間の路地に人影は見られない。顔を隠していても明らかに女性、または子供と分かるその旅人は、早足でその無人の細道を奥へ奥へと進んでいった。たまに、ふと足を止めて、己の位置を確かめるように顔を上げる。建物の間から僅かに覗く太陽を確かめるようでもあった。最初は、直線であった道筋は次第にランダムに変化し、まるで遠回りであった。しかし、その間一度も人に会わなかったのは、偶然というよりは、まるで行くべき道を知っているようである。
 しかし――
 
 ガァタン!

 背後で何かが転がった。
「!」 
 窪んだ眼光がこちらを見ている。頬は削げ落ち、明らかに薬物の中毒症状が出ている男は、先ほどまでゴミのように裏道に転がっていたが、その旅人から発せられる甘い、若い女の香りに引き寄せられるようにフラフラと立ち上がった。
「――ァ」
 思わず声を上げそうになって、ロッティーは口を押える。
 素早く踵を返して駆け出した。男はなおも追ってきて、不確かだった足取りが急に獲物を狙う野犬のように素早くなった。
(ピオの馬鹿~~!なんでこんな時に居なくなっちゃうのよ!)
 あの人形が居れば、先回りをして道を確認する事も、相手の意表をつくことも可能であったのに――!
 しかし、後悔しても既に遅い。目的地までの僅かな道をロッティーは全力疾走で駆け抜ける。薬に病んだ男はやはり健全な体のロッティーに追いつくことは出来ず、彼女の目端に占い館の外装が映る。あとは、この道を曲がれば―――
「・・・・・・あぁ」
 しかし、ゴールである館の入り口を前にして、ロッティーは絶望の声を上げた。そこには、後ろより追って来る男より更に大きな『壁』が待ち受けていたのである。
「―――――」
 確かめるように店の看板を眺めていた男が、こちらに気がついて顔を向けた。驚くほどの巨漢で、常人なら見上げる高さにあるその看板がちょうど真横に並んでいる。
その男を押しのけて占い館に入ることなど出来るわけも無く、少し離れた所で、思わずロッティーは座り込んでしまった。
「―――ぉ」
 地面に座り込んだロッティーを見て、その大男は何かを言いかけ、ふと思い出したように懐をまさぐった。既に半分諦めて、呆然とその様子を眺めていたロッティーの背後でヒューヒューと荒い呼吸が聞こえた。執念深く追って来た先ほどの薬物中毒者だ。座り込んだロッティーをみつけると、ニヤリと笑って近づいてくる。
「――ぃや!」
 慌てて立ち上がり、伸ばされた手を払いのける瞬間に、フードが取れ、ロッティーの黒髪が扇のように広がった。 
「あぁ、やっぱり」
 その声とともに、ロッティーの後ろから岩のような頑丈な腕が素早く伸び、彼女に近づく男の頭を掴んだ。まるでリンゴのようにその手に男の頭蓋が収まった。
「・・・・・・え?」
「ヌググッ」
「悪いが他を当たってくれ。俺様もこの娘に用があるんでな」
 空気を震わす、低く落ち着いた声がロッティーの頭上から聞こえた。聞き覚えのある、懐かしい声に思わず顔を上げて、まじまじと男の顔を見つめる。
「レ、レイヴンさん!?」
「よぉ。よりにもよって珍しい場所で会うもんだな。ここはお前さんには似合わない町だぜ、ロッティー?」
 以前と全く変わりない不敵な笑みを浮かべ、レイヴンは、ポンとその胸にロッティー人形を落とす。
「!」
 ロッティーは更に驚きながら、ぎゅっとその人形を抱きしめた。
 頭を掴まれもがく男を遠くに放り投げたレイヴンは、手の埃を払う仕草をしながら視線をロッティーに向ける。
「俺様はちょっとした用でこれからココに入るんだが。お前サンも同じようだな」
「えぇ、お友達が働いているのよ」
「へぇ。そりゃあ偶然だなぁ」

 久しぶりの再会を喜びながらも、
 二人はその違和感を拭えないでいた。
 これは偶然の出来事なのだろうか、それとも―――
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2007/02/25 23:15 | Comments(0) | TrackBack() | ○四つ羽の死神

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