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2024/05/18 03:14 |
2.ロッティー&レイヴン『四つ羽の死神』/レイヴン(ケン)

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PC  ロッティー レイヴン
NPC  ハーディン氏 ソフィア ロッティー人形 アルシャ
場所 クーロン近郊
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「旦那様、お嬢様がお戻りになられました。それと、おそらく雇われたと思われる方
も御一緒です」

「よし、通せ」

お辞儀をする執事を下がらせ男ハーディンは考え込む様に腕を組む。
『自分にとって最も大切な人』ソフィアと名乗った占い師の言った言葉が脳裏に蘇
る、妻は既に他界している、現在それが当てはまる人間は一人しかいない。

――――――――約1時間前―――――――――

「ぶべら!」

間抜けなつぶれた叫び声を上げて男が吹き飛んだ。まだ日が昇って一刻も経っていな
いクーロン近郊・ガーラヤ街、裏路地、6人の凶器を持ったいかにもガラが悪そうな
男達とその男達の倍はあろう巨躯をした紅い外套を身にまとった大男が対峙してい
た。大男の側には尻餅を突いた金髪の少女があっけに取られた表情で固まっている。

「気を付けな兄ちゃん達、俺様は今機嫌が悪ぃんだ」

大男が台詞とは裏腹に楽しそうな口調で言う、声は人間にしては低くそれでいてよく
響いている。

「ぐ…く、な、何もんだおめぇは」

「お前さん等に名乗る必要はねぇな、これ以上うだうだ言いやがるんだったら…」

途中で区切り、大男が最初に殴り飛ばした男を親指で指す。

「全員無料で地獄観光させてやるぜ?」

「ひ!く、覚えてやがれ~」

まるで不良のような捨て台詞を吐き男達は足早に逃げて行く。

「おいおい、忘れ物だぜ」

言うと大男は壁にめり込んだ男を鷲掴みにしてブンと放り投げた。素晴らしい膂力で
ある。

「ぶぎゃ!」

間抜けなつぶれた叫び声が聞こえてきたような気がした。

「ふん、つまらねぇな」

「あ、あの」

そのまま立ち去ろうとした大男を小さな声が呼びとめる。声の主は案の定さっきまで
尻餅を突いていた少女だった。

「あ、あの助けていただいて、どうもありがとうございました」

振り向いたが無言のままの大男に動揺しているのか声も体も少し震えている。年の頃
は17~18、青いシャツに白いスカート、全体的に細身のようだ。金色の髪は肩の辺り
まで伸ばしている。

「別に助けようとしたわけじゃねぇ、理由をつけてクズをぶん殴りたかっただけだ。
それよりお嬢ちゃんもお嬢ちゃんだ、こんな所を一人でうろつくのは襲ってくれと
言っているようなもんだ、もう二度と来んじゃねぇぞ」

「あ、ま、待って下さい!」

言いたい事を言って背を向けた大男を少女が呼びとめ、再び振りかえったその大男に
抱きつく。

「お願いです!助けてください!」

「はぁ?って、今助けたじゃねか!」

言って、慌てて手で口を押さえる大男、しかし出てしまった言葉をなかった事にする
事はできない、その言葉に半泣き状態だった少女が顔を上げ輝かせる。

「やっぱり助けようとしてくれたんですね」

「…ぐ……つ~かなんだよ、助けてくれってのは」

大男はバツが悪そうにしかし誤魔化す様に少女を片手で引っぺがしながら問う。

「あ、えっとあの実はあなたを雇いに来たのです」

ストン、と降ろされながら少女が答える、その顔はさっきまでの輝いた物とは違いど
こか困ったような表情になっていた、本人は真剣なのだろうがそのころころ変わる表
情に大男も口の端を持ち上げる。

「あ、今笑いましたね!」

「笑っちゃいねぇよ、それよりお嬢ちゃんは俺様を雇いに来って行ったよな、ってこ
とは俺様のことを知っているのか?」

「いいえ」

首をぶんぶん振って答える少女に大男はがくんとなる。

「ただ、『四つ羽の死神に対抗できる強い人』を探しているのです、きっとその人は
あなただと思うんです」

「四つ羽の死神?なんだかしらねぇが、お嬢ちゃんは俺様を雇いたい、そう言ったよ
な?いじめっ子を懲らしめる様にお願いするのとはわけが違うんだぞ、解っているか
?」

ただでさえ低い声のトーンをさらに低くさせて大男は念を押す様に尋ねる、少女は一
瞬びくりと身体を強張らせたがこくりと頷いた。しばらく少女の青い瞳を見つめてか
ら溜息混じりに大男が言葉を発する。

「どうやら本気みたいだな、どれ、丁度退屈していた所だ。話してみな、っとそれよ
りお嬢ちゃんの名前を先に教えてくれないかい?」

そう言って手近のベンチにドカッと座る。

「あ、すみません、私はアルシャと言います、えっと…」

「戦く大地レイヴンだ、よろしくな、雇い主さん」

名乗り、大男は血に飢えた獣のようなそれでいて人懐っこさを感じさせる笑みを浮か
べた。

―――――――――――――――――――――――――――――

「ただいま戻りました」

扉から入ってきたのは金髪の少女だった、もちろんそれが四つ羽の死神に対抗できる
傭兵ではない事は解っている、入ってきた実の娘を見て舌打ちをするハーディン。

「戻ったか、それで傭兵は…」

言葉の途中で扉の端に大きな手が掛かった、次に扉から出てきたのは思わず見上げて
しまうほどの大男だった、紅い闇色の外套から覗いた腕は恐ろしく太くがっちりとし
ている、髪の色は深い銀色、漆黒の肌に額から突き出た二本の角と尖った耳は明らか
に人間ではないと自己主張している様だった。装飾品らしき物は右耳に付けた逆十字
架のピアスだけだ、それが何を意味するのかは定かではない。

「お前さんがハーディンだな」

男が口を開いた、低くそれでいてよく響く声だ。
呼び捨てにされたのが気に障ったのか椅子に座ったままの男―ハーディンは顔をしか
めた。

「あ、あの…えっと、彼はレイヴンさんです…レイヴンさん、父のハーディンです」

アルシャがいきなり険悪状態に陥った空気を取り繕うように紹介する、が空気は変わ
らない様だ。

「なるほど、確かに貴様なら四つ羽の死神に対抗できるだろうな」

沈黙を破ったのはハーディンの方だった。

「その四つ羽の死神ってのはなんだ?」

「知らん、ただ私の邪魔をする者だと言う事は確かだ、だから貴様を雇ったのだ。貴
様にはその四つ羽の…」

「ちょっと待ちな」

レイヴンがハーディンの言葉を途中でさえぎり、悪戯っぽい笑みを浮かべ軽く睨む。

「俺様はお前さんに雇われたんじゃない、このお嬢ちゃんに雇われたんだ」

側に立っていたアルシャの頭に手を置き続ける。

「お前さんの命令を聞く筋合いは一つも無い、それじゃな、そう言う事で失礼させて
もらうぜ、こう言う堅苦しい所は嫌いなんだ」

「な、ま、待たぬか!」

さっさと背を向けた大男にハーディンが怒鳴り付ける、がレイヴンは構うことなく扉
に手をかける。

「安心しな、お前さんの命はちゃ~んと守ってやる、それが依頼だからな」

最後に言い残し書斎を出ていった、残されたハーディンは怒りの表情で歯をギチギチ
と鳴らし拳を強く握りしめた。礼儀しらずの傭兵に自尊心をズタズタに引き裂かれた
事がよっぽど腹立ったらしい。

「あ、あの私も失礼します」

そう言いアルシャが出て言った瞬間近くにあった高価そうな置き物を力任せに床に叩
きつけた。



「ったく、気にいらねぇぜ、他人を見下したような目をしやがって、しかしハーディ
ンが呼んだって言う占い師はそうとう腕がいいんだな、確かに、金貨を天井いっぱい
積まれたってあんな奴には雇われたかねぇな」

なんて事をブツブツいいながら門前を歩いていたレイヴンの目に見慣れない物が映っ
た。

「なんだコリャ?」

近づいて見てみると人形の様だった、大きさはレイヴンの手の平に収まるくらいだが
普通の人間の手の平には収まらないだろう微妙な大きさだ。

「なんだ?アルシャのだろうか…しかしどっかで見たことあるような、どこだったか
な……まあいいか、きっとアルシャのだろう」

そう決めつけレイヴンは屋敷まで引き返しはじめた、自分が持っている物の重要さな
ど知りもせず。

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2007/02/25 23:14 | Comments(0) | TrackBack() | ○四つ羽の死神

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