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2025/03/10 07:18 |
14.『四つ羽根の死神』 幻惑編~/レイヴン(ケン)
PC   ロッティー (レイヴン)
NPC  マイク ジーグクリフ
場所  クーロン周辺
************************************************************
「ハロー、ロッティーちゃん」

 ハーディンの隠れる別荘を前にして、その男は突然姿を現した。
 まるで芸術的な石像に命が宿ったかのような、冷たく整った美貌の男。
 両の手をポケットに突っ込んで、二人の前に立ち塞がる姿は無防備だったが、その
空色の瞳に射抜か れると思わずロッティーとマイクは硬直した。

「君達の命は俺が貰う。せいぜい楽しませてくれよ」
「よりによって・・・『閃光の餞』ジーグクリフ・アシュフィードか」

 マイクの苦々しい声に、ロッティーは彼の顔を見上げた。

「ファイロスに雇われてるたちの悪いハンターだ」
「俺もお前の事を知ってるよ。マイク・ビルズ。ハーディンの雇ったしがない三流ハ
ンターだ」
「なんだって!」

 マイクは思わず怒鳴り返し、ジーグクリフは軽く肩をすくめた。
 二人の表情を見比べても力の差は明らかだった。
 ジーグクリフは楽しげに口を開く。

「カナマンの石を持つのは…どっちだ?」

 ロッティーは無意識に右手を腰の皮袋に伸ばした。
 そこにはマイクから受け取ったカナマンの石が入っている。
 ジーグクリフは表情を変えずその動作を目で追った。

「石は…俺が持ってる。この女は関係ない」
「マイクさん!」

 ジーグクリフの視線から庇う様にマイクが前に出た。

「アンタをやすやすこの男に渡せば、俺があの『戦く大地』に地の果てまで追われる
ことになるんだ。 その方が数倍恐ろしいぜ」
「でも・・・」

 武器を持たないマイクを残して逃げることはためらわれた。
 彼は最初に自分のことを情報専門のハンターだと言っていたではないか。

「早く行け!」
「分かりました。でもその前に」

 ロッティーは強く頷くと、マイクの手を取った。
 その目は金色に輝いている。

「これはおまじないです。けして無理はしないでください」

 ***************

「女の前でいい格好か。戦く大地に追われるほうがマシだったとたっぷり後悔させて
やるよ」

 屋敷に向かって走り去るロッティーの姿が小さくなっていく。

「それは、どうかな」
「ならば試してやるよ!」

 そう言ってジーグクリフは両手を上げた。
 ポケットに隠されていた指から金色の鎖が放たれ、マイクの首を捕らえた。
 何重にも首を絞められ、引き寄せようとする力に抵抗しながらマイクも呪文を唱え
る。

「い・・・怒れ『神鳴り』 走れ『稲妻』!!」

 強烈な閃光。
 刹那に金の鎖を電流が走り、ジーグクリフは手を放した。 
 
「魔法を使うのか・・・」
「多少な」

 持ち主から離れた鎖を緩めようとマイクは手をかけ・・・

「その鎖は俺の意志のまま動く」

 逆に首を絞める力が強くなっていくことに気がつき顔色を変えた。

「だが、カナマンの石を差し出せば、命を助けてやらないこともない。まぁ、もって
るのはロッティー ちゃんなのは知っているけどね」
「!」
「お前はもう、用済みさ」

 マイクが土を蹴り、ジーグクリフに向かって駆け出した。

「おっと」

 軽くマイクの拳をかわし、その空色の瞳で攻撃をしかける男の姿を見つめる。
 
「何故そこまで意地になる必要がある?マイク・ビルズ。あの女とはさっき会った
ばっかりだろう?お前だって人殺しじゃないか。その中途半端な魔法で友人を殺めた
んだろう?」

 笑いながらジーグクリフが口にする言葉は、マイク自身しか知りえない事ばかり
だった。
 動きの鈍くなるマイクを腹が捩れるほど笑ってやると、ジーグクリフが最期の言葉
をかけた。 

「さぁ、楽にしてやる」

 マイクの目が見開く。
 ジーグクリフは人が死ぬ瞬間の絶望の表情が大好きだった。
 死者の瞳に映る自分の顔を満足げに眺める――だが、その瞳にはもう一人、女の姿
がうつっていた。

「何故――!」

 ドスンと、鈍い衝撃が背中に当たった。
 
「何故お前がいる!?ロッティー!」

 血に濡れた短刀を握り締め、立ち尽くすロッティーを振り返ってジーグクリフは凝
視した。
 今まで葬ってきた彼の被害者と同様に。

「マイクさん、大丈夫ですか!?」

 ジーグクリフと同時に大地に倒れたマイクに駆け寄る。
 鎖は簡単に外れた。

「な・・・なんとか。あ、アンタ、なんで。逃げたはずじゃ・・・」

 大きく咳き込みながら、マイクは驚いて尋ねた。
 
「お二人には・・・私が逃げたと思い込んでもらいました。彼は心を読む能力を持って
いたので、マイク さんにも真実を言うことは出来ませんでした」

 淡々と言うロッティーをマイクは奇妙な顔で眺めた。
 この優しげな女が、人を殺しても全く動じないのが酷く異常に思えたのだ。

「彼は・・・今日尽きる運命だったんです。きっと私が手をかけなくても。マイクさん
も無事でよかったです」

 穏やかな琥珀色の瞳で微笑むと、ロッティーは立ち上がった。

「さぁ。ハーディン氏の所へ急ぎましょう。アルシャが心配です」  

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2007/02/25 23:30 | Comments(0) | TrackBack() | ○四つ羽の死神

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