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PC レイヴン ロッティー
場所 クーロン近くの町の宿前 クーロン
NPC アルシャ マイク エルゼ ジェーン
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自分の手のひらに乗せられた、『カナマンの設計図』の一部を見下ろして、ロッティーは思わず呟いた。
「一体、カナマンの置き土産って何なの・・・?」
手触りも、見た目も、路傍に転がるただの石ころにしか見えない。
こんなものの為に、ハーディンの屋敷の使用人たちは殺されたのか。
「大事に扱ってくれよ。誤って道端にでも転がっちまったらお手上げだ」
ロッティーの反応を面白そうに眺めながら、冒険者のマイクが答える。
「でも、肝心のハーディンさんの居場所が分からないの。・・・レイヴンさんなら知ってるかもしれないけれど」
「アンタの占いでどうにかならないのかい?」
「駄目よ。今私にはこの事柄に関する占いは殆ど見ることができないもの」
ロッティーには、ハーディンの未来を見ることがどうしても出来なかった。
きっと、彼の未来には自分の生死が大きく関わっているのだ。
『貴女は――これ以上この事件に関わると、死ぬわよ。ロッティーさん』
ジェーンの言葉が脳裏で響いた。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。
「とにかく、こいつはアンタに預けるぜ」
マイクはロッティーに石ころを押し付けると、早々と帰る支度を始めた。
酒代を店の亭主に払い、店の扉を開ける。
しかし、扉の向こうに穏やかな田園風景はなく、巨大な男に筋肉で塞がれていた。
驚いたマイクは思わず数歩後退する。
「すまねぇな」
道をあけたマイクに声をかけ、窮屈そうに宿屋に入ってきたのは、並外れた体格と身体能力を持つオウガのレイヴンだった。
「レイヴンさん!」
「おぉ、ロッティー。体は大丈夫か?」
「ええ。アルシャは見つかったの?」
「いや、途中までだ・・・どうやら、誰かに攫われたか匿われたか家の中にはいっちまったみてーでな」
レイヴンはそこまで言うと、隣で立ったまま自分を見ている隣の男に視線を向けた。
マイクは呆然とした表情で『戦く大地』を見上げている。
「レイヴンさん、その人はハーディン氏に雇われたハンターよ」
「ハーディンに、ね・・・」
考えるように顎を指で擦って、レイヴンが反芻する。
「あぁ・・・俺は奴に『カナマンの設計図』を探すように5年以上前から雇われてンだ」
レイヴンの視線に、マイクは長いため息を一度吐くと、やけになったように口を開いた。
「そこの占い師のねーちゃんに預けた石ころが最後のパーツだ。あとは人造実験でも、反魂でも勝手にやりゃーいいさ」
「はんごん・・・?」
ロッティーとレイヴンが顔を見合わせると、マイクはしまったという顔をして逃げ出そうとした。
しかし、レイヴンの腕が素早く男の襟元を掴む。
「ハーディンの野郎。そんなことしてやがったのか」
「は、放してくれよっ。俺の仕事は終わったんだ!」
「レイヴンさん、ハーディン氏の居場所は分かる?」
「あぁ、安全な場所とかいって、別荘に隠れてるが、お前も一緒に来てもらうぜ」
「勘弁してくれよぉ~。俺は目の方はずば抜けてイイんだが、戦闘はからきしなんだ。『戦く大地』や『虚無の空』が出てくるような事件にかかわるなんてゴメンだ!!」
マイクがロッティーにパーツを押し付けて立ち去ろうとしたのは、そんな考えがあったからのようだ。
「私も一緒にいっていいかしら?」
「あぁ、頼む」
あっさりと頷いたレイヴンにほっとすると、ロッティーは思い出したかのように呟いた。
「もしかしたら、アルシャは幻蝶館に匿われてるんじゃないかしら?マザー・エルゼが居るならきっと彼女を助けてくれるわ」
ロッティーは実際にマザー・エルゼを見た事は無い。
しかし、『クーロンの標』と呼ばれる彼女の力なら、きっとアルシャの危機を察して手を貸してくれるだろう。
それは、期待でしかなかったのだけれど。
----- - - - -
「落ち着いたかい?お茶でもお飲みよ」
「ありがとうございます」
幻蝶館の奥へと通されたアルシャは老婆と小さな部屋で二人きりになった。
清涼な香りのするハーブティーを出され、それを口にするとアルシャは先ほどから気にかかっていた事を切り出した。
「あの、母とはどんな関係だったんですか?」
幼い頃母を亡くしたアルシャは、母親の声も、記憶もなかった。
父親に何度か母について尋ねても、彼は母親の姿かたちすら教えてくれはしなかった。
こんな所に母の知り合いがいるなんて、何という偶然だろうか。
「アンタの母親は、メールディと言ってね。そりゃあ美しい羽根の持ち主だった」
「はね・・・?」
「今はアタシもとんと老いぼれて醜くなっちまったが、あの子と同じ薄黄緑色の羽根をしてたもんだ」
そういって、老婆は纏っていたマントを外した。
盛り上がっていた背中の瘤が、伸びをしたかのように豊かに広げられ――黒い色に縁取られた斑の青と緑の羽根が現れた。
「蝶・・・?」
アルシャは目の前の老婆の羽根を呆然と眺めた。
「アタシたちは人じゃない。幻蝶族といってね、アンタの母親はアタシの娘だった。アルシャ、お前にもその血が流れてるんだよ」
「うそ!?」
「ハーディンは、メールディをむりやり屋敷に閉じ込めて自分の妻にしたのさ。メールディはそのせいで早死にした・・・あいつをアタシゃ許しはしないよ」
「そんな・・・」
母親の正体とエルゼの告白にアルシャは目の前が真っ暗になった。
『四つ羽の死神』とは、目の前の祖母の事なのだろうか―――
PC レイヴン ロッティー
場所 クーロン近くの町の宿前 クーロン
NPC アルシャ マイク エルゼ ジェーン
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自分の手のひらに乗せられた、『カナマンの設計図』の一部を見下ろして、ロッティーは思わず呟いた。
「一体、カナマンの置き土産って何なの・・・?」
手触りも、見た目も、路傍に転がるただの石ころにしか見えない。
こんなものの為に、ハーディンの屋敷の使用人たちは殺されたのか。
「大事に扱ってくれよ。誤って道端にでも転がっちまったらお手上げだ」
ロッティーの反応を面白そうに眺めながら、冒険者のマイクが答える。
「でも、肝心のハーディンさんの居場所が分からないの。・・・レイヴンさんなら知ってるかもしれないけれど」
「アンタの占いでどうにかならないのかい?」
「駄目よ。今私にはこの事柄に関する占いは殆ど見ることができないもの」
ロッティーには、ハーディンの未来を見ることがどうしても出来なかった。
きっと、彼の未来には自分の生死が大きく関わっているのだ。
『貴女は――これ以上この事件に関わると、死ぬわよ。ロッティーさん』
ジェーンの言葉が脳裏で響いた。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。
「とにかく、こいつはアンタに預けるぜ」
マイクはロッティーに石ころを押し付けると、早々と帰る支度を始めた。
酒代を店の亭主に払い、店の扉を開ける。
しかし、扉の向こうに穏やかな田園風景はなく、巨大な男に筋肉で塞がれていた。
驚いたマイクは思わず数歩後退する。
「すまねぇな」
道をあけたマイクに声をかけ、窮屈そうに宿屋に入ってきたのは、並外れた体格と身体能力を持つオウガのレイヴンだった。
「レイヴンさん!」
「おぉ、ロッティー。体は大丈夫か?」
「ええ。アルシャは見つかったの?」
「いや、途中までだ・・・どうやら、誰かに攫われたか匿われたか家の中にはいっちまったみてーでな」
レイヴンはそこまで言うと、隣で立ったまま自分を見ている隣の男に視線を向けた。
マイクは呆然とした表情で『戦く大地』を見上げている。
「レイヴンさん、その人はハーディン氏に雇われたハンターよ」
「ハーディンに、ね・・・」
考えるように顎を指で擦って、レイヴンが反芻する。
「あぁ・・・俺は奴に『カナマンの設計図』を探すように5年以上前から雇われてンだ」
レイヴンの視線に、マイクは長いため息を一度吐くと、やけになったように口を開いた。
「そこの占い師のねーちゃんに預けた石ころが最後のパーツだ。あとは人造実験でも、反魂でも勝手にやりゃーいいさ」
「はんごん・・・?」
ロッティーとレイヴンが顔を見合わせると、マイクはしまったという顔をして逃げ出そうとした。
しかし、レイヴンの腕が素早く男の襟元を掴む。
「ハーディンの野郎。そんなことしてやがったのか」
「は、放してくれよっ。俺の仕事は終わったんだ!」
「レイヴンさん、ハーディン氏の居場所は分かる?」
「あぁ、安全な場所とかいって、別荘に隠れてるが、お前も一緒に来てもらうぜ」
「勘弁してくれよぉ~。俺は目の方はずば抜けてイイんだが、戦闘はからきしなんだ。『戦く大地』や『虚無の空』が出てくるような事件にかかわるなんてゴメンだ!!」
マイクがロッティーにパーツを押し付けて立ち去ろうとしたのは、そんな考えがあったからのようだ。
「私も一緒にいっていいかしら?」
「あぁ、頼む」
あっさりと頷いたレイヴンにほっとすると、ロッティーは思い出したかのように呟いた。
「もしかしたら、アルシャは幻蝶館に匿われてるんじゃないかしら?マザー・エルゼが居るならきっと彼女を助けてくれるわ」
ロッティーは実際にマザー・エルゼを見た事は無い。
しかし、『クーロンの標』と呼ばれる彼女の力なら、きっとアルシャの危機を察して手を貸してくれるだろう。
それは、期待でしかなかったのだけれど。
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「落ち着いたかい?お茶でもお飲みよ」
「ありがとうございます」
幻蝶館の奥へと通されたアルシャは老婆と小さな部屋で二人きりになった。
清涼な香りのするハーブティーを出され、それを口にするとアルシャは先ほどから気にかかっていた事を切り出した。
「あの、母とはどんな関係だったんですか?」
幼い頃母を亡くしたアルシャは、母親の声も、記憶もなかった。
父親に何度か母について尋ねても、彼は母親の姿かたちすら教えてくれはしなかった。
こんな所に母の知り合いがいるなんて、何という偶然だろうか。
「アンタの母親は、メールディと言ってね。そりゃあ美しい羽根の持ち主だった」
「はね・・・?」
「今はアタシもとんと老いぼれて醜くなっちまったが、あの子と同じ薄黄緑色の羽根をしてたもんだ」
そういって、老婆は纏っていたマントを外した。
盛り上がっていた背中の瘤が、伸びをしたかのように豊かに広げられ――黒い色に縁取られた斑の青と緑の羽根が現れた。
「蝶・・・?」
アルシャは目の前の老婆の羽根を呆然と眺めた。
「アタシたちは人じゃない。幻蝶族といってね、アンタの母親はアタシの娘だった。アルシャ、お前にもその血が流れてるんだよ」
「うそ!?」
「ハーディンは、メールディをむりやり屋敷に閉じ込めて自分の妻にしたのさ。メールディはそのせいで早死にした・・・あいつをアタシゃ許しはしないよ」
「そんな・・・」
母親の正体とエルゼの告白にアルシャは目の前が真っ暗になった。
『四つ羽の死神』とは、目の前の祖母の事なのだろうか―――
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