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2024/05/05 12:02 |
ヴィル&リタ-4 蜜豆一丁/ヴィルフリード(フンヅワーラー)
PC:ヴィルフリード (リタルード)
NPC:
場所:エイドの街(ヴァルカン地方)
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 水饅頭を届け終え、部屋を取っていた宿屋に着いたのは、のんびりと起きた
であろう数人の人々が朝食を終えようとしていたころだった。
 宿屋で鍵を受け取ると、宿屋のおかみが「あ、そうそう」と何か思い出した
ようで、奥に引っ込んだ。しばらくすると、メモ用紙であろう紙切れを持ち出
して出てきた。

「あの、リタルードって言うかわいい子から伝言があってね。
 確か……3日前だったかね。ハイ」

 4つ折に折られたメモ用紙を渡された。開くと、なかなか達筆な文字で簡潔
に書かれていた。

”『甘味処』のマリさんの所にしばらくお世話になってます。 リタ ”

 なんでそんなことになったのか、理由は一切ない。

「ってことは、もう、コイツ、チェックアウトしちまったとか?」

「いいや。これを預かった時に、1週間分の滞在費をもらったからね。ここ最
近は全く立ち寄ってないみたいだけども、部屋はまだ空けていないよ。」

 おかみは上機嫌そうに言った。それはそうだ。この商売、金の払いがモノを
言う。泊まった挙句、金が足りないということを一番避けたいものだろう。
 礼を軽く言い、ヴィルフリードは2階に上がって一息ついた。

 そういえば。リタはどこから収入を得ているのだろう。
 伝言を利用しているのならば、全く使用しない部屋を取り続ける意味の無い
行為ができるほどの、余裕ある金銭……。
 針でちくりと刺されたような感覚。まただ。リタと一緒にいると、時折それ
がある。
 しかし、ヴィルフリードは、それに気づかないフリをした。
 なんでもかんでも、相手のことを知り尽くしたいなどという暴挙はガキのす
ることだ。人間関係、壁があるくらいが楽しい。
 それで、いいのだ。
 ヴィルフリードは息を深く吐き、立ち上がった。



 30分ほどで『甘味処』は見つかった。
 なかなか繁盛しているらしく、まだ朝なのに客が数人いた。店内はゆったり
とした時間が流れている。
 ヴィルフリードは店内を見回し、空いている卓に座った。すぐに、女性が注
文をとりに来た。かわいらしい雰囲気を感じさせるが、落ち着いた風情も持っ
ている女性だ。
 ヴィルフリードは、無難そうな、メニューに書いてあるオススメの菓子を注
文した。

「それと、ちょっと聞きたいんだが……。
 ここに、リタルードっていうヤツが転がり込んでるって聞いたんだが、いる
かい?」

「……あなた、リタちゃんの知り合い?」

 女性は、どんぐりのような眼を見開いてヴィルフリードを見た。

「どういうお知り合い? 随分年が離れているわねぇ」

 女性は、不信そうなところも無く、純粋に楽しそうに聞いてきた。ヴィルフ
リードは、そんな彼女の様子に、ヴィルフリードは思わず笑みがこぼれた。

「怪しまれないために、親戚って言ってもいいんだけどな。オトモダチっつー
やつが一番近いかな」

「素敵ねぇ。年齢に左右されない友情って」

 女性はにっこりと微笑んだ。
 この女性の笑みを見ると、なんだか自分の内側に蓄積した澱みが薄れるよう
だった。ヴィルは、この店の繁盛の一つの理由には、彼女の貢献があるのだろ
う、と思った。

「もしかして、アンタが『マリさん』?」

 ヴィルフリードは聞いた。
 それは当たっていたようで、女性は、少し驚いた顔をしたが、すぐに
ぱぁぁっと笑顔を輝かせた。

「えぇ、そうよ。当たり」

「やっぱり」

「やっぱり?」

 マリはオウム返しに聞いた。

「リタが懐きそうだと思ったから」

 うれしい、と幼い女の子のようにマリは喜んでいたが、しかし、すぐにマリ
の眉がキレイな「ハ」の字を形作った。

「でもねぇ……。折角来てくれてなんだけど、リタちゃんは今、ちょっと…
…」

「……何かあったとか……?」

 マリは、言いにくそうに口を開いた。
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2007/02/11 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ○ヴィル&リタ

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